新銀座法律事務所|不動産・民事執行

競売物件の引渡し・明渡し――引渡命令と強制執行

更新:

競売代金を納めて所有者になっても、裁判所が自動的に鍵を渡し、居住者や荷物を撤去してくれるわけではありません。占有者にどのような権利があるかを確認し、任意の引渡し、引渡命令、明渡訴訟を使い分けます。特に、引渡命令の申立期限には注意が必要です。

1.初めに確認する書類と占有者

売却許可決定、代金納付の記録、物件明細書、現況調査報告書、登記事項証明書をそろえ、実際に誰が、どの部分を、どのような根拠で使っているかを確認します。資料の記載と現在の状況が一致するとは限りません。会社が使っている場合、代表者個人と会社を取り違えないことも大切です。

まず明渡しの意向や時期を確認する方法はありますが、鍵の交換、無断立入り、電気・水道の遮断、家財の搬出・廃棄などを自分で行ってはいけません。所有権を取得していても、相手の占有を実力で排除する行為は、損害賠償や刑事上の問題につながります。

2.相手によって対応が異なります

占有者の例基本的な考え方
前所有者・債務者買受人に対抗できる別の権原がなければ、通常は引渡命令の対象になります。前所有者であるというだけで6か月の明渡猶予が与えられる制度ではありません。
抵当権より前から対抗力を備えた賃借人等賃貸借を買受人に対抗できる場合があります。登記、引渡しの時期、抵当権の順位、契約内容等を確認します。単に競売になったという理由では排除できません。
抵当権に対抗できない建物賃借人民法395条1項の要件を満たす場合、代金納付から6か月間、明渡しが猶予されます。借主全員に一律の猶予があるわけではありません。
資料にない者・占有が移転した場合実際の占有者とその権原を調べます。執行対象や相手方の追加、占有移転を防ぐ保全処分、別訴の必要性を検討します。

最高裁平成23年1月21日判決は、抵当権に後れる建物賃借権について、長年賃借してきたことによる時効取得を理由に競売買受人へ対抗することを認めませんでした。ただし、適法に対抗できる賃借権の有無は別に確認が必要です。関連QA1423:賃借権の時効取得と競売

3.「6か月の明渡猶予」と「9か月の申立期限」は別の制度

民法395条の6か月は、一定の建物使用者が現実の引渡しを猶予される期間です。抵当権に対抗できない賃貸借により、競売開始前から使用・収益していた者等が対象です。前所有者、開始後に勝手に入居した者、すべての土地賃借人に広く適用されるものではありません。

猶予期間も無償で住めるわけではなく、買受人に使用の対価を支払う必要があります。1か月分以上の支払を、相当の期間を定めて催告しても支払わない場合には、猶予の保護を失うことがあります(同条2項)。請求先、金額、起算日、催告の証拠を整理してください。

引渡命令の申立期限は、民事執行法83条2項により、代金納付日から原則6か月です。買受けの時に民法395条1項の抵当建物使用者が占有していた建物の買受人については9か月です。これは申立てをする期限であり、その日までの明渡し完了を一律に要求する期限ではありません。

9か月の扱いを当然の前提にせず、購入時の占有と契約内容を確認します。期限を過ぎても所有権に基づく請求が当然になくなるわけではありませんが、簡易な引渡命令を利用できず、原則として別の明渡訴訟等を検討することになります。

4.引渡命令の申立てから確定まで

  1. 任意の引渡し条件を整理:期限、鍵の引渡し、残置物、使用料、費用負担等を明確にします。合意があっても法定の申立期限に注意します。
  2. 競売を扱った執行裁判所へ申立て:物件・相手方を特定し、申立書、資格証明等、手数料・郵便費用などを裁判所の案内に従って提出します。代金納付後の手続です。
  3. 占有権原の審査:債務者以外の占有者については原則として審尋が行われますが、記録上対抗できる権原がないことが明らかな場合などには例外があります。
  4. 送達と確定:引渡命令は確定しなければ効力を生じません。執行抗告の期間は裁判の告知を受けた日から1週間です。送達状況や抗告の有無を確認します。
  5. 任意に履行されなければ執行申立て:執行文の付与された引渡命令正本や送達証明等、必要な書類を整え、管轄の執行官に明渡しの強制執行を申し立てます。

