新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1803、2018/01/09 17:35 https://www.shinginza.com/saikaihatsu.htm

【都市再開発、組合員の権利と国家戦略特区、都市再生緊急整備地域、参加組合員に対する組合員の対応】

国家戦略特区、都市再生緊急整備地域


質問:
都心に築45年の分譲マンションを所有して居住しています。この数年、近隣一帯で再開発の話が続いていて「再開発準備組合」というのも設立され、私も地権者であるので加入しました。準備組合の理事会から、再開発計画の概要という資料が配付され、そこに計画容積率700パーセントと記載されていました。現在の容積率は300パーセントですので倍以上の容積率となります。また、現在の見込みとして、建築費負担無しで、現在の床面積の7割程度の権利床面積が与えられるかもしれないと説明されています。建て替え後の床面積が減ってしまうのは残念ですが、建築費の負担が無いということは素晴らしいことだと、近所の人と話し合っています。この計画に賛成していくべきでしょうか。



回答:
1、 基本的には賛成し、建て替え後の床面積をできるだけ増やすように、再開発準備組合、その後に設立される再開発組合と交渉するべきです。
2、 都市再開発手続きは、「都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与する(都市再開発法1条)」を目的として、都市の防災機能を高め、また、国民経済の振興を図るために、都市部の建物の建て替えをすすめる手続きです。区域内の宅地面積及び借地面積の3分の2以上の合意が必要ですが、権利変換手続きという手法により、ある程度強制的に、区域一帯の建て替えを進めることができます。
3、 御質問にある「現在の容積率」とは、都市計画図に記載された「指定容積率(建築基準法52条)」の容積率のことですが、実際に建て替えを行う場合は、この指定容積率をもとに、様々な容積率の割増し措置(例外規定)があり、計画容積率が倍以上になることは何ら珍しいことではありません。
4、 容積率の割増し措置の中で、特例的な措置として、「国家戦略特区」と、「都市再生緊急整備地域」のふたつがありますので御紹介致します。再開発組合からの提案申請が認められるかどうか、行政側の裁量もありますが、申請が認められた場合は、1000パーセント以上の計画容積率で再開発を進めることができる場合もあります。
5、 再開発後に与えられる床面積の割合で、権利変換比率という数字があります。簡単に言えば、現在の床面積の何割の新築ビルの床面積を取得できるかという数値です。この比率が70パーセント程度となる再開発手続きも勿論ありますが、前記の容積率の割増し措置を最大限に活用した場合、また、工事費などの事業費を適切に見積もりし、また、デベロッパーが取得する保留床処分金が適切かどうか、詳細に精査した結果、100パーセント以上の床面積が取得できる場合もあります。そのためには、準備組合の理事会と事業協力者である参加組合員(不動産デベロッパー)と交渉していく必要があります。御不安であれば、再開発手続きに精通した弁護士に御相談なさってみると良いでしょう。
6、 都市再開発関連事例集1798番1768番1756番1733番1720番1705番1702番1701番1684番1678番1649番1513番1512番1490番1455番1448番参照。


解説:

1、 都市再開発手続き

民間の地権者が集まって再開発事業を進める第一種市街地再開発事業では、施行区域内の土地所有者や借地権者が5名以上集まって、事業計画を定め、施行区域内の宅地所有権者及び借地権者の面積と人数で、それぞれ3分の2以上の同意を得て、組合設立認可申請をすることができます。

都市再開発法第11条(認可)
第1項 第一種市街地再開発事業の施行区域内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、五人以上共同して、定款及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けて組合を設立することができる。
第14条(宅地の所有者及び借地権者の同意)
第1項 第十一条第一項又は第二項の規定による認可を申請しようとする者は、組合の設立について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの三分の二以上の同意を得なければならない。この場合においては、同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上でなければならない。


 再開発組合の設立が認可されると、権利変換計画案を作成し、組合決議を経て認可申請をすることにより、権利変換期日に、施行区域内の従来の権利が全て消滅し、敷地所有権は一旦施行者である再開発組合に帰属することになり、複雑な権利関係を整理して、建て替えを進めることができるようになります。

