経営者保証ガイドライン

民事|債務整理|私的整理|全銀協ガイドライン|制度趣旨|経営困難になった企業の再起更生|要件、手続き|会社債権者と中小企業経営者の利益対立に基づく解釈と指針

質問

私はとある事業会社の代表取締役を務めるものです。会社の経営に行き詰まり、法人の破産手続を検討しているのですが、ひとつ懸念があります。会社が銀行から借り入れている借入金を、私が個人保証をしていることです。法人が破産手続をすれば、私に保証債務の履行請求がくることになりますが、とても払える金額ではありません。このような場合、私も個人破産をしなければならないでしょうか。官報への公告や、信用機関へのブラックリスト登録、なにより長年住んだ自宅も手放さなければならないことを考えると、個人破産は避けたいです。良い方法はありますか。

回答

1 法人が借り入れた債務への個人保証については、経営者保証ガイドラインに基づき、破産手続をせずに、整理できる場合があります。

2 経営者保証ガイドラインとは、経営者の個人保証の整理に関する自主的なルールです。法的な強制力はないものの、各金融機関においては、同ガイドラインに従った協議に応じる運用となっております。

3 経営者保証ガイドラインの特色は、一定の要件を満たせば、破産手続を経ないで保証債務の返済免除を受けることができ、官報への掲載や信用情報への影響も生じません。また破産の場合よりも多くの資産を手元に残せる可能性があり、場合によっては、自宅を手元に残すこともできます。

4 経営者保証ガイドラインを利用するためには、一定の弁済が必要なのでは、と考える方もいらっしゃいますが、必ずしも法人および個人の財産からの弁済がなくとも(いわゆるゼロ弁済)、ガイドラインを利用できます。

5 お困りの方はお近くの法律事務所にご相談ください。弊所においても無料法律相談を承っております。

6 関連事例集1545番その他、任意整理に関する関連事例集参照。

解説

1 経営者保証ガイドラインとは

経営者保証ガイドラインとは、中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルールです。

※参考リンク、経営者保証ガイドライン|一般社団法人全国銀行協会

経営者の個人保証は、経営者への規律付けや信用補完といった資金調達の円滑化に寄与する一方、経営者保証への依存によって経営者による思い切った事業展開や早期の事業再生等の障害になっている面もあります。

経営者保証ガイドラインでは、中小企業への融資について、合理的な保証契約のあり方を示し、個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた取組の促進を図っております。

従前、法人破産の場合に、個人保証の履行を求められた代表者は、個人破産をする他に選択肢がありませんでしたが、経営者ガイドラインの適用によって個人破産を逃れて一定の残存資産を手元に残しつつ生活の再建を図ることが可能となりました。

具体的な手続きとしては、破産法人代表者の代理人である弁護士が私的整理手続きとして債権者に代表者個人の債務整理を行うことを受任通知し、経営者保証ガイドラインを適用する整理案を提案することによって各債権者との協議を行うことになります。

2 経営者保証ガイドラインを利用するメリット|破産との違い

具体的な経営者保証ガイドラインを適用した場合のメリットを、個人破産手続と比較してみてゆきます。

⑴ 手元に破産よりも多くの資産を残すことができる

破産手続の場合、手元の残すことができるのは自由財産のみであり、現金99万円や一定の差押禁止財産のみでした(破産法34条3項参照)。

これに対して経営者保証ガイドラインによる場合、自由財産に加えてインセンティブ資産を手元に残せる場合があります。インセンティブ資産とは、一定の生活費(月数×33万円)、華美でない自宅を指します。特に自宅については、破産手続の場合は換価した上で処分しなければなりませんが、経営者保証ガイドラインによれば手元に残すことができます。さらにオーバーローン物件(住宅評価額<住宅ローン残高)については、無価値の資産として残存資産とできる可能性があります。この点は、後記4(4)でも述べます。

ただしインセンティブ資産の保有は無条件に認められるわけではなく。経営者ガイドラインの適用によって各金融機関の回収可能額が増加したことを説明しなければなりません。この点は後記4(4)で述べます。

⑵ 保証人の個人情報が公開されないこと

破産手続の場合、破産開始決定については官報に記載されますし、信用情報機関へも登録されます。

これに対して経営者保証ガイドラインによる場合、やり取りは金融機関との間で完結することから官報に記載されることはありませんし、信用情報機関へ登録されることもありません。

