新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1640、2015/10/05 12:00
【破産、非免責債権と執行文付与の方法、単純執行文付与のために非免責債権である旨の破産債権表記載、最高裁平成26年4月24日判決】

破産債権者表の記載により強制執行する方法

問題:
私は,Yに1000万円騙し取られてしまいました。Yは、私から1000万円騙し取ったことで、有罪である旨の刑事判決も下され,確定しています。
そのような状況の中,このたび,Yにつき破産及び免責手続が開始しました。私のYに対する1000万円の返還請求権は,Yが破産手続きで免責になったとしてもいわゆる非免責債権ということになるのでしょうか。またYは現在,ある会社に雇用されているようなので,給与債権の差押えを考えています。
給与債権の差押えを実現するためには,私は,どのように動いていけばよいでしょうか。損害賠償請求の訴訟を起こす必要があるのでしょうか。



回答:

1 破産手続終結の決定が確定すると破産債権者表の記載は,破産者に対し,確定判決と同一の効力を有します(破産法221条1項前段)。確定判決と同一の効力を有するということから,破産債権者は,確定した破産債権について,当該破産者に対し,破産債権者表の記載により強制執行をすることができます(同項後段)。
 但し、免責決定があると原則として破産債権については強制執行はできないことになります。但し、例外として破産債権表にある債権のうち非免責債権については強制執行ができます。破産債権表の記載から非免責債権であることが明らかではない場合は、別に給付判決を得るために訴訟が必要になります。

2 破産債権者表の記載により強制執行するためには,まずは破産債権者表に執行文の付与を受けるべきことになります。
破産債権者表についての執行分の付与の方法に関しては裁判所の取り扱いについては裁判所によりいろいろな手続きが取られていましたが、最高裁平成26年4月24日判決は,執行文付与の方法として,執行文付与の訴え提起は否定しつつ,その理由部分において,「破産債権者表に記載された確定した破産債権がその記載内容等から非免責債権に該当すると認められるとき」につき単純執行文の付与を受ける方法(民事執行法26条)が可能である旨を述べています。

3 以上より,あなたは,あなたのYに対する債権につき,破産債権者表に「悪意の不法行為による損害賠償請求権」を記載されるようにすべく,債権届出書の「債権の種類」欄には「悪意の不法行為による損害賠償請求権」と記載すべきです。
そして,刑事判決書を取り寄せ,これを証拠書類として債権届出書と共にこれに添付して提出すべきことになります。

4 なお、破産債権者表だけでは、非免責債権であることが明らかではないとして単純執行文付与の申し立てが認められない場合の争う方法としては、執行文付与に対する異議申し立てか、請求債権について給付訴訟を提起して確定判決を得てその確定判決に執行文の付与を申立てることになります。

5 破産関連事例集1419番1360番1342番1341番1282番1218番1146番1068番1020番938番843番841番804番802番717番562番515番510番463番455番426番374番323番322番226番65番34番9番参照。


解説:

1 破産債権者表の記載による強制執行と免責制度

(1)  破産債権者表の記載による強制執行

ア 破産手続において,裁判所書記官は,届出があった破産債権について,破産債権者表を作成しなければなりません(破産法115条1項)。
また,裁判所書記官は,破産債権の調査の結果を破産債権者表に記載しなければなりません(同法124条2項)。

イ そして,破産手続終結の決定があったとき等は,確定した破産債権については,破産債権者表の記載は,破産者に対し,確定判決と同一の効力を有します(破産法221条1項前段)。この場合において,破産債権者は,確定した破産債権について,当該破産者に対し,破産債権者表の記載により強制執行をすることができます(同項後段)。

強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在,範囲,債権者,債務者を表示した公の文書のことを債務名義というのですが,強制執行を行うには,この債務名義が必要となります。上記「破産債権者表の記載により強制執行をすることができること」は,言い方を変えれば,破産債権者表の記載が,確定判決等と同様に,債務名義になる,ということになります(民事執行法22条1項7号)。破産者に対し訴訟を提起したわけではないのに判決と同じ様に債務名義として効力を認めているのは、破産手続きは裁判所という公的機関が関与して、破産債権者表記載の債務の存在について債務者(及び他の債権者)が異議を述べない以上訴訟における請求の認諾による判決に準ずるものと考えることができるからです。

