老朽化を理由とした建物の明渡しと立退料の相場|近時の裁判例を踏まえて

民事|借地借家法|賃貸人と借家人の利益対立|法28条における正当事由の解釈

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

私は、30年近く、借家を借りて飲食店を営んでいる者です。来年3年の期間が満了することから、建物の老朽化を理由に、大家から借家契約の更新拒絶と建物の明渡しを要求されており、どのように対応すればよいか苦慮しております。建物は築後50年程度経過しており、旧耐震基準によるとのことです。ただ日常的な使用に問題を感じたことはなく、まだまだ使うことができると思います。駅前の恵まれた立地で、引き続き営業をしてゆきたい一方、もし十分な立退料をもらえるのであれば、明渡に応じてもよいとも考えております。明渡の見通しや、立退料の相場があれば教えてください。

回答:

1 近時、高度経済成長期に建築されたマンション群が築後50年程度を迎え、特に都市部においては不動産価格の高騰や余剰土地の不足を背景に、これら老朽化したマンションの建替えが活発におこなわれております。

2 更新拒絶を理由とする借家の明渡しのためには、期間満了時から1年まえから6か月前までの更新拒絶の通知と明渡しを求める「正当な事由」が必要とされます(借地借家法28条 契約期間内でも契約期間内の解約を認める特約があれば、賃貸人からの解約は可能ですが、解約が認められるためには同様に正当事由が必要になります。)。「正当な事由」の判断においては、まずは建物の老朽化の程度、すなわち耐震性や防火性能等を現在の基準に照らして判断し、地震による倒壊の危険性等が認められる場合には、立退料を含めた諸般の事情を考慮して、その適否を判断します。

3 立退料の内訳は、①建物の明渡を余儀なくされたことで生じる損失(移転実費)と、②借家権価額に分かれます。①移転実費には、引っ越し費用や工作物補償、家賃差額、営業補償等が含まれます。②借家権価額とは、建物の賃借人の地位に財産的価値が認めれることをいい、その算定方法は様々です。もっとも借家権それ自体に独自の価値が認められる事例はそう多くなく、近時の裁判例の傾向からすると、その実質は①移転実費と重なる部分が多いと言えます。

4 相談者様の事例においては、建物は築後50年以上が経過しており、旧耐震基準に依っている点は、「正当な事由」の判断においては積極方向(明渡しが認められる方向)の事情です。

立退料次第で明渡しを検討しているのであれば、営業損失を含めた適切な移転実費の補償を求め、さらには30年近く同じ場所で事業を営んでおり駅前の好立地であることを踏まえ、借家権としても独自の価値を有する点まで主張できるか、仔細検討する必要があります。

5 関連事例集1840番1833番1729番1664番1649番1513番1490番1448番を参照してください。正当事由に関する関連事例集参照。

弊所においても無料法律相談を受け付けておりますので、類似の事例についてはお気軽にご連絡ください。

解説:

1 建物の老朽化の現状

現在、戦後の高度経済成長に建設された建物の老朽化が社会問題となっております。国土交通省の報告によると、築40年を超えた高経年マンションのストック数は、平成30年時点では81.4万戸だったものの、令和10年には197.8万戸に、令和20年には366.8万戸の推移で増加すると試算されております。

ひとつの目安として、税法上の耐用年数は、鉄骨鉄筋コンクリート造について、事務所は50年、住宅用は47年とされており(減価償却資産の態様年数等に関する省令1条1項1号・別表第一)、今後、これらの償却が終わった建物が続々と増えてゆく見込みです。

これを背景に、近時、賃貸人から建物の老朽化。建て替えを理由とした借家契約の終了と明渡しを求める事例が増えています。

2 建物の老朽化に伴う明渡しと立退料の関係

建物の明渡の場面において、生活や事業基盤となる賃借人は借地借家法により手厚く保護されており、期間満了に伴う明渡し(更新拒絶)や、期間中の解約申し入れ(期間中の賃貸人からの解約申し入れは原則として認められませんが、契約の特約で認めている場合は可能です)のいずれにおいても、「正当な事由」がなければ賃貸借契約の解約はできないとされております(借地借家法28条、同26条1項)。

⑴ 正当な事由の考慮要素

「正当な事由」の考慮要素は以下のとおりです。条文構造からすると、①建物使用の必要性が基本的な考慮要素となり、その他②~⑤は補完的に位置づけられます。

①賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情

②建物の賃貸借に関する従前の経過

③建物の利用状況

④建物の現況

⑤賃貸人における財産上の給付(立退料)の給付の申し出

⑵ 正当な事由の審理方法

実務上、まずは賃借人と賃貸人それぞれの①建物使用の必要性だけを比較考慮し、当該考慮要素のみだけで判断できるのであれば、そこまでで正当事由存否の判断を行い、これだけでは判断できない時に、②ないし⑤を加えて比較考慮をなした後に、正当事由存否の判断を行います。

