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不動産競売の用語集――書類・価格・権利・期限をやさしく解説
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競売の資料には、似た言葉でも意味や期限が異なるものがあります。まず全体の流れをつかみ、分からない用語を確認してください。実際に競売の入札手続きに参加する場合は裁判所に連絡するときなどに書記官や執行官から言われた言葉が分からないと苦労することがあります。このページは主に裁判所の不動産競売を対象とし、税金の滞納処分による「公売」とは区別しています。
1.手続全体と当事者
| 用語 | 意味・実務上の注意 |
|---|---|
| 不動産強制競売 | 判決・和解調書・執行証書等の債務名義に基づき、不動産を換価して金銭債権を回収する手続です。単なる請求書だけでは通常申し立てられません。 |
| 担保不動産競売 | 抵当権等の担保権を実行して不動産を換価する手続です。登記された抵当権等を根拠に進める場合、通常、別に支払判決を取得する必要はありません。 |
| 形式的競売 | 共有物分割判決に基づく競売など、金銭債権の回収とは異なる目的による競売です。根拠と必要書類を通常の強制競売・担保競売と区別します。 |
| 公売 | 主に国税・地方税の滞納処分で差押財産を売却する手続です。裁判所の競売とは窓口・法律・書類が異なります。 |
| 執行裁判所/執行官 | 執行裁判所は売却手続や引渡命令などを担当します。執行官は現況調査や、債務名義に基づく現実の明渡し等を担当します。 |
| 差押え/開始決定 | 競売手続の開始に伴い不動産を執行の対象として確保するものです。差押えだけで直ちに所有権が買受人へ移るわけではありません。 |
| 配当要求の終期 | 一定の債権者が売却代金の配当に参加するための要求期限です。すべての債権者が自動的に配当を受けるわけではありません。 |
| 最高価買受申出人/買受人 | 開札等で最高価の適法な買受申出をした人と、売却許可を受けた人を区別します。所有権取得は原則として代金納付時です。 |
| 次順位買受申出人 | 最高価の申出に次ぐ一定条件を満たす入札者が申出により指定される地位です。最高価の人が代金を納めない場合に買受けに進む可能性があり、保証金の返還時期等にも影響します。 |
2.「3点セット」と価格・入札
| 用語 | 意味・実務上の注意 |
|---|---|
| 物件明細書 | 不動産、買受人が引き受ける権利、占有関係、法定地上権等についての裁判所の認識を示す資料です。権利を最終確定する判決ではありません。 |
| 現況調査報告書 | 執行官の調査による建物の使用状況、占有者の説明、写真等をまとめた資料です。調査後の変化にも注意します。 |
| 評価書 | 評価人が物件の価格や評価の根拠等を示す資料です。建物状態、接道、法令制限等の記載も読みます。 |
| 売却基準価額 | 評価を踏まえて裁判所が定める、入札や保証額の基礎となる価額です。一般の売買の売出価格とは異なります。 |
| 買受可能価額 | 売却基準価額から20%を控除した、買受けの申出が可能な最低額です。売却基準価額が1,000万円なら800万円です。 |
| 買受申出保証金 | 入札等に際して提供する保証です。通常は売却基準価額の20%ですが、公告を確認します。入札額の20%とは限りません。 |
| 期間入札/開札 | 定められた期間内に入札書等を提出し、開札期日に内容を確認する方法です。提出後の入札の撤回・訂正はできません。 |
| 特別売却 | 入札等で適法な買受けの申出がなかったときなどに、裁判所の定める方法・条件で行う売却です。受付期間、価額、優先順位は公告で確認し、常に単純な先着順とは決めつけません。 |
| 最低売却価額 | 旧制度の資料に出てくる用語です。現在の「売却基準価額」と「買受可能価額」を区別し、古い数値や入札条件をそのまま使わないでください。 |
| 無剰余/無剰余取消し | 手続費用や優先債権等との関係で申立債権者への剰余が見込めない場合の問題です。通知後1週間以内の所定の対応がなければ、その申立ての競売が取り消されることがあります(民事執行法63条)。 |
3.買った後にも関係する権利
| 用語 | 意味・実務上の注意 |
|---|---|
| 対抗できる権利 | 取得した権利を買受人等の第三者に主張できることです。単に契約があるだけで足りるとは限らず、登記・引渡し等の対抗要件や抵当権との先後を確認します。 |
| 抵当権/根抵当権 | 不動産から優先的な回収を図る担保です。根抵当権は一定範囲の取引等から生じる債権を極度額の限度で担保します。極度額がそのまま現在の借金額とは限りません。 |
| 借地権 | 建物所有を目的とする地上権又は土地賃借権です。借地上の建物の競売では、敷地利用権の承継、地主の承諾、地代滞納・解除を確認します。 |
| 借地権譲渡許可 | 競売で借地上の建物を取得し、地主の承諾が得られない場合に検討する裁判所の許可です。借地借家法20条の申立ては原則として代金支払後2か月以内です。 |