(2) 免責制度との関係

前記(1)イ記載のとおり,法律上は,破産債権者表の記載による強制執行が認められています。

もっとも,個人破産につき免責許可の決定が確定したときは,原則として,破産者は,破産手続による配当を除き,破産債権について,その責任を免れることになるため(破産法253条1項本文。その他,免責許可申立ての擬制につき同法248条4項,強制執行の禁止等につき同法249条1項参照),破産債権者表の記載による強制執行は,原則としてできません。

なお,免責許可の決定が確定した場合において,破産債権者表があるときは,裁判所書記官は,これに免責許可の決定が確定した旨を記載しなければなりません(破産法253条3項)。

2 非免責債権と破産債権者表の記載

(1) 非免責債権

前記1(2)記載のとおり,免責許可の決定が確定したときは,原則として,破産者は,破産手続による配当を除き,破産債権について,法律上は権利行使ができないことになり、その責任を免れます。

ただし,公租公課,「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」,「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」,養育費請求権等は,例外的に免責されません(破産法253条1項ただし書)。このような債権を,非免責債権といいます。非免責債権を認める趣旨ですが、破産の目的は自由競争から取り残された債務者の残り少ない財産を適正、公平迅速、低廉に分配して、免責を認めて一刻も早い債務者の再起更正をはかることにあり、適正な自由競争とは無関係な債権(違法性の強い不法行為債権や扶養請求権)や、公益的理由による租税債権(国民の義務)は破産の趣旨から除外されることになります。

(2) 執行文付与

ア 前記1(2)記載のとおり,破産債権者表の記載による強制執行は,免責決定があると原則として実益がありません。

もっとも,非免責債権(前記(1))に関しては,破産債権者表の記載による強制執行には実益があります(前記1(2)参照)。そして,破産債権者表の記載を債務名義として強制執行を行うとすれば,確定判決等他の債務名義(前記1(1)イ参照)と同様,執行文の付与が必要となります。

なお,実務的には,従前,破産債権者表の記載に対する執行文付与について裁判所の運用が一定でなく,非免責債権についても,免責許可確定後は,債権者は新たに債務名義を取得すべく給付訴訟を提起して,その中で非免責性につき審理・判断されるということが多かったです。しかし、それでは破産債権者表に確定判決と同様の効力を認めた法律を無視したことになってしまいます。そこで破産債権者表に執行文を付与方法が確立される必要がありました。

イ 執行文の付与には,幾つかの方法があります。

(ア) 単純執行文付与の申立て

まず,原則的な方法として,単純執行文の付与があります。
これは,申立てにより,執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が,執行証書についてはその原本を保存する公証人が執行文を付与する(民事執行法26条1項),というものです。

(イ) 条件成就執行文,承継執行文付与の申立て

特殊な執行文付与の手続として,条件成就執行の付与と,承継執行文の付与があります。

a 条件成就執行文付与の申立て

請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては,執行文は,債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したときに限り,付与することができ(民事執行法27条1項),この執行文を特に条件成就執行文といいます。

b 承継執行文付与の申立て

債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は,その者に対し,又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき,又は債権者がそのことを証する文書を提出したときに限り,付与することができ(民事執行法27条1項),この執行文を特に承継執行文といいます。

(ウ) 執行文付与の訴え提起

前記(イ)記載の文書の提出をすることができないときは,債権者は,執行文の付与を求めるために,執行文付与の訴えを提起することができます(民事執行法33条1項)。

(3) 破産債権者表に対する執行文付与

破産債権者表に対する執行文付与は,どのような方法によればよいのでしょうか。

ア 最高裁平成26年4月24日判決

(ア) この点,最高裁平成26年4月24日判決は,「免責許可の決定が確定した債務者に対し確定した破産債権を有する債権者が,当該破産債権が非免責債権に該当することを理由として,当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されないと解するのが相当である。として,執行文付与の訴え提起の方法を否定しました。

(イ) 同判決は,その理由について,下記のことを述べます。

「民事執行法33条1項は,その規定の文言に照らすと,執行文付与の訴えにおける審理の対象を,請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合におけるその事実の到来の有無又は債務名義に表示された当事者以外の者に対し,若しくはその者のために強制執行をすることの可否に限っており,破産債権者表に記載された確定した破産債権が非免責債権に該当するか否かを審理することを予定していないものと解される(最高裁昭和…52年11月24日第一小法廷判決…参照)。このように解しても,破産事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官は,破産債権者表に免責許可の決定が確定した旨の記載がされている場合であっても,破産債権者表に記載された確定した破産債権がその記載内容等から非免責債権に該当すると認められるときには,民事執行法26条の規定により執行文を付与することができるのであるから,上記破産債権を有する債権者には殊更支障が生ずることはないといえる。」

