No.1726|少年事件について

 

年齢切迫の少年事件の対応

少年法|19歳の少年による万引き事件と弁護活動|年齢切迫事件の手続の流れ|少年法の適用基準時

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照条文

質問

後1カ月で成人を迎える19歳で成年間近の息子が、コンビニエンスストアで総合計500円相当の食料品を万引きしてしまいました。息子にはそれ以前に特に犯罪を行ったことはありません。

息子はその場で警察に通報され、そのまま警察署へ連れて行かれましたが、逮捕はされることなく釈放されました。ただ、警察からは犯罪である以上、検察官の方に事件は送ると言われました。20歳未満の場合には、家庭裁判所や少年院に行かなければならないと聞いたことがあります。

今後、息子はどうなってしまうのでしょうか。弁護士に依頼した方が良いのでしょうか。

回答

1 未成年者(満20歳未満の者)が罪を犯した場合は、少年法が適用されます。少年法が適用されると、原則として、家庭裁判所が処分を決定します。しかし、家庭裁判所が処分を決定する際、すでに20歳になっている場合は、家庭裁判所は処分を決定することはできず、事件は検察庁に送致されます(少年法19条2項)。

2 息子さんの場合、後1カ月で成人になるということですから、審判の時点では成人になっている可能性があります。息子さんのように成人が近づいている少年事件は「年齢切迫」事件といわれます。年齢切迫事件の取り扱いとしては、成年に達する前であっても、家庭裁判所から刑事処分が相当であるとして再度検察庁に事件が送致される(逆送)ことがあります。また、逆に家庭裁判所が息子さんの家庭環境に問題があるなど保護処分が相当であるとして、少年審判が早期に行われる可能性もあります。

3 検察庁に送致されるのが良いのか、少年事件として審判によって処分されるのか、どちらが息子さんにとって有利なのかは難しい問題ですが、本件は食料品の窃盗で金額も少額であることから、通常の成年の刑事事件であれば微罪処分あるいは不起訴処分として、事件を終結できる可能性もあります。

本件では、まだ警察が検察庁に事件を送致していない段階ですので、まずは示談交渉を行うために送致を相当程度延期するように要請するとともに、被害店舗との示談交渉を行うことが良いと考えられます。送検の時期が相当程度伸び、送検及び家庭裁判所送致の段階で、少年審判まで調査を終えることができないという合理的に判断されれば、逆送の上、検察庁によって成年事件として扱われ、かつ、不起訴処分(起訴猶予処分)として扱われる可能性もあるでしょう。

4 少年事件・成年の刑事事件となった場合のそれぞれの見込み、どのような負担がかかるのかを踏まえたうえで、適切な弁護活動を行うことが必要です。お困りの場合には、お近くの弁護士に相談されることをお勧めします。

5 少年事件に関する事例集として『少年事件|家庭裁判所全件送致と簡易送致』が参考になります。また、その他関連する事例集はこちらをご覧ください。

解説

第1 年齢切迫の少年事件について

1 成立する犯罪について

まず、あなたの息子さんが置かれている法的な地位について説明していきます。今回、息子さんはコンビニエンスストアにおいて食料品を万引きしてしまったとのことです。これは、法的にみると、コンビニの店長が管理(占有)する財物たる食料品を、その意思に反して占有を移転させたことになりますので、窃盗罪(刑法235条)が成立することになります。

窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役刑か50万円以下の罰金刑が科されるのが原則となっていますが、20歳未満の者(少年)が犯罪を犯した場合には、通常の刑事手続きではなく、少年法による特別の手続によって処分が行われます(少年法1条、2条)。

今回のあなたの息子さんは、現在19歳ということですので、少年法による少年事件(保護事件)として扱われることとなります。

2 少年事件の一般的な流れ

(1)次に、少年事件の場合の一般的な手続の流れについてみていきます。成人の事件と大きく異なるのは、家庭裁判所が大きく手続に関与してくる点です。

まず、少年が罪を犯した場合は、警察が事件を認知した上で、取調べや捜索差押などの捜査活動を行います。警察は一定の証拠がそろった段階で、検察に事件を送致し、その上で検察が必要に応じて補充捜査を行うことになります。ここまでは通常の刑事事件と大きく異なる点はありません。