 このように、多少の反対があってもある程度の強制力を伴って手続きを進めることができるのは、都市の防災機能向上や、国民経済の振興という公益目的があるからです。日本国憲法29条1項では私有財産制と私的自治が保障されていますが、所有権といえども無制限に行使できるわけではなく、社会的生活の中で存在しているものであり、特に都市部の宅地利用権については、回りの宅地(建物)と調和の取れた再開発が必要となることもあります。例えば住宅密集地に木造住宅が密接していると、火災の場合に延焼の危険が高くなり避難経路が確保できなくなって死傷者が増大してしまうおそれがありますし、建築基準法改正前の古い耐震基準に基づいて建てられた高層建築物があると、大地震の際に周りの建物に倒壊の二次災害を引き起こしてしまう危険があります。自分の土地や建物であっても、都市の中で存在している以上、常に周囲の権利者との協調が必要となってくるのです。駅前一等地では、1軒だけ木造低層建物であったり、耐震強度不足の建物を維持することは許されないことがあるということです。

日本国憲法第29条
第1項 財産権は、これを侵してはならない。
第2項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
第3項 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

都市再開発法第1条(目的)
この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。

 通常、再開発に必要な建設費を従前権利者だけで全額負担することは困難ですから、再開発後の建物の床面積の一部を保留床として不動産デベロッパーやゼネコンなどに提供し参加組合員として再開発組合に参加して建築費を負担して貰い、共同して手続きを進めるケースが多くなっています。不動産デベロッパーが建築費を負担し、土地権利者が土地を提供して共同でビルを建てるということですから、いわゆる等価交換によるビル建築と基本的には変わることはありません。違いは地権者の全員の同意がなくても建築が可能となっている点にあると考えてよいでしょう。

都市再開発法第20条(組合員)
第1項 組合が施行する第一種市街地再開発事業に係る施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員とする。
第2項 宅地又は借地権が数人の共有に属するときは、その数人を一人の組合員とみなす。ただし、当該宅地の共有者(参加組合員がある場合にあつては、参加組合員を含む。)のみが組合の組合員となつている場合は、この限りでない。

第21条(参加組合員)前条に規定する者のほか、住生活基本法第二条第二項に規定する公営住宅等を建設する者、不動産賃貸業者、商店街振興組合その他政令で定める者であつて、組合が施行する第一種市街地再開発事業に参加することを希望し、定款で定められたものは、参加組合員として、組合の組合員となる。

都市再開発法施行令第6条(参加組合員)法第二十一条 の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一号 地方公共団体又は地方公共団体が財産を提供して設立した一般社団法人若しくは一般財団法人(第四十条の二第一号において「特定一般社団法人等」という。)
二号 地方住宅供給公社又は日本勤労者住宅協会
三号 前二号に掲げる者以外の者で参加組合員として組合が施行する市街地再開発事業に参加するのに必要な資力及び信用を有するもの


 地権者の集まりである再開発組合の理事も、都市の再開発事業については経験も知識も不足しているのが原則ですから、再開発に経験のある参加組合員と共同して手続きを進めていくことになります。


2、指定容積率と計画容積率

 容積率は、建築基準法52条1項で規定される割合で、建築物の延床面積を敷地面積で割り算した数値です。例えば、容積率200パーセントであれば、敷地の半分の面積の建物で4階建ての建物を建てることができます。

建築基準法第52条(容積率)
第1項(抜粋)建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合(以下「容積率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値以下でなければならない。

 容積率は、住居地域や、工業地域、商業地域など、都市計画図の用途地域ごとに、最高限が定められています(建築基準法52条1項各号抜粋)。具体的な容積率の指定は、市区町村の都市計画審議会の決議、および各都道府県の都市計画審議会の決議を経て、都道府県知事が指定します。

一 第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内の建築物
50%、60%、80%、100%、150%、200%
二 第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域内の建築物
又は第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域若しくは準工業地域内の建築物
100%、150%、200%、300%、400%、500%
三 商業地域内の建築物
200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、
900%、1000%、1100%、1200%、1300%
四 工業地域内の建築物又は工業専用地域内の建築物
100%、150%、200%、300%、400%