文言を厳格に解しつつ(前段),そのように解しても支障がない(後段),という方向からの理由付けです。

イ 検討

(ア) まず,破産債権者表に対する執行文付与については,同判決により,執行文付与の訴え提起の方法は否定されることになります。

(イ) 次に,同判決の理由部分からになりますが,「破産債権者表に記載された確定した破産債権がその記載内容等から非免責債権に該当すると認められるとき」は,単純執行文の付与による方法によるべきことになります。
養育費請求権等は,「破産債権者表に記載された確定した破産債権がその記載内容等から非免責債権に該当すると認められるとき」に該当し易いものと思われます。

(ウ) 他方,不法行為に基づく損害賠償請求権については,特に「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」,「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」が非免責債権とされるところ(前記2(1)参照),破産債権表の記載内容等からは不法行為に基づく損害賠償請求権であることしかわからない,という場合には,「破産債権者表に記載された確定した破産債権がその記載内容等から非免責債権に該当すると認められるとき」には当たらないことになります。

事件記録を保管している裁判所の書記官としては、非免責債権であることが破産債権表の記載から確認できなければ(免責債権であるとの記載がなくても)執行文の付与できる債務名義かどうかを確実に判断ができないので執行文は付与できないとうことになります。判決と異なり債権表記載からは非免責債権であることがわからないのでやむを得ません。

この場合は,別途,給付訴訟を提起して,その中で,非免責性を主張立証していくほかないものと考えます(なお,債権者自身は,「破産債権者表に記載された確定した破産債権がその記載内容等から非免責債権に該当すると認められるとき」に当たると考えているにもかかわらず,執行文が付与されなかった場合には,執行文付与に関する異義の申立て[民事執行法32条]によって争う,という方法もあります。)。

そのような手間を避けるためにも,非免責債権を有する破産債権者は,破産債権表の記載に対する単純執行文付与の手続で済ませられるよう,債権届出書の記載を工夫すべきことになるでしょう。

他方で,破産者としては,申し立てたのちも,漫然と手続の進行を眺めているのではなく,非免責債権の届出等につき自らの認識と異なることがないかどうかを確認し,異なることがあるのであれば,積極的に異義を出して,破産債権者表の確定を防ぐべきこととなるでしょう(破産法218条2項)。そして,破産債権者表の記載に執行文が付与されてしまった場合には,破産者は執行文付与に関する異義の申立て(民事執行法32条),強制執行に対しては請求異義訴訟(同法35条)によって争うことになります。

ウ 前記最高裁平成26年4月24日判決は,破産債権者表の記載と執行文付与手続について判断した初めての最高裁判決となります。

この判決をきっかけに,破産債権者表の記載の債務名義性が見直され,破産債権者表の記載に対する執行文付与手続の裁判所の運用,破産債権者及び破産者の各活動にも影響を与えていくものと考えます。

<参照条文>
民事執行法
(債務名義)
第22条 強制執行は,次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
一 確定判決
二 仮執行の宣言を付した判決
三 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては,確定したものに限る。)
三の二 仮執行の宣言を付した損害賠償命令
四 仮執行の宣言を付した支払督促
四の二 訴訟費用,和解の費用若しくは非訟事件(他の法令の規定により非訟事件手続法(平成23年法律第51号)の規定を準用することとされる事件を含む。)若しくは家事事件の手続の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第42条第4項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては,確定したものに限る。)
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で,債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
六 確定した執行判決のある外国裁判所の判決
六の二 確定した執行決定のある仲裁判断
七 確定判決と同一の効力を有するもの(第3号に掲げる裁判を除く。)