引渡命令は、買受人に対抗できる権原があると記録上認められる者には発令できません。事実関係が複雑な場合や期限後は、訴訟など別の手段を検討します。東京地裁:不動産引渡命令の申立て

5.執行官による明渡しと残置物

明渡しの強制執行では、執行官が現地の状況を確認し、明渡しの催告や実施日程を調整します。買受人側は、搬出・運搬・保管等の業者や費用の準備について執行官の指示に従います(民事執行法168条・168条の2)。

明渡しの催告における引渡期限は、原則として催告の日から1か月を経過する日ですが、この期限と実際の断行日を同じものとして扱わないでください。必ず1か月で終わる、あるいは必ずその間は執行されないと保証する制度でもありません。

室内の家具・家電・書類等は、建物と一緒に当然に買受人の所有物になるわけではありません。執行官による引渡し、保管、法定の売却等の処理を要することがあります。「置いていったから放棄したはず」と判断して廃棄しないでください。

明渡し費用は取得に伴う税とは別です。取得時の税負担は東京都主税局などの案内を確認し、総予算に含めます。明渡し費用自体は物量、階数、搬出経路、保管期間等で大きく変わります。買受人が先に支出し、相手方に請求できる場合でも、相手に資力がなければ回収は困難です。裁判所:不動産の明渡しの強制執行

6.使用料・損害金と、紛争を広げない対応

権原のない占有については、所有権取得後の使用利益の返還や損害賠償が問題となります。ただし、買受人に対抗できる賃借権があれば賃貸借関係として処理し、明渡猶予の対象者にはその制度に即して請求します。期間と請求原因を混同しないことが重要です。

敷金の承継・返還も、賃貸借を買受人が引き継ぐかどうかで結論が変わります。旧所有者へ支払った敷金を、買受人が常に返す、常に返さないと一律にはいえません。

退去費用の支払を条件とする合意をする場合には、支払と鍵・物件の引渡しの同時履行、第三者の占有、残置物の所有権・処分への同意を確認します。交渉の長期化、相手方不明、転貸・転居の疑いがあるときは、期限を待たずに弁護士へ相談してください。

新銀座法律事務所への無料相談

競売で取得した物件の明渡しが進まない方、引渡命令の期限や残置物の扱いが気になる方はご相談ください。 まずは無料の電話相談をご利用ください。概要を伺い、弁護士から5分程度を目安に一般的な見解をご案内します。

無料相談受付:0120-48-5791
つながらない場合:03-3248-5791
受付時間:平日9:00~21:00/土日祝日9:00~18:00

電話のほか、LINE・メールフォームからも受付できます。お名前、都道府県、電話番号、相談の概要をお知らせください。LINE・メールからの受付も、原則として弁護士から電話で回答します。事件番号、裁判所の通知、物件の登記、3点セットや契約・返済資料をご用意ください。入札、代金納付、引渡命令、無剰余通知等の期限があるときは、最初にお知らせください。

無料相談の方法・LINE・メール受付

詳しい資料検討、書面作成、代理活動等は、範囲と費用を確認して別途契約します。弁護士費用の案内もご覧ください。受付と回答は同時とは限りません。期限や緊急の事情は最初にお伝えください。最新の受付方法・時間は相談案内ページでご確認ください。

法令・公的資料・PDF

2026年9月28日確認。法令は施行中の規定と経過措置を確認し、未施行の改正と区別してください。書式・税率・受付方法は利用時点の公式案内もご確認ください。

裁判所の書式・PDFは、案内ページから最新版を確認してください。