2026年10月2日更新
養育費・婚姻費用の目安を、父母の収入と子の人数・年齢から計算できます。給与・自営の収入区分、父母それぞれ最大4人の子の入力、年額・月額の表示を用意しています。計算は令和元年改定の標準算定方式を基礎とする参考値です。収入資料の確認方法、算定表との違い、2026年4月施行の制度、取決め・回収の進め方も説明します。具体的な金額を決める前には、計算結果と資料を持って弁護士にご相談ください。
1 養育費・婚姻費用の計算
この計算プログラムは、平成30年度司法研究「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」の報告(令和元年12月23日公表)を踏まえた、令和元年版の標準算定方式に基づいて養育費・婚姻費用を試算するものです。裁判所が公表する算定表の基礎となる考え方に沿って、父母の年収から基礎収入を求め、子の人数・年齢に応じた生活費指数を用いて分担額を計算します。算定表の金額帯をそのまま表示するのではなく、入力した年収を計算式に当てはめるため、表の目盛りや金額の幅との関係で差が生じることがあります。表示額はあくまで参考値であり、個別事情を踏まえた合意や裁判所の判断によって最終的な金額が決まります。
年収は円単位です。給与は税引前の年収、自営は課税所得に必要な加算をした額を入力します。無収入は「0」と入力してください。同じ子を父母双方へ重複入力せず、今回の父母間の扶養の対象となる子を入力します。再婚相手の子や他の扶養家族はこの欄に含めず、個別に相談してください。
入力後に「計算する」を押してください。
「夫・妻」は入力の区別です。養育費については父母の実際の監護状況に応じて読み替えてください。婚姻費用は婚姻中の生活費を扱います。共同親権でも、交互の監護・費用負担など個別事情があるときは自動計算だけで判断できません。
2 正しく計算するための収入・年齢の確認
給与所得者:手取りではなく、源泉徴収票の「支払金額」
賞与を含む税引前の年間収入を確認します。月の手取りを12倍した金額や、給与所得控除後の金額を入れると結果が変わります。転職・休業等で前年と収入が大きく異なる場合は、最新の給与明細や賞与資料も準備してください。
自営業者:売上そのものでも、課税所得そのままでもありません
確定申告書の「課税される所得金額」を出発点に、基礎控除・青色申告特別控除・実際には支払っていない専従者給与など、現実の支出を伴わない控除等を加算して調整します。経費の内容、赤字の理由、給与との兼業などは資料を確認する必要があります。給与と自営の収入が混在する方は、一方の区分に単純合算せず弁護士にご相談ください。
子の人数・年齢と終期
子の生活費指数は0~14歳が62、15歳以上が85、親が100です。「15歳以上」は計算上の区分であり、支払義務が必ず19歳で終わるという意味ではありません。成年年齢は18歳ですが、普通の養育費の終期は子の自立状況や合意・審判等を確認します。児童手当・児童扶養手当は、受け取る側の年収へ加えません。
3 計算式と算定表の違い
生活に使える収入を標準化した「基礎収入」は、入力年収に収入区分・金額帯に応じた割合を掛けて求めます。税金・職業上の費用等を標準的に考慮する仕組みで、預金残高や実際の手取り額とは異なります。
すべての子を一方が監護し、他方が支払う通常の場合、支払う側の基礎収入をP、受け取る側をR、子の生活費指数合計をCとすると、養育費の参考年額は[P×C÷(100+C)]×P÷(P+R)、月額はその12分の1です。婚姻費用は、双方の基礎収入の合計を家族の生活費指数で世帯に配分し、受け取る側自身の基礎収入を差し引きます。これは配偶者の生活費も含むため、離婚後の養育費と金額が異なります。
この計算機は途中の端数を保持し、表示時に1円未満を切り捨てます。年収は入力値のまま計算し、算定表の目盛りへ丸めません。裁判所の算定表は金額に幅を持たせた目安です。計算機の1円単位の数字が、そのまま請求できる確定額ではありません。係数の境界では割合が切り替わるため、収入が少し増えても試算額が単純増加しないことがあります。