 この容積率は、各市区町村の都市計画図に記載されている数値で、土地の売買をするときにも重要事項説明書に記載されている数値であり「指定容積率」と呼ばれるものです。一般に「容積率」と言えばこの数値を意味しますし、通常の建物を建築する場合にどれくらいの床面積で建てることができるかを考える場合には、この指定容積率を基準に考えれば良いことになります。

 他方、建築基準法59条の2第1項など、容積率の特例を定めた規定もあり、これらの規定を適用することにより、都市計画図に記載された指定容積率とは異なる容積率による建築確認申請をすることができる場合もあります。
再開発の対象となる地域は、建物の密集地で、容積率の限度まで建物が建てられているのが普通です。他方、再開発をする際不動産デベロッパーが建築費を出して建物の一部を取得するためには当然、従来の建物より大きな建物を建築する必要があり、そのためには容積率は必ず緩和される必要があるわけです。容積率が2倍になれば、旧建物の所有者も以前と同じ程度の面積の建物を取得でき、不動産デベロッパーも同じ建築費の負担でできるだけ広い面積の建物を取得できることになる訳です。

建築基準法第59条の2(敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例)
第1項 その敷地内に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上である建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建ぺい率、容積率及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものの容積率又は各部分の高さは、その許可の範囲内において、第五十二条第一項から第九項まで、第五十五条第一項、第五十六条又は第五十七条の二第六項の規定による限度を超えるものとすることができる。


 この「公開空地」を設けることによる容積率の割増しは「総合設計制度」と呼ばれています。割増し容積率の程度は各自治体の都市計画審議会の判断に任されていますが、例えば東京都の場合は、従来の容積率(基準容積率)の0.75倍または300%のいずれか低い数値が上限と定められています。割増しによって増加する容積率を「評価容積率」と言います。基準容積率は、再開発を行う場合は指定容積率の見直しを伴うことが多く、再開発前の指定容積率から比較すると2倍以上となる場合も珍しくありません。駅前などの新築ビルが建設されたときに、周りの建物よりも抜きん出て高くなっている場合がありますが、その新築ビルは総合設計制度の適用を受けて建てられていることも多いのです。

容積率が増加する様子を矢印で示すと次のようになります。

再開発前の指定容積率→見直し指定容積率→評価容積率を加えた割増し容積率


※参考URL(東京都、総合設計許可要綱)
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kenchiku/kijun/sougou_sinyoukou.pdf
※参考URL(国土交通省、総合設計制度概要)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/seido/kisei/59-2sogo.html

東京都総合設計許可要綱抜粋
>市街地住宅型総合設計
>計画敷地の所在地により、それぞれ下表の数値とする。
>
>区域、割増容積率の最高限度
>環状第七号線の内側の区域、基準容積率の 0.75 倍又は 300%のいずれか低い数値
>上欄以外の特別区の区域、基準容積率の 0.5 倍又は 250%のいずれか低い数値
>多摩の区域、基準容積率の 0.5 倍又は 200%のいずれか低い数値
>なお、割増し後の容積率は 1,000 パーセントを超えることはできない。

 民間の第一種市街地再開発を進めるためには、都市計画審議会において「再開発促進区を定める都市計画決定」を経る必要があり(都市再開発法3条1項)、この都市計画決定に際して容積率の見直し(増加)が入ることが多くなっています。再開発促進区域内に宅地所有権又は借地権を有する者は、第一種市街地再開発事業の施行を進めることについて努力義務を負う旨が規定されています(都市再開発法7条の2第1項)。

都市再開発法第3条(第一種市街地再開発事業の施行区域)・・抜粋
第1項 都市計画法第十二条第二項の規定により第一種市街地再開発事業について都市計画に定めるべき施行区域は、第七条第一項の規定による市街地再開発促進区域内の土地の区域又は次に掲げる条件に該当する土地の区域でなければならない。
一 当該区域が高度利用地区、都市再生特別地区、特定用途誘導地区又は特定地区計画等区域内にあること。

第七条の二(第一種市街地再開発事業等の施行)
第1項 市街地再開発促進区域内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、当該区域内の宅地について、できる限り速やかに、第一種市街地再開発事業を施行する等により、高度利用地区等に関する都市計画及び当該市街地再開発促進区域に関する都市計画の目的を達成するよう努めなければならない。


