暮らしの法律知識 / 犯罪被害者の方へ

犯罪被害にあったときは

安全の確保から、告訴・示談・損害回復・生活支援まで

改訂日:

暴力、性被害、詐欺、横領、脅迫などの被害にあうと、何から始めればよいか分からなくなることがあります。すべてを一度に決める必要はありません。まず安全と治療を優先し、警察への申告、証拠の保存、お金や生活の支援を、必要に応じて並行して進めましょう。

このページでは、新銀座法律事務所のQA、公的機関の案内、現行法令と関連判例を踏まえて、被害者ご本人・ご家族が取り得る対応を整理します。適用法令や期限は、被害の時期・内容・年齢等で異なります。

1.最初にすること・証拠の残し方

資料がそろっていなくても、相談を始めて構いません。被害直後の記憶が断片的だったり、説明するのがつらかったりすることもあります。覚えている範囲をメモし、分からないことは分からないまま伝えてください。

無理のない範囲で残しておきたい資料
被害・事情保存するもの/相談時に伝えること
けが・心身への影響診断書、けがの写真、受診日、通院・薬代の領収書、眠れない・仕事に行けない等の経過。見た目に傷がなくても受診できます。
現場・目撃者日時、場所、相手の言動、目撃者の連絡先、防犯カメラの位置。映像は上書きされることがあるため、警察や施設へ早めに保存を相談します。
SNS・メール・脅迫投稿URL、アカウント、日時、前後の会話を含む画面、元のメッセージ・音声・ファイル。編集せず原本を残し、安全な場所に複製します。
詐欺・横領等振込明細、口座情報、契約書、広告、取引履歴、帳簿、相手とのやり取り。何を信じ、いつ、いくら支払ったかを整理します。
生活への影響休業・減収の資料、通院交通費、転居等の支出、家族の介護や付添いの状況。必要性と事件との関係が分かるようにします。

削除されそうなネット上の情報は、削除依頼の前に保存することが大切です。重要な証拠については、公証人による事実実験公正証書などの方法を検討することもあります。他人のアカウントへ無断でログインする等の方法は避け、適法な収集方法を相談しましょう。関連解説:インターネット上の証拠保全

性被害では、妊娠や感染症への対応、証拠採取など、早い受診が役立つ場合があります。衣類等を可能なら洗わず保管し、支援センターへ相談してください。すでに入浴・洗濯をした場合でも、相談や受診を諦める必要はありません。内閣府の相談・支援案内

2.被害届・告訴・告発はどう違いますか

警察・検察への申告方法
方法目的と主な違い
被害届被害を受けた事実を警察に届け出るものです。処罰を求める意思表示までを必須とする告訴とは異なります。
告訴被害者等の告訴権者が、犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求めるものです。犯人の氏名が不明でも、そのことだけで告訴できなくなるわけではありません。
告発被害者等以外の第三者からもできる、犯罪事実の申告と処罰を求める意思表示です。親告罪で必要な告訴を、告発で代えることはできません。

告訴・告発は、検察官又は司法警察員に対し、書面又は口頭で行えます。告訴状には、誰から、いつ、どこで、どのような行為を受けたのか、処罰を求める意思、裏付け資料を整理します。被害のすべてを法律用語に置き換えられなくても大丈夫です。弁護士に作成や提出の代理・同行を相談できます。

相談した日時、警察署、担当部署、担当者、提出資料の控えを残してください。受理に至らない場合は、事実関係や資料の不足、民事問題と説明された理由を確認し、上席・相談窓口や弁護士への相談、検察庁への告訴を検討します。告訴状の提出や受理によって、逮捕・起訴・返金が約束されるものではありません。

根拠:刑事訴訟法230条、231条、239〜242条

3.「6か月」と「時効」は別の問題です

犯罪被害の期限は一つではありません。刑事事件として処罰を求める期限と、民事上の金銭請求の期限は分けて確認します。

期限の基本的な整理
期限基本ルール・注意点
親告罪の告訴期間原則として、告訴権者が犯人を知った日から6か月(例外あり)。名誉毀損、侮辱、器物損壊などで問題になります。すべての犯罪に共通する期限ではありません。
公訴時効検察官が起訴できる期間。犯罪の種類等で異なり、時効のない犯罪もあります。被害届や告訴を提出するだけでは、公訴時効の進行は止まりません。
不法行為の賠償請求原則は「損害及び加害者を知った時から3年」又は「不法行為の時から20年」。生命・身体を害する不法行為では、前者が5年になります。事件の時期や請求の法的根拠により検討が必要です。
給付金・分配金の申請刑事・民事の時効とは別の申請期限があります。捜査や裁判が終わるまで待たず、担当窓口に確認します。