(執行文の付与)
第26条 執行文は,申立てにより,執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が,執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与する。
2 執行文の付与は,債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に,その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う。
第27条 請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては,執行文は,債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したときに限り,付与することができる。
2 債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は,その者に対し,又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき,又は債権者がそのことを証する文書を提出したときに限り,付与することができる。
3 執行文は,債務名義について次に掲げる事由のいずれかがあり,かつ,当該債務名義に基づく不動産の引渡し又は明渡しの強制執行をする前に当該不動産を占有する者を特定することを困難とする特別の事情がある場合において,債権者がこれらを証する文書を提出したときに限り,債務者を特定しないで,付与することができる。
一 債務名義が不動産の引渡し又は明渡しの請求権を表示したものであり,これを本案とする占有移転禁止の仮処分命令(民事保全法(平成元年法律第91号)第25条の2第1項に規定する占有移転禁止の仮処分命令をいう。)が執行され,かつ,同法第62条第1項の規定により当該不動産を占有する者に対して当該債務名義に基づく引渡し又は明渡しの強制執行をすることができるものであること。
二 債務名義が強制競売の手続(担保権の実行としての競売の手続を含む。以下この号において同じ。)における第83条第1項本文(第188条において準用する場合を含む。)の規定による命令(以下「引渡命令」という。)であり,当該強制競売の手続において当該引渡命令の引渡義務者に対し次のイからハまでのいずれかの保全処分及び公示保全処分(第55条第1項に規定する公示保全処分をいう。以下この項において同じ。)が執行され,かつ,第83条の2第一項(第187条第5項又は第188条において準用する場合を含む。)の規定により当該不動産を占有する者に対して当該引渡命令に基づく引渡しの強制執行をすることができるものであること。
イ 第55条第1項第3号(第188百条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分
ロ 第77条第1項第3号(第188条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分
ハ 第187条第1項に規定する保全処分又は公示保全処分(第55条第1項第3号に掲げるものに限る。)
4 前項の執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行は,当該執行文の付与の日から4週間を経過する前であつて,当該強制執行において不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができる場合に限り,することができる。
5 第3項の規定により付与された執行文については,前項の規定により当該執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行がされたときは,当該強制執行によつて当該不動産の占有を解かれた者が,債務者となる。
(執行文の付与等に関する異議の申立て)
第32条 執行文の付与の申立てに関する処分に対しては,裁判所書記官の処分にあつてはその裁判所書記官の所属する裁判所に,公証人の処分にあつてはその公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所に異議を申し立てることができる。
2 執行文の付与に対し,異議の申立てがあつたときは,裁判所は,異議についての裁判をするまでの間,担保を立てさせ,若しくは立てさせないで強制執行の停止を命じ,又は担保を立てさせてその続行を命ずることができる。急迫の事情があるときは,裁判長も,これらの処分を命ずることができる。
3 第1項の規定による申立てについての裁判及び前項の規定による裁判は,口頭弁論を経ないですることができる。
4 前項に規定する裁判に対しては,不服を申し立てることができない。
5 前各項の規定は,第28条第2項の規定による少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本の交付について準用する。
(執行文付与の訴え)
第33条 第27条第1項又は第2項に規定する文書の提出をすることができないときは,債権者は,執行文(同条第3項の規定により付与されるものを除く。)の付与を求めるために,執行文付与の訴えを提起することができる。
2 前項の訴えは,次の各号に掲げる債務名義の区分に応じ,それぞれ当該各号に定める裁判所が管轄する。
一 第22条第1号から第3号まで,第6号又は第6号の2に掲げる債務名義並びに同条第7号に掲げる債務名義のうち次号及び第6号に掲げるもの以外のもの
第一審裁判所
一の二 第22条第3号の2に掲げる債務名義並びに同条第7号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令並びに損害賠償命令事件に関する手続における和解及び請求の認諾に係るもの
損害賠償命令事件が係属していた地方裁判所
二 第22条第4号に掲げる債務名義のうち次号に掲げるもの以外のもの
仮執行の宣言を付した支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所(仮執行の宣言を付した支払督促に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは,その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)
三 第22条第4号に掲げる債務名義のうち民事訴訟法第132条の10第1項本文の規定による支払督促の申立て又は同法第402条第1項に規定する方式により記載された書面をもつてされた支払督促の申立てによるもの
当該支払督促の申立てについて同法第398条(同法第402条第2項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があつたものとみなされる裁判所
四 第22条第4号の2に掲げる債務名義
同号の処分をした裁判所書記官の所属する裁判所
五 第22条第5号に掲げる債務名義
債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所(この普通裁判籍がないときは,請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する裁判所)
六 第22条第7号に掲げる債務名義のうち和解若しくは調停(上級裁判所において成立した和解及び調停を除く。)又は労働審判に係るもの(第1号の2に掲げるものを除く。)
和解若しくは調停が成立した簡易裁判所,地方裁判所若しくは家庭裁判所(簡易裁判所において成立した和解又は調停に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは,その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)又は労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた地方裁判所
(請求異議の訴え)
第35条 債務名義(第22条第2号,第3号の2又は第4号に掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は,その債務名義による強制執行の不許を求めるために,請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も,同様とする。
2 確定判決についての異議の事由は,口頭弁論の終結後に生じたものに限る。
3 第33条第2項及び前条第2項の規定は,第1項の訴えについて準用する。

