2026年10月2日更新
「調停が不成立になった」「相手から離婚訴訟を起こされた」「離婚は望むが、子どもや財産の条件で折り合えない」。離婚訴訟では、法律上の離婚原因、親権、財産・養育費などについて、主張と証拠を示して裁判所の判断を求めます。調停のように同意しなければ終わらない手続ではありません。提訴・答弁から証拠提出、尋問、和解、判決までの流れと、各段階で弁護士に相談・依頼する意義を説明します。
1 離婚訴訟とは:原則として調停を経て家庭裁判所へ
離婚訴訟は、人事訴訟として家庭裁判所で扱われます。調停前置主義により、原則として訴訟の前に離婚調停を申し立てる必要があります(家事事件手続法257条1項)。これは、まず家庭裁判所で話合いによる解決を図るルールです。調停を経ずに訴えた場合、裁判所は原則として職権で調停に付しますが、調停に付することが相当でないと認める場合は例外となります(同条2項)。調停が不成立でも自動的に訴訟へ移行するわけではなく、離婚を求める側が訴状を提出します。調停を行うことが相当でない事情がある場合には例外もあるため、所在不明や安全上の問題がある場合は弁護士に相談してください。
訴状の提出先は原則として夫又は妻の住所地の家庭裁判所です。調停を担当した家庭裁判所が訴訟も扱う場合など、管轄には例外があります。外国籍・海外居住が関係する場合は、国際裁判管轄と適用法を別途検討します。
相手が離婚に同意しない場合、離婚を求める側は法律上の離婚原因に当たる事実を示す必要があります。裁判所は中立であり、本人に代わって有利な主張や証拠をすべて集めてくれるわけではありません。
2 2026年改正後の離婚原因:民法770条
民法770条1項は、裁判上の離婚原因として次の4つを定めています。
- 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2026年4月1日施行の改正で、旧4号の「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」という独立の離婚原因は削除され、旧5号の重大事由が現在の4号になりました。病名だけで離婚の可否を決めるのではなく、婚姻生活の実情等を個別に検討します。古い裁判例・解説に出てくる「770条1項5号」は、現在の4号に対応します。
「悪意の遺棄」は、正当な理由なく同居・協力・扶助義務を果たさないことを指し、単に一方が家を出たというだけでは決まりません。DVからの避難、別居の経緯、生活費の負担等を確認します。「性格の不一致」という言葉だけでも足りず、具体的な出来事や別居・交流の状況から、婚姻が修復困難な状態に至ったかを説明する必要があります。1~3号に当たる場合でも、770条2項により一切の事情を考慮して請求が棄却されることがあります。
3 有責配偶者・長期間の別居と裁判例
不貞等によって婚姻破綻の主な原因を作った配偶者の離婚請求は、信義則との関係で制限されます。ただし、永久に離婚請求が認められないという意味ではありません。
最高裁大法廷昭和62年9月2日判決は、年齢・同居期間との対比で相当長期間の別居があり、未成熟子がおらず、離婚で相手方が極めて苛酷な状態に置かれる等の特段の事情がない場合には、有責配偶者からの請求であることだけで排斥できないとしました。最高裁平成2年11月8日判決も、別居年数だけの数量的な比較でなく、生活費負担、不貞解消、財産清算の提案等を含めた検討を求めています(事例1787)。
また、事例1987は長期別居と離婚請求を扱っています。「別居5年なら必ず認められる」などの一律の基準はありません。弁護士は、破綻原因の評価、別居期間、子の自立状況、相手の生活保障を整理し、訴訟の見通しと解決条件を検討します。有責性、親権者の適格性、子の養育費は別の問題であり、同じ結論になるとは限りません。
4 離婚と同時に決める事項・2026年改正
未成年の子がいる場合は、離婚後の親権者を定めます。財産分与、養育費等の子の監護に関する事項、年金分割の割合なども、必要な申立てをして離婚と同時に判断を求められます。離婚に伴う慰謝料の請求を併せて行うこともできます。訴状に離婚だけを書けば、財産や養育費もすべて自動的に決まるわけではありません。
2026年4月以降は裁判離婚でも共同親権・単独親権を検討します。父母の一方が共同親権に反対していることだけで結論が決まるものではありませんが、子への虐待や配偶者へのDVのおそれ、共同で親権を行うことが困難な事情等が認められる場合には、裁判所は単独親権としなければなりません。身体的な暴力だけに限定せず、具体的な事情を資料で示すことが重要です。
親権とは別に、子の居所・監護体制・養育費・親子交流を具体化します。裁判所の調査が行われる場合もあり、子の年齢・発達に応じた意思・意向を尊重します。共同親権は、子が必ず半分ずつの時間を父母の家で暮らすという意味でも、養育費が当然に不要になるという意味でもありません。
