公務員の犯罪について(最終更新平成21年4月22日)

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1)公務員が犯罪を犯してしまった場合、被疑者及びその御家族の皆様においては、一般の事件よりも慎重な対応が必要だと思います。罪の軽重にもよりますが、比較的軽微な犯罪行為の場合には、退職をせずに社会復帰可能な事案もあります。ご家族にとって突然の刑事事件ということがほとんどだと思いますが、刑事手続と公務員関係法令を知っているかどうかで、大きな違いとなる場合があります。

 公務員といっても勤労の対価に定期的な給与を受ける労働者であることに変りはありません。ただ、職務に高度の公共性があるというところが一般の会社員と異なる点です。そのため、職務行為に関連する犯罪の場合は「ちょっと処分が重すぎるかな」と感じられるようなケースもあります。しかし、罪を反省し社会復帰を果たしたいと願っている被疑者・被告人である公務員の方がおられるなら、ご家族のためにも、法律の範囲内で勤務先とも折衝を行い、できる限り勤務を継続できるよう努力すると良いでしょう。職場からの退職勧奨を受けて自ら依願退職し、後日後悔して弁護士に相談してくる事例も目立ちます。可能な限り事前に弁護士に御相談なさる事をお勧め致します。

2)刑事手続きについて時系列で見てみましょう。

逮捕 → 勾留されずに釈放(在宅事件に切替。在宅のまま取調べを継続し検察官が起訴すべきかどうか決定。)

 ↓ 72時間以内(刑事訴訟法203条、205条)

勾留 → 起訴されずに釈放(在宅事件に切替。在宅のまま取調べを継続し検察官が起訴すべきかどうか決定。)

 ↓ 10日もしくは20日(刑事訴訟法208条)

起訴 → 免訴・公訴棄却(刑事訴訟法337条、338条、時効や被告人死亡など。)

 ↓ 略式手続の場合は即日、正式裁判の場合は2ヶ月〜半年程度(重大事件を除く)

判決 → 無罪判決

 ↓ 2週間(刑事訴訟法373条、控訴・上告した場合は数年かかる場合もある)

有罪判決確定

 ↓

勤務先における退職勧奨・懲戒手続(刑事裁判中の懲戒手続に関する規定もありますが退職勧奨により依願退職するケースが多いようです。)


3)懲戒免職に関係する参考条文を引用いたします。

地方公務員法

第27条(分限及び懲戒の基準)すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。
2 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職されず、又、条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して降給されることがない。
3 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、懲戒処分を受けることがない。

第28条(降任、免職、休職等)職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 勤務実績が良くない場合
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 前二号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合
四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
2 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反してこれを休職することができる。
一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
二 刑事事件に関し起訴された場合
3 職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。
4 職員は、第16条各号(第三号を除く。)の一に該当するに至つたときは、条例に特別の定がある場合を除く外、その職を失う。

第29条 (懲戒)職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一  この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二  職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三  全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

第33条(信用失墜行為の禁止)職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

第16条(欠格条項)次の各号の一に該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
一 成年被後見人又は被保佐人
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
三 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
四 人事委員会又は公平委員会の委員の職にあつて、第五章に規定する罪を犯し刑に処せられた者
五 日本国憲法 施行の日以後において、日本国憲法 又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

東京都職員服務規程

第1条(趣旨)この規程は、別に定めがあるもののほか、常勤の一般職の職員及び地方公務員法第28条の5第一項に規定する短時間勤務の職を占める職員の服務に関し、必要な事項を定めるものとする。

第2条(服務の原則)職員は、全体の奉仕者としての職責を自覚し、法令、条例、規則その他の規程及び上司の職務上の命令に従い、誠実、公正かつ能率的に職務を遂行しなければならない。
2項 職員は、自らの行動が公務の信用に影響を与えることを認識するとともに、日常の行動について常に公私の別を明らかにし、職務や地位を私的な利益のために用いてはならない。

国家公務員法

第74条(分限、懲戒及び保障の根本基準)すべて職員の分限、懲戒及び保障については、公正でなければならない。
2項 前項に規定する根本基準の実施につき必要な事項は、この法律に定めるものを除いては、人事院規則でこれを定める。