破産法
(破産債権の行使)
第100条 破産債権は,この法律に特別の定めがある場合を除き,破産手続によらなければ,行使することができない。
2 前項の規定は,次に掲げる行為によって破産債権である租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)を行使する場合については,適用しない。
一 破産手続開始の時に破産財団に属する財産に対して既にされている国税滞納処分
二 徴収の権限を有する者による還付金又は過誤納金の充当
(破産債権者表の作成等)
第115条 裁判所書記官は,届出があった破産債権について,破産債権者表を作成しなければならない。
2 前項の破産債権者表には,各破産債権について,第111条第1項第1号から第4号まで及び第2項第2号(同条第3項において準用する場合を含む。)に掲げる事項その他最高裁判所規則で定める事項を記載しなければならない。
3 破産債権者表の記載に誤りがあるときは,裁判所書記官は,申立てにより又は職権で,いつでもその記載を更正する処分をすることができる。
(異議等のない破産債権の確定)
第124条 第117条第1項各号(第4号を除く。)に掲げる事項は,破産債権の調査において,破産管財人が認め,かつ,届出をした破産債権者が一般調査期間内若しくは特別調査期間内又は一般調査期日若しくは特別調査期日において異議を述べなかったときは,確定する。
2 裁判所書記官は,破産債権の調査の結果を破産債権者表に記載しなければならない。
3 第1項の規定により確定した事項についての破産債権者表の記載は,破産債権者の全員に対して確定判決と同一の効力を有する。
(破産手続廃止後又は破産手続終結後の破産債権者表の記載の効力)
第221条 第217条第1項若しくは第218条第1項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき,又は前条第1項の規定による破産手続終結の決定があったときは,確定した破産債権については,破産債権者表の記載は,破産者に対し,確定判決と同一の効力を有する。この場合において,破産債権者は,確定した破産債権について,当該破産者に対し,破産債権者表の記載により強制執行をすることができる。
2 前項の規定は,破産者(第121条第3項ただし書の代理人を含む。)が第118条第2項,第119条第5項,第121条第4項(同条第6項(同条第7項又は第122条第2項において準用する場合を含む。)若しくは第7項又は第122条第2項において準用する場合を含む。)又は第123条第1項の規定による異議を述べた場合には,適用しない。
(免責許可の申立て)
第248条 個人である債務者(破産手続開始の決定後にあっては,破産者。第4項を除き,以下この節において同じ。)は,破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後1月を経過する日までの間に,破産裁判所に対し,免責許可の申立てをすることができる。
2 前項の債務者(以下この節において「債務者」という。)は,その責めに帰することができない事由により同項に規定する期間内に免責許可の申立てをすることができなかった場合には,その事由が消滅した後1月以内に限り,当該申立てをすることができる。
3 免責許可の申立てをするには,最高裁判所規則で定める事項を記載した債権者名簿を提出しなければならない。ただし,当該申立てと同時に債権者名簿を提出することができないときは,当該申立ての後遅滞なくこれを提出すれば足りる。
4 債務者が破産手続開始の申立てをした場合には,当該申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなす。ただし,当該債務者が破産手続開始の申立ての際に反対の意思を表示しているときは,この限りでない。
5 前項本文の規定により免責許可の申立てをしたものとみなされたときは,第20条第2項の債権者一覧表を第3項本文の債権者名簿とみなす。
6 債務者は,免責許可の申立てをしたときは,第218条第1項の申立て又は再生手続開始の申立てをすることができない。
7 債務者は,次の各号に掲げる申立てをしたときは,第1項及び第2項の規定にかかわらず,当該各号に定める決定が確定した後でなければ,免責許可の申立てをすることができない。
一 第218条第1項の申立て 当該申立ての棄却の決定
二 再生手続開始の申立て 当該申立ての棄却,再生手続廃止又は再生計画不認可の決定
(強制執行の禁止等)
第249条 免責許可の申立てがあり,かつ,第216条第1項の規定による破産手続廃止の決定,第217条第1項の規定による破産手続廃止の決定の確定又は第220条第1項の規定による破産手続終結の決定があったときは,当該申立てについての裁判が確定するまでの間は,破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行,仮差押え,仮処分若しくは外国租税滞納処分若しくは破産債権を被担保債権とする一般の先取特権の実行若しくは留置権(商法又は会社法の規定によるものを除く。)による競売(以下この条において「破産債権に基づく強制執行等」という。),破産債権に基づく財産開示手続の申立て又は破産者の財産に対する破産債権に基づく国税滞納処分(外国租税滞納処分を除く。)はすることができず,破産債権に基づく強制執行等の手続又は処分で破産者の財産に対して既にされているもの及び破産者について既にされている破産債権に基づく財産開示手続は中止する。
2 免責許可の決定が確定したときは,前項の規定により中止した破産債権に基づく強制執行等の手続又は処分及び破産債権に基づく財産開示手続は,その効力を失う。
3 第1項の場合において,次の各号に掲げる破産債権については,それぞれ当該各号に定める決定が確定した日の翌日から2月を経過する日までの間は,時効は,完成しない。
一 第253条第1項各号に掲げる請求権 免責許可の申立てについての決定
二 前号に掲げる請求権以外の破産債権 免責許可の申立てを却下した決定又は免責不許可の決定
(免責許可の決定の効力等)
第253条 免責許可の決定が確定したときは,破産者は,破産手続による配当を除き,破産債権について,その責任を免れる。ただし,次に掲げる請求権については,この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第766条(同法第749条,第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって,契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七 罰金等の請求権
2 免責許可の決定は,破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
3 免責許可の決定が確定した場合において,破産債権者表があるときは,裁判所書記官は,これに免責許可の決定が確定した旨を記載しなければならない。
4 第1項の規定にかかわらず,共助対象外国租税の請求権についての同項の規定による免責の効力は,租税条約等実施特例法第11条第1項の規定による共助との関係においてのみ主張することができる。

