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高齢の親の財産を守るには(高齢父母の財産保護策)
預金の使込み・贈与・親族による囲い込みが心配な方へ。
高齢の親の預金流用・財産処分・面会拒否への対応を解説。後見申立て、審判前の保全処分、返還請求、自治体との連携を、新銀座法律事務所の弁護士へご相談いただけます。
どの手続が必要か、まだ分からなくてもご相談ください。
新銀座法律事務所の弁護士が、ご事情を伺い、利用できる制度と依頼できる業務をご案内します。
1 親の財産が心配なとき、まず確認すること
同居の兄弟姉妹が通帳を持っている、急に多額の出金がある、親に会わせてもらえない、贈与や不動産売却の話が進んでいる――こうした場合は、ご本人の安全、意思、判断能力と、財産の動きを分けて確認します。財産が移転してしまう前に対応できるかが重要です。
- いつ、誰が、いくら出金・送金したか。本人の生活費・介護費との対応はあるか。
- 贈与・貸付け・売却について本人が内容を理解して同意したか。
- 任意後見契約や財産管理委任、後見等の審判が既にあるか。
- 本人に直接会えるか。面会拒否の理由、介護・治療上の事情は何か。
- 今後の支払い、契約・登記の予定日など、急ぐ理由があるか。
親の財産は親自身のものです。将来の相続人であることだけで、子が出金を禁止したり、本人の意思に反して財産を管理したりできるわけではありません。他方、同居・介護をしていることだけで、親の財産を自分のために使う権利が生じるわけでもありません。
2 通帳・診療記録・契約書などの資料を整理する
| 資料 | 確認する点 |
|---|---|
| 通帳写し・取引履歴・振込明細 | 出金日・金額・送金先と、その使途。入手できた範囲で一覧化します。 |
| 診断書・診療記録・介護記録 | 問題の契約時点の理解力、病状、日常生活の状態。現在の診断だけで過去の能力が決まるわけではありません。 |
| 贈与契約書・委任状・売買契約書・不動産登記事項証明書 | 作成日時、署名等の経緯、当事者、代理権、価格、代金の流れ。 |
| メール・手紙・面会記録等 | 本人の希望、説明内容、面会を求めた経過、拒否の理由。 |
| 介護費・生活費の領収書 | 正当な支出と私的流用を区別し、請求額を検討する資料。 |
銀行・医療機関の情報は、子だから必ず開示されるものではありません。本人の有効な委任、後見人等の権限、裁判上の手続等を検討します。無断で本人になりすましてログインする、印鑑・カードを使うなどの対応は避け、適法な方法で資料を確保してください。
新銀座法律事務所では、資料から判明する事実と推測を分け、どの請求や手続にどの証拠が必要かを整理します。既にご自身が親の財産を管理している場合も、他の親族への請求と併せて、ご自身の支出・管理記録を確認しておくことが大切です。
3 預金流用・不利益な契約に対する法的な対応
| 問題 | 検討する法的根拠・対応 |
|---|---|
| 本人の理解がないまま贈与・売却した | 契約時に意思能力がなかった場合は民法3条の2により無効。診断名だけでなく、取引内容と当時の状況を検討します。 |
| 親族が権限なく本人名義で契約した | 無権代理(民法113条以下)等の問題。委任の有無・範囲、追認、相手方との関係を調べます。 |
| 預金を私的に使い込んだ | 不当利得返還請求(民法703条・704条)、損害賠償請求(709条)、委任契約に基づく報告・引渡し等を検討します。 |
| 後見開始後などに本人が不利益な契約をした | 後見・保佐・補助の類型と権限に応じ、制限行為能力を理由とする取消しを検討します。日常生活行為等の例外があります。 |
| 悪質業者と契約した | 詐欺・強迫、消費者契約法、特定商取引法上の取消し・クーリングオフ等の要件と期限を検討します。 |
後見開始の審判は過去の契約に遡って適用されません。開始前の贈与等には、契約時の意思無能力や詐欺等の別の根拠が必要です。取消権にも民法126条等の期間制限があります。不当利得・損害賠償にも消滅時効があるため、古い出金でも記録の確保と期限の検討を急ぎます。
請求権は誰のものか
本人の財産の返還請求権は、原則として本人に帰属します。子が自分の名義で親の預金全額の返還を請求できるわけではありません。有効な委任を受けた弁護士や、権限を有する後見人等が本人のために請求する方法を検討します。保佐・補助では、返還請求や訴訟の代理権の有無も確認します。
相手が「本人からもらった」「介護費に使った」と説明する場合には、贈与の合意や支出の裏付けを調べます。取り戻せる額は証拠・相手の資力等によって異なり、出金があれば必ず全額回収できるわけではありません。
4 後見等の申立て――親族の反対がある場合
