2026年10月6日更新
外国籍の方が逮捕されたときは、刑事事件への対応と、日本で暮らし続けられるかという在留上の問題を同時に考える必要があります。逮捕されたら必ず退去強制になるわけではありませんが、執行猶予が付けば必ず在留できるわけでもありません。在留カードに記載された資格、罪名、刑の内容、家族関係などによって結論が異なります。
まず確認すること:①本人の氏名・国籍・使用言語、②留置先と逮捕日、③在留資格と在留期限、④疑われている罪名、⑤日本の家族・勤務先、⑥入管からの通知です。ご家族や勤務先の方からも、早い段階で弁護士に相談してください。
1 刑事手続と入管手続は別の手続です
日本国内で犯罪をした外国人には、原則として日本の刑法が適用されます(刑法1条)。捜査機関が犯罪の有無を調べ、検察官が起訴・不起訴を決め、起訴された事件では裁判所が有罪・無罪や刑を判断します。一方、退去強制、在留期間更新、在留資格取消しなどは、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づく行政手続です。
| 問題 | 判断の内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 刑事処分 | 不起訴、無罪、罰金、拘禁刑など | 逮捕は有罪の確定ではありません。 |
| 退去強制 | 入管法24条等の事由に該当するか | 罪名・在留資格・刑の内容を照合します。 |
| 在留期間更新・資格変更 | 継続在留・資格変更を認めるか | 退去強制事由がなくても問題となり得ます。 |
| 永住・帰化 | 永住許可又は日本国籍取得の要件を満たすか | 通常の更新よりも別の要件・審査があります。 |
不起訴になっても、別に不法残留などがあれば入管手続が進むことがあります。逆に、刑事事件だけを理由に逮捕直後から在留資格が自動消滅するわけではありません。刑事と入管の資料・期限をまとめて弁護士に示すことが大切です。
2025年6月1日から懲役・禁錮は拘禁刑に一本化されました。施行前の行為や過去の刑には経過措置があるため、旧判決の「懲役・禁錮」という表記も確認します。
2 逮捕されたら――通訳・弁護士・領事機関への連絡
日本語が十分に理解できない場合は、理解できる言語と通訳が必要であることを明確に伝えてください。日常会話ができても、法律用語や供述調書の意味を正しく理解できるとは限りません。裁判で国語に通じない人に陳述させる場合には通訳を付けます(刑事訴訟法175条)。取調べでも、必要な通訳を求め、訳が分からない・意味が違うときはその場で訂正を求めます。
外国人にも黙秘権と弁護人の援助を受ける権利があります。取調べでは、自分の意思に反して供述する必要はありません(刑事訴訟法198条2項)。調書の読み聞かせ・通訳内容を確かめ、言っていないことや違う内容があれば訂正を申し立ててください。内容を理解・確認しないまま署名押印しないことが重要です。
逮捕後は警察に「弁護士を呼んでください」「当番弁護士をお願いします」と伝えられます。勾留された被疑者は、資力などの条件を満たせば国選弁護人を請求できます。家族による一般面会と、弁護人との接見は制度が異なり、弁護人は原則として立会人なしに接見できます。
また、領事機関への通報や領事官との面談について説明を受け、希望を伝えることができます。国籍や二国間条約により取扱いが異なるため、大阪府警の領事通報に関する案内も参考になります。本国への情報提供に不安がある場合は、弁護士にその事情も伝えてください。
3 刑事事件の流れと弁護士の役割
通常、警察は逮捕から48時間以内に送致し、検察官は受領から24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に勾留請求又は釈放を判断します。裁判官が勾留を認めると原則10日間、やむを得ない事情があれば通常さらに10日間まで延長されます。これは一つの被疑事実についての一般的な説明であり、再逮捕や起訴後の勾留まで含めた総期間の上限ではありません。
弁護士は、通訳を介して言い分を確認し、防犯映像、連絡履歴、目撃者などの証拠を確保します。身元引受人や住居を整え、勾留に対する不服申立て、起訴後の保釈請求も検討します。事実を争う場合は、在留への不安から身に覚えのない犯罪を認めることがないよう、証拠に基づいて方針を決めます。
