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- No.867|
再開発の住民監査請求と住民訴訟
行政|都市再開発|再開発の住民監査請求と住民訴訟|制度の意義|要件|内容|監査請求前置主義|地方自治の本旨|再開発に関する住民監査請求・住民訴訟の実例
質問
駅前に土地建物を所有していますが、数年前より再開発の話が持ち上がり、先日再開発組合が設立されました。再開発区域内の有志数名で反対運動をしていますが、そのうちの一人が「補助金の支出が不当だから住民監査請求できるのではないか」と言い出しました。これはどういう手続で、どのような要件で、どのような効果があるのでしょうか。監査請求の結果に不服がある場合の異議申し立て手続きについても教えてください。
回答
1、 住民監査請求は、地方自治体の違法若しくは不当な公金の支出や財産管理があった場合に、各自治体に設置された監査委員に対して是正措置を請求することができる手続きです(地方自治法242条1項)。この制度を理解するには、地方自治の本旨を学ぶ必要があります。
2、 住民監査請求の結果(請求の却下、棄却)に不服がある時は、通知を受けた日から30日以内に、裁判所に対して住民訴訟を提起することができます(地方自治法242条の2)。これは、原告自身の権利義務に直接関わりの無い事項について司法審査を求めるものであり、客観訴訟の一種であると解されています。
3、 東京オリンピック選手村の再開発に関して、参考事例がありますので、時系列で簡単に御紹介致します。
4、 御相談のケースでは、補助金の支出が不当であるということですが、実際の手続きでは、不当性を証する書面を添付して監査請求の申立てを行う必要があります。住民監査請求の資料は、後の住民訴訟の資料ともなりますので、監査請求の段階から弁護士に御相談なさり、証拠の収集保全からアドバイスを受けながら手続きすると良いでしょう。お困りの場合はお近くの法律事務所に御相談なさって下さい。
5、 関連事例集 1897番等参照。
6、 その他再開発に関する関連事例集参照。
解説
解説:
1、 住民監査請求
住民監査請求とは、地方自治体の長または職員による、違法不当な財務会計行為(または怠る事実の発生)を防止するために、住民が自治体の監査委員に対して申し立てて、是正を求めていく手続きです。監査請求の対象となる行為または不作為は、地方自治体のあらゆる財務会計上の行為に及びますから、道路や堤防などの都市計画事業と同様の公共事業として行われる都市再開発法による市街地再開発事業に伴う行政の行為も監査請求の対象となり得ます。
地方自治法の条文を参考にしてください。
(地方自治法242条1項)普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体の被つた損害を補塡するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。 2項 前項の規定による請求は、当該行為のあつた日又は終わつた日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
(1)監査請求の要件
地方自治法242条1項で、監査請求の主体は、「普通地方公共団体の住民は」と規定され、監査請求の対象となる地方自治体の住民であれば、誰でも監査請求できるとされています。法律上の行為能力を有する自然人であれば、誰でも、外国人でも、住民として請求できます。勿論、請求は、ひとりで行っても、有志数人以上で行っても構いません。また、自然人だけでなく、当該地方自治体で活動する法人も監査請求の主体となることができます。自分自身の権利義務に関する事項が申し立ての要件になっていませんが、事実上ほとんどの事例では、御自身の権利義務に関する事項についての申立てが行われています。
監査請求の対象は次の事項です(地方自治法242条1項)。当該事項が存在していることが必要です。
1 公金の支出(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)2 財産の取得・管理・処分(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)
3 財産の取得・管理・処分に関する契約の締結・履行(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)
4 債務その他の義務の負担(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)
5 公金の賦課・徴収を怠る事実または財産の管理を怠る事実
(2)監査請求の内容
地方自治体の住民が監査請求して要求するのは、次の内容です(地方自治法242条1項)。
1 当該行為を防止し、又は是正すること2 当該怠る事実を改めること(法令に従った適切な行為に着手する)
3 当該行為・怠る事実によって当該普通地方公共団体が被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきこと
「普通地方公共団体が被った損害を補填するために必要な措置」とは具体的には、当該違法不当な行為を行った自治体の長や職員や相手方に対して損害賠償や不当利得返還請求をすることです。
(3)監査請求の提出先と添付書類と請求期限
住民監査請求の提出先は、各地方自治体に設置されている監査委員です(地方自治法195条1項)。普通地方公共団体の財務に関する事務の執行及び普通地方公共団体の経営に係る事業の管理を監査します。必要があると認めるときは、普通地方公共団体の事務の執行について監査をすることができます(地方自治法195条2項)。
地方自治法195条1項 普通地方公共団体に監査委員を置く。
2項 監査委員の定数は、都道府県及び政令で定める市にあつては四人とし、その他の市及び町村にあつては二人とする。ただし、条例でその定数を増加することができる。
都道府県および政令指定都市では4名、それ以外の市区町村では2名が定員で、任期は4年、普通地方公共団体の長が、議会の同意を得て、「人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者及び議員」のうちから、選任されます。監査委員は、当該地方自治体の常勤職員を兼務することはできず、各会計年度に1度以上監査を行います。監査委員は、日常的に、地方自治体の会計に関する監査を行っていますが、それに付随して、住民からの申し出(監査請求)に対する監査も行うのです。
住民監査請求の添付書類として、違法不当な行為を「証する書面」の添付が法定されていますが(地方自治法242条1項)、これは必ずしも勝訴判決を得るために必要な「厳格な証明」までは求められておらず、一応その事実が存在すると認められる程度の「疎明」があれば良いとされています。新聞記事の写しなど報道資料を添付するものでも受理された例があります。但し、報道資料だけでは証明の程度が不足しますので、可能な限り公的文書も用意されると良いでしょう。情報公開請求で取得した資料や、都道府県公報書類や、事業計画書、再開発組合の決算書・議事録などです。また、当該支出・契約履行状況が分かる現場写真の写しも有効な資料でしょう。
監査請求は、当該違法不当な行為があった日または終わった日から1年以内に提出しなければなりませんが、当該事実を知ることが困難であった(当該行為が秘密裡に行われていた)など正当の事由がある場合には、1年経過後でも提出することができます(地方自治法242条2項)。報道から66日後の監査請求が書留郵便でなされた場合に正当な理由があるとした裁判例があります。
※最高裁判所平成14年9月12日判決
『当該行為が秘密裡にされた場合には,同項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである』
(4)監査請求の結果