判断能力が低下しているときは、その程度に応じて後見・保佐・補助を検討します。ご本人の住所地の家庭裁判所に、配偶者・4親等内の親族等が申し立てます。子は同居していなくても申立てを検討でき、親族全員の賛成は要件ではありません。
一方、ご本人自身の意思と同意は別の問題です。補助開始には、本人以外の申立ての場合、本人の同意が必要です。保佐・補助の代理権付与も、本人以外の申立てでは本人の同意が必要になります。後見・保佐の開始には本人の同意は要件とされませんが、判断能力等の審理を経て裁判所が判断します。
会わせてもらえず、診断書が取れない場合
面会を求めた記録、従前の病状、介護サービス利用状況、取引資料など、入手できるものを集め、診断書を準備できない事情を説明します。裁判所への事前相談や、必要資料の補充、調査・鑑定等を検討しますが、申立てによって当然に強制診察や面会が実現するものではありません。本人の安全確認は、自治体・地域包括支援センターとの連携も並行して検討します。
面会妨害禁止の仮処分を検討できる場合
面会を妨げる親族や施設に対しては、本人の意思、面会を制限する理由、保全の必要性等を検討し、面会妨害禁止の仮処分を申し立てる方法もあります。事例No.2057は横浜地裁平成30年7月20日決定を紹介しています。親子なら無条件に面会が認められるというものではなく、本人の希望や心身の負担を含めた個別判断が必要です。事例No.2057の解説を見る。
候補者の選任と利益相反
財産流用の疑いがある親族や、本人との利益対立がある親族が適任とは限りません。希望する候補者がいても、選任は裁判所の判断です。第三者の弁護士が選任された場合は、ご家族の一方の利益ではなく、本人の意思と利益に基づいて財産を管理します。
すでに後見人等が付いている場合は、裁判所・監督人への報告、解任申立て、職務執行停止等の保全処分を、事実と権限に応じて検討します。単に説明への不満があることと、不正・不適任の事情があることは区別します。
後見・保佐・補助の開始申立ては、審判前でも取下げに家庭裁判所の許可が必要です(家事事件手続法121条・133条・142条)。親族と和解した、希望した候補者が選ばれそうにない、といった理由だけで自由に取り下げられる制度ではありません。
参照:裁判所・成年後見制度に関する審判(各種手続案内) / 家事事件手続法(e-Gov法令検索) / 民法(e-Gov法令検索)
5 審判を待てない場合――審判前の保全処分・仮差押え
多額の預金が短期間に引き出されている、不動産の決済が迫っているなど、本案の審判を待つ間に財産が失われるおそれがある場合は、緊急の保護を検討します。単なる「早く進めてほしい」という要望ではなく、対象財産、予定された行為、危険の内容と時期を資料で示すことが重要です。
家庭裁判所の審判前の保全処分
後見開始の申立てがされている場合、家庭裁判所は、生活・療養看護・財産管理のため必要があるときに、財産の管理者の選任や関係人への指示をすることができます(家事事件手続法126条1項)。保佐・補助にも準用規定があります(134条1項・143条1項)。財産保全のため特に必要な場合には、同条の各要件に従い後見命令・保佐命令・補助命令も検討します。
管理者を選任しただけで、すべての親族の行動や取引が自動的に禁止されるわけではありません。必要な権限と対象行為を整理して申し立てる必要があります。
返還請求を確保するための民事保全
流用者に対する返還請求・損害賠償請求があり、相手の財産散逸により回収困難となるおそれがある場合は、権限のある本人側の立場から仮差押え等を検討します。家庭裁判所の財産管理者選任とは別の手続で、請求権・保全の必要性の疎明や担保が問題になります(民事保全法20条等)。
警告書や内容証明郵便は、本人側の権限と請求内容を明確にする方法ですが、それだけで口座凍結や財産回収を強制する効力はありません。送付が証拠隠しや資産移転を促す可能性も踏まえ、通知と保全の順序を検討します。
参照:民事保全法。
6 経済的虐待・囲い込みと、行政による支援
高齢者虐待防止法2条4項2号は、養護者又は親族が高齢者の財産を不当に処分し、不当に財産上の利益を得る行為を、養護者による高齢者虐待に含めています。暴力がなくても経済的虐待に当たることがあります。面会拒否だけで虐待と断定はできませんが、財産流用、医療・介護の放置等と併せ、本人の状況を確認します。
養護者による虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合、生命・身体に重大な危険があるときは市町村への速やかな通報義務があり、それ以外の場合も通報の努力義務があります(同法7条)。自治体は安全・事実確認を行い、必要に応じて老人福祉法10条の4・11条による保護や、同法32条による後見等の申立てを検討します(高齢者虐待防止法9条)。
財産保護を理由に、安易に入院を求めることはできません