本ページでは、受け取る側の基礎収入が他方を上回る養育費、父母がそれぞれ子を監護する養育費、双方無収入の場合は個別検討と表示します。給与年収2,000万円・自営の調整後所得1,567万円を超える場合も自動算定の対象外です。子4人以上は算定表自体がないため、指数を用いた参考試算と明示します。
計算式・基礎収入率の照合:東京弁護士会・養育費/婚姻費用の計算機能解説。公表算定表:裁判所・令和元年版算定表。
4 具体例と計算内容の確認
養育費の例:夫が給与年収715万2,000円、妻が給与年収202万8,000円で、妻が7歳・10歳の子2人を監護する場合です。夫の基礎収入は293万2,320円、妻は87万2,040円となり、この計算機の養育費は月額104,263円です。裁判所の説明資料に示された同じ事例の算定表の幅「月10~12万円」の範囲内です。上の例示ボタンで入力・計算できます。
婚姻費用の例:子がなく、夫の給与年収739万4,958円、妻の給与年収243万3,452円の場合、入力値をそのまま用いると月額79,649円です。一方、裁判所の説明資料は目盛りに合わせて750万円・250万円を基準とし、「月8~10万円」と案内しています。両者の違いは、計算方法の丸め方と算定表の幅によるものです。
基礎収入率の各境界、父母の入替え、子なし、無収入、入力形式も確認し、従来のゼロ除算による計算不能値の表示と、未入力・負数等をそのまま計算する処理を修正しました。計算の整合性の確認と、個別事件で適正な金額の判断とは別です。
5 算定表からの調整と裁判例
私立学校の授業料、大学進学、障害・病気に伴う医療費、住宅ローンや住居費の負担、再婚後の扶養家族などは、事情により個別の検討が必要です。すべてが当然に上乗せ・減額されるわけではありません。支出の必要性、父母の合意、収入、標準額に既に含まれる費用を整理します。
最高裁平成18年4月26日決定は、婚姻費用を標準的算定方式によって算定した原審の判断を合理的として是認しました。ただし、この決定は令和元年の係数改定前のものであり、現在の係数や個々の計算結果を直接認定したものではありません。
再婚や新たな子の出生があっても、当然に支払額が変わるものではありません。当事務所の事例1846では、再婚後の扶養状況を扱う福島家裁会津若松支部平成19年11月9日審判などを紹介しています。事情変更の時期、収入、既存合意の趣旨を確認し、増減額の協議や調停を検討します。自己判断で減額・停止すると未払が残ることがあります。
6 2026年改正:月2万円・月8万円の意味
先取特権とは、法律が特定の債権に認める、債務者の財産から他の一般の債権者より優先して支払を受けられる権利です。養育費については、子の生活を守るため、一定の範囲でこの優先権が認められています。父母が別に担保を設定する契約をしなくても法律上生じ、必要な書類を裁判所に提出して、給与や預金などの差押えによる回収を申し立てることができます。ただし、相手の財産から必ず全額を回収できるという保証ではなく、対象となる金額や時期、手続の要件があります。具体的な方法は養育費の回収手続の解説をご覧ください。
| 制度 | 金額と意味 | 対象時期 |
|---|---|---|
| 通常の養育費 | 父母の収入や子の状況を基に協議・調停・審判等で決める金額。全国一律ではありません。 | 改正前に離婚した場合も請求・取決めが可能です。 |
| 法定養育費 | 子1人につき月2万円。取決めまでの暫定的・補充的な仕組みです。 | 原則として2026年4月1日以降の離婚・認知が対象です。 |
| 養育費の先取特権 | 子1人につき月8万円が優先回収の上限。合意額が自動的に8万円になるわけではありません。 | 2026年4月1日以降に生じる養育費が対象です。離婚・取決め自体が改正前でも対象になり得ます。 |
例えば、子1人について月5万円と取り決めた場合、その5万円が支払義務の基礎となります。月2万円に減るわけでも、月8万円に増えるわけでもありません。月10万円の取決めがある場合も、8万円を超える部分が消えるわけではなく、債務名義に基づく強制執行などを検討します。
参照:裁判所・養育費に関する手続。
7 合意書・公正証書に決めておくこと
- 対象の子と、子ごとの月額。複数の子がいる場合は、一人の支払が終わった後の金額も明確にします。
- 支払の開始月、終了月、毎月の支払日、振込先、振込手数料の負担。