特に近年はキャッシュレス化が進み信用情報機関に登録されてしまうとクレジットカードの使用ができず日常生活に多大な不利益が生じますから、この点のメリットは大きいといえます。

⑶ 一時停止要請後の収入をすぐに使用できること

経営者ガイドラインを利用することで、一時停止要請後の収入をすぐに生活費や新たな事業の活動費に充てることができます。

経営者保証ガイドラインを利用する場合、保証人から、対象の各金融機関に対して、返済猶予のお願い(一時停止等の要請)します。一時停止等の要請によって、保証債務の返済が猶予され、また弁済原資となる財産の基準時点となります。

右基準時点以降の収入は、無条件で認められる残存資産に該当することから、金融機関側においても相殺することができず、生活の再建に充てることができるのです。

3 法人破産時における経営者保証ガイドラインの要件

続いて経営者保証ガイドラインを利用するための要件を見てゆきましょう。主たる債務者である法人が破産した場合の、個人保証に対する経営者保証ガイドラインの適用には次の要件を満たす必要があります。

⑴ 経営者保証ガイドラインの適用のための7つの要件

① 保証契約の主たる債務者が中小企業であること

② 保証人が個人であり、主たる債務者である中小企業の経営者であること( 実質的な経営権を有している等も含む)

③ 主たる債務者及び保証人の双方が弁済について誠実であり、対象債権者の請求に応じ、それぞれの財産状況等(負債の状況を含む。)について適時適切に開示していること

④ 主たる債務者及び保証人が反社会的勢力ではなく、そのおそれもないこと

⑤ 主たる債務者である法人に係る破産手続、民事再生手続等の開始申立て等を、このガイドラインの利用と同時に現に行い、又はこれらの手続が係属、既に終結していること

➅ 主たる債務者の資産及び債務並びに保証人の資産及び保証債務の状況を総合的に考慮して、主たる債務及び保証債務の破産手続による配当よりも多くの回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること(経済的合理性の要件)

⑦ 保証人に免責不許可事由(破産法第252条第1項)が生じておらず、そのおそれもないこと

以下では、一読了解が難しい、➅経済的合理性と⑦保証人の免責不許可事由の概略を述べます。

⑵ ➅経済的合理性とは

経営者保証ガイドラインでは、「主たる債務及び保証債務の破産手続による配当よりも多くの回収が得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること」すなわち金融機関における経済的合理性が認められなければなりません。

主債務者である法人が破産する場合、以下の①の額が②の額を上回った場合に経済的合理性があることになります。

①現時点において清算した場合における主たる債務の回収見込み額および保証債務の弁済計画(案)に基づく回収見込み額の合計額

②過去の営業成績等を参考としつつ、清算手続が遅延した場合の将来時点(将来見通しが合理的に推計できる期間として最大3年間程度を想定)における主たる債務および保証債務の回収見込み額の合計額

要するに将来精算するよりも現時点で精算した方が債権者として回収できる金額が多いことを疎明できればよいということです。当該判断においては何点かポイントがあります。

まず②の将来時点の回収見込み額の算定方法について、経営者保証ガイドラインでは、①現時点清算における回収見込額が、②将来時点清算時点における回収見込み額を上回っていることを確認できればよいため、厳密な回収可能額の算定を求めておりません。多くの事案では過去の決算書類等を踏まえて判断すれば足り、例えば赤字決算が続いている場合は、概ね3年後には回収可能額が減少する蓋然性が高い旨を説明することになります。

また現時点における回収可能額(弁済額)が0の場合、すなわち①現時点と②将来時点で回収可能額が変わらない場合も経済的合理性が認められます。主債務者が破産した際に、主債務も保証債務からも配当がないことは珍しくはなく、そうすると①現時点清算における回収見込額が0となり、回収可能額の増加が観念できないようにも思います。しかし経営者保証ガイドラインにおける経済的合理性は、債権者の回収見込み額が破産と比べた場合にそれを下回らないことを意味すると解されています。そのため回収可能額の増加がない場合も経済的合理性が認められることなります(実務上、「ゼロ弁済」の経済的合理性といいます)。

要するに、現在清算するよりも将来清算をする方が、弁済額が増える場合にのみ、経済的合理性が認められず、経営者保証ガイドラインによる整理が認められないということです。例えば、1年後に大きな収入が計上される蓋然性が高く、弁済原資が確保できる場合等でしょう。破産手続に至った会社においてこのような場面はそう多くないはずです。