第75条(身分保障)職員は、法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはない。
2項 職員は、人事院規則の定める事由に該当するときは、降給されるものとする。

第76条(欠格による失職)職員が第38条各号の一に該当するに至つたときは、人事院規則に定める場合を除いては、当然失職する。

第78条(本人の意に反する降任及び免職の場合)職員が、左の各号の一に該当する場合においては、人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 勤務実績がよくない場合
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 その他その官職に必要な適格性を欠く場合
四 官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合

第82条(懲戒の場合)職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法 又はこれらの法律に基づく命令に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

第85条(刑事裁判との関係)懲戒に付せらるべき事件が、刑事裁判所に係属する間においても、人事院又は人事院の承認を経て任命権者は、同一事件について、適宜に、懲戒手続を進めることができる。この法律による懲戒処分は、当該職員が、同一又は関連の事件に関し、重ねて刑事上の訴追を受けることを妨げない。

第99条(信用失墜行為の禁止)職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

人事院規則1210(職員の懲戒)
第8条(刑事裁判所に係属する間の懲戒手続)任命権者は、懲戒に付せられるべき事件が刑事裁判所に係属する間に、同一事件について懲戒手続を進めようとする場合において、職員本人が、公判廷において(当該公判廷における職員本人の供述があるまでの間は、任命権者に対して)、懲戒処分の対象とする事実で公訴事実に該当するものが存すると認めているとき(第一審の判決があつた後にあつては、当該判決(控訴審の判決があつた後は当該控訴審の判決)により懲戒処分の対象とする事実で公訴事実に該当するものが存すると認められているときに限る。)は、法第85条の人事院の承認があつたものとして取り扱うことができる。

第38条(欠格条項)次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則の定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。
一 成年被後見人又は被保佐人
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
三 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
四 人事院の人事官又は事務総長の職にあつて、第百九条から第百十二条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
五 日本国憲法 施行の日以後において、日本国憲法 又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

4)法律解釈及び判例検討
上記の地方公務員法及び国家公務員法によれば、懲役刑や禁錮刑の有罪(執行猶予を含む)判決を受けた場合の失職はやむを得ないと考えられます。他方、略式命令などで罰金刑を受けた場合はどのように考えられるでしょうか。道路交通法違反や、痴漢・盗撮行為などで迷惑防止条例違反の場合には、よくある事例です。

上記法令を読みますと具体的に罰金刑を受けた場合に失職や懲戒免職を定めた規定は存在しておりませんが、抽象的な規定を適用することで、懲戒免職なし得る事案があると思います。問題となるのは、主に次の条文です。

地方公務員法29条第2号及び3号
職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
二  職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三  全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

第33条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

東京都職員服務規程第2条2項(他の都道府県にも同様の条例が定められております)
 職員は、自らの行動が公務の信用に影響を与えることを認識するとともに、日常の行動について常に公私の別を明らかにし、職務や地位を私的な利益のために用いてはならない。


国家公務員法第82条2号及び3号
職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

第99条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

以上のように、「職務を怠る」「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」「自らの行動が公務の信用に影響を与えることを認識」「職の信用を傷つけ」など、抽象的な文言で規定されています。これらについて判例をご紹介致します。判例集に登載されている件数が少ないのは、多数の事案で「依願退職」による退職で処理され、裁判事案になることが少ないためだと思われます。

平成19年12月26日福岡高裁判決 県立高校の教員が、パチンコ店で景品のゲーム機を窃取したとの被疑事実で逮捕され、罰金20万円の略式命令を受け、その事実が新聞等で報道されたことを理由として懲戒免職を受けた事案で、生徒の模範となるべき教職員が他人の財物を窃取したというものであり、教職員に対する信用を傷つけ、教職員全体の名誉を害するものであると同時に、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であることは明らかである上、窃取行為から約2か月間、その事実を捜査機関等に申告せず、本件ゲーム機を隠匿しているなど、犯行後の状況等も悪質といわざるを得ず、加えて、控訴人が逮捕され略式命令を受けるに至った経過が新聞等によって報道されたことにより、生徒、保護者、教職員その他関係者に動揺や混乱等を生じさせたこと、控訴人が意識減損発作又はてんかん発作を起こし、無意識のうちに本件窃取行為に及んだと認めることもできないことなどを考慮すると、本件処分は社会観念上著しく相当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したものと認めることはできない、と判示しています。