医療保護入院は、精神保健福祉法33条の医学的・手続的要件に基づく制度です。親族間の財産争いを解決するための手段ではなく、経済的虐待の疑いがあるだけで入院させられるものではありません。旧制度の「保護者」が同意するという説明も現行制度には適合しません。必要な医療・住まい・介護を、本人の意思を踏まえて医療機関と自治体に相談します。
参照:高齢者虐待防止法(e-Gov法令検索) / 老人福祉法(e-Gov法令検索) / 厚生労働省・市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について(PDF)
7 刑事告訴・告発を検討するとき
使込みの態様によっては横領、窃盗、詐欺等の問題になりますが、親族間の財産犯罪では、親族相盗例(刑法244条、251条・255条等による準用)の適用や、誰が被害者かの検討が必要です。後見人としての財産管理中の行為など、立場・事案によっても取扱いが異なります。
「親族だから犯罪にならない」「警察へ届ければ全額戻る」とは一律にいえません。出金方法、管理権限、用途、本人の意思等の証拠を整理して、刑事手続の見通しを検討します。刑事手続と民事の返還請求は目的と要件が異なり、回収を急ぐ場合は民事保全等も併せて検討します。
8 当事務所に依頼できること・相談時の持ち物
- 本人の意思・判断能力と資料を確認し、利用する制度や請求権を整理します。
- 後見・保佐・補助の申立代理、代理権付与、審判前の保全処分等を検討します。
- 適法な資料収集、親族への説明要求、返還請求の交渉・訴訟・民事保全を検討します。
- 本人の安全確保について、必要に応じ自治体・介護関係者との連携を検討します。
- 問題が落ち着いた後も、管理記録・報告方法、必要な契約や遺言等を整え、再発・紛争の予防につなげます。
ご相談には、家族関係図、時系列のメモ、通帳・契約書・通知書・診療資料など、現在お持ちのものをご用意ください。特に「次の出金・売却はいつか」「本人に最後に会えたのはいつか」をお伝えいただくと、緊急性を判断しやすくなります。
弁護士費用は、申立て、保全、交渉、訴訟の範囲を分けてお見積りします。申立実費、鑑定費用、保全の担保、後見開始後の継続報酬は別に検討します。後見人等の報酬と最高裁の調査資料については、制度・手続・費用のページをご覧ください。
9 よくあるご質問
診断書がないので、相談はまだ早いでしょうか。
いいえ。入手できない理由、本人の様子、出金や面会拒否の経緯を伺ったうえで、資料を補う方法と本人の安全確認を検討します。資料が揃うまで待つと不利益が拡大する場合があります。
後見人になれば、他の兄弟の意見を無視できますか。
後見人は本人のために職務を行います。特定の家族の利益のために財産を管理する立場ではありません。必要な説明と記録を残し、利害が対立する行為では別の代理人等の手続を検討します。
介護をしている家族への支払いは、すべて不当な流用ですか。
そうではありません。本人のための必要な費用の支払いや、適切な合意に基づく対価である場合もあります。支出の目的・金額・合意・領収書等を調べて判断します。
参照した法律相談Q&A事例集
- No.2057 親族による囲い込み事案の対応
本人との面会や診断資料の確保が難しい場合の検討。 - No.1501 両親が意思無能力の場合の相続問題と対策
判断能力が低下した親の贈与や、親族による財産処分の問題。 - No.1065 後見申立ての取り下げの可否
制度の目的と申立ての取下げ。取下げの現行ルールは本ページの説明を参照。 - No.868 死後事務委任と遺言執行者の指定、みまもり契約など
任意後見・財産管理・見守り・遺言・死後事務を組み合わせる備え。 - No.1242 任意後見制度の概要
受任者の選び方、契約の開始・終了。
参照法令・裁判所・政府・自治体の資料
| 法令・条文 | 本ページとの関係 |
|---|---|
| 民法(e-Gov法令検索)3条の2・7~17条・113条以下・126条 | 意思無能力、後見等、無権代理、取消権の期間制限。 |
| 民法(e-Gov法令検索)166条・703条・704条・709条・724条 | 消滅時効、不当利得、損害賠償。 |
| 家事事件手続法(e-Gov法令検索)121条・133条・142条、126条・134条・143条 | 申立ての取下げ制限、審判前の保全処分。 |
| 民事保全法20条等 | 仮差押え等による民事上の権利保全。 |
| 高齢者虐待防止法(e-Gov法令検索)2条4項2号・7~13条 | 経済的虐待、通報、安全確認、保護等。 |
| 老人福祉法(e-Gov法令検索)10条の4・11条・32条 | 福祉の措置と市町村長申立て。 |
| 刑法(e-Gov法令検索)244条・251条・255条等 | 親族間の財産犯罪の特例。 |
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