(2)そして、捜査機関が捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があると考えるときは、全少年事件を家庭裁判所に送致しなければならないものとされています(少年法41条、42条)。少年事件においては、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」ことを目的としているところ、成人事件のような単なる処罰にとどまらず、少年の家庭環境や今後の更生可能性など諸般の事情を踏まえた適切な教育処分が必要となります。このような判断が可能なのは、少年の環境調整などの判断が可能な家庭裁判所調査官及び裁判官(審判官)がいる家庭裁判所ですので、少年事件は全件家庭裁判所に送ることとされているのです(全件送致主義といいます)。

(3)家庭裁判所は、少年事件を受理した後、家庭裁判所調査官が、少年の家庭環境、経歴、行状などについて必要な調査を行います(少年法8条2項、9条)。調査官は、少年及び保護者(両親等)と面接を行い、裁判官に対して少年の処遇に対する意見を述べることになります。

ここで少年事件における処遇(保護処分)の内容としては、成人の刑罰のようなものではなく、少年院送致、保護観察処分(在宅の観察とし、定期的に保護司の元を訪れ報告をする保護処分)、不処分のいずれかとなっております。

調査官による調査が行われた後、裁判所にて少年審判手続が開かれ、最終的な少年の保護処分の内容が決まることとなります。裁判官(審判官)は、調査官の意見を踏まえた上で、上記保護処分のうちどのような処分にするかを決めることになります。

3 年齢切迫の少年の扱い

(1)ただ、本件で注意が必要となるのは、あなたの息子さんが後1カ月で成人になるという点です。このように、少年事件で、家庭裁判所の送致時に、少年の20歳の誕生日が迫っているような事件を「年齢切迫」事件といいます。

少年法では、20歳未満の少年の場合における刑事事件について、特別の手続を設けていますが、審判の時点で20歳を超えるような場合には通常の成人の刑事手続として、刑事訴訟法に従って最終的な判断がなされることとなります。

すなわち、成人の場合と同様に検察官が所定の捜査を行った上で、起訴・不起訴の処分を決定し、起訴がなされた場合には、罰金刑(通常は、書面による簡易な裁判手続である略式手続がとられます)か、公判請求の上、懲役刑(公開の法廷で証拠調べその他審理がなされ、裁判官が具体的な量刑を定めた判決を下します)のいずれかの刑罰が科せられることとなります。

少年法は、少年が審判の時点で成人であった場合の扱いについて、以下のとおり規定を設けています。

少年法

第十九条(審判を開始しない旨の決定)
2 家庭裁判所は、調査の結果、本人が二十歳以上であることが判明したときは、前項の規定にかかわらず、決定をもつて、事件を管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。

現在あなたの息子さんは19歳であり、直ちに少年法19条2項の適用場面ではないといえそうです。しかし、上記のとおり、少年事件の場合には検察官から家庭裁判所に事件が送致された後、家庭裁判所調査官の詳細な調査を経た上で、少年審判によって少年の処遇を決定することとなり、ある程度の時間がかかることが見込まれます。さらに、本件ではまだ送検すらなされない段階ですから、さらに時間がかかることでしょう。

そして、少年法の適用がある「20歳に満たない者」の判断基準時は、少年法の制度趣旨(成人の刑事責任は行為の違法性、責任を問うが、少年の保護処分は、行為の違法性責任を問うものではなく仮に14歳以上で責任はあっても少年の育成、成長を目的とするので当然審判時が基準となります。)から「少年審判時」と解されており、この時点で成人に達していれば、結局は成人の刑事事件として扱わざるを得なくなります。