3、「国家戦略特区」と、「都市再生緊急整備地域」

(1)国家戦略特区

 国家戦略特区は、日本経済の再生を図るために、経済社会の構造改革を重点的に推進することにより産業の国際競争力を強化する目的で様々な規制緩和を推進するために設けられる特別区域です。農業、医療、都市計画など、我が国には様々な規制がありますが、それぞれの規制には勿論、国民の安心安全を守るための制度趣旨が存在し、それを守るための規制が策定されているのですが、時代の変化に適応しきれなくなってしまっている規制もあると言われています。

 通常の構造改革・規制改革においては日本全国に適用される法令の改正が必要となり、膨大なメリットやデメリットの検討にどうしても時間が掛かりすぎてしまうことから、拠点形成の目的で、特定の区域に限定して規制改革を先行させる政策です。国家戦略特区法(以下法という)は平成25年12月13日に施行されました。この法律の第1条目的条項と第3条基本理念が制度趣旨を良く現していますので引用致します。これほど目的や理念が詳細に規定されている法律も珍しく、制定時の内閣立法府の危機感や熱意が感じられるところです。バブル崩壊後のいわゆる「失われた20年」で、日本経済の国際的地位は大きく後退してしまいました。この法律の制定は日本経済再生に向けた強い決意が伝わってくるものです。


国家戦略特別区域法第1条(目的)この法律は、我が国を取り巻く国際経済環境の変化その他の経済社会情勢の変化に対応して、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図るためには、国が定めた国家戦略特別区域において、経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点を形成することが重要であることに鑑み、国家戦略特別区域に関し、規制改革その他の施策を総合的かつ集中的に推進するために必要な事項を定め、もって国民経済の発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。

第3条(基本理念)国家戦略特別区域における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成は、国が、これらの実現のために必要な政策課題の迅速な解決を図るため、適切に国家戦略特別区域を定めるとともに、規制の特例措置の整備その他必要な施策を、関連する諸制度の改革を推進しつつ総合的かつ集中的に講ずることを基本とし、地方公共団体及び民間事業者その他の関係者が、国と相互に密接な連携を図りつつ、これらの施策を活用して、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図ることを旨として、行われなければならない。

※参考URL、内閣府による国家戦略特区紹介ページ
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/index.html

 この法律では、内閣に、国家戦略特区担当大臣を置き、関係する地方公共団体の長と、個別案件毎に規制緩和を要望する者で内閣総理大臣が選定した民間事業者が、「国家戦略特別区域会議」が特区ごとに設置され(法7条1項)、国家戦略特別区域計画の作成と審議が行われます。

 国家戦略区域計画は、特定事業に関する関係大臣(関係行政機関の長)の同意を経て、内閣府に設置された「国家戦略特別区域諮問会議」の審議を経て、内閣総理大臣の認定により発効します。

 特定事業は、規制緩和を必要とする具体的事業計画で、特区法別表に列挙されたものと、産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に資するものとして我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展に寄与することが見込まれる内閣府令(政令)で定められた事業です(法2条第2項)。この別表12項に「国家戦略市街地再開発事業」、13項に「国家戦略民間都市再生事業」があり、民間主導で大幅な容積率の緩和措置が得られる可能性のある事業となっています(法24条1項、法25条1項)。それぞれ、法令の要件を一部緩和して早急に再開発整備が可能となる制度です。


国家戦略特別区域法2条2項
この法律において「特定事業」とは、第十条を除き、次に掲げる事業をいう。
第一号 別表に掲げる事業で、第十二条の二から第二十七条までの規定による規制の特例措置の適用を受けるもの
第二号 産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に資するものとして我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展に寄与することが見込まれる内閣府令で定める事業であって第二十八条第一項に規定する指定金融機関から当該事業を行うのに必要な資金の貸付けを受けて行われるもの


