新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.673、2007/9/20 15:52 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm

【民事・任意整理・手続・長所・短所】

質問:5年ほど前からの消費者金融からの借金が約200万円あります。返済を続けてきましたが、利息もあってなかなか返済を終えられません。返済が厳しくなって、返済のために借り入れをしてしまった時期もあります。こういう状況から抜け出したいと思いますが、裁判所で破産までする気持ちにはなれずにいます。弁護士を入れて返済計画を立てて交渉してもらう方法があると聞きました。これだけ負債があっても可能でしょうか。私の月収は手取りで22万程度、家賃は7万円です。

回答:
1.回答する前に債務整理の基本的な考え方をご説明致します。わが国は、自由主義経済をとり社会生活においては誰でも自由に契約内容、方式を決めることが出来るという契約自由の原則がとられています。従って、貴方が200万円を借りたのであれば、契約により、たとえ生活が苦しくても支払いが終わるまで返済を続けて行かなければならないということになります。しかし、通常銀行の住宅ローン2−5%でもサラリーマンにとって返済が大変なのに、貴方のように消費者ローンから19%-28%(近時は18%程度にするところがありますがそれでもすごい高金利です。)で借りた場合、返済出来ないのが当たり前です。貸す前から返済ができない事を予想しているといっても過言ではないでしょう。そもそも、自由主義経済、契約自由の原則を採用した理由は、国民の自由な活動を認め経済を活発化し人間としての尊厳を獲得し保障して、公平、平等な社会を作り個人の幸福追求を実現するために採用されているのです(憲法13条)。しかし、自由主義経済は自ずと強者と弱者を生じせしめますから、この解消なくして真の契約の自由はありませんし、結果的に生じた経済的弱者を救済し実質的公平、平等な社会を実現する必要があります。そこで、たとえ自由意思により契約した場合でも経済的に窮地に陥った人に対して、法はその理想から人間としての尊厳を回復するため早期の再起更正を図るべくいろいろな制度を用意しているのです。簡単に言うと、特別な落ち度がなく経済的に破綻した人、債務超過の人は通常の生活をして払える範囲で債務を支払えばいいですし、一旦債務をゼロにする事も出来るのです。ですから、何も心配は要りません。安心して債務整理を行ってください。

2.債務超過(借金超過等)を解消する債務整理は大きく分けると2通りの方法があります。@まず裁判所の指導、監督、判断の下に行う方法(一切支払わない破産や、部分的に支払わない民事再生、計画を立て直す特定調停等です。詳細は事務所ホームページを参照してください。)とA裁判所の介在をなくし債権者と債務者の私的な話し合いにより債務を清算し、配当していく「任意整理」があります。これは「私的整理」、「内整理」とも呼ばれています。区別の基準は裁判所の介在があるかどうかです。債務整理は債務超過に陥った人の再起更正を目的にしますが、債務を一部又は全部切り捨てるわけですから債権者にとり公平で、適正なものでなければなりませんし、更正を目的にする以上迅速に、低廉(債務超過ですからなるべく費用がかからないようにする必要があります)に行う必要があります。@の方法は裁判所の監督がありますから公平で、公正な解決が期待できるのですが、債権債務者の当事者以外の裁判所が介入しますから、3者の日程調整協議、裁判所の事件の数、煩雑さから迅速性に欠けるところがあり、債務整理手続を公正にしようとして監督者を選任すると(管財人選任)費用も追加される可能性もあります。Aの方法は、その点債権債務者当事者のみでの話し合いですから迅速性が保てますし、特別な費用は要りませんが、一連の手続きに付いて裁判所のように中立的な監督者がいないので債務者の資力の詐称、弁済条件の差異等公正、公平な整理になるか問題があると債権者側から指摘されています。そこで任意整理は、国家資格を有し信頼性の高い弁護士を介在し代理人として総債権者と交渉する事が多くなっています。貴方の様に負債総額が少なくて債権者の数も多くなく、破産も希望していないようであれば、任意整理に適していると思いますが、整理の信用性を保ち、債権者との交渉が円滑に行うため弁護士への相談が必要と思われます。

3.では、弁護士に依頼した場合の任意整理の手続について概略を説明します。弁護士を依頼しない場合には、以下の手続をご自分で行う事になります。

@ まず弁護士が依頼を受けると直接あなたから事情聴取し、債権調査票から債権者の数、債務額を確定します(弁護士以外の秘書が事情聴取は出来ません)。費用については事務所ホームページで確認してください。尚、事情聴取の場合収入隠匿等の行為がありますと後日債権者との交渉が困難を極めますので、正直に明細を明らかにする必要があります。

A即日債権者に受任通知を弁護士名でFAX、郵送します。併せて債権調査票を債権者側にも送付し、回答期日も連絡します。裁判所を通す手続であれば相手方への連絡でも1−2週間はかかるでしょう。この点迅速性は確保されます。

B同時に一切の返済行為をストップします。一切の支払いに応じません。そして一部返済資金を確保します。

Cさらに利息制限法に基づき返済の計算しなおします。通常、借り入れ当初から利息制限法の制限利率(100万円以下の貸付の場合年率18パーセント)で計算した元金額を確定します。過払いの場合は別途、不当利得返還請求交渉、訴訟を提起します。