したがって、年齢切迫の少年事件の場合、警察及び検察官の段階で成人に至ってない段階でも、家庭裁判所において少年事件として扱うべきでないと判断された場合には、家庭裁判所において審理を行わず、検察官に少年事件を再度送致し(逆送といいます。)、検察庁において最終的な処分決定を下されることがあります。これは、少年事件に割かれる裁判所のリソースは有限であり、行った少年の調査が無駄になってしまうことを防ぐため有用であり、かつ、当該少年の負担の軽減にもなります。

なお、この場合、少年自体は20歳には達していませんので、逆送の根拠条文としては、少年法20条1項の「刑事処分が相当」と認められる場合になります。

少年法第20条
1 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。

そして、一般的に年齢切迫の事案において検察庁に逆送がされる場合としては、以下の場合があげられます。

ア 少年の20歳の誕生日が間近に迫っており、家庭裁判所で実質的な調査を行う時間が少ない場合(実質的な調査を行っていると20歳の誕生日を迎える場合)

若しくは

イ 「年齢切迫」であるが、審判までに20歳の誕生日を迎えることが明らかとまではいえないものの、様々な事情を考慮して刑事処分が相当であると家庭裁判所の裁判官により判断される場合

本件では、後1カ月で成人を迎えるとのことですので、家庭裁判所に何時送致されるか不明ですが、送致後に調査を行っていたのであれば、審判時に成人を迎える可能性もあるので、アの要件に該当しうることとなります。イに該当するのは、例えば犯罪として重大事案であり、刑罰という制裁を与えることが相当な場合などがあげられるでしょう。

本件の選択として難しいのが、本件が刑事事件として扱うほうが望ましいのか、少年事件として扱うほうが望ましいのかという点になります。それぞれの場合の見通し(処罰の重さ、拘束時間などの負担の軽重)を踏まえた上で、弁護士と相談しながら手続きを進めていく必要があるでしょう。

年齢切迫事件であるから、直ちに刑事処分相当として逆送がとられるわけではなく、事案の内容からして少年の更生に必要な場合、家庭裁判所における調査の上で保護処分が相当と考えられ、少年審判まで行うよう家庭裁判所送致及び調査・審判まで急ぎで行われることも十分にあり得るところです。

一方で、刑事事件となった場合に、長期の懲役刑が見込まれたり、執行猶予のつかない実刑が見込まれるような場合には、少年事件として家庭裁判所にて適切な保護処分(少年院送致、保護観察)をしてもらう方が、最終的な少年の負担としては小さい場合も考えられます。

結局は、刑事事件・少年事件になった場合に想定される刑罰・保護処分の内容、それぞれの手続に付された場合の少年及び保護者の負担、保護処分とするのが相当であるのか、といった点を考慮しながら、ベストな手続は何かという観点から活動をしていく必要があります。

本件では、あなたの息子さんは500円相当の食料品を盗んだということで、被害金額も大きいものではありませんし、同種の前科・前歴もありません。そのため、被害弁償ないし反省の意思をしっかりと示すことによって、通常の刑事事件としては不起訴処分(起訴猶予処分)を狙うことが十分に可能な事案です。したがって、刑事事件となった場合の手続負担としては、検察官・警察官の所定の取調べのみと家庭裁判所送致に送致される前の手続負担のみで済む可能性が高いため、本件での負担を考えると、少年事件手続よりは通常の成人事件手続として扱ってもらうのが望ましいといえるでしょう。

以上の点、切迫少年事件においてどのように進めていくのが望ましいのかについては、刑事事件・少年事件についてしっかりとした見通しを立てておくことが必要ですので、専門的経験を有する弁護士へ相談されることを強くお勧めします。

第2 具体的な弁護活動について

1 検察官送致・家庭裁判所送致延期のための交渉

以上を前提に、本件で行うべき弁護活動内容について検討していきます。本件では年齢切迫であり、かつ、刑事処分の内容としては比較的軽微なものが見込まれることから、家庭裁判所に事件が送致された段階で、調査官による調査及び少年審判を行っていたのでは、成人になってしまう可能性が高いと判断してもらう必要があるでしょう。