第24条(都市再開発法の特例)
第1項 国家戦略特別区域会議が、第八条第二項第二号に規定する特定事業として、国家戦略市街地再開発事業(国家戦略特別区域内において産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成を図るために次の表の上欄に掲げる者を実施主体として行われる市街地再開発事業(都市再開発法(昭和四十四年法律第三十八号)による市街地再開発事業をいう。以下この項において同じ。)であって、同表の中欄に掲げるものをいう。以下この条及び別表の十二の項において同じ。)を定めた区域計画について、内閣総理大臣の認定を申請し、その認定を受けたときは、当該認定の日において、それぞれ当該実施主体に対する次の表の下欄に掲げる認可があったものとみなす。

上欄・・・都市再開発法第十一条第一項の規定により設立された市街地再開発組合(以下この条において単に「市街地再開発組合」という。)
中欄・・・都市再開発法第十一条第一項の定款及び事業計画が定められているとともに、同法第十四条第一項の同意が得られており、かつ、同法第十二条第一項において準用する同法第七条の十二の同意又は同法第十三条の規定による参加の機会の付与を要する場合にあっては、当該同意が得られており、又は当該参加の機会が与えられている市街地再開発事業
下欄・・・都市再開発法第十一条第一項の認可

都市再開発法11条1項 第一種市街地再開発事業の施行区域内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、五人以上共同して、定款及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けて組合を設立することができる。

第25条(都市再生特別措置法の特例)
第1項 国家戦略特別区域会議が、第八条第二項第二号に規定する特定事業として、国家戦略民間都市再生事業(国家戦略特別区域内において産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成を図るために行われる都市再生特別措置法(平成十四年法律第二十二号)第二十条第一項に規定する都市再生事業であって、同項に規定する民間都市再生事業計画が作成されているものをいう。以下この条及び別表の十三の項において同じ。)を定めた区域計画について、内閣総理大臣の認定を申請し、その認定を受けたときは、当該認定の日において、当該国家戦略民間都市再生事業の実施主体に対する同法第二十一条第一項の計画の認定があったものとみなす。

都市再生特別措置法21条1項
国土交通大臣は、前条第一項の認定(以下この節において「計画の認定」という。)の申請があった場合において、当該申請に係る民間都市再生事業計画が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、計画の認定をすることができる。
一号 当該都市再生事業が、都市再生緊急整備地域における市街地の整備を緊急に推進する上で効果的であり、かつ、当該地域を含む都市の再生に著しく貢献するものであると認められること。
二号 建築物及びその敷地並びに公共施設の整備に関する計画が、地域整備方針に適合するものであること。
三号 工事着手の時期、事業施行期間及び用地取得計画が、当該都市再生事業を迅速かつ確実に遂行するために適切なものであること。
四号 当該都市再生事業の施行に必要な経済的基礎及びこれを的確に遂行するために必要なその他の能力が十分であること。


 平成29年9月5日現在、国家戦略特区は253事業が認定されており、そのうちで、都市再生特別措置法の特例は7事業、都市計画法の特例は17事業あります。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/ninteijigyou.html


認定事業を列挙しますので参考になさって下さい。
都市再生特別措置法の特例7事業
三井不動産株式会社【日比谷地区】
森トラスト株式会社【虎ノ門四丁目地区】
住友不動産株式会社【臨海副都心有明地区】
豊島区、東京建物株式会社及び株式会社サンケイビル【豊島区庁舎跡地地区】
森ビル株式会社【愛宕地区】
三菱地所株式会社【大手町(常盤橋)地区】
株式会社世界貿易センタービルディング、鹿島建設株式会社、東京モノレール株式会社及び東日本旅客鉄道株式会社【浜松町二丁目地区】

都市計画法の特例17事業
東急不動産株式会社及び鹿島建設株式会社【竹芝地区】
森トラスト株式会社【虎ノ門四丁目地区】
三井物産株式会社及び三井不動産株式会社【大手町一丁目地区】
独立行政法人都市再生機構【虎ノ門・日比谷線新駅】
森ビル株式会社及び野村不動産株式会社【虎ノ門一丁目地区】
東京建物株式会社【八重洲一丁目地区】
三井不動産株式会社【八重洲二丁目地区】
森ビル株式会社【愛宕地区】
大田区及び独立行政法人都市再生機構【羽田空港跡地地区】
三菱地所株式会社【大手町(常盤橋)地区】
東日本旅客鉄道株式会社、京浜急行電鉄株式会社及び独立行政法人 都市再生機構【品川駅周辺地区】
住友不動産株式会社【臨海副都心有明地区】
横浜駅きた西口鶴屋地区市街地再開発準備組合【横浜駅周辺地区】
住友不動産株式会社【西新宿二丁目地区】
三井不動産株式会社、鹿島建設株式会社及びヒューリック株式会社【八重洲二丁目中地区】
住友不動産株式会社【三田三・四丁目地区】
森ビル株式会社【虎ノ門・麻布台地区】