財産分与は、2026年4月1日以降の離婚では原則として離婚から5年以内の家庭裁判所への請求が可能となりましたが、施行前の離婚は原則2年です。離婚訴訟の段階で資料を集め、未解決事項を残す場合は期間・手続を確認してください。参照:裁判所・親権、石川県・民法等改正。
5 提訴する場合・訴状が届いた場合
提訴する側
訴状には、求める判決の内容と、その理由となる事実を記載します。戸籍謄本、調停不成立証明書等、年金分割の情報通知書、証拠書類等を準備します。手数料は請求内容によって異なり、別に郵便料等が必要です。提出部数と費用は、裁判所の最新案内で確認してください。
訴えられた側
封筒・訴状・呼出状を保管し、受取日、答弁書の提出期限、期日を確認します。答弁書では、請求への態度と、個々の事実について認める・否認する・知らないという区別を整理します。離婚に応じる場合でも、親権や金銭条件の主張は必要です。反訴など自分から請求する手続が必要かも検討します。
離婚訴訟には通常の民事訴訟と異なる取扱いがありますが、欠席すれば解決するわけではなく、対応しないまま審理・判決が進むおそれがあります。期限が迫っている場合は、まず弁護士に訴状一式を見せ、裁判所への連絡と提出準備を進めてください。
6 主張・証拠・尋問・和解・判決の流れ
- 争点を整理する:訴状・答弁書・準備書面により、離婚原因、財産、子に関する争点を絞ります。
- 証拠を提出する:争点に応じて書証や陳述書を準備し、財産・収入・監護状況等を明らかにします。
- 和解を検討する:訴訟中でも解決条件を話し合えます。合意できなければ審理が続きます。
- 必要な尋問等を行う:本人や証人の供述、調査結果なども踏まえて判断資料を整えます。
- 判決又は和解で解決する:判決への不服申立て、戸籍の届出、支払・登記等の履行へ進みます。
必ずこの順に一度ずつ進むわけではなく、和解の検討は複数回行われることもあります。争点の数、証拠、調査や鑑定、期日の調整によって期間は変わり、1年以上を要することもあります。生活費が必要な場合は、訴訟の終了を待たず婚姻費用の手続を検討してください。
口頭弁論や尋問は原則公開で、非公開の調停とは異なります。ただし、法律の要件に基づく公開停止等の制度もあります。安全やプライバシーの懸念がある場合は、弁護士に事情を伝え、利用可能な手続を検討します。
重要:「サインしていないから成立していない」とは限りません
「私はサインしていないのに、勝手に調書が作成された」というご相談があります。しかし、訴訟上の和解では、当事者が和解調書に署名・押印することは、成立の要件ではありません。裁判官が裁判所書記官の立会いのもとで合意内容と当事者の意思を確認し、その合意が調書に記載されることにより、法的な効力が生じます。離婚調停では「調停調書」、離婚訴訟中の和解では「和解調書」が作成されます。
例えば、成立のための最終確認として「この内容で離婚し、これらの条件に合意しますか」と尋ねられ、「はい」と答えることで、署名も実印の押印もしていなくても、合意したものとして調停・和解が成立する場合があります。単に説明を聞いたという相づちや、途中の提案への返答が常に成立を意味するわけではありませんが、最終的な同意を求める質問かどうかを十分に確認してください。法廷・調停室だけでなく、ウェブ会議でも注意が必要です。
これは「実印を押した契約書と同じくらい重大な返答になり得る」ということですが、法的にはそれにとどまらず、調書には確定判決と同一の効力が認められ、支払義務等について強制執行の根拠となることもあります。「後で調書にサインするときに考えればよい」「印鑑を持っていないので今日は成立しない」と考えるのは危険です。
内容が分からない、金額・期限に納得していない、弁護士に確認したい場合は、返答の前に「まだ同意していません」「条項を確認する時間をください」「弁護士と相談してから回答します」と明確に伝えてください。成立後は、単に署名押印がないことや気が変わったことを理由に、一方的に撤回することはできません。実際には同意していない、意思確認に問題があったという場合には、当日のやり取りと調書の内容を整理して、速やかに弁護士へ相談してください。
参照:裁判所・和解調書の効力。
7 証拠をどのように準備するか
| 争点 | 資料の例 |
|---|---|
| 不貞・DV・別居の経緯 | メッセージ、写真、診断書、相談記録、日付のある記録など。前後の文脈と取得経緯も確認します。 |
| 財産分与 | 預金・証券・保険・不動産・ローン等の資料。名義、基準時、残高、取得原資を整理します。 |
| 収入・養育費 | 源泉徴収票、確定申告書、給与明細、学費・医療費の資料など。 |
| 親権・監護 | これまでの養育分担、子の生活・通学・健康、今後の監護体制を示す資料など。 |
調停で提出した資料が、そのまますべて訴訟の証拠になるとは限りません。訴訟で必要な主張と証拠を改めて整理します。弁護士は、何を証明する資料なのかを明確にし、証拠説明書や財産一覧表を作成して、主張との対応を示します。原本・元データを保管し、日付や内容を改変しないでください。