監査請求書が提出されても、法定要件を満たしていない場合は、監査請求は受理されず「却下」の扱いとなります。全国的にみると実務上半分程度の監査請求が却下され「監査実施せず」となっているようです。
監査請求が受理されると、地方自治体の監査委員は、直ちに当該請求の要旨を当該普通地方公共団体の議会及び長に通知しなければならず(地方自治法242条3項)、60日以内に監査及び勧告を行わなければなりません(地方自治法242条6項)。
監査委員は、監査請求に対する監査を行う場合は、「請求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならない」とされています(地方自治法242条7項)。裁判ではありませんが、面接の機会が与えられています。
次の要件をすべて満たす場合は、監査委員は、理由を付して、当該自治体の長、その他執行機関又は職員に対して、暫定的な停止勧告を行うことができます(地方自治法242条4項)。
1 当該行為が違法であると思料するに足りる相当な理由があり2 当該行為により当該普通地方公共団体に生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があり
3 当該行為を停止することによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがないと認めるとき
監査委員は、当該請求に理由があると認めるときは、当該普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関又は職員に対し期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければなりません(地方自治法242条5項)。
東京都における近時の処理状況を御案内致します。
https://www.kansa.metro.tokyo.lg.jp/zyuuminkansa
令和7年、却下11件
令和6年、却下11件
令和5年、却下17件、棄却2件(理由なし)
令和4年、却下7件、認容1件(理由あり)
令和3年、却下9件
令和2年、却下10件、棄却1件(理由なし)
令和1年(平成31年)、却下29件
監査請求が棄却された場合、結果又は勧告に不服がある場合は、当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があつた日から30日以内に住民訴訟を提起することができます(地方自治法242条の2第2項)。
監査請求が却下された場合、監査請求が適法であるにも関わらず却下された場合は、裁判所に住民訴訟を提起することも、再度の住民監査請求をすることも許されるとされています。
※最高裁判所平成10年12月18日判決
『監査委員が適法な住民監査請求を不適法であるとして却下した場合、当該請求をした住民は、適法な住民監査請求を経たものとして直ちに住民訴訟を提起することができるのみならず、当該請求の対象とされた財務会計上の行為又は怠る事実と同一の財務会計上の行為又は怠る事実を対象として再度の住民監査請求をすることも許されるものと解すべきである。』
2、住民訴訟
(1) 住民訴訟とは
住民監査請求をした者であって、監査の結果若しくは勧告若しくは普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が監査若しくは勧告を60日以内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が監査委員の勧告を受けても必要な措置を講じないときは、裁判所に対し、違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて請求をすることができるのが住民訴訟です(地方自治法242条の2第1項)。
地方自治法242条の2(住民訴訟)第1項 普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第五項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第五項の規定による監査若しくは勧告を同条第六項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。
一号 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
二号 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三号 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
四号 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二の八第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合には、当該賠償の命令をすることを求める請求
具体的には、当該行為の差し止めや、行為の取り消しや、無効確認、怠る事実の違法確認、当該職員もしくは相手方に対する損害賠償請求などを請求できます。
なぜこのような制度が設けられているのかと言えば、それは、「地方自治の本旨」を実現するためだからです。
日本国憲法92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
地方自治の本旨には、「住民自治」と「団体自治」が含まれています。住民自治は、地方政治が、その地方住民の意思に基づいて運営されることで、住民の政治参加が求められています。住民監査請求や住民訴訟の他、地方選挙(選挙権、被選挙権)や住民投票やリコール制度も住民自治の具体化です。自分達のこと(身の回りの決まり事、条例など)を自分達で決めて、その運営にも自分達で監視して関わり続ける、ということです。人任せ、他人事ではなく、法律に基づく行政の原理が適切に実施されているか、行政裁量の逸脱が無いかどうか、適法な、適正公平な行政が行われているかどうか、地方自治体の住民自身が考えて、行動することが求められているのです。ですから、住民監査請求や住民訴訟は、地方自治法上の行政に対する請求権の形式を持っていますが、住民自治を実現するための、住民の義務であるという側面も持っています。権利であり、義務でもあるわけです。しかも、それは、日々継続する義務です。
団体自治は、地方公共団体が、国(日本国政府)から一定程度独立した団体として、自らの判断と責任で事務を処理できることで、条例制定権、自主財政権、国の関与の限定(地方自治法245条の2・3など)が具体化されています。
法律や条例は、勿論憲法だって、一度制定されたら終わりではありません。それが適用されて初めて法的効力を生じるのです。ですから、それが適切に運用適用されているかどうか、住民が常に問題意識を持ち、情報公開請求したり、異議申し立てや、必要に応じて住民監査請求や、住民訴訟を提起して是正して行くことが求められています。
※最高裁判所昭和53年3月30日判決
『ところで、地方自治法二四二条の二の定める住民訴訟は、普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法二四二条一項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実が究極的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであるところから、これを防止するため、地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として、住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え、もつて地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものであつて、執行機関又は職員の右財務会計上の行為又は怠る事実の適否ないしその是正の要否について地方公共団体の判断と住民の判断とが相反し対立する場合に、住民が自らの手により違法の防止又は是正をはかることができる点に、制度の本来の意義がある。すなわち、住民の有する右訴権は、地方公共団体の構成員である住民全体の利益を保障するために法律によつて特別に認められた参政権の一種であり、その訴訟の原告は、自己の個人的利益のためや地方公共団体そのものの利益のためにではなく、専ら原告を含む住民全体の利益のために、いわば公益の代表者として地方財務行政の適正化を主張するものであるということができる。住民訴訟の判決の効力が当事者のみにとどまらず全住民に及ぶと解されるのも、このためである。』