事実を認める事件では、被害弁償、被害者の意向に配慮した示談交渉、治療や生活環境の改善などを進め、不起訴や適切な量刑を求めます。示談は不起訴・在留継続を保証するものではありません。通訳の必要性、刑事弁護と入管対応それぞれの依頼範囲・費用も確認してください。
図は一般的な刑事手続を示すものです。外国人の事件では、これとは別に入管の調査・審査が進む場合があります。刑事事件の釈放と、入管収容からの解放は同じではありません。
4 犯罪によって退去強制の対象となる主な場合
入管法24条は複数の退去強制事由を定めています。次の表は刑事事件で特に問題となる規定の要約です。これだけですべての事由を網羅するものではありません。
| 規定 | 主な内容 | 刑の注意点 |
|---|---|---|
| 24条4号リ | 同号ニ~チに該当する者のほか、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者 | 全部執行猶予は除外。一部執行猶予で実際に執行される部分が1年以下の場合も除外。 |
| 24条4号の2 | 別表第一の資格で在留し、窃盗、強盗、詐欺、傷害など同号所定の罪により拘禁刑に処せられた者 | 1年以下でも対象となり、全部執行猶予を除外する規定もありません。 |
| 24条4号チ | 同号に列挙された薬物関係法令等の違反により有罪判決を受けた者 | 執行猶予や罰金だから対象外とはいえません。 |
| 24条4号ロ等 | 不法残留、不法入国など | 刑事裁判で有罪となることを要件としない事由もあります。 |
「1年を超える」と「1年以上」は異なります。また、4号リに該当しなくても別の号に該当することがあります。略式命令による罰金も刑事処分ですので、罪名と適用法条を確認せず「罰金なら大丈夫」と判断することはできません。
5 在留資格による違い――留学生・就労資格・永住者・配偶者
留学、技術・人文知識・国際業務、家族滞在、短期滞在などは入管法別表第一の資格です。例えば、この資格で在留する人が窃盗罪で拘禁刑1年・全部執行猶予の判決を受けた場合、4号リに当たらなくても、4号の2による退去強制が問題となります。
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者は別表第二の資格です。4号の2の対象ではありませんが、薬物犯罪に関する4号チや、1年を超える実刑などを定める4号リ、その他の事由を確認する必要があります。日本人と結婚していても、実際の在留資格が留学などであれば別表第二として扱われるとは限りません。
永住者は日本国籍を取得した人ではなく、退去強制の対象になり得ます。また、特別永住者は永住者とは別の地位であり、入管特例法22条により退去強制事由が限定されています。通常の在留資格と同じ表だけで判断してはいけません。
家族の国籍、婚姻の実態、子どもの監護・教育、介護や病気などは重要ですが、それだけで当然に在留が保障されるわけではありません。在留カード又は特別永住者証明書の表裏を確認して相談してください。
6 在留期間更新・在留資格取消しへの影響と2027年改正
退去強制事由に該当しない場合も、犯罪行為は在留期間更新・資格変更の審査で不利に考慮され得ます(入管法20条・21条)。事件の内容、処分、反省・再発防止、在留活動の実態、家族・生活基盤などを資料で説明します。不起訴の理由も一様ではないため、不起訴処分告知書など、取得できる資料を弁護士と確認してください。
逮捕・勾留中でも在留期限が自動的に延びるわけではありません。更新等を適法に申請した場合の特例期間と、単に捜査中であることは別です。期限が迫っているときは、家族・弁護士から入管への申請方法を早急に確認します。
在留資格取消しは22条の4等に基づく別の制度です。虚偽申請、資格に応じた活動を一定期間行っていないことなど、法定の事由と正当な理由の有無を調べます。犯罪を契機に別の取消事由が発覚することもあります。
施行前の改正に注意(2026年10月6日現在)