相手の端末・アカウントへの無断侵入などによる収集は避け、適法な入手方法を相談します。相手が財産資料を出さない場合も、裁判所を通じた調査や、改正法による情報開示命令等の利用を、対象と要件に応じて検討します。すべての財産を裁判所が自動的に調べる制度ではありません。
8 離婚訴訟で弁護士が担う役割
本人訴訟も可能ですが、請求・反論・証拠提出・和解判断を並行して進める負担があります。裁判所の手続案内は、あなたに有利な訴訟方針を立てる法律相談とは異なります。弁護士は依頼者の利益を守る立場から、次のような活動を行います。
- 見通しと請求の設計:離婚原因と裁判例を検討し、慰謝料・財産分与・養育費等の請求や反訴を組み立てます。
- 主張・立証:訴状、答弁書、準備書面を作成し、証拠の不足・矛盾・相手の反論へ対応します。
- 期日と尋問:期日に出席して訴訟活動を行い、本人尋問の準備、証人への質問、相手方への反対尋問を行います。本人は経験した事実を正確に説明します。
- 和解交渉:判決見込み、時間・費用、回収可能性、子の生活を踏まえて条件を比較し、依頼者が納得して判断できるよう説明します。
- 判決後:控訴の要否・期限、財産移転、支払や強制執行など、解決を実行する段階も検討します。
弁護士への依頼で、通常の期日の本人出席の負担が軽くなる場合がありますが、本人尋問や意思確認など本人の関与が必要な場面は残ります。判断をすべて丸投げするのではなく、希望条件・譲歩できる範囲・生活上の事情を共有することが大切です。依頼範囲、調停から訴訟への追加費用、控訴・執行の費用等は事前に確認します。
9 ウェブ会議・オンライン申立て・住所の秘匿
要件を満たす場合には、ウェブ会議での口頭弁論への参加や、離婚の和解が可能です。2025年3月1日施行の制度により、離婚・離縁の和解や調停成立についてもウェブ会議の利用が認められています。利用できる場面、本人確認、接続環境は裁判所の指示に従います。
2026年5月21日に始まった一般民事訴訟のオンライン申立て等は、人事訴訟・家事事件にはそのまま適用されません。離婚訴訟も弁護士なら必ずオンラインで訴状を提出する、と理解しないようにしてください。ウェブ会議への参加とオンライン申立ては別の制度です。裁判所・民事裁判手続のデジタル化で対象手続を確認できます。
DV等で住所・氏名等を知られる危険がある場合には、当事者間の秘匿制度や閲覧等の制限を検討します。申立て前に、訴状・証拠・送達場所に含まれる情報を確認してください。弁護士は、必要な主張・立証を行いながら安全を確保する方法を検討します。
10 和解・判決後の期限と手続
和解離婚は和解成立時、判決離婚は離婚判決の確定時に成立します。判決に不服がある場合の控訴期間は、原則として判決書の送達を受けた日から2週間です。判決を受け取ったら、直ちに弁護士と内容・不服申立ての見通しを確認してください。
戸籍への記載のため、原則として原告が、和解成立又は判決確定の日を1日目として10日以内に、和解調書謄本、判決謄本・確定証明書等の必要書類を添えて離婚届を提出します。氏・子の戸籍、年金分割、健康保険、登記等は別途手続が必要になる場合があります。
金銭の支払や不動産移転を定めても、それだけで自動的に履行されるわけではありません。不履行の場合は執行に必要な書類・財産の特定を確認します。離婚までの婚姻費用、離婚後の養育費、財産分与等を区別し、二重請求や回収漏れを防ぎます。
11 新銀座法律事務所の無料相談
「相手から書類が届いた」「子どもや財産の条件をどう決めればよいか」「相手には弁護士が付いている」「条件に同意する前に確認したい」といった場合は、ご相談ください。離婚訴訟の進め方と、生活・子ども・財産を守るために必要な対応を検討します。
受付:平日9:00~21:00/土日祝日9:00~18:00
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13 法令・公的資料・書式・PDF
- e-Gov:人事訴訟法
- 裁判所:離婚訴訟・訴状と答弁書の書式
- 東京家庭裁判所:人事訴訟の書式
- 東京家庭裁判所:財産一覧表作成の注意(PDF)
- 東京家庭裁判所:親権に関する陳述書の注意(PDF)
- 裁判所:和解離婚後・判決離婚後の手続(2026年版PDF)
- 裁判所:民事裁判手続のデジタル化・対象手続
- e-Gov:民法
- e-Gov:家事事件手続法
- 衆議院:令和6年法律第33号(民法等の改正条文)
- 裁判所:家事事件Q&A
- 石川県:2026年4月施行の改正民法等
- こども家庭庁:改正制度の図解・リーフレット・パンフレット
- 新銀座法律事務所:無料法律相談の利用案内
情報確認日:2026年10月2日。提出書式・郵便料・ウェブ会議の運用等は、利用する裁判所の最新案内でご確認ください。