 これらの計画は、それぞれ唯一無二の立地特性を生かした再開発計画を推進するために、従来の規制では時間が掛かっていた一部許認可を省略して再開発を促進させる法的効力を与えるものです。


(2)都市再生緊急整備地域

 通常の再開発手続きでは、各都道府県の都市計画審議会において「再開発促進区を定める都市計画決定」を経る必要があり(都市再開発法3条1項)ますが、都市機能を高める必要が特に高い地域については、「都市再生特別地区」の決定を得ることができる場合があります。

 都市再生特別地区は、都市計画法の特例として、都市再生緊急整備地域内で、都市再生特別措置法36条で定められた特別の用途地域で、既存の用途地域等に基づく用途、容積率等の規制を適用除外とした上で、自由度の高い計画を定めることができる都市計画制度が創設されたものです。

都市再生特別措置法第1条(目的)
この法律は、近年における急速な情報化、国際化、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に我が国の都市が十分対応できたものとなっていないことに鑑み、これらの情勢の変化に対応した都市機能の高度化及び都市の居住環境の向上(以下「都市の再生」という。)を図り、併せて都市の防災に関する機能を確保するため、都市の再生の推進に関する基本方針等について定めるとともに、都市再生緊急整備地域における市街地の整備を推進するための民間都市再生事業計画の認定及び都市計画の特例、都市再生整備計画に基づく事業等に充てるための交付金の交付並びに立地適正化計画に基づく住宅及び都市機能増進施設の立地の適正化を図るための都市計画の特例等の特別の措置を講じ、もって社会経済構造の転換を円滑化し、国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。

同第2条2項
この法律において「都市再生緊急整備地域」とは、都市の再生の拠点として、都市開発事業等を通じて緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域として政令で定める地域をいう。

同第36条(都市再生特別地区)
第1項 都市再生緊急整備地域のうち、都市の再生に貢献し、土地の合理的かつ健全な高度利用を図る特別の用途、容積、高さ、配列等の建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域については、都市計画に、都市再生特別地区を定めることができる。
第2項 都市再生特別地区に関する都市計画には、都市計画法第八条第三項第一号及び第三号に掲げる事項のほか、建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)の誘導すべき用途(当該地区の指定の目的のために必要な場合に限る。)、建築物の容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)の最高限度及び最低限度、建築物の建蔽率(建築面積の敷地面積に対する割合をいう。)の最高限度、建築物の建築面積の最低限度、建築物の高さの最高限度並びに壁面の位置の制限を定めるものとする。
第3項 前項の建築物の容積率の最高限度は、十分の四十以上の数値でなければならない。ただし、当該地区の区域を区分して同項の建築物の容積率の最高限度を定める場合にあっては、当該地区の区域を区分して定められた建築物の容積率の最高限度の数値にそれぞれの数値の定められた区域の面積を乗じたものの合計を当該地区の全体の面積で除して得た数値が十分の四十以上であることをもって足りる。
第4項 第二項の建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限は、当該地区にふさわしい高さ、配列等を備えた建築物の建築が誘導されること、建築物の敷地内に道路(都市計画において定められた計画道路を含む。次条第一項において同じ。)に接する有効な空地が確保されること等により、当該都市再生特別地区における防災、交通、衛生等に関する機能が確保されるように定めなければならない。