| 法定地上権 | 抵当権設定時に土地・建物が同一所有者に属するなどの要件の下、競売で所有者が分かれた場合に法律上成立する土地利用権です(民法388条)。建物だけを買えば常に成立するわけではありません。 |
| 通行地役権 | ある土地の便益のために他の土地を通行する権利です。未登記でも一定の場合に競売買受人に対抗できるとした最高裁平成25年2月26日判決があり、現地の通路利用状況も重要です。 |
| 留置権 | 一定の債権と物の関係がある場合に、支払を受けるまでその物を留置できる権利です。競売買受人が被担保債権を弁済する責任を負う場合があります。名称だけでなく成立要件の確認が必要です。 |
| 短期賃貸借 | 古い競売解説に多い、抵当権に後れる短期の賃貸借を一定範囲で保護した旧制度です。現在の建物明渡猶予と同じではありません。極めて古い契約では経過措置も確認します。 |
| 建物明渡猶予 | 民法395条1項に該当する抵当建物使用者について、買受人の代金納付から6か月、引渡しを猶予する制度です。無償使用を認める制度ではなく、前所有者に当然に適用されるものでもありません。 |
地代滞納で借地契約が有効に解除された場合には、建物収去・土地明渡しの問題が生じ得ますが、「建物の所有権が地代滞納だけで当然に消滅する」という説明は正確ではありません。権利の対象と解除の効果を分けて考えます。最高裁平成25年2月26日判決:競売と通行地役権(PDF)
4.許可・代金・引渡し・停止
| 用語 | 意味・実務上の注意 |
|---|---|
| 売却許可決定/確定 | 裁判所が買受けを許可する決定です。不服申立ての期間等を経て確定し、代金納付へ進みます。許可決定だけでは通常、所有権取得は完成しません。 |
| 代金納付期限 | 裁判所が指定する残代金支払の期限です。納付しないと買受けの権利を失い、保証の返還も請求できなくなります。 |
| 登記の嘱託 | 代金納付後、裁判所書記官が移転登記や消滅した担保権等の抹消登記を法務局へ依頼することです。税・必要書類等は買受人側が準備します。 |
| 引渡命令 | 代金納付した買受人の申立てにより、対抗できる権原のない占有者等へ引渡しを命じる裁判です。申立期限は原則6か月、民法395条1項の使用者が買受時に占有していた建物は9か月です。 |
| 明渡しの強制執行/断行 | 引渡命令等の債務名義を使い、執行官が現実の占有を解いて買受人等へ引き渡す手続と、その実施をいいます。買受人が自力で鍵を交換することではありません。 |
| 残置物 | 室内などに残された家具・家電・荷物です。競売によって当然に買受人の所有物となるわけではなく、合意又は適法な執行手続で処理します。 |
| 任意売却 | 所有者と買主が通常の売買契約により売却し、代金を返済に充てる方法です。担保抹消・差押解除等の調整が必要で、交渉だけでは競売は停止しません。 |
| 取下げ/執行停止/取消し | 取下げは申立人が申立てを撤回すること、停止は法定の原因によって進行を止めること、取消しは執行処分等を取り消すことです。停止が必ず差押登記の抹消につながるわけではありません。 |
| 債務名義/執行文 | 債務名義は強制執行の基礎になる判決等です。執行文は執行できることを示すために付与されるもので、不要な債務名義もあります。電子債務名義では提出方法が異なります。 |
5.費用を理解するための用語
| 用語 | 意味・実務上の注意 |
|---|---|
| 登録免許税 | 移転・抹消等の登記にかかる国税です。競売の移転登記は土地・建物とも原則2%で、住宅用家屋の軽減等は別に確認します。 |
| 不動産取得税 | 不動産取得にかかる都道府県税です。落札額をそのまま課税標準とするわけではありません。取得時期・用途・住宅控除等を確認します。 |
| 執行予納金 | 評価・調査・売却などの手続費用として申立人が先に納めるお金です。地域、物件数、事案によって変わり、追加が必要な場合もあります。 |
| 配当/残債 | 売却代金を法定の順位等に従って債権者へ配分するのが配当です。回収されなかった債務は当然には消えず、残債の処理を別途検討します。 |
6.資料を読むときの順序
- 物件の範囲と、どの手続で売られているかを確認する。
- 3点セットと登記から、占有者・借地・通路などの権利を確認する。
- 買受可能価額、保証額、提出書類、期限を公告で確認する。
- 税・修繕・明渡しを含めた予算と、取得後の使い方を検討する。
古い書式や法令の将来施行予定の条文を、そのまま現在の申立てに使わないようにします。2026年5月21日の民事訴訟の全面デジタル化後も、競売等の民事執行の申立ては引き続き書面による取扱いです。最新の書式は担当裁判所の案内をご確認ください。裁判所:改正民訴法等の概要(6.執行手続)
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- 東京地裁「競売不動産の買受けの手引」(令和6年4月版・PDF)
- 国税庁:登録免許税の税額表
- 東京都主税局:不動産取得税
- 裁判所:改正民訴法等の概要(6.執行手続)
- 最高裁平成25年2月26日判決:競売と通行地役権(PDF)
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