横領罪・背任罪の被害にあった場合(令和2年1月8日最終改訂)

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1、よく相談されるのは、「社員に会社のお金を使い込みされた」「社員に会社の商品・備品を大量に持ち出されオークションで転売された」「不正融資・不正取引により会社資金に損失を生じた」という事案です。行為態様によって、「業務上横領罪」「背任罪」の成立の可能性があります。

2、横領罪(刑法252条=5年以下の懲役)は、自分が占有(管理)する他人の所有物を、不法に領得する行為です。領得行為とは、「他人の物を自己の物のように処分し、もしくは処分しうべき状態に置くこと(大審院明治42年8月31日判決)」を意味します。職務上の占有物を横領した場合は、より重い、業務上横領罪(刑法253条=10年以下の懲役)が適用されます。
 会社で、業務上金銭の管理をしていた社員が、会社の金銭を着服し、現金を下ろして使ってしまったり、自己の口座に移したりする行為は、業務上横領罪に該当しうる行為となります。顧客リストの持ち出し行為も業務上横領罪が適用される可能性があります。

3、背任罪(刑法247条=5年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金)は、他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で任務に背く行為をして、本人に財産上の損害を加える行為です。会社の取締役や監査役など役員が背任行為を行った場合は、会社法960条の特別背任罪が適用され、法定刑は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金となっております。
 背任罪の典型事例は、融資担当者による不正融資や、抵当権の二重設定(二重抵当)事案ですが、顧客リストやプログラムの社外コンピューターへのコピーが適用される可能性もあります(東京地裁昭和60年3月6日、同昭和60年3月20日、財物の領得行為が無いので横領罪にはなりません)。判例は少ないですが、機密情報の私物USBメモリへのコピーや、私的メールアドレスへの送信も、適用される可能性があります。

4、被害回復について。
会社が横領や背任の被害を受けた場合、会社が取るべきベストの対応は、被害の回復に努めることです。会社の経営者は、損失を生じたのは管理監督に不備があったということで、株主から損害賠償責任(会社法423条、同847条、責任追及の訴え=株主代表訴訟)を問われる恐れがあります。経営者としては、責任追及を回避するためにも、被害回復への最大限の努力をするべきでしょう。加害者及びその家族親族と交渉し「損害金額についての合意」「返還についての合意」を和解合意書(公正証書、強制執行認諾文言つき執行証書)として取り交わすのです。入社時に「身元引受書」を作成している場合は、連帯保証人に対しても被害金の請求をできる場合もあります。勿論、被害者として刑事告訴(刑事訴訟法230条)をすることはできますが、加害者を刑事裁判に掛けて懲役刑の有罪にして刑務所に収監されたとしても被害金は戻ってきません。むしろ加害者に仕事をしてもらい毎月の給料から分割で弁済を受けられるようにすべきです。加害者及びその家族親族との交渉を通じて、出来る限り被害金の弁済を受けることができるよう試みて下さい。弁護士を代理人に立てて、「被害回復に協力しない場合は関係資料を添付して刑事告訴する」という旨の内容証明郵便を送るとよいでしょう。

考えられる被害回復方法は次の手段があります。
@損害金の一括弁済と引換に和解合意書を公正証書(強制執行認諾文言つき執行証書)で作成する。
A分割弁済を認める場合は、両親などの連帯保証人を要求する。
B分割弁済を認める場合は、両親所有不動産への抵当権設定登記を要求する。
C分割弁済を認める場合は、和解合意書に犯罪事実と故意について自白する内容の条項をいれる。
 「返済の遅滞があった場合は、本合意書を資料として刑事告訴することを了解する」という条項をいれる。

合意書の書式例はこちらになります。

5、データベース事例集検索

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6、無料電子メール相談:リンク先のフォームに書込後、送信ボタンを押して下さい(@回答は原則24時間以内の電話回答となり ます、A簡単で一般的な回答になります、B記入漏れがあると回答できません、Cご質問内容が500字を越えると回答できません、Dご不在の場合は留守番電話に回答する場合があります。Eメール返信する場合もありますので、shinginza.comからのメールを受信できるよう設定お願いします。)

7、無料電話法律相談:03−3248−5791までご相談内容をご連絡頂ければ、担当弁護士から簡単なご回答を差し上げておりますので、ご参考になさって下さい。



≪条文参照≫

刑法第252条(横領)自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
2項 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

第253条(業務上横領)業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

第247条(背任)他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

会社法第960条(取締役等の特別背任罪)次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  発起人
二  設立時取締役又は設立時監査役
三  取締役、会計参与、監査役又は執行役
四  民事保全法第五十六条 に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者
五  第三百四十六条第二項、第三百五十一条第二項又は第四百一条第三項(第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者
六  支配人
七  事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
八  検査役
2  次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は清算株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該清算株式会社に財産上の損害を加えたときも、前項と同様とする。
一  清算株式会社の清算人
二  民事保全法第五十六条 に規定する仮処分命令により選任された清算株式会社の清算人の職務を代行する者
三  第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項又は第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定により選任された一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者
四  清算人代理
五  監督委員
六  調査委員

会社法第423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2項 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
3項 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。
一  第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役
二  株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役
三  当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(委員会設置会社においては、当該取引が委員会設置会社と取締役との間の取引又は委員会設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)

会社法第847条(責任追及等の訴え)六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。
2項 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。
3項 株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。
4項 株式会社は、第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において、当該請求をした株主又は同項の発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等若しくは清算人から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。
5項 第一項及び第三項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
6項 第三項又は前項の責任追及等の訴えは、訴訟の目的の価額の算定については、財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなす。
7項 株主が責任追及等の訴えを提起したときは、裁判所は、被告の申立てにより、当該株主に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。
8項 被告が前項の申立てをするには、責任追及等の訴えの提起が悪意によるものであることを疎明しなければならない。

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