2024年改正による永住者の新たな取消事由とそのガイドラインは、2027年4月1日からの制度です。入管法上の義務違反、故意の公租公課不払い、一定の犯罪による拘禁刑などについて新たな規定が設けられます。現在既にすべて適用されているものとして説明してはいけません。
施行後も個別事情の判断が必要で、取消しと他の在留資格への職権変更の仕組みもあります。生活困窮による不払いと故意の不払い、対象となる犯罪とそれ以外を区別します。特別永住者はこの改正の対象ではありません。永住者の在留資格取消しに関する公式ガイドラインと公式Q&Aを確認してください。
7 退去強制手続・収容・監理措置と不服申立て
一般に、入国警備官の違反調査、入国審査官の違反審査、争いがある場合の特別審理官による口頭審理、法務大臣への異議の申出という手続があります。2024年6月10日施行の改正後は、収容に代わる監理措置の制度も設けられています。刑事勾留中や服役中に入管手続が進むこともあります(入管法63条)。
認定に不服がある場合の口頭審理の請求、判定に不服がある場合の異議の申出には、通知を受けた日から3日以内という短い期限があります(48条・49条)。通知書、受領日、説明に用いられた言語を記録し、すぐに弁護士へ連絡してください。意味を理解せず「認定に服する」書類へ署名することは避けましょう。
監理措置は収容せずに手続を進める制度ですが、指定住居、出頭、監理人との連絡等の条件があります。仮放免も在留資格の付与ではなく、当然に就労が許されるわけではありません。就労の可否や移動の条件を個別の決定書で確認します。
違法な処分には取消訴訟などを検討できますが、訴訟を起こすだけで送還が自動的に止まるわけではありません。執行停止の要否も直ちに相談してください。退去強制手続・出国命令手続の流れ(出入国在留管理庁・PDF)と各段階の公式説明もご参照ください。
8 在留特別許可――日本での生活を続けるための事情と資料
退去強制対象者でも、入管法50条に基づく在留特別許可が認められる場合があります。現在は申請手続が法定されており、単に「嘆願するだけの制度」と理解するのは正確ではありません。原則として、収容又は監理措置の決定等の所定の段階から、退去強制令書が発付されるまでが申請可能期間です。発付後に初めて準備すればよいと考えず、公式の申請案内に沿って早期に対応します。
判断では、在留希望の理由、家族、素行、入国経緯、在留期間とその間の法的地位、退去強制の理由、人道上の事情などが考慮されます。日本人の配偶者や子がいることは重要な事情になり得ますが、犯罪の悪質性・反復性、虚偽申告なども評価されます。
- 家族関係:戸籍・出生証明、同居・扶養の実態、子どもの在学・監護状況。
- 生活基盤:雇用契約、収入、住居、納税・社会保険の履行状況。
- 事件後の対応:弁償・示談、治療、再発防止計画、支援者の具体的な協力内容。
- 人道上の事情:診断書、介護の必要性、本国での生活や治療が困難である事情。
無期又は1年を超える拘禁刑の実刑等に処せられた場合など、50条1項ただし書に該当すると、許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる「特別の事情」が必要となり、基準が厳しくなります。全部執行猶予及び一部執行猶予で非猶予部分が1年以下の場合には、この刑に関する除外規定があります。現行ガイドラインに即して、有利・不利な事情を隠さず整理することが大切です。
9 判例から分かること――外国人の権利と在留審査
最高裁昭和53年10月4日大法廷判決(マクリーン事件・民集32巻7号1223頁)は、権利の性質上日本国民だけを対象とするものを除き、基本的人権の保障が在留外国人にも及ぶとしました。一方で、憲法上、入国・在留継続の権利が当然に保障されるわけではないとし、在留期間更新について法務大臣の広い裁量を認めました。
ただし、判断に事実の基礎がない、又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかな場合には、裁量の逸脱・濫用として司法審査の対象になります。「外国人には人権がない」「入管の判断は裁判で争えない」という意味ではありません。