(2) 監査請求前置主義
地方自治体の違法不当な財務会計上の行為に対して、住民訴訟を提起する前に、必ず地方自治法242条の住民監査請求をすることが必要です。監査請求が適法なものであれば、却下され監査が実施されなくても構いません。住民訴訟の訴状には、必ず、住民監査請求の申立てをした結果についての証拠資料を添付する必要があります。
(3) 住民訴訟の対象
住民監査請求では、「違法若しくは不当な」公金の支出などが対象でしたが、住民訴訟では、「違法な行為又は怠る事実」が請求原因となっています。これは、行政裁量があるので、裁判所は、行政庁の「当不当の問題」には立ち入ることができないからです。なぜなら、裁判所は日常の行政作用を実際に担当しているわけでは無いから、行政上どのような行為が必要なのか知ることができないからです。
ですから、当不当の問題を超えて、裁量権の濫用や逸脱があり、明らかに法令違反のレベルに達した行為について、行政訴訟では、取り消しや差し止めなどの判断をすることができると法定されているのです。
行政事件訴訟法30条(裁量処分の取消し)行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
※最高裁判所昭和53年10月4日マクリーン事件判決
『ところで、行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めることがあつても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものなのであるから、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則として当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。処分が違法となるのは、それが法の認める裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限られるのであり、また、その場合に限り裁判所は当該処分を取り消すことができるものであつて、行政事件訴訟法30条の規定はこの理を明らかにしたものにほかならない。もつとも、法が処分を行政庁の裁量に任せる趣旨、目的、範囲は各種の処分によつて一様ではなく、これに応じて裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法とされる場合もそれぞれ異なるものであり、各種の処分ごとにこれを検討しなければならないが、これを出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断の場合についてみれば、右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法となるものというべきである。したがつて、裁判所は、法務大臣の右判断についてそれが違法となるかどうかを審理、判断するにあたつては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法であるとすることができるものと解するのが、相当である。』
(4) 出訴期間
住民訴訟を提起できる各事情に応じて、それぞれ一定の日から30日以内に訴訟を提起しなければなりません(地方自治法242条の2第2項)。
1 監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合 当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があつた日から三十日以内2 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員の措置に不服がある場合 当該措置に係る監査委員の通知があつた日から三十日以内
3 監査委員が請求をした日から六十日を経過しても監査又は勧告を行わない場合 当該六十日を経過した日から三十日以内
4 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員が措置を講じない場合 当該勧告に示された期間を経過した日から三十日以内
(5) 管轄裁判所
住民訴訟は、当該地方公共団体の事務所の所在地を管轄する地方裁判所を第一審の管轄裁判所とされています(地方自治法242条の2第5項)。
(6) 損害賠償または不当利得の請求を命ずる判決
地方自治法242条の2第1項4号の請求が認容された場合は、判決主文は、例えば、「被告〇〇県は、元〇〇部長Aに対し、別紙損害目録記載の金○○円及びこれに対する令和○年○月○日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める損害賠償請求権を行使すべきことを命ずる。」というものになります。これは客観訴訟であるため、原告と被告の間の法律関係を定めるものではないので、被告に一定の行為を命ずる判決主文となるのです。
判決を受けた地方自治体は、損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合には、普通地方公共団体の長は、当該判決が確定した日から六十日以内の日を期限として、当該請求に係る損害賠償金又は不当利得の返還金の支払を請求しなければなりません(地方自治法242条の3第1項)。
更に、当該判決が確定した日から六十日以内に当該請求に係る損害賠償金又は不当利得による返還金が支払われないときは、当該普通地方公共団体は、当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起しなければなりません(地方自治法242条の3第2項)。
3、再開発に関する住民監査請求・住民訴訟の実例
東京オリンピック選手村の再開発に関して住民監査請求と住民訴訟が行われた事例がありますので、御紹介致します。
https://www.kansa.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kansa/29jumin11
(一)事案の概要(請求内容)
(1)主張事実
ア 本件土地の譲渡価格決定に至る経緯
2013(平成25)年9月8日、東京オリンピック開催が決定され、2014(平成26)年12月19日、大会後の選手村予定地の住宅棟のモデルプラン策定が公表された。
同プランによれば、オリンピック・パラリンピック選手村予定地である中央区
晴海五丁目西地区について、特定建築者制度の利用により、民間業者が同地区の開発を行うこととされた。
同制度の利用に当たり、晴海五丁目西地区の譲渡価格は、2016年4月22
日に開催された保留床等処分運営委員会において、譲渡価格は129億6000万円(1㎡当たり9万6784円)とすることが決定された。
イ 本件土地の譲渡価格が廉価であること
平成28年東京都議会予算特別委員会速記録第3号(2016年3月8日開催
分)によれば、2010年、晴海五丁目西地区から1キロメートルほど離れた土地がタワーマンションの用地として売り出され、その際は1㎡単価は約80万円であり、2012年には、東京都が隣接地を1㎡当たり103万円で売却したとのことである。これらの価格は、晴海五丁目西地区の売却価格の8倍から10倍に当たる価格である。
さらに、晴海五丁目西地区の路線価でさえも、晴海五丁目西地区内の最も安い
