新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.323、2006/1/5 11:10 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm

[債務整理・破産]
質問:私は,都内在住の会社員なのですが,3年くらい前から多重債務の態となり,最近,これ以上の返済はできないと考えたことから弁護士に相談して破産申立をすることにしました。相談の際,私が自動車を所有していることや生命保険に加入していることを説明したところ,その弁護士から,「同時廃止じゃなく,管財事件になる可能性がある。もしそうなった場合には,弁護士費用の他に20万円くらいの管財費用がかかる。」と言われました。私にとって弁護士費用の他に20万円も払うのは相当厳しいのですが,それでも費用のかかる管財事件という方になってしまうのでしょうか。また,同時廃止と管財事件の違いについても簡単に教えて下さい。

回答:
1、個人破産手続は,おおまかにいうと,破産決定の段階で破産者が有している財産を,各債権者に債権額に応じて平等に配当するところに目的があり,その一方で,同時に進行する免責手続きによって,破産者は,その債務から逃れることができます。ですので,裁判所によって選任された管財人(通常,申立代理人とは異なる弁護士が就任します。)が財産調査,債権調査などを行い,破産者に代わって債権者への配当などの手続を行う「管財事件」が,破産手続において原則的位置づけになります。
2、しかし,破産事件の中には,破産手続費用すら十分にない場合もあり,かかる場合に,債権者への配当は期待できず,破産手続を進めても無意味であるので,そのような場合には,破産手続開始と同時に,「同時廃止」となって破産手続は終了し,免責手続だけが進行することになります。
3、以下,東京地方裁判所で個人自己破産申立を行った場合を前提にご説明致します。まず,破産申立に際しては,申立書,債権者一覧表などとともに,破産申立の段階でどのくらいの財産を有しているかなどを記載する資産目録を裁判所に提出する必要があります。そして,申立後,申立代理人である弁護士が裁判官と面接を行い(「即日面接」といいます。),裁判官は提出された資料や申立代理人からの意見を聞き,この段階で,「同時廃止」か,「管財事件」かの判断をします。ここで,「同時廃止」との判断がされる場合は,収入印紙,予納郵券(原則合計5,500円)の他に予納金10,290円を裁判所に支払えば済みますが,「管財事件」と判断されると収入印紙,予納郵券,予納金16,090円の他に,後日,裁判所から選任された管財人に対し,引継予納金として20万円を支払う必要が出てきます(いずれの額も平成17年12月現在のもの)。つまり,おおまかにいうと,破産申立人にとっては,ここで同時廃止になるか管財事件になるかによって,約20万円の支出の差が出てくるわけです。
4、この判断を下すのは担当裁判官ですが,現在の東京地裁民事第20部の運用によると,まず,この20万円自体の支払能力があるか否かが大きな分かれ目のようです。そして,その判断は,現金の他に,預金,自動車,生命保険返戻金など,換価容易な財産について評価額が20万円を超えるものが一つでもあれば,原則として管財事件になります。また,破産者に浪費などの免責不許可事由がある場合,過払による不当利得返還請求の行使が可能な場合,負債総額が5000万円を超える場合なども,管財人による調査が必要な事件として原則として管財事件となります。しかし,この判断に関しては,多くの例外もありますので,弁護士と相談の上で,管財事件になるかに関して目処を付けたほうがよろしいでしょう。
5、最後に,引継予納金20万円の支払い方法に関してですが,原則として,破産申立を行い管財人が就任した直後に,一括での支払いが求められます。しかし,この支払いが困難な場合など,事情によっては,分割での支払い(5万円を4回に分けてなど)や,管財人が換価した生命保険返戻金など管財費用に充ててもらうことも可能です。
6、今回のご質問のケースでも,仮に破産申立の段階で,引継予納金20万円を用意することが困難な場合には,申立代理人を介して,生命保険返戻金から充ててもらうよう管財人に依頼することにより(最終的には管財人の判断になりますが,),返戻金から管財費用を充ててもらうことも可能でしょう。

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