 都市再生特別地区は、都市計画法の特例ですが、通常の都市計画審議会の議決を経た都道府県知事による都市計画決定と同様の手続きにより指定されます。いわば、フリーハンドで都市計画をやりなおすことができるような制度ですが、実際に事業を施行する事業者側の努力が必要であることから、事業者による提案も可能となっています(都市再生特別措置法37条1項)。これを受けて東京都の運用基準では、「都市再生特別地区は、事業者の創意工夫を十分にいかすことを狙う都市計画特例の制度であり、事業計画の内容が地域整備方針等に即した都市再生効果の高いものとなっているかどうかが最も重要なポイントとなるため、都市再生特別地区の都市計画案の作成に当たっては、事業者からの提案を基本とする。」という条項が定められています。つまり、再開発準備組合の側から行政に対して積極的に事前相談を行うなど働きかけを行い、地域の特性を生かした都市再生計画を立案し提案していく必要があるのです。

※内閣府による都市再生緊急整備地域及び特定都市再生緊急整備地域の一覧
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/toshisaisei/kinkyuseibi_list/

※東京都における都市再生特別地区
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/seisaku/tokku/
※都市再生特別地区概要
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/seisaku/tokku/pdf/tokku_gaiyou.pdf
※東京都における都市再生特別地区の運用について
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/seisaku/tokku/pdf/tokku_honbun.pdf
※都市再生特別地区審査フロー図
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/seisaku/tokku/pdf/tokku_furo.pdf


 都市再生特別地区の決定により、従来の規制にとらわれない再開発計画の施行が可能となります。参考のために、容積率の一覧を列挙します。これを見ると1000%以上の計画も十分に可能性があることが分かります。

※東京都における都市再生特別地区一覧(平成29年9月12日現在40地区)
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/cpproject/intro/list_saisei.html

1 大崎駅西口E東地区 約2.4ha 750%
2 大崎駅西口A地区 約1.8ha 650%
3 丸の内1−1地区 約1.2ha 1300%
4 大手町地区
Aゾーン  約1.5ha 1590%
B−1街区   約1.9ha 1570%
B−2街区   約1.4ha 1650%
B−3街区   約2.4ha 1570%
B−4街区   約2.1ha 1470%
Cゾーン   約3.1ha 1470%
D−1街区   約3.5ha 1760%
D−2街区   約0.3ha 1510%
5 西新宿一丁目7地区 約0.9ha 1370%
6 丸の内2−1地区 約1.7ha 1530%
7 淡路町二丁目西部地区
北地区 約2.0ha 990%
南地区 約0.2ha 550%
8 大手町一丁目6地区 約1.5ha 1600%
9 日本橋室町東地区 約1.8ha 1300%
10 北品川五丁目第1地区
A1地区 約0.9ha 1100%
A2地区 約0.2ha 410%
B地区  約0.3ha 400%
C1地区 約0.7ha 710%
C2地区 約0.2ha 400%
D地区  約0.8ha 960%
E地区  約0.5ha 400%
11 銀座四丁目6地区 約0.9ha 1300%
12 渋谷二丁目21地区 約1.1ha 1370%
13 神田駿河台三丁目9地区 約2.2ha 710%
14 京橋二丁目16地区 約0.7ha 1230%
15 丸の内二丁目7地区 約1.7ha 1630%
16 京橋二丁目3地区 約1.0ha 1330%
17 銀座四丁目12地区 約1.0ha 1220%
18 神田駿河台四丁目6地区 約1.3ha 970%
19 京橋三丁目1地区 約1.3ha 1290%
20 丸の内一丁目1−12地区 約1.3ha 1400%
21 銀座六丁目10地区 約1.4ha 1360%
22 日本橋二丁目地区 約4.8ha 1400%
23 大手町一丁目1地区 約2.4ha 1400%
24 浜松町二丁目4地区 約3.2ha 1120%
25 渋谷駅地区
駅街区 約4.3ha 1560%
道玄坂街区 約0.6ha 1400%
26 渋谷三丁目21地区 約1.0ha 1350%
27 日比谷地区 約1.4ha 1450%
28 虎ノ門二丁目地区 約2.9ha 1000%
29 桜丘町1地区 約2.6ha 1230%
30 丸の内三丁目10地区 約1.6ha 1500%
31 竹芝地区 地区全体 約2.4ha 1100%
32 虎ノ門四丁目地区 約1.8ha 1000%
33 虎ノ門一丁目3・17地区 約2.2ha 1410%
34 大手町一丁目2地区 約2.8ha 1450%
35 八重洲一丁目6地区 約1.4ha 1670%
36 八重洲二丁目1地区 約1.7ha 1670%
37 宇田川町15地区 約0.7ha 1000%
38 京橋一丁目東地区 約1.6ha 1210%
39 八重洲二丁目中地区 約2.2ha 1670%
40 虎ノ門・麻布台地区 約8.1ha 990%