路線価でも、1㎡当たり56万円、周辺では86万円までに達する。
ウ 以上のとおり、保留床等処分運営委員会によって決定された晴海五丁目西地区の譲渡価格は、明らかに低廉であり、違法不当である可能性が極めて高いと言わざるを得ない。
(2)措置請求
晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業における、2016年4月22日開
催の保留床等処分運営委員会による中央区晴海五丁目の都有地(敷地面積13万3906.26㎡)の敷地処分予定価格の決定に基づき、相当の確実さでなされることが予測される違法又は不当な同都有地の処分によって生じる損害を回避又は補てんするために必要な措置を講じることを東京都知事に勧告するよう求める。
これは、東京オリンピック選手村の再開発に付随して、晴海の選手村用地(中央区晴海五丁目西地区・約13.4haの都有地)を、大手不動産会社11社の共同事業体に一括して売却した点についての住民監査請求が行われたものです。
2016年、譲渡価格 1㎡当たり9万6784円
2010年、晴海五丁目西地区から1キロメートルほど離れた土地がタワーマンションの用地として売り出され、その際は1㎡単価は約80万円
2012年には、東京都が隣接地を1㎡当たり103万円で売却した
晴海五丁目西地区内の最も安い路線価でも、1㎡当たり56万円、周辺では86万円までに達している。
という事情がありました。過去の都有地の払い下げの8~10分の1の価格で選手村用地が払い下げられたという事案でした。
(二)特殊事情
当該都有地の評価では、次の事情が考慮されていたことが判明しました。
1 選手村仕様のため共用廊下幅が広く、一般的な分譲マンションと比較して有効率が低下
2 エレベーター等の共用設備が過剰に設置されている棟がある
3 地下に大規模駐車場が設置されている
4 建築工事費単価、総額ともに増加
5 板状棟主体の建物計画である
6 大会期間中に建物が選手村として一時利用され未入居物件として分譲できない
7 開発期間が長期にわたり、建築工事が一定の時期に集中するため、収益性が劣る
8 選手村として保育所の設置が必要であり、収益性が低下する
都有地の譲受人や不動産鑑定調査会社からは、東京オリンピック選手村用地としての特殊性を加味した正当な評価であるとの主張が提出されました。
(三)監査委員の判断
本件請求において請求人は、本件地区のオリンピック・パラリンピック選手村予定地を処分運営委員会決定の敷地処分予定価格で処分することは、近傍地等の価格と比べ明らかに低廉であり、違法・不当である可能性が極めて高いとして、当該処分によって生じる損害の回避又は補てんをするために必要な措置を講じることを都知事に勧告するよう求めていると解される。
このことについて、前記事実関係の確認、監査対象局の説明、不動産鑑定調査会社からの意見聴取、関係資料の調査等に基づき、次のように判断する。
(1)本件土地の譲渡について
本件事業は、再開発法に基づき、都が施行する第一種市街地再開発事業である。
再開発法第2条の2では、高度利用地区等の区域内の宅地について所有権を有する者は、一人で、第一種市街地再開発事業を施行することができるとされ、同法第7条の9では、再開発事業を一人で施行しようとする者にあっては、規準及び事業計画を定め、都道府県知事の認可を受けなければならないとされている。
また、同法第99条の2第1項では、施行者は、施設建築物の建築を他の者(特定建築者)に行わせることができるとされ、同条第3項において、特定施設建築物の全部又は一部は、特定建築者が取得すると定めている。そして、特定施設建築物の敷地等の譲渡について、再開発法第99条の6第2項では、施行者は、特定建築者から、特定施設建築物の建築工事を完了した旨の届出があり、特定施設建築物の建築を完了したと認めるときは、速やかに、当該特定建築者が取得することとなる特定施設建築物の全部又は一部の所有を目的とする地上権又はその共有持分を譲渡しなければならないとされている。
都は、本件事業を施行するに当たって、再開発法第7条の9に基づき、本件規準及び本件事業計画を定めており、本件規準第6条において、施設建築物の整備は、特定建築者が行うものとし、その敷地は認可された権利変換計画に基づき特定建築者に譲渡することになっている。そして、本件事業計画の資金計画において、本件土地の譲渡予定価格が、財産収入として計上され、本件規準及び本件事業計画に基づく本件事業は、平成28年4月22日知事の認可を受けている。その後、平成28年5月に、特定建築者の公募が行われ、同年9月に決定し、同年12月5日に、特定建築者との間で、本件土地の譲渡契約が締結されている。
(2)本件土地の譲渡価格について
本件土地は、東京大会時に、選手用宿泊施設等として一時使用するための住宅棟と、東京大会後に地域の生活を支える機能を備えた商業施設及び道路などの都市基盤を一体的に整備することを前提とした用地であり、本件調査委託における調査価額もこのことを前提として査定をしている。
ところで、不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行うに当たっての統一的基準である鑑定基準では、不動産の価格は、基本的には、その不動産の最有効使用を前提として把握される価格(正常価格)を標準として形成されるが、鑑定評価の依頼目的に対応した条件により、特定価格(法令等による社会的要請を背景とする下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格)等として求める場合があるとされている。
このことからすると、選手村要因を前提とした本件土地の調査価額は、最有効使用を前提とした価額とは条件が異なるため、単に市場価格との比較だけをもって判断することはできない。
(3)本件調査委託における鑑定評価の手法等について
本件土地の地目は、宅地(面積約13万㎡)であり、その状態は更地である。
また、評価手法は、開発法を採用している。
宅地である更地の鑑定評価について、鑑定基準では、更地並びに配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとされ、当該更地の面積が、近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、さらに開発法により求められる価額を比較考量して決定するものとされている。
本件土地については、約13万㎡と広大な土地であること及び選手村使用に対応した住宅棟を整備し、事業完了まで長期間を有するなどの特殊要因があることから、比較できる取引事例は存在せず、取引事例比較法を適用することはできないとした判断は、妥当であり、本件調査委託において、本件土地の評価手法として開発法を採用したことは、鑑定基準の考え方に沿っており、適切であると考えられる。
(4)本件土地の評価査定手順等について
鑑定基準では、宅地である更地の鑑定評価について、一体利用をすることが合理的と認められるときの開発法による価格は、販売総額から通常の建物建築費相当額及び(建物建築の)発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格とするとされている。
本件土地の査定手順としては、①選手村要因が調査価額へ及ぼす影響の有無、内容を検討の上、これを各種諸元に適用して査定し、②査定した各種諸元に基づき各街区の土地価格(東京大会期間中の賃料収入を考慮しない。)を開発法を適用して求め、③これに東京大会期間中の賃料収入の現在価値を加算して各街区の調査価額を求め、④各街区の調査価額を合計して対象不動産の調査価額を求めている。
選手村要因の調査価額への影響の中で、影響があるとされた要因としては、(ア)建物計画(選手村仕様、板状棟など)が定められていることにより、収益性が劣る(建築工事費が増加し、分譲単価が低位になる)、(イ)開発スケジュール(開発期間が長期、工事が一定時期に集中)が定められていることにより、収益性が劣る(建築工事費が増加し分譲収入時点が遅くなる)、(ウ)建築工事費の支払時期及び支払金額割合により、収益性が劣る(建築工事費の支払時期及び支払金額が一般的な開発案件と比較して早まる)、(エ) 東京大会期間中に選手村として一時利用されることにより、賃料収入が発生するなどがある。