⑶ ⑦免責不許可事由とは

次に経営者保証ガイドラインを用いる場合、保証人に免責不許可事由(破産法252条1項(第10号を除く))がないことも要件となります。

具体的には、詐害目的を有した資産の廉価売却や贈与、隠匿(同1号)、知人や親族に対する優先的な弁済(同3号)、ギャンブルやFX取引による浪費行為(同4号)等です。

ただし形式的に免責不許可事由がある場合も、経営者保証ガイドラインの利用を諦める必要はありません。破産手続上、免責不許可事由があったとしても、諸般の事情を考慮して裁量免責が認められることがほとんどであり、95%以上の割合で免責許可が認められております。したがって経営者保証ガイドラインの適用の場面においても、保証人において何らかの免責不許可事由があったとしても直ちに諦める必要はなく、債権者に対して真摯な説明を心掛けることで理解が得られる場合があります。

⑷ 小括

以上が経営者保証ガイドラインの利用のための要件となります。次に経営者保証ガイドラインを利用した場合に、保証人が手元に残すことができる資産(残存資産)の考え方を述べます。

4 残存資産(手元に残せる資産)の考え方

経営者保証ガイドラインによる場合、保証人の手元に残せる財産(残存資産)は、①自由財産と②インセンティブ資産になります。

①自由財産は破産法34条に定められた資産を意味し、当然に保証人の手元に保管が認められます。対してインセンティブ資産は、自由財産を超えて保有する財産を意味し、保有する合理性を説明する必要があります。

それぞれ見てゆきましょう。

⑴ ①自由財産とは

自由財産とは、保証人の生活再建のために破産法上で保有が認められる必要最低限度の資産となります。具体的には、①現金99万円(破産法34条3項1号)、②家財道具や年金受給権といった差押禁止財産(同2号)、③経営者保証ガイドラインの一時停止等の要請後に取得した新規財産です(同1項参照)。

経営者ガイドラインでは、総額が99万円以内であれば財産の種類に関係なく自由財産としての保有を認める取り扱いが多くなされております。

⑵ ②インセンティブ資産とは

経営者保証ガイドラインでは、保証人による早期の事業再生等の着手の決断について、主たる債務者の事業再生の実効性の向上等に資するものとして、一定の経済的合理性が認められる場合に、自由財産を超える資産を残すことが認められております。保証人に早期決断のインセンティブとして自由財産を超える資産を残すことからインセンティブ資産と呼称します。

⑶ ②インセンティブ資産の目安について

経営者保証ガイドラインで挙げられているインセンティブ資産の目安は次のとおりです。

・一定期間の生計費に相当する額

・華美でない自宅

・主債務者の実質的な事業継続に最低限必要な資産

・その他の資産

「一定期間の生計費に相当する額」は、1月当たりの「標準的な世帯の必要生計費」として民事執行法施行令で定める33万円に、雇用保険の給付期間を乗じて算定します。例えば保証人が29歳以下の場合、雇用保険の給付期間は3~6か月ですから、生計費として99万円~198万円の保有が認められます。

「華美でない自宅」は、一般に評価額や築年数、所在地等を総合的に判断します。もっとも要件が抽象的であるがゆえに、「華美でない自宅」と評価される事例はそう多くはありません。

他方で前述したオーバーローン物件は、そもそも無価値の資産となるため、インセンティブ資産に該当せず引き続きの保有が認められます。のみならず住宅ローンは経営者ガイドラインの対象外債権となるため、引き続きの返済が継続が可能です。住宅ローン債権者との関係では、住宅ローンの支払いを継続できれば引き続き自宅に居住することが可能です。

⑷ 回収見込増加額の考え方

インセンティブ資産を残すための要件を説明します。

インセンティブ資産の保有は無条件に認められるわけではなく、回収見込額の増加額の範囲で認められます。回収見込額の増加額は、前述した経営者保証ガイドラインの適用要件である経済的合理性の判断と似ており(厳密には異なる点もありますがここでは割愛します)、現時点において清算した場合における主たる債務および保証債務の回収見込額の合計金額から、過去の営業成績等を参考としつつ、清算手続が遅延した場合の将来時点(将来見通しが合理的に推計できる期間として最大3年程度を想定)における主たる債務および保証債務の回収見込額の合計金額を控除した金額です。

要するに、現時点で清算したことで、3年後に清算をするよりも回収可能額が増えた場合に、清算を放置せず早期に清算に着手した恩恵として、自由財産に加えてインセンティブ資産を認めるということです。