4、準備組合(参加組合員)との交渉

 このように、再開発に際して様々な容積率の緩和措置が最大限に駆使された場合、従来の容積率規制とは全く別次元の再開発手続きができる可能性を秘めています。あなたのマンションが所在している地域が、「都市再生緊急整備地域」の指定を受けているかどうか、内閣府のHPで確認してみましょう。また、近隣に国家戦略特区の認定を受けた再開発事業があるかどうか確認してみましょう。もしも、都市再生緊急整備地域の指定を受けている宅地にマンションが所在しているなら、当該再開発は通常の再開発促進区に加えて、都市再生特別地区の指定を受けることができるかもしれません。また、国家戦略特区の認定を受けた再開発事業が近隣にあるのであれば、あなたの住んでいる地区も同様の認定を受けることができるかもしれません。

 再開発準備組合が設立され、事業計画案の策定が進んでいるようであれば、現時点の計画容積率の見込値を問い合わせてみると良いでしょう。また、都市再生特別地区の指定見込みについても問い合わせをしてみると良いでしょう。都市再生緊急整備地域内の再開発事業であれば、事業者側の努力次第で容積率の大幅緩和も可能であるという認識を持ちましょう。

5、権利変換比率の交渉

 再開発後に与えられる床面積の割合を権利変換比率といいますが、この数値が70パーセント程度となってしまう再開発手続きも勿論ありますが、前記の容積率の割増し措置を最大限に活用した場合、また、工事費などの事業費を適切に見積もりし、また、デベロッパーが取得する保留床処分金が適切かどうか詳細に精査した結果、100パーセント以上の床面積が取得できる場合もあります。そのためには、準備組合の理事会と事業協力者である参加組合員(不動産デベロッパー)と詳細に交渉していく必要があります。容積率の緩和に関しては、参加組合員である不動産デベロッパーと従来からの地権者である組合員の利害が一致するのが原則ですが、緩和の決定時期等具体的な事情により必ずしも利害が一致するとは限りませんので、不動産デベロッパーの説明をそのまま信用することはできません。御不安であれば、再開発手続きに精通した弁護士に御相談なさってみると良いでしょう。


<参考条文>
都市再生特別措置法第37条(都市再生事業を行おうとする者による都市計画の決定等の提案)
第1項 都市再生事業を行おうとする者は、都市計画法第十五条第一項の都道府県若しくは市町村若しくは同法第八十七条の二第一項の指定都市(同法第二十二条第一項の場合にあっては、同項の国土交通大臣又は市町村)又は第五十一条第一項の規定に基づき都市計画の決定若しくは変更をする市町村(以下「都市計画決定権者」と総称する。)に対し、当該都市再生事業を行うために必要な次に掲げる都市計画の決定又は変更をすることを提案することができる。この場合においては、当該提案に係る都市計画の素案を添えなければならない。
一 第三十六条第一項の規定による都市再生特別地区に関する都市計画
二 都市計画法第八条第一項第一号に規定する用途地域又は同項第三号の高度利用地区に関する都市計画
三 密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律(平成九年法律第四十九号。以下「密集市街地整備法」という。)第三十一条第一項の規定による特定防災街区整備地区に関する都市計画
四 都市計画法第十二条の四第一項第一号の地区計画であってその区域の全部に同法第十二条の五第三項に規定する再開発等促進区又は同条第四項に規定する開発整備促進区を定めるものに関する都市計画
五 都市再開発法による市街地再開発事業(以下「市街地再開発事業」という。)に関する都市計画
六 密集市街地整備法による防災街区整備事業(以下「防災街区整備事業」という。)に関する都市計画
七 土地区画整理法による土地区画整理事業(以下「土地区画整理事業」という。)に関する都市計画
八 都市施設で政令で定めるものに関する都市計画
九 その他政令で定める都市計画



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