また、各街区の査定方針としては、賃貸物件の複合不動産価格(5-3街区(賃貸マンション用地)及び5-7街区(商業施設用地))及び分譲物件の販売総額を求め、これに開発法を適用して土地価格を査定している。賃貸物件の複合不動産価格は、本件事業周辺の賃貸マンションの賃貸条件や第一次商圏の想定売上高範囲の推計などを踏まえて用途毎に賃料単価を設定した上で、投資用不動産(土地・建物一体の複合不動産)としての価額を「収益還元法」を適用して査定している。
分譲物件では、本件事業周辺地域における直近の新築分譲マンション3例と本件物件を比較検討して設定した分譲単価に分譲可能床面積を乗じて販売総額を求めている。
これらの査定手順、各街区の査定方針、選手村要因が価格に与える影響の内容やその程度、販売総額の算出基礎となる賃貸単価や分譲単価の設定、建築工事費、販売費及び一般管理費等並びに開発協力金について、その考え方や算出方法について確認したところ不合理な点はなかった。
(5)投下資本収益率等の係数について
本件土地の評価価格を開発法で求める場合の式は次のとおりとなる。
(略)
これまでの確認の中で、販売総額や建物の建築費、付帯費用、純収益の額に不
合理な点がなかったことから、開発法による価格若しくは建物等の収益価格が妥当であるか否かは、開発法による価格においては、「投下資本収益率」及び「価格時点からの期間」の設定値が、建物等の収益価格については、「還元利回り」の設定値が適正か否かによるものとなる。これらの値はいずれも本件土地の評価を行った不動産鑑定会社(士)の知見や情報等を基に設定されており、専門性が高い値となっていることが認められる。
そこで、これらの値の妥当性について、本件調査委託を実施した不動産鑑定調査会社以外の不動産鑑定調査会社2社に意見を求めることとした。その結果、いずれにおいても妥当であるとの回答を得た。
このことから、これらの値は妥当であると判断される。
(6)敷地処分予定価格及び譲渡価格の決定
都は、再開発法第7条の9により、本件事業を施行するに当たって、本件規準を定めており、本件規準第9条で、本件土地の譲渡価格の確定に関する事項を所掌する処分運営委員会を置くことを定めている。
平成28年4月22日に開催された処分運営委員会において、調査報告書に基づき作成された資料を基に、本件土地の敷地処分予定価格の審議がなされていることが認められた。
審議では、選手村要因が分譲単価に与える影響や建築工事費や投下資本収益率、支払スケジュール等について審議され、敷地処分予定価格が決定されている。
そして、この敷地処分予定価格を最低価格として、特定建築者の募集を行い、学識経験者等からなる特定建築者選考委員会において、応募者からの敷地譲受希望価格を確認し、その価格を敷地譲渡価格としている。
このことから、本件土地の評価価格は、本件規準に定められた手続を経て決定されている価格であることが認められる。
したがって、上記(1)から(6)までにより、処分運営委員会決定の敷地処分予定価格で本件土地を処分することは、違法・不当な財産の処分であるとする請求人の主張には理由がない。
(四)住民監査請求の結果
(1)結論
東京大会選手村敷地の総額129億6000万円の敷地譲渡契約に向けた一連の行為は、本来必要である公有財産の譲渡について公正な評価の規制を免れるという違法な目的のために、都市再開発制度を濫用した違法・不当なものであるとする請求人の主張には理由がない。
(2)意見
本件事業を第一種市街地再開発事業(個人施行)で実施することに伴い、再開発法に基づき、都が、地権者、施行者、認可権者の三つの役割を併せ持つことになった。
このことにより、本件土地の処分を巡る一連の手続が、中立的かつ公正な監視や牽制の下で行われないとの懸念を生む状況が生じた。
監査の結果、本件事業の一連の行為において、違法・不当なことはなかったと認められるが、上記の状況を踏まえれば、都には、内部牽制体制の構築や、事業手法決定に関する情報開示などについて、通常以上の対応が求められる。
本件事業の今後の実施に際しては、重要な決定に当たり、専門家の意見を十分に聞く等の内部牽制体制を強化することや、意思決定過程及び決定内容についてきめ細やかな対外説明を行うことなどにより、これまで以上に透明性の確保に努められたい。
(五)住民監査請求に対する評釈
選手村用地となった都有地は、時価の8~10分の1で払い下げられましたが、東京オリンピック選手村としての開発が条件となっていることなどの特殊事情を加味すれば、鑑定士の評価も相当だし、払い下げ価格も違法ではないので棄却、という結論でした。他方で、異例のことですが、透明性の確保や内部牽制体制の構築に努められたい、という意見が付されました。意見付きの棄却でした。
(六)行政訴訟(東京地方裁判所令和3年12月23日判決)
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-91010.pdf
この事件は、行政訴訟に移行しましたが、最高裁まで住民側敗訴となりました。
(1)事案の概要
1 東京都(以下「都」ということがある。)は,その保有する別紙2物件目録記載1から5までの土地(併せて以下「本件土地」という。)につき,令和2年に開催が予定されていた東京オリンピック競技大会及び東京パラリンピック競技大会(東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会。以下「本件大会」という。)の選手村として一時使用するとともに本件大会後に整備・活用することを目的として,本件土地等を施行地区とする第一種市街地再開発事業(以下「本件再開発事業」という。)を施行し,同事業において,本件土地を特定建築者である三井不動産レジデンシャル株式会社ら11社(請求の趣旨第3項記載の11社。以下,これらを併せて「本件11社」といい,そのうち個々の会社を指すときは,その商号でもって表記する〔ただし,「株式会社」の記載は省略する。〕。)に譲渡した(以下「本件譲渡」といい,本件譲渡に係る契約を「本件譲渡契約」と,本件譲渡の価格を「本件譲渡価格」とそれぞれいう。)。
本件は,東京都の住民である原告ら32名が,前都知事であるA(以下「A知事」という。),現都知事であるB(以下「B知事」という。)及び本件譲渡契約当時の東京都都市整備局長であるC(以下「C局長」という。なお,以下では東京都の局又は局長については「東京都」又は「都」の記載を省略する。)による本件再開発事業の施行の認可申請(以下「本件事業認可申請」という。)から本件譲渡契約の締結に至るまでの本件再開発事業に係る一連の行為はいずれも財務会計法規上違法であり,本件土地が不当に廉価で譲渡されたことにより,東京都は本件譲渡価格(129億6000万円)と本件土地の適正な価格(1339億0626万円を下回らない。)との差額(少なくとも1209億4626万円)に相当する損害を被ったと主張して,被告を相手に,地方自治法(以下「地自法」という。)242条の2第1項に基づき次の各請求をする事案(住民訴訟)である。これに対し,被告は,本件訴えの一部は訴訟要件を欠く不適法な訴えであるとして却下を求めるほか,原告らの主張する行為は,本件譲渡価格に関しても,それ以外の点に関しても財務会計法規上違法ではないとして,棄却を求めている。
(2)裁判所の判断
当裁判所は,本件訴えのうち,A知事に対して損害賠償請求をすることを求める部分(狭義の財務会計行為1に係る部分)は,適法な住民監査請求の前置を欠く不適法な訴えであるから却下すべきであり,原告らのその余の請求は,本件譲渡契約の締結が財務会計法規上違法であるとは認められないから,いずれも理由がなく棄却すべきものと判断する。その理由の詳細は以下のとおりである。