D介入後の将来利息をカットする条件で、債権者に対し平等に分割弁済の提案が行われます。これを債権者平等の原則といいますが詳細は事務所ホームページを参照してください。

E返済案ですが、裁判所の監督がありませんから貴方が希望するいかなる弁済案も理論的には可能です。しかし、例えば10年などの長期間では債権者側としては利息もカットされ長期の弁済案では返済の保証(原則連帯保証人はつけませんから)もないのですからメリットがないとして拒絶される事になってしまいます。実務的には分割払いの期間としては、通常、3年から4年、つまり、36回から48回程度の間で、交渉するケースが多いです。この返済期間内の利息については、約定通り払っていればかからない、という形で交渉します。月々の支払額が低い方が、返済が楽ですので、最初は、5年、60回までの期間で、弁護士から提案することもありますが、債権者である業者が応じないことも多いので、見込みとしては、やはり、3年、長くても4年返済、と考えておいた方がいいでしょう。

F仮に、負債額を200万と考えると、200÷36=約5.6万円、200÷48=約4.2万円ですから、月額は、ほぼ4.2万円から5.6万円と見ておくことになります。ただ、交渉前に、弁護士は、取引の経過を確認して、負債額を計算してから交渉します。特に、5年ほどの取引期間があれば、途中の借り入れが少なければ、利息制限法という法律に従って利息を計算し直すと、借り入れ当初の出資法での利息額より、かなり負債額を圧縮(経過によっては、払いすぎた分を取り戻せる可能性もあります)することが可能になります。借り手が任意で契約していれば、出資法の範囲での利息も合法、というのが法の建前ですが、現実には、借り手がきちんと了解したとは言えない、というケースも多く、弁護士の交渉により、利息制限法で有利に計算した額で交渉できることがほとんどです。そのような再計算によって、負債額が減少すれば、さらに月々の支払額を圧縮することができます。

Gあとは、その月々の支払額が、収入の範囲で払えるか、ということになります。借り入れをしなければ払えない、ということになってしまったら、任意整理をした意味がありません。ご事情にもよりますが、大体の目途としては、住居費等の固定した支出を除いたご収入の3分の1、というのが、月々債権者に確約できる額としては、限界といわれています。それ以上になると、出費がかさんだとき等のことを考えるとやはり心配です。お伺いしたご事情ですと、22万円−7万=15万円、その3分の1は5万円です。先ほど計算した、36回払いの分割金額は、月額5.6万円ですから、負債総額の圧縮があまりできなかった場合には、48回払い以上の計画で交渉する必要がありそうです。

H以上話し合いがまとまれば、合意の時から支払いを開始すればいいですし、将来利息もカットされ18-25%以上の遅延損害金も免除されるのですから貴方にとって有利である事は間違いありません。

I交渉である以上、基本的に交渉相手である債権者全員が応じなければ成立しない方法ですので(他に資産収入がまったくないような場合、交渉によりまとまった順に弁済を開始する場合もあります。)、確実にできる、とまでは言えません。結果的に応じてもらえなければ、既に述べたような、裁判所の債務整理手続になってしまいます。しかし、通常の交渉相場からして、成立の余地はあるでしょう。残された道は破産しかありませんので業者としては1円でも多く回収したいのが常だからです。業者の方も、法的根拠を挙げできるだけ有利に、と交渉に対応しますから、法的専門家である弁護士との協議が大切です。法的な根拠を基にした交渉が中心となりますから、債権者に対し法的な債務圧縮の説明が出来なければ結局返済額が増えただけで、任意整理の可能性さえなくなり、破産せざるを得なくなるおそれがあるわけです。任意整理の場合、書面や電話での交渉が中心ですので、業者やご自宅のお近くにある法律事務所でなくても、対応は可能だと思いますので弁済条件、費用、期間などいろいろな法律事務所にお問い合わせください。

≪参考条文≫

利息制限法
(利息の最高限)
第一条  金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。
元本が十万円未満の場合          年二割
元本が十万円以上百万円未満の場合     年一割八分
元本が百万円以上の場合          年一割五分
2  債務者は、前項の超過部分を任意に支払つたときは、同項の規定にかかわらず、その返還を請求することができない。

出資法
(高金利の処罰)
第五条  金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をし、又はこれを超える割合による利息を受領したときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 2  前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十九・二パーセント(二月二十九日を含む一年については年二十九・二八パーセントとし、一日当たりについては〇・〇八パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をし、又はこれを超える割合による利息を受領したときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 3  前二項の規定の適用については、貸付けの期間が十五日未満であるときは、これを十五日として利息を計算するものとする。
 4  第一項及び第二項の規定の適用については、利息を天引する方法による金銭の貸付けにあつては、その交付額を元本額として利息を計算するものとする。
 5  一年分に満たない利息を元本に組み入れる契約がある場合においては、元利金のうち当初の元本を超える金額を利息とみなして第一項及び第二項の規定を適用する。
 6  金銭の貸付けを行う者がその貸付けに関し受ける金銭は、礼金、割引料、手数料、調査料その他何らの名義をもつてするを問わず、利息とみなして第一項及び第二項の規定を適用する。

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