平成18年11月9日福岡高裁判決 町立中学校の教諭が、1ヶ月の間に2回の酒気帯び運転を行い、生徒の成績や名簿などを保存した光磁気ディスクを紛失したことを理由に懲戒免職を受けた事例で、@宴会の最中に紛失した光磁気ディスクの拾得者が判明しこれを受け取るために駐車場に向かったこと、A運転代行業者に連絡したが断られたので仕方なく酒気帯び運転したこと、B2回の酒気帯び運転は同じ晩のことであり繰り返したというものではないこと、C酒気帯び運転の際に、人身事故も物損事故も起していないこと、D光磁気ディスクの紛失期間は4日間であり、拾得者が判明し無事回収され、外部に洩れた事実が無いこと、E調査の過程で紛失についても上司に報告し、指示に従い謹慎生活を送ってきたこと、F従来、懲戒処分を受けたことも無く、勤務評定も良好であったこと、G授業のみならずクラブ活動など校務にも積極的であり、教え子や父兄からの評価や信頼も高かったこと、などが認定され、免職処分は重きに失するとして取り消しています。

平成17年12月7日東京地裁判決 東京都特別区職員が、虚偽の指定宿泊施設利用者補助金申込書を作成し、旅行会社を通じて特別区職員互助組合から約120万円の補助金を詐取したことを理由に(刑事確定記録によらず)、懲戒免職とした事案で、刑事確定記録がないので、独自に詳細な事実認定を行った上で、懲戒免職は相当であると判断しました。

平成2年8月10日大阪地裁判決 府立高校の教諭が、妻子ある身にかかわらず、高校3年生に在学中の教え子と交際し、二人だけで接近し親しく話しているところを目撃され、両親や生徒の担任から注意されても交際をやめず、卒業後に肉体関係を持つに至った、という事案で、生徒、保護者及び地域住民に動揺を与えた言動は社会生活上の倫理はもとより教員に要求される高度の倫理に反し、教員に対する社会の期待と信頼を著しく裏切ったものであり、原告の行為の性質、態様、影響、右行為の前後における原告の態度などを考慮すると、懲戒免職処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したものと認めることはできない、と判断しました。

以上の判例は、刑事事件が罰金刑であったり、立件されていない事案で、信用失墜行為を理由に解雇したことの当否を判断したものです。懲役刑や禁錮刑とは異なり、処分の妥当性・相当性について裁量が認められており、被処分者の生計の糧を奪う重大な処分であることから、相当に慎重な事実認定及び情状の斟酌が行われていることがわかります。情状が評価されて、免職処分が取り消しになった事案も勿論あります。

以上のことから、刑事未処分もしくは罰金刑事案において、懲戒免職に関する指標を考えてみたいと思います。

1、刑事未処分事案では、刑罰法規の法定刑に鑑みて懲役刑相当事案で、事実を否認している場合に、裁判所で事実認定されると懲戒免職の可能性が高くなってしまう。
2、生徒の生活指導を行う教職員の場合は、どうしてもわいせつ罪・破廉恥罪・不貞行為などの事案で処分が重くなってしまう。他の職種でも、職務行為と犯罪行為の関連性が重要。
3、罰金刑事案では、被害者との示談の有無、反省の有無が非常に重要。
4、当然、職場の同僚や上司との信頼関係や従前の経過も重要。最初のクレームに対してどのように対応したかが極めて重要。
5、直接の適用にはならないが、一般の労働者における解雇法理が間接的に適用される。労働契約第16条=解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

従って、公務員の犯罪事案では、逮捕後も勿論重要ですが、逮捕に至る前の段階、一番最初にクレームを受けた時点での対応が極めて重要であると言えます。弁護士に依頼し、被害者や関係者に対して誠意を持って謝罪・説明を行い、必要な被害弁償も行うべきだと思います。法的主張に関しては、弁護士に意見書を書いてもらって勤務先に提出することも良いでしょう。

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