1 本件訴えの適法性(本案前の争点)について(争点①)
⑴ 検討の対象となる財務会計行為
地自法242条の2第1項4号の請求に係る住民訴訟(以下「4号訴訟」という。)は,同法242条に定める財務会計行為(公金の支出,財産の取得,管理若しくは処分,契約の締結若しくは履行又は債務その他の義務の負担)及び公金の賦課若しくは徴収又は財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」といい,財務会計行為と併せて「財務会計行為等」という。)を対象とし,財務会計行為等が財務会計法規に違反し違法である場合に,当該職員又は当該財務会計行為等に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求(当該職員又は相手方が賠償命令対象者である場合には賠償命令)をすることを当該地方公共団体の執行機関等に求める訴訟であって,その審理判断に当たっては,対象となる財務会計行為等ごとに,不法行為若しくは不当利得又は25 同法243条の2の2第1項所定の賠償責任の成否(財務会計法規上の違法,故意又は過失,損害又は損失,因果関係等)について検討することを要するものであるから,4号訴訟においては,対象となる財務会計行為等を,他の事項から区別して特定認識できるように個別的,具体的に摘示することを要するものと解される。
原告らは,本件訴訟において対象とする財務会計行為として,広義の財務会計行為,狭義の財務会計行為1及び2の三つを摘示しているようであるが,他方において,広義の財務会計行為の中でも個別の財務会計行為ごとに当該行為の権限を有する者や規制の根拠たる財務会計法規が異なるとして,狭義の財務会計行為1及び2(本件各対象行為)を摘示するに至っているのであり(原告ら準備書面⑵・2頁以下参照),このことに鑑みると,原告らが上記三つを摘示しているのは,広義の財務会計行為とは別個のものとして本件各対象行為を摘示するというよりも,広義の財務会計行為を具体化するものとして本件各対象行為を摘示する趣旨であると解するのが相当である。そうであれば,原告らがいう広義の財務会計行為とは,本件各対象行為(に該当する個々の行為)の総称であるにすぎないこととなるから,本件においては,広義の財務会計行為を構成する本件各対象行為(に該当する個々の行為)について,これを対象とする訴えの適法性を検討すれば足りるというべきである。仮に,上記のような趣旨でないとすれば,原告らのいう広義の財務会計行為は,本件事業認可申請から本件譲渡契約の締結に至るまでの本件再開発事業に係る一連の行為をいうものとなり,個々の行為を特定して摘示するものではなく,審理判断の対象となる財務会計行為等を他の行為から区別し特定して認識することが困難となるし,このような広義の財務会計行為に含まれる複数の行為について,当該行為等の性質,目的等に照らしこれらを一体とみてその違法性を判断するのが相当であるということもできないから,4号訴訟において求められる特定を欠くことになる。
(中略)
本件土地は,その総面積が13万㎡余りにも及ぶ広大な土地であり,街区別にみても最も面積の小さい5-7街区ですらその面積が1万1355㎡にも及んでいるものである(前提事実⑵ア,別紙2)から,鑑定評価基準上も,開発法の適用が想定される規模のものであるということができる。また,前記ア , のとおり,本件価格等調査においては,本件土地上に本件施設建築物を建築すること等の条件を前提として評価する必要があるところ,このような条件下における評価を最も的確に行うことができる手法は,開発期間を含め,土地上に建築される建築物に係る諸事情についても考慮することができる開発法であるということができる。
以上に鑑みると,本件価格等調査において,選手村要因を考慮した本件土地の価格を査定するに当たり,開発法を採用したことが不合理であるということはできず,同価格等調査における開発法の具体的な適用方法が,選手村要因を反映したものであること(本件土地上に建築することを想定する建物やその用途が最有効使用を前提とするものではなく,開発スケジュール等もあらかじめ定められていること等)を除き,鑑定評価基準及び鑑定評価基準留意事項の定める手法(関係法令等⑶イ ,⑷ウ)と異なるものであるとも認められない(なお,後記エ 参照)。
また,後記 bのとおり,本件価格等調査において,取引事例比較法,収益還元法又は原価法を採用することができたとも認められない以上,本件価格等調査において開発法以外の手法を採用しなかったことが不合理であるということはできない。
(中略)
以上説示したところによれば,本件価格等調査の内容は合理性を有し,その結果は,選手村要因を考慮した価格時点(平成28年4月1日)における本件土地の価格を的確に示しているものというべきところ,本件価格等調査の結果に基づきこれと同額に決定された本件譲渡価格は,再開発法上確保すべきものとされている敷地等の譲渡価格の適正を欠くものとはいえず,同金額を本件土地の譲渡価格とする本件譲渡契約を締結することが施行者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとは認められない。そして,これに反する原告らの主張は,上記の説示に照らし,いずれも採用することができない。
したがって,本件譲渡契約の締結は,その価格の面において財務会計法規上違法であるとは認められない。
(七)住民訴訟に対する評釈
最高裁まで結論が維持された地裁判決でも、住民監査請求の時と同様に、時期が決まっている東京オリンピック選手村としての開発が必要であるという特殊事情を考慮して、譲渡価格が違法とは言えないと判示しています。通常の不動産鑑定評価においては、「取引事例法」「収益還元法」「原価法」「開発法」をそれぞれ数割程度考慮する加重平均によって鑑定価格を算出しますが、今回は、東京オリンピック選手村という特殊事情を考慮した開発法だけで評価することも「不合理であるということはできない」と判示しています。これから必ずオリンピック選手村として開発されることが決まっている土地であるという特殊事情が全面的に考慮されたのです。デベロッパーは、選手村としての使用が終わった後に分譲して資金回収することを強いられるので、通常のマンション開発より不利になるという事情がありました。
『再開発法は,施行者による特定建築者に対する特定施設建築物の敷地等の譲渡(以下,単に「敷地等の譲渡」ということがある。)について,価格を含めてその詳細についての規定を置いておらず,その譲渡契約の内容については,事業計画や権利変換計画等の当該再開発事業に係る基本的な枠組みの範囲内において,同事業の目的や内容・規模,特定建築者に特定施設建築物を建築させることとした目的など諸般の事情を踏まえた施行者の合理的な裁量に委ねているものと解される。』として、施行者である東京都の合理的な裁量の範囲で、譲渡価格も決めることができると判示しているのです。
『本件のように地方公共団体が個人施行として再開発事業を施行する場合には,特定建築者への敷地等の譲渡は,当該地方公共団体の財産を特定建築者へ譲渡することにほかならないから,前記2⑶イのとおり再開発法108条2項の規定が適用されることにより当該地方公共団体の財産の管理処分に関する法令の規定は適用されないとしても,少なくとも地自法2条14項及び地方財政法2条1項の趣旨は及ぶものということができ,上記のような再開発法上確保すべきものとされている敷地等の譲渡価格の適正を欠き,施行者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価される場合には,これら地自法2条14項等の財務会計法規にも違反することとなると解するのが相当である。』として、裁判所は、裁量権の逸脱があれば、違法となりうる場合があることも認めています。