<参照判例>
最高裁平成26年4月24日判決
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人…の上告受理申立て理由について
1 本件は,Yにつき破産手続終結の決定がされ免責許可の決定が確定した後,Yに対し確定した破産債権を有するXが,上記破産債権は破産法253条1項2号に掲げる請求権に該当すると主張して,Yに対し,上記破産債権が記載された破産債権者表について提起した執行文付与の訴えである。
2 原審は,破産債権者表に記載された確定した破産債権が破産法253条1項各号に掲げる請求権(以下「非免責債権」という。)に該当するか否かは,執行文付与の訴えの審理の対象とはならないから,本件訴えは不適法である旨判断して,本件訴えを却下すべきものとした。
3 所論は,免責許可の決定が確定した場合,破産債権者表に記載された確定した破産債権が非免責債権に該当するか否かは裁判所書記官の形式審査には適さず,裁判所書記官が破産債権者表について執行文を付与することはできないと解されるから,非免責債権が記載された破産債権者表に基づいて強制執行を実施するため,民事執行法33条1項を適用又は準用して,破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することができると解すべきであるというものである。
4 民事執行法33条1項は,その規定の文言に照らすと,執行文付与の訴えにおける審理の対象を,請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合におけるその事実の到来の有無又は債務名義に表示された当事者以外の者に対し,若しくはその者のために強制執行をすることの可否に限っており,破産債権者表に記載された確定した破産債権が非免責債権に該当するか否かを審理することを予定していないものと解される(最高裁昭和…52年11月24日第一小法廷判決…参照)。このように解しても,破産事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官は,破産債権者表に免責許可の決定が確定した旨の記載がされている場合であっても,破産債権者表に記載された確定した破産債権がその記載内容等から非免責債権に該当すると認められるときには,民事執行法26条の規定により執行文を付与することができるのであるから,上記破産債権を有する債権者には殊更支障が生ずることはないといえる。
そうすると,免責許可の決定が確定した債務者に対し確定した破産債権を有する債権者が,当該破産債権が非免責債権に該当することを理由として,当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されないと解するのが相当である。
5 原審の判断は,これと同旨をいうものとして是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。


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