回収見込額の算定に関しては次の注意点あります。

まず回収可能額の増加額の算定は、求めるインセンティブ資産の範囲で説明すれば足ります。例えば、預金が300万円ある場合、自由財産として認められる99万円を除いた201万円がインセンティブ資産となります。回収可能額の増加の説明に際しては、過去の営業成績からすると3年後よりも現時点で清算したことで、回収可能額を201万円以上増えたことを説明すれば足ります。

先の「華美でない自宅」も自宅の評価額が回収可能額の増加額の範囲内でなければ、引き続きの保有は認められません。自宅評価額が回収見込み額の増加額に収まっていることを説明できて初めて「華美でない自宅」として検討してインセンティブ資産の保有が認められることになります。

次に回収可能額は、一般債権者(対象債権者を含む)への配当見込額の増加額で算定することになります。配当見込額は、法人破産の債権者集会で破産管財人から配布される財産目録等を基に配当見込み額を算定します。一般債権者への配当額ですから、国税や一部給与、管財人報酬等の優先的に配当に充てられる財団債権を除いた後の金額です。したがって現時点の破産手続で、一般債権者への配当がない事案(配当があっても財団債権に充当されてしまう事案)では、回収見込額の増加額は算定できません。

5 結語

経営者保証ガイドラインを用いることで個人破産を免れつつ一定の資産を手元に残せる可能性があります。お困りの方はお近くの法律事務所にご相談してみてください。

以上

参考条文

※全銀協、経営者保証ガイドライン<抜粋>

7.保証債務の整理

(1)ガイドラインに基づく保証債務の整理の対象となり得る保証人

以下の全ての要件を充足する場合において、保証人は、当該保証人が負担する保証債務について、このガイドラインに基づく保証債務の整理を対象債権者に対して申し出ることができる。また、当該保証人の申し出を受けた対象債権者は、第2項の準則に即して、誠実に対応することとする。

イ)対象債権者と保証人との間の保証契約が第3項の全ての要件を充足すること

ロ)主たる債務者が破産手続、民事再生手続、会社更生手続若しくは特別清算手続(以下「法的債務整理手続」という。)の開始申立て又は利害関係のない中立かつ公正な第三者が関与する私的整理手続及びこれに準ずる手続(中小企業活性化協議会による再生支援スキーム、事業再生ADR、私的整理に関するガイドライン、中小企業の事業再生等に関するガイドライン、特定調停等をいう。以下「準則型私的整理手続」という。)の申立てをこのガイドラインの利用と同時に現に行い、又は、これらの手続が係属し、若しくは既に終結していること

ハ)主たる債務者の資産及び債務並びに保証人の資産及び保証債務の状況を総合的に考慮して、主たる債務及び保証債務の破産手続による配当よりも多くの回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること

ニ)保証人に破産法第252条第1項(第10号を除く。)に規定される免責不許可事由が生じておらず、そのおそれもないこと

(2)保証債務の整理の手続

このガイドラインに基づく保証債務の整理を実施する場合において、主たる債務と保証債務の一体整理を図るときは、以下のイ)の手続によるものとし、主たる債務について法的債務整理手続が申し立てられ、保証債務のみについて、その整理を行う必要性がある場合等、主たる債務と保証債務の一体整理が困難なため、保証債務のみを整理するときは、以下のロ)の手続によるものとする。

イ)主たる債務と保証債務の一体整理を図る場合

法的債務整理手続に伴う事業毀損を防止するなどの観点や、保証債務の整理についての合理性、客観性及び対象債権者間の衡平性を確保する観点から、主たる債務の整理に当たって、準則型私的整理手続を利用する場合、保証債務の整理についても、原則として、準則型私的整理手続を利用することとし、主たる債務との一体整理を図るよう努めることとする。具体的には、準則型私的整理手続に基づき主たる債務者の弁済計画を策定する際に、保証人による弁済もその内容に含めることとする。

ロ)保証債務のみを整理する場合

原則として、保証債務の整理に当たっては、当該整理にとって適切な準則型

私的整理手続を利用することとする。

(3)保証債務の整理を図る場合の対応

主たる債務者、保証人及び対象債権者は、保証債務の整理に当たり以下の定めに従うものとし、対象債権者は合理的な不同意事由がない限り、当該債務整理手続の成立に向けて誠実に対応する。