我々の一般的な不動産価格に対する印象・イメージからすれば、周辺取引事例を根拠に取引相場を思い浮かべますから、東京オリンピック選手村の特殊事情を全面的に考慮して、市場相場の8~10分の1の価格で払い下げるということはなかなか理解しにくいことですが、実際に複数の不動産鑑定士がその価格で評価書を作成しており、東京都の監査委員も裁判所も、東京オリンピックという国際大会を成功させるための行政裁量を広汎に認めていたことになります。
確かに、国際大会が失敗してしまうことは回避しなければなりませんから、国際オリンピック協会IOCなどから求められた条件をすべて満たした上で、オリンピックの開催期日までの期限内に開発を進めていかなければならないという特殊事情があったのでしょう。
さらに、この事案は、東京都が個人施行する第一種市街地再開発事業として行われたという特殊事情もあります。東京都は行政庁ですから、建物の除却工事や建築工事を自ら行うことは当然できません。不動産開発のノウハウを持つデベロッパー業者の協力なしに選手村の建設はできないという事情もあったのでしょう。
しかし、本件では、個人施行の第一種市街地再開発事業の施行者と、事業計画や権利変換計画の許認可権者と、都有地保有の地権者を全て都庁が兼任していたという事情がありますので、都民の税金を使う事業である以上、事業の透明性や内部牽制体制の構築も通常以上に高く求められていたでしょう。
4、御相談の事例
御相談のケースでは、補助金の支出が不当であるということですが、主観的に「怪しからん」「気に入らない」ということだけでは申し立てができません。実際の手続きでは、不当性を証する書面(客観的資料)を添付して監査請求の申立てを行う必要があります。また、監査請求が認められない場合には、住民訴訟に移行するにあたって、「不当性」のレベルを超えた「違法性」の主張立証が必要となりますので、ハードルが上がることになります。
前項の東京オリンピック選手村の事案は、時期が確定している国際大会開催という特殊事情がありましたが、御相談のような民間の組合施行の駅前再開発事例では、都市の防災機能や商業機能を高めるという公益目的はあるものの、地権者が再開発組合を結成して主導的に事業計画を定める民間事業の側面もあります。
再開発区域内の既存建物では、従来の都市計画図に記載された指定容積率を使い切ることは一般に困難です。建築基準法の前面道路規制や、日影規制や、高さ規制などで、実際に容積率を消化できるのは指定容積率の6~7割程度になってしまう場合も少なくありません。それが、市街地再開発事業の都市計画決定により定められる「計画容積率」が緩和され、既存の床面積の倍以上の床面積を建築できる場合もあります。この場合、都市計画図の指定容積率は変わらないままで、当該市街地再開発事業に限って、計画容積率が緩和されます。例えば床面積が倍増する場合、従来の地権者が従来の床面積と同じ面積を取得しても、残りの50%の床面積で建設費などの事業費を賄うことが十分可能な事業もあります。区域内に市町村道や都道府県道がある場合は、これを廃道にして計画容積率の床面積が生み出される事業計画になることが多いですが、この道路を、自治体が91条転出(権利変換を受けない申し出)することにより、再開発組合の保留床として建設資金の原資にすることができるため、補助金なしで市街地再開発事業を施行している自治体もあります。このような事情があるにも関わらず、漫然と数百億円もの補助金を支出しているのであれば、補助金交付の法律要件(地方自治法232条の2)に違反しているという主張も十分あり得るところです。
市街地再開発事業の事業計画書の資金計画の項目を見ると分かりますが、補助金が支給される場合でも、補助金額は、必ず建設工事費には入らないように慎重に策定されています。組合運営費や、建物除却費、設計費、通損補償費(転居費用など)の範囲内でしか補助金は交付されていません。なぜなら、建設費は、建物が竣工すると、権利変換されて個人の建物として財産になりますので、補助金で個人資産を増やすことはできないからです。自治体の住民のうち、特定の者だけが税金を使って個人資産を増やすことは認められないのです。
地方自治法232条の2(寄附又は補助)普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。
補助金支出の法令根拠は、第一義的に地方自治法232条の2ですが、これを具体化する条例や予算案の議会承認決議を経て実施されます。地方自治体の補助金というのは、例えば母子家庭などのように「困っている人を助ける」ためのものであるというのが原則です。莫大な分譲益をあげる民間の再開発事業で支出することは本条に反し違法無効の可能性があります。許認可庁は、参加組合員が再開発事業を通じて収益する分譲益の金額について、補助金事業にふさわしいものかどうか、地方自治法221条2項に基づいて、「調査し、又は報告を徴する」べきであると主張することができます。果たしてその補助金が公益上必要なものかどうか、住民も監視することができます。
参加組合員デベロッパーの分譲益は、次のように計算することができます。
参加組合員分譲益=定款記載の「参加組合員に与えられることとなる床面積」×想定分譲平米単価-事業計画書に記載された「参加組合員分担金」
この「想定分譲平米単価」は、近隣の中古マンションの取引価格や、新築マンションの分譲価格(いわゆる坪単価)を基に試算することになります。
例えば、この分譲益が、1千億円とか、2千億円のプラスになっている場合に、果たして本当に、数百億円もの補助金が必要なのかということは疑問に感じる住民も居られるでしょう。その当否を判断して貰うために、住民監査請求をする意義はあります。前記の様に、住民監査請求の却下率や棄却率は高くなっているのが実情ですが、当該問題が存在していることを顕在化させることにより、デベロッパーの自省を促すことができる可能性があります。少なくとも、当該問題について問題意識を持っている住人、地権者が居るということは、再開発事業の透明性の確保にプラスになり得ることです。
補助金の支出については、問題のある事例も散見されることから、「補助金適正化法」が制定されて、適正化を図る措置が整備されています。
補助金適正化法第1条(この法律の目的) この法律は、補助金等の交付の申請、決定等に関する事項その他補助金等に係る予算の執行に関する基本的事項を規定することにより、補助金等の交付の不正な申請及び補助金等の不正な使用の防止その他補助金等に係る予算の執行並びに補助金等の交付の決定の適正化を図ることを目的とする。
補助金適正化法第3条(関係者の責務)1項 各省各庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行に当つては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、補助金等が法令及び予算で定めるところに従つて公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない。
2項 補助事業者等及び間接補助事業者等は、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに留意し、法令の定及び補助金等の交付の目的又は間接補助金等の交付若しくは融通の目的に従つて誠実に補助事業等又は間接補助事業等を行うように努めなければならない。
補助金適正化法の1条と3条で、各自治体の長は不要な補助金を交付してはならないし、補助される事業者も誠実に補助事業を行うように努めなければならないとされています。不要な補助金を申請してはならないのです。
補助金適正化法11条(補助事業等及び間接補助事業等の遂行)1項 補助事業者等は、法令の定並びに補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件その他法令に基く各省各庁の長の処分に従い、善良な管理者の注意をもつて補助事業等を行わなければならず、いやしくも補助金等の他の用途への使用(利子補給金にあつては、その交付の目的となつている融資又は利子の軽減をしないことにより、補助金等の交付の目的に反してその交付を受けたことになることをいう。以下同じ。)をしてはならない。