この判決は、政治活動等を考慮した在留期間更新の事件であり、窃盗や薬物犯罪の刑の重さから一律に結論を導く判例ではありません。現在の事件では、改正後の条文・ガイドライン、家族や子どもへの影響、再発防止などを踏まえ、個別の事実を立証する必要があります。弁護士への相談は、不利な判断の理由と争える点を具体化するために役立ちます。
武蔵野市公表の関連裁判例資料(PDF・マクリーン事件は2~8ページ)で判決本文を確認できます。
10 永住許可・帰化への影響
永住許可は外国籍のまま在留する制度、帰化は日本国籍を取得する制度です。永住許可では入管法22条と公式ガイドラインに基づき、素行、生活基盤、公的義務の履行、日本の利益への適合などが審査されます。罰金や拘禁刑などの処分歴は重要な問題となります。
「初犯で少額の罰金なら影響しない」「刑が消滅すれば必ず許可される」とは断言できません。罪名、刑、経過期間、再犯の有無、交通違反や納税等も含めた事情を確認します。申請書の質問には正確に答え、過去の処分を隠すことは避けてください。日本人の配偶者等に一部要件の特例がある場合も、刑事事件への影響がなくなるわけではありません。
2026年10月1日改定の永住許可ガイドラインには、2027年4月1日以降の申請からの適用案内があります。申請時期による経過的な取扱いもあるため、改定日だけで適用版を決めず、永住許可の公式申請案内で確認してください。永住申請をしても、現在の在留期限が自動で延びるわけではありません。
帰化では国籍法5条1項3号の素行善良要件が問題となり、犯罪歴の有無・態様、納税状況、社会への迷惑などが総合的に考慮されます。法務省の国籍Q&Aを参考に、法務局での事前相談と弁護士への相談を組み合わせて準備しましょう。
11 再入国と、相談までに準備する資料
日本から出国できても、再び入国できるとは限りません。入管法5条の上陸拒否事由には、退去強制歴に関する期間の定めのほか、日本又は外国での一定の刑罰歴、薬物犯罪などがあります。刑罰歴については「1年以上」の拘禁刑等が問題となる規定があり、退去強制の「1年を超える」とは区別が必要です。執行猶予も含めて確認し、安易に「数年待てば必ず戻れる」と判断しないでください。
相談時は、次の資料を可能な範囲で準備すると見通しを立てやすくなります。すべてそろうまで相談を待つ必要はありません。
- 旅券、在留カード又は特別永住者証明書、在留申請中であることが分かる書類。
- 逮捕日、警察署・検察庁・裁判所の名称、事件番号、弁護人の連絡先。
- 起訴状、判決書、略式命令、処分通知、入管の通知書と受領日。
- 家族・住居・仕事・学校の資料、病気や介護などの事情が分かる資料。
- 本人の第一言語、必要な通訳、家族と連絡可能な方法・時間帯。
刑事国選弁護人が選任されても、入管手続・行政訴訟まで当然に同じ依頼に含まれるわけではありません。刑事と入管の担当者間で方針・資料を共有し、どの期限を誰が管理するかを明確にしておきましょう。
12 新銀座法律事務所の無料相談
外国人の刑事事件、通訳、退去強制、在留資格更新・永住や帰化への影響について、お早めにご相談ください。
受付:平日9:00~21:00/土日祝日9:00~18:00
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14 参考法令・公的資料・PDF
- 出入国管理及び難民認定法:5条・20~24条・48~50条等
- 入管特例法:特別永住者・22条
- 刑事訴訟法:通訳・接見・取調べ等
- 刑法:国内犯・拘禁刑等
- 国籍法:帰化の要件
- 出入国在留管理庁:退去強制手続・出国命令手続の流れ(PDF)
- 在留特別許可に係る現行ガイドライン・関連資料
- 在留特別許可に係るガイドライン(PDF)
- 在留特別許可申請:対象者・申請可能期間・資料
- 退去強制・出国命令・上陸拒否期間短縮Q&A
- 永住許可:申請時期ごとのガイドライン適用案内
- 永住者の取消ガイドライン(2027年4月1日運用開始)
- 法務省:国籍Q&A
- 大阪府警:領事機関への通報等
- 武蔵野市:マクリーン事件等の判決本文(PDF)
- 警視庁:捜査や裁判について(刑事手続図の出典)
情報確認日:2026年10月6日。具体的な処分は、事実関係、行為時の法令、証拠、個別事情によって異なります。