なお、以下に記載のない内容(債務整理の開始要件、手続等)については、各準則型私的整理手続に即して対応する。

①一時停止等の要請への対応

以下の全ての要件を充足する場合には、対象債権者は、保証債務に関する一時停止や返済猶予(以下「一時停止等」という。)の要請に対して、誠実かつ柔軟に対応するように努める。

イ)原則として、一時停止等の要請が、主たる債務者、保証人、支援専門家が連名した書面によるものであること(ただし、全ての対象債権者の同意がある場合及び保証債務のみを整理する場合で当該保証人と支援専門家が連名した書面がある場合はこの限りでない。)

ロ)一時停止等の要請が、全ての対象債権者に対して同時に行われていること

ハ)主たる債務者及び保証人が、手続申立て前から債務の弁済等について誠実に対応し、対象債権者との間で良好な取引関係が構築されてきたと対象債権者により判断され得ること

②経営者の経営責任の在り方

本項(2)イの場合においては、対象債権者は、中小企業の経営者の経営責任について、法的債務整理手続の考え方との整合性に留意しつつ、結果的に私的整理に至った事実のみをもって、一律かつ形式的に経営者の交代を求めないこととする。

具体的には、以下のような点を総合的に勘案し、準則型私的整理手続申立て時の経営者が引き続き経営に携わることに一定の経済合理性が認められる場合には、これを許容することとする。

イ)主たる債務者の窮境原因及び窮境原因に対する経営者の帰責性

ロ)経営者及び後継予定者の経営資質、信頼性

ハ)経営者の交代が主たる債務者の事業の再生計画等に与える影響

ニ)準則型私的整理手続における対象債権者による金融支援の内容

なお、準則型私的整理手続申立て時の経営者が引き続き経営に携わる場合の経営責任については、上記帰責性等を踏まえた総合的な判断の中で、保証債務の全部又は一部の履行、役員報酬の減額、株主権の全部又は一部の放棄、代表者からの退任等により明確化を図ることとする。

③保証債務の履行基準(残存資産の範囲)

対象債権者は、保証債務の履行に当たり、保証人の手元に残すことのできる残存資産の範囲について、必要に応じ支援専門家とも連携しつつ、以下のような点を総合的に勘案して決定する。この際、保証人は、全ての対象債権者に対して、保証人の資力に関する情報を誠実に開示し、開示した情報の内容の正確性について表明保証を行うとともに、支援専門家は、対象債権者からの求めに応じて、当該表明保証の適正性についての確認を行い、対象債権者に報告することを前提とする。

なお、対象債権者は、保証債務の履行請求額の経済合理性について、主たる債務と保証債務を一体として判断する。

イ)保証人の保証履行能力や保証債務の従前の履行状況

ロ)主たる債務が不履行に至った経緯等に対する経営者たる保証人の帰責性

ハ)経営者たる保証人の経営資質、信頼性

ニ)経営者たる保証人が主たる債務者の事業再生、事業清算に着手した時期等が事業の再生計画等に与える影響

ホ)破産手続における自由財産(破産法第34条第3項及び第4項その他の法令により破産財団に属しないとされる財産をいう。以下同じ。)の考え方や、民事執行法に定める標準的な世帯の必要生計費の考え方との整合性

上記ニ)に関連して、経営者たる保証人による早期の事業再生等の着手の決断について、主たる債務者の事業再生の実効性の向上等に資するものとして、対象債権者としても一定の経済合理性が認められる場合には、対象債権者は、破産手続における自由財産の考え方を踏まえつつ、経営者の安定した事業継続、事業清算後の新たな事業の開始等(以下「事業継続等」という。)のため、一定期間(当該期間の判断においては、雇用保険の給付期間の考え方等を参考とする。)の生計費(当該費用の判断においては、1月当たりの標準的な世帯の必要生計費として民事執行法施行令で定める額を参考とする。)に相当する額や華美でない自宅等(ただし、主たる債務者の債務整理が再生型手続の場合には、破産手続等の清算型手続に至らなかったことによる対象債権者の回収見込額の増加額、又は主たる債務者の債務整理が清算型手続の場合には、当該手続に早期に着手したことによる、保有資産等の劣化防止に伴う回収見込額の増加額、について合理的に見積もりが可能な場合は当該回収見込額の増加額を上限とする。)を、当該経営者たる保証人(早期の事業再生等の着手の決断に寄与した経営者以外の保証人がある場合にはそれを含む。)の残存資産に含めることを検討することとする。ただし、本項(2)ロ)の場合であって、主たる債務の整理手続の終結後に保証債務の整理を開始したときにおける残存資産の範囲の決定については、この限りでない。