性犯罪についての古い説明に注意してください

2017年の刑法改正で、強制性交等罪・強制わいせつ罪等は非親告罪となり、告訴がなくても起訴できるようになりました。2023年7月13日施行の改正では、不同意性交等罪・不同意わいせつ罪へ改められ、対象となる性犯罪の公訴時効の延長や、被害時に18歳未満であった方についての特則も設けられています。

したがって、性犯罪について一律に「告訴は6か月まで」「5年又は7年以内なら告訴できる」と説明することは適切ではありません。過去の被害では、行為当時の法律、改正の経過措置、被害時の年齢を確認します。時間が経ったという理由だけで、ご自身で相談を諦めないでください。

民事上も、警察に相談しているだけで時効が止まるわけではありません。内容証明郵便等による催告は、一定の場合に6か月の時効完成猶予となりますが、催告を繰り返せば無期限に延長できる制度ではありません。期限が近ければ、訴訟など必要な手続を早急に検討します。

法令:刑事訴訟法235条・250条以下 / 刑法176条・177条等 / 民法150条・724条・724条の2。旧法下の被害には経過措置の確認が必要です。

4.捜査・刑事裁判にどう関われますか

進捗の確認と、不起訴になった場合

警察・検察に、安全上の不安や、処分結果等の連絡を希望することを伝えます。告訴・告発をした方には、起訴・不起訴等の処分の通知があり、不起訴の理由の説明を求めることもできます。不起訴に不服がある場合は、理由と証拠を確認し、検察審査会への申立て等を検討します。不起訴は、民事上の損害賠償責任が必ず否定されるという意味ではありません。

根拠:刑事訴訟法260条・261条 / 裁判所・検察審査会

裁判への参加・意見の陳述・プライバシーへの配慮

殺人、傷害、過失運転致死傷など一定の事件では、検察官を通じて申し出て、裁判所の許可により被害者参加人として関与できます。要件を満たす場合は国選被害者参加弁護士の制度もあります。参加制度の対象や、できる質問・意見の範囲には制限があります。

このほか、心情・意見の陳述、優先的な傍聴への配慮、記録の閲覧・コピー、法廷で氏名等を明らかにしない措置、証人への付添い・遮へい・映像による証言などが設けられています。制度ごとに要件があるため、「相手と顔を合わせたくない」「住所を知られたくない」といった希望を、早めに検察官や弁護士へ伝えましょう。

制度の対象・申出先:裁判所・刑事手続における犯罪被害者のための制度

5.加害者側から示談を求められたら

示談をするかどうか、いつ話し合うかは、ご自身の意思を大切にして決めてください。相手の弁護士は相手の代理人です。被害者側の立場で助言する弁護士に確認することもできます。直接会うことが負担であれば、連絡窓口を代理人にまとめる方法があります。

  • 賠償の範囲:治療費、休業損害、慰謝料、後遺障害などを含むか。治療途中で将来の損害を確定してよいか。
  • 支払方法:金額、期限、振込先、分割時の不払対応、担保や強制執行に備えた文書の要否。
  • 清算条項:「今後一切請求しない」という条項で、後から判明する損害まで放棄しないか。
  • 刑事手続に関する条項:告訴の取消し、処罰を求めない旨、嘆願書の提出等が入っていないか。
  • 安全・秘密保持:接触禁止や個人情報の扱い。医療・公的支援・弁護士への相談や捜査への協力まで妨げる内容になっていないか。

親告罪の告訴は、原則として起訴前まで取り消せますが、一度取り消すと再び告訴できません。非親告罪では、示談や告訴の取消しをしても刑事手続が必ず終了するわけではありません。反対に、示談が成立しなくても損害賠償を請求できます。支払前に署名・取消しを求められたときは、履行の確実性を含めて慎重に検討してください。

根拠:刑事訴訟法237条 / 民法695条以下(和解)

6.損害賠償を求め、実際に回収するには

刑事裁判で有罪になっても、被害金が自動的に返るわけではありません。民事上の請求や給付・分配の手続を別途検討します。加害者への不法行為に基づく請求では、事件と損害の因果関係、損害額、支払能力が重要です。