2項 間接補助事業者等は、法令の定及び間接補助金等の交付又は融通の目的に従い、善良な管理者の注意をもつて間接補助事業等を行わなければならず、いやしくも間接補助金等の他の用途への使用(利子の軽減を目的とする第二条第四項第一号の給付金にあつては、その交付の目的となつている融資又は利子の軽減をしないことにより間接補助金等の交付の目的に反してその交付を受けたことになることをいい、同項第二号の資金にあつては、その融通の目的に従つて使用しないことにより不当に利子の軽減を受けたことになることをいう。以下同じ。)をしてはならない。
12条(状況報告) 補助事業者等は、各省各庁の長の定めるところにより、補助事業等の遂行の状況に関し、各省各庁の長に報告しなければならない。
補助金適正化法11条1項では、補助事業者は、補助金を「他の用途への使用」をすることが禁じられています。前記の様に、補助金を個人資産に変えたり、企業の利益に変えることはできません。組合施行の第一種市街地再開発事業の場合は、補助金の申請をするのが再開発組合で、実際の事業を主導して分譲益を上げるのが参加組合員という別人格になっていることが特徴となります。形式的には、参加組合員が補助金の交付を受けているわけではありません。しかし、例えば参加組合員が、事前買収した権利床や保留床として、施設建築物の床面積の8割以上を独占している場合などには、事実上、補助金の申請をして補助金を受け取っているのは、参加組合員に他ならないのです。参加組合員の収益事業において、補助金を事実上、利益計上したり、株主への配当をすることも認められないでしょう。補助金が無くても利益が上がるのに補助金の申請をするということは、不要な補助金を申請し、計上する利益を増額させ、全額利益として会計処理することに外なりません。補助事業者は、各自治体の長の指示により、補助事業の遂行状況について報告する義務があります(補助金適正化法12条)。
地方自治法221条(予算の執行に関する長の調査権等)1項 普通地方公共団体の長は、予算の執行の適正を期するため、委員会若しくは委員又はこれらの管理に属する機関で権限を有するものに対して、収入及び支出の実績若しくは見込みについて報告を徴し、予算の執行状況を実地について調査し、又はその結果に基づいて必要な措置を講ずべきことを求めることができる。
2項 普通地方公共団体の長は、予算の執行の適正を期するため、工事の請負契約者、物品の納入者、補助金、交付金、貸付金等の交付若しくは貸付けを受けた者(補助金、交付金、貸付金等の終局の受領者を含む。)又は調査、試験、研究等の委託を受けた者に対して、その状況を調査し、又は報告を徴することができる。
地方自治法221条2項では、補助金の交付を受けた者、この場合は、市街地再開発組合に対して、「その状況を調査し、又は報告を徴すること」ができるとされています。再開発区域内の地権者・借家権者としては、行政庁に対して適切にこの権限を行使するように求めていくことが考えられます。
これらの調査・報告を行っても、補助事業の透明性が確保できない場合は、住民監査請求の申立てを検討することになります。次のような資料が、住民監査請求の添付書類となり得ますので、ご検討なさって下さい。
・市街地再開発事業の事業計画書(補助金額)・都道府県市区町村議会の予算承認決議の議事録(補助金額)
・市街地再開発組合の予算案・決算案・議事録(補助金額)
・区域内の建物除却など工事が始まっている場合は現場写真
・市街地再開発組合の定款(参加組合員取得床面積)
・近隣不動産分譲相場を示す資料(分譲パンフレット、WEBページなど)
・参加組合員分譲益計算書(申立人の試算書)
・国土交通省建築着工統計調査(適正建設費平米単価)
・国税庁の地域別・構造別の工事費用表(適正建設費平米単価)
住民監査請求の資料は、後の住民訴訟の資料ともなりますので、監査請求の段階から弁護士に御相談なさり、証拠の収集保全からアドバイスを受けながら手続きすると良いでしょう。
監査請求書は、基本的に訴状と同様に、監査請求の趣旨と監査請求の原因を記載し、根拠となる事実と適用法令(補助金についての監査請求であれば地方自治法232条の2)を記載し、主張立証していくスタイルで準備されると良いでしょう。お困りの場合はお近くの法律事務所に御相談なさって下さい。
参考条文
日本国憲法92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
地方自治法 第1条 この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。
195条
1項 普通地方公共団体に監査委員を置く。
2項 監査委員の定数は、都道府県及び政令で定める市にあつては四人とし、その他の市及び町村にあつては二人とする。ただし、条例でその定数を増加することができる。
232条の2(寄附又は補助)普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。
242条1項 普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体の被つた損害を補塡するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。
2項 前項の規定による請求は、当該行為のあつた日又は終わつた日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
242条の2(住民訴訟)
第1項 普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第五項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第五項の規定による監査若しくは勧告を同条第六項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。
一号 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
二号 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三号 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
四号 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二の八第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合には、当該賠償の命令をすることを求める請求
判例
① 東京地方裁判所 平成15年(ワ)第19998号 平成17年3月19日民事第17部判決 この判決は、振り込み詐欺について、詐欺犯人とは別人である口座名義人の無資力要件を推認して、口座名義人に対する不当利得返還請求権自体も肯定して債権者代位権による被害者への支払請求を認めています。理論的にも妥当な判決です。
②東京地方裁判所 平成16年(ワ)第13793号、平成17年3月30日民事第33部判決 (不当利得返還請求事件) この判決も振り込み詐欺について、犯人と名義は異なっていても振り込み詐欺の犯人所有の口座であると推定し、更に、無資力を推定する形で名義人に対する不当利得請求を認容しています。結論は妥当な判決ですし被害者にとっては有意義な判決です。被害者救済に重要ですから判決文を抜粋します。「原告らは電話をかけてきた氏名不詳者らに対し振込金と同額の不当利得返還請求権を有し、その氏名不詳者が振込先として指定した銀行口座を所有しているものと認められるところ、所在も明らかでない氏名不詳者に対して直接債務名義を取得する方法は現行法制上存在しないし、当該氏名不詳者の財産と認められるものは上記各口座についての預金払戻請求権以外には見当たらないのであるから、原告らとしては、自己の不当利得返還請求権を保全するには当該預金払戻請求権を代位行使するほかなく、保全の必要性は優に認められる。」