現在の段階としては、未だ事件が送検されていない段階ですので、まずは警察署に対し、被害店舗との示談交渉を行う旨の意向を申し入れ、それまで送検については相当期間猶予されたい旨の上申をすることが有効といえます。犯罪捜査規範195条においては、検察官送致に際して「犯罪の事実及び情状等に関する意見を付した送致書又は送付書を作成し、関係書類及び証拠物を添付」しなければならないとされており、ここにいう情状等に関する証拠物については示談関係書類も含まれるものと解されますから、示談の成立を待ってから検察官に事件送致をするのが相当である旨の意見を述べることになります。

このような交渉を経て、検察庁への送致時期・家庭裁判所への送致時期が伸び、裁判所の調査が審判時までに完了する可能性が大きくないと判断された場合には、検察庁に対して逆送の手続きが行われ、検察庁にて通常の成人事件として刑事処分が下されることになるでしょう。

2 被害店舗との示談交渉

上記捜査機関への送致延期交渉に加え、被害店舗に対する示談交渉も必要不可欠といえます。年齢切迫事件として逆送されるにしても、不起訴処分が約束されたわけでは当然なく、検察庁が、犯罪の内容、結果、行為の動機、示談の成立、前科前歴の有無など事情を総合的に考慮して処分内容を決するのです。

したがって、速やかに被害店舗に赴き、本人と両親から謝罪の意思を伝えるとともに、被害店舗には二度と近づかない旨を誓約し、しかるべく被害弁償を行い、示談を成立させることが有用といえます。被害弁償の金額については、被害にあった食料品の買取金額にとどまらず、被害届の提出等で業務に支障が出たなど無形的な損害についても十分に填補するだけの賠償額を提示することが必要になります。

仮に示談が成立した場合には、示談合意書を交わし、警察及び検察庁に提出しておくことが必要です。示談が成立していれば、本件でも不起訴処分になる可能性は十分にあるものといえます。

3 以上のとおり、本件のような年齢切迫の事件については、少年事件・成年の刑事事件いずれとして扱うのが相当なのかについて判断の上、適切な弁護活動を行っていく必要があります。お困りの場合には、弁護士に相談されることを強くお勧めします。

以上

関連事例集

  • その他の事例集は下記のサイト内検索で調べることができます。

Yahoo! JAPAN

参照条文
刑法

(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

少年法

第一章 総則

(この法律の目的)
第一条 この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずること を目的とする。

(少年、成人、保護者)
第二条 この法律で「少年」とは、二十歳に満たない者をいい、「成人」とは、満二十歳以上の者をいう。
2 この法律で「保護者」とは、少年に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者をいう。

(審判を開始しない旨の決定)
第十九条 家庭裁判所は、調査の結果、審判に付することができず、又は審判に付するのが相当でないと認めるときは、審判を開始しない旨の決定をしなければならない。
2 家庭裁判所は、調査の結果、本人が二十歳以上であることが判明したときは、前項の規定にかかわらず、決定をもつて、事件を管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致 しなければならない。

(検察官への送致)
第二十条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判 所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、同項の決定 をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を 相当と認めるときは、この限りでない。

(審判開始後保護処分に付しない場合)
第二十三条 家庭裁判所は、審判の結果、第十八条又は第二十条にあたる場合であると認めるときは、それぞれ、所定の決定をしなければならない。
2 家庭裁判所は、審判の結果、保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要がないと認めるときは、その旨の決定をしなければならない。
3 第十九条第二項の規定は、家庭裁判所の審判の結果、本人が二十歳以上であることが判明した場合に準用する。

犯罪捜査規範

(送致書及び送付書)
第百九十五条 事件を送致又は送付するに当たつては、犯罪の事実及び情状等に関する意見を付した送致書又は送付書を作成し、関係書類及び証拠物を添付するものとする。