治療費、通院交通費、休業損害、後遺障害による逸失利益、慰謝料などが問題になりますが、支出がすべて当然に認められるわけではありません。領収書や収入資料を保存し、金額の根拠を整理します。民法709条・710条

使える手続を選ぶ

  • 交渉・民事調停・訴訟:証拠、請求額、費用、相手の資産に応じて検討します。
  • 損害賠償命令制度:故意の犯罪による死亡・傷害、一定の性犯罪等の対象事件では、刑事裁判の証拠を利用する手続があります。単純な詐欺・窃盗などすべての事件で使える制度ではなく、申立ては刑事事件の弁論終結までにする必要があります。
  • 刑事和解:被告人との賠償の合意を刑事裁判の公判調書に記載する制度があります。所定の手続により、支払われないときの強制執行に用いることができます。

裁判所の説明:犯罪被害者保護施策 / 「犯罪によって被害を受けた方へ」2026年版[PDF]

財産を確保することと、判決後の回収

相手が財産を処分するおそれがある場合は、預金や不動産等の仮差押えを検討します。請求権と保全の必要性の疎明、担保の準備等が必要で、単に被害を申し出れば口座を押さえられるわけではありません。警察の捜査とは役割が異なります。

判決や執行力のある調書・公正証書等を得ても支払われなければ、財産の差押えを検討します。財産開示手続や第三者からの情報取得手続が使える場合もあります。勤務先情報の取得などには請求権の種類による制限があるため、被害類型に応じた検討が必要です。回収可能性と費用を確認して方針を決めましょう。

関連解説:金銭を請求したい方へ / QA No.1930・財産開示手続の改正

7.給付金・治療費・生活の支援

犯罪被害給付制度

故意の犯罪行為による死亡、重傷病、障害について、一定の要件を満たす被害者・遺族を対象とする国の制度です。遺族給付金・重傷病給付金・障害給付金があります。詐欺・窃盗による金銭被害だけを、そのまま補償する制度ではありません。

2024年6月15日施行の改正では、給付基礎額の引上げ等が行われました。金額は被害内容や収入、遺族の状況等で異なり、損害賠償や他の公的給付との調整もあります。

申請は、原則として犯罪行為による死亡・重傷病・障害の発生を知った日から2年、又はそれらが発生した日から7年を過ぎるとできなくなります。やむを得ない理由がある場合の特例等があるため、期間が気になる方もまず相談してください。住所地を管轄する都道府県公安委員会への申請について、警察の被害者支援担当に相談します。仮給付の制度もあります。

要件・期限・申請方法:警察庁・犯罪被害給付制度 / 制度案内[PDF・2025年6月改訂]

自治体や医療・生活面の支援も確認しましょう

自治体によっては、見舞金、転居、家事、通院、心理相談等の支援があります。対象者、居住要件、必要書類、申請期限は地域ごとに異なります。お住まいの都道府県・市区町村の犯罪被害者等支援窓口に、利用できる制度をまとめて確認すると負担を減らせます。

例えば、川崎市の犯罪被害者等支援相談や、札幌市の支援制度では、自治体の相談・支援内容が案内されています。ほかの地域の方は、警察庁の支援窓口案内から地域の窓口を確認してください。

犯罪被害によるけがでも健康保険を使える場合があります。第三者行為による傷病届等の手続について保険者に確認しましょう。仕事中・通勤中の被害では労災保険の検討が必要な場合もあります。治療費や生活費の不安は、受診先の相談員や支援窓口にも伝えてください。

9.被害の種類に応じた注意点

性被害・DV・ストーカー・子どもの被害

相談先に「安全に折り返せる電話番号・時間」「留守番電話を残してよいか」を伝えましょう。加害者が端末を見られる場合は、安全な端末から相談します。DVでは保護命令や避難先、ストーカーでは警察の警告・禁止命令等を含め、安全確保の方法を検討します。関係性や行為の内容により使える制度は異なります。

子どもが被害を話した場合は責めずに受け止め、周囲の大人が何度も詳しく聞き出すことは避けましょう。警察・医療・専門支援につなぎ、本人の負担を小さくすることが大切です。性被害の相談は内閣府の相談窓口案内もご覧ください。

振り込め詐欺・SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺

振込みをしてしまったら、早急に警察と振込先の金融機関へ連絡します。口座に資金が残っていれば、振り込め詐欺救済法による被害回復分配金の対象となる場合があります。全額回収できるとは限らず、資金がなくなっていれば支払われない場合もあります。

