新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.374、2006/3/14 11:22 https://www.shinginza.com/hasan-seigen.pdf

[債務整理・破産]
質問:破産すると戸籍や住民票に記載されますか。破産者名簿に記載されるという話を聞いたことがありますがそもそも破産者名簿とはどのようなものですか。その他破産による不利益としてはどのようなことが考えられるのでしょうか。

回答:
1、破産したとしても,戸籍や住民票に記載されることはありません。ただ,破産宣告がなされると@官報に載るほか,A免責決定により復権(破産法255条1項1号)するまでの期間(通常は1ヶ月〜数ヶ月程度ですが事案によりそれより長期となる場合はあります。)本籍地の市町村役場の破産者名簿に記載されます。なお,官報に載ったとしても一般の人が見ることは通常ありませんのでこの点についての不利益はほとんどありません。
2、次に,破産者名簿とは,破産者かどうかを証明するために発行する身分証明書発行のために調整される名簿をいいます。例えば,成年後見人になる際など【下記3、(1)参照】には「身分証明書」の添付が手続上要求されます。そこで,市役所の発行する「身分証明書」発行の前提として破産者名簿に破産者であることが記載されます。そして,上記申請に際し市役所が発行する「身分証明書」という書類に破産者であることが記載されるわけです。ただ,破産者名簿は非公開であり第三者が見ることは出来ませんし,市区町村役場で身分証明書の発行を要求される場面も限られますので破産したことを第三者が知ることは容易ではないことになります。以上より,破産者名簿に記載されたことによる不利益もさほど大きいものとはいえません。
3、その他の破産宣告により考えられるデメリットのまとめ
(1)後見人・保佐人・補助人,成年後見監督人,遺言執行者になることが出来ない。
(2)弁護士・司法書士・税理士・不動産鑑定士等の資格を失う。
(3)生命保険外務員・損害保険代理店,警備業者・警備員等の資格を失ったり業務を禁止される(ただ,厳密には保険会社等が資格の取消しを請求するまでは資格を失うことはありません。)。
(4)株式会社・有限会社の取締役や監査役の退任事由となります(平成18年2月現在)。ただ,平成17年6月29日に成立した新会社法では破産手続き開始決定を受けて復権していない者を欠格事由からはずしました。従って,新会社法施行後は破産者でも取締役になることが出来るようになります。(なお,平成16年の改正【商法254条2号】により破産者が復権をすればその後一定の期間の経過を要せず欠格事由ではなくなりました。)。
(5)合名会社・合資会社の社員については,退社事由となります(商法85条4項,同147条)。
(6)信用情報機関の「自己情報」に掲載されます(5年〜8年程度)。
したがって,上記期間は貸金業者からの借入等が事実上出来なくなります。なお,かかる制限は弁護士が介入して債務整理をする場合には自己破産以外でも同様の取扱いを受けるのが実情ですので自己破産固有の制限というわけではありません。
破産手続に破産管財人が就く場合の制限(破産管財事件)
(7)財産の管理処分権を失ないます。
(8)居住制限を受けます。
(9)通信の秘密の制限(破産法81条,同82条。破産管財人が破産者宛の郵便物を開封して中身を見たり,郵便物が破産管財人に配達されることになるなどの制限を受けます。)
なお,上記制限は上記(6)を除くとほぼ免責決定による復権がなされるまでの期限付きのものであり免責決定後は上記制限がなくなりますので破産による不利益は通常考えられているほどには大きなものではないことになります。

*上記URLに、破産宣告を受け復権を得るまでの資格制限リストを加えましたので、ご参照ください。

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