また、主たる債務者の債務整理が再生型手続の場合で、本社、工場等、主たる債務者が実質的に事業を継続する上で最低限必要な資産が保証人の所有資産である場合は、原則として保証人が主たる債務者である法人に対して当該資産を譲渡し、当該法人の資産とすることにより、保証債務の返済原資から除外することとする。また、保証人が当該会社から譲渡の対価を得る場合には、原則として当該対価を保証債務の返済原資とした上で、上記ニ)の考え方に即して残存資産の範囲を決定するものとする。

なお、上記のような残存資産の範囲を決定するに際しては、以下のような点に留意することとする。

a)保証人における対応

保証人は、安定した事業継続等のために必要な一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅等について残存資産に含めることを希望する場合には、その必要性について、対象債権者に対して説明することとする。

b)対象債権者における対応

対象債権者は、保証人から、a)の説明を受けた場合には、上記の考え方に即して、当該資産を残存資産に含めることについて、真摯かつ柔軟に検討することとする。

④保証債務の弁済計画

イ)保証債務の弁済計画案は、以下の事項を含む内容を記載することを原則とする。

a)保証債務のみを整理する場合には、主たる債務と保証債務の一体整理が困難な理由及び保証債務の整理を法的債務整理手続によらず、このガイドラインで整理する理由

b)財産の状況(財産の評定は、保証人の自己申告による財産を対象として、本項(3)③に即して算定される残存資産を除いた財産を処分するものとして行う。なお、財産の評定の基準時は、保証人がこのガイドラインに基づく保証債務の整理を対象債権者に申し出た時点(保証人等による一時停止等の要請が行われた場合にあっては、一時停止等の効力が発生した時点をいう。)とする。)

c)保証債務の弁済計画(原則5年以内)

d)資産の換価・処分の方針

e)対象債権者に対して要請する保証債務の減免、期限の猶予その他の権利変更の内容

ロ)保証人が、対象債権者に対して保証債務の減免を要請する場合の弁済計画には、当該保証人が上記の財産の評定の基準時において保有する全ての資産(本項(3)③に即して算定される残存資産を除く。)を処分・換価して(処分・換価の代わりに、処分・換価対象資産の「公正な価額」に相当する額を弁済する場合を含む。)得られた金銭をもって、担保権者その他の優先権を有する債権者に対する優先弁済の後に、全ての対象債権者(ただし、債権額20万円以上(この金額は、その変更後に対象債権者となる全ての対象債権者の同意により変更することができる。)の債権者に限る。なお、弁済計画の履行に重大な影響を及ぼす恐れのある債権者については、対象債権者に含めることができるものとする。)に対して、それぞれの債権の額の割合に応じて弁済を行い、その余の保証債務について免除を受ける内容を記載するものとする。

また、本項(2)ロ)の場合においては、準則型私的整理手続を原則として利用することとするが、保証人が、上記の要件を満たす弁済計画を策定し、合理的理由に基づき、準則型私的整理手続を利用することなく、支援専門家等の第三者の斡旋による当事者間の協議等に基づき、全ての対象債権者との間で合意に至った場合には、かかる弁済計画に基づき、本項(3)⑤の手続に即して、対象金融機関が残存する保証債務の減免・免除を行うことを妨げない。

⑤保証債務の一部履行後に残存する保証債務の取扱い

以下の全ての要件を充足する場合には、対象債権者は、保証人からの保証債務の一部履行後に残存する保証債務の免除要請について誠実に対応する。

イ)保証人は、全ての対象債権者に対して、保証人の資力に関する情報を誠実に開示し、開示した情報の内容の正確性について表明保証を行うこととし、支援専門家は、対象債権者からの求めに応じて、当該表明保証の適正性についての確認を行い、対象債権者に報告すること

ロ)保証人が、自らの資力を証明するために必要な資料を提出すること

ハ)本項(2)の手続に基づき決定された主たる債務及び保証債務の弁済計画が、対象債権者にとっても経済合理性が認められるものであること

ニ)保証人が開示し、その内容の正確性について表明保証を行った資力の状況が事実と異なることが判明した場合(保証人の資産の隠匿を目的とした贈与等が判明した場合を含む。)には、免除した保証債務及び免除期間分の延滞利息も付した上で、追加弁済を行うことについて、保証人と対象債権者が合意し、書面での契約を締結すること