警察への届出だけで分配金の申請が完了するわけではありません。金融機関に公告・申請期間を確認し、指定期間内に申請してください。「取り戻すための保証金」などの追加送金を求められても、送金せず相談しましょう。

金融庁・振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ / 預金保険機構・振り込め詐欺救済法に基づく公告

従業員等による横領

帳簿、送金履歴、アクセス記録等を適法に保全し、被害額を確認します。刑事告訴、損害賠償、財産保全、人事上の措置を切り分けて検討します。本人の家族には、家族という理由だけで返済義務が生じるわけではありません。保証等を検討する場合も、本人の自由意思、書面などの要件を確認し、威迫して支払を求めるような対応は避けてください。

関連解説:横領の被害を受けた方へ(旧記事の記載は現行法に照らして確認してください)

報道・SNSとの付き合い方

取材に応じる義務はありません。氏名や写真の公表範囲、家族への影響、窓口の一本化を検討できます。ネットで相手を実名公表すると、プライバシーや名誉をめぐる別の紛争、拡散による負担が生じることもあります。被害の発信を希望する場合も、目的と範囲を支援者や弁護士と整理すると安心です。

10.給付金に関する最高裁判例

最高裁第三小法廷・2024年3月26日判決

最高裁は、犯罪被害者と同性のパートナーも、犯罪被害者等給付金支給法5条1項1号の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当し得ると判断しました。同性であることだけを理由に、遺族給付金の対象から除外することはできないという判断です。

ただし、個々の共同生活の実態等について判断が必要で、この判決は原判決を破棄して差し戻したものです。すべての同性パートナーへの支給や、他の法律上の配偶者資格まで一律に認めた判決ではありません。申請時には関係や生活の状況を整理して相談してください。

事件番号:令和4年(行ツ)第318号・同年(行ヒ)第360号。裁判所・判例情報 / 判決全文[PDF]

11.よくあるご質問

証拠が少なく、相手の名前も分かりません。相談できますか。

相談できます。日時・場所・相手の特徴・やり取りなど、分かることから整理します。証拠が乏しい場合にも、記録の保存や捜査で確認できる資料がないか検討します。逮捕や起訴の見込みとは分けて考えましょう。

相手と会いたくありません。家族や弁護士を通せますか。

示談の窓口を弁護士にすることは可能です。家族の同席や公的手続の代理については、本人の意思、代理権、各制度の要件を確認します。警察や裁判所でも、接触の回避や付添い等を早めに相談してください。

不起訴や無罪になったら、賠償は請求できませんか。

刑事上の判断と民事上の責任は別です。証拠や判断理由によって見込みは変わりますが、不起訴・無罪だけを理由に民事請求が当然に不可能になるわけではありません。

治療が終わっていません。示談に応じるべきでしょうか。

治療経過や後遺障害が不明なまま全損害を清算すると、追加請求が難しくなるおそれがあります。治療費の一部支払を先行させる方法や、未確定の損害を示談の対象から留保する方法などを検討します。

被害から何年も経っています。それでも相談できますか。

相談できます。時効や申請期限は制度ごとに異なり、法改正の経過措置や例外の検討が必要なこともあります。刑事・民事の手続が難しい場合でも、医療や心理面などの支援につながる可能性があります。

ひとりで判断する前に

12.新銀座法律事務所の無料法律相談

「被害届と告訴のどちらがよいか」「示談書に署名してよいか」「賠償請求や回収をどう進めるか」など、現在お困りの点をご相談ください。

0120-48-5791

受付:平日 9:00〜21:00 / 土日祝日 9:00〜18:00

電話・LINE・メールフォームから受け付け、弁護士が電話で一般的な見解をお伝えする、5分程度を目安とした無料相談です。メール・LINEでの文章回答ではありません。詳しい資料の検討を伴う有料相談や、交渉・告訴・訴訟等の依頼は別途ご案内します。

相談時は、①被害の時期と概要、②警察への相談状況、③手元の資料、④相手から提示された期限や書面、⑤希望する解決を、分かる範囲でお知らせください。安全に連絡を受けられる方法・時間もお伝えください。

相談内容・受付条件の最新案内:新銀座法律事務所・法律相談案内。緊急の通報先は110番・119番です。

15.法令・公的資料・PDF

本文の各項目にも根拠を掲載しています。以下は制度の詳細を確認するための公式資料です。PDFは発行機関の原本にリンクしています。

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