- 既に発生した未払分と、その支払方法・期限。
- 入学金、私学費用、特別な治療費等の負担範囲、事前相談、資料提示の方法。
- 住所・勤務先の変更の連絡、収入が変わった際の協議。ただしDV等がある場合は安全を優先した連絡方法を決めます。
通常の合意書も重要な証拠になります。さらに、金銭債務について強制執行認諾文言のある公正証書を作ると、不払い時に別途支払を命じる判決を得ることなく強制執行を申し立てられる場合があります。単に公正証書という名称であれば、どの内容でも直ちに差押えができるわけではありません。
2026年改正で一般の合意書に基づく先取特権の実行も可能になりましたが、金額の上限や証明書類の要件があります。全額の執行を見据えた公正証書・調停調書等の意義は残ります。曖昧な協議条項では追加費用の回収が難しくなることもあるため、作成前に弁護士に相談することが重要です。
8 新銀座法律事務所の無料相談
「適正な金額を知りたい」「相手が収入を教えない」「養育費を請求しないと書いてしまった」「公正証書を作りたい」「不払いが続く」「再婚や失業で見直したい」といった場合は、ご相談ください。金額だけでなく、取決め・回収まで見通して検討します。
受付:平日9:00~21:00/土日祝日9:00~18:00
電話・LINE・メール等で受け付け、弁護士が電話で5分程度を目安に一般的な見解を無料で回答する案内です。既に弁護士へ依頼中の案件のセカンドオピニオンも受け付けています。
相談時には、離婚日、子の人数・年齢、父母の収入、取決めの文書、支払状況、相手の勤務先が分かるか、進学等の予定をお知らせください。資料がそろっていなくても相談できます。詳しい資料検討、書面作成、代理交渉、調停・審判・執行等の費用は別途ご案内します。
9 計算の後に行うこと:取決めと不払いへの対応
金額のほか、子ごとの支払期間、毎月の支払日、振込先、進学費・医療費、収入や監護状況が変わった場合の協議方法を文書にします。合意できない場合は家庭裁判所の調停等を検討します。収入資料が不足しているときは、弁護士と収集方法や裁判手続での対応を検討してください。
2026年4月1日以降の離婚・認知では、一定の要件の下で、取決めができるまで主に未成年の子を監護する親から子1人につき月2万円の法定養育費を請求できる制度があります。この金額は通常の養育費の最低額・標準額ではなく、本計算機の結果を2万円に置き換えるものでもありません。
先取特権の対象となる範囲では、父母間の私的な合意書も「担保権を証する文書」として回収手続に利用できる場合があります。私文書が一般の債務名義へ変わるわけではありません。未払額、対象期間、作成の真正、差押対象等の確認が必要です。執行認諾文言のある公正証書や調停調書を作成する意義も引き続きあります。
養育費の取決め・法定養育費・先取特権による回収の詳しい解説/裁判所・養育費の手続
公正証書作成・ADR・保証サービス等の費用助成を行う自治体もあります。港区の離婚に伴う子どもの養育支援などを参考に、お住まいの自治体の対象要件・申請期限をご確認ください。
11 参考法令・公的資料・算定表・図解PDF
- 衆議院:令和6年法律第33号・民法等改正条文
- 裁判所:養育費に関する手続の総合案内
- 裁判所:養育費請求調停・法定養育費・申立書
- 裁判所:改定標準算定表(令和元年版)全表一覧
- 養育費算定表1:子1人・0~14歳(PDF)
- 養育費算定表3:子2人・ともに0~14歳(PDF)
- 裁判所:算定表の見方・収入の確認方法・計算例(PDF)
- こども家庭庁:2026年施行の改正制度・図解リーフレット(PDF)
- こども家庭庁:改正制度と支援施策のパンフレット(PDF)
- こども家庭庁:図解・パンフレットの最新版掲載ページ
- 裁判所:養育費に基づく差押え・先取特権の実行・申立書
- 裁判所:養育費等のワンストップ執行手続(第三者からの情報取得)
- 港区:公正証書等の費用助成・離婚に伴う子どもの養育支援
情報確認日:2026年10月2日。PDF・申立書は改訂されるため、提出時は公式案内の最新版をご確認ください。個別の金額・回収の見通しは収入、合意内容、子の状況、相手方の財産等によって異なります。