ただし、建物老朽化を理由とした明渡の事例において、①建物使用の必要性のみで明渡しが肯定される事例はそう多くないです。①賃貸人側の建物使用の必要性には、建物の老朽化の程度が含まれるところ、後に触れる裁判例の傾向からしても、まずは①建物の老朽化の程度を、新耐震基準への適合性や補強工事による経済的合理性等に照らして丁寧に事実認定をした上で、⑤立退料の支払等も加味して建物明渡請求の認容の可否を検討しております。

以下では、「正当な事由」の考慮要素である建物の老朽化の判断方法を俯瞰した上で、立退料の算定方法を述べます。

3 建物の老朽化の判断方法について

建物が朽廃・滅失によって使用できなくなれば、当然に賃貸借契約は終了します(民法616条の2)。朽廃・滅失に至らない程度の老朽化の場合、正当化な事由の基本的な判断要因となります。

近時、建物の老朽化判断においては、耐震性の欠如を理由とした安全性欠如を主張されることが多く、裁判例においても、地震による倒壊の可能性等を指摘したうえで正当事由を肯定する判決が多くなっています(東京地判平成17年3月25日LLI06031262等)。

⑴ 鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の耐震性について

鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の耐震性は、一般にIs値という数値が基準とされています。Is値(Index of Seismic (structural) performance)とは、構造耐震指標のことをいい、地震力に対する建物の強度等を考慮し、建築物の階ごとに算出します(平成18年度国土交通省告示 第184号185号 )。Is値は、C(強度の指標)、F(粘り強さの指標)、SD:形状指標(平面・立面形状の非整形性を考慮する指標)、T :経年指標などを乗じて算出されます。

is値が0.6以上・・・倒壊、又は崩壊する危険性が低い

is値が0.3以上0.6未満・・・倒壊、又は崩壊する危険性がある

is値が0.3未満・・・倒壊、又は崩壊する危険性が高い

近時の裁判所の判断においても、鉄骨・鉄筋コンクリート造の建物の安全性の判断に際しては、ほとんどの事例でIs値が参考にされています。

⑵ 木造建物について

木造建物の場合、耐震診断は、一般に、国土交通省監修、一般財団法人日本建築防災協会発行の「木造住宅の耐震診断と補強方法」の一般診断法に依拠しています。詳細は割愛しますが、東京都のHPに詳細が記載されています(東京都耐震ポータルサイト)。

裁判上においては、鑑定等を用いてこれらの数値を参考に老朽化の程度を判断することになります。続けて立退料の内容を検討します。

4 立退料の中身

立退料は「賃貸人の家屋明渡により被る移転費用その他の損失を補填するため」の金員(最一小判昭和46年6月17日民集103号135頁)とされており、前述のとおり、⑤賃貸人における財産上の給付(立退料)の給付の申し出として、「正当な事由」の考慮要素となります。もっともあくまで補完的要素に過ぎず、明渡を求める理由がそれのみで正当事由を具備するに近いものであれば、申出額は相対的に低額でよいし、そうでない場合は高額になります。

立退料の算定方法に定まったものはありませんが、⑴移転実費と⑵借家権価格の2つがその内訳です。

⑴ 移転実費

まず移転実費とは、賃借人は建物の明渡によって事業活動の拠点を失うことになりますから、営業損失を含めた立退きに伴う実費および生じた損失が補償の対象となります。具体的には次のとおりです。

① 引っ越し費用

② 新規賃貸借にのための必要経費(仲介手数料、礼金等)

③ 新規賃借賃料と現行賃料の差額(家賃差額)

④ 工作物補償(既存工作物の現在価値および工作物の新設費用)

⑤ 営業休止損失

➅ 得意先喪失補償

なお上記は事業用建物の考慮要素となり、住居の明渡の場合は、上記①~③までが補償の対象となります。各項目は、「公共用地の取得に伴う損失補償基準(昭和37年10月12日用地対策連絡会決定、通称、用体連基準)」に基づき算定され、多くの裁判例がこれに準拠又は参考にしています。各項目の内、内容のイメージが難しい、③家賃差額、⑤営業休止損失、及び➅得意先喪失補償についてその概略を述べます。

ア ③新規賃借賃料と現行賃料の差額について(家賃差額)

③新規賃借賃料と現行賃料の差額とは、現在借りている建物と同種同等の建物を借りたと仮定した場合に、当該新規賃借賃料と現在支払っている現行賃料の差額を求め、当該差額に一定の期間を乗じて算定されます。現行賃料が相場よりも安ければ、その分大きな家賃差額が認められ、逆もしかりです。

なぜこのような差額の補償が認められるのかというと、賃借人の既得権益の保護にあります。家賃差額が大きいというのは、現在借りている物件の家賃が相場と比して安いということです。賃貸人と賃借人の間で一度合意で決めた家賃はたとえ相場より安かったとしても有効であり、賃借人側の既得権として保護されるべきものです。このような既得権を反故にして明渡しを求める以上は、立退料として損害を補填しなければならないのです。

各差額の割合に応じて以下の期間の補償が得られます(用体連基準細則別表5)。既得権の保護の観点から、家賃差が大きいほど、補償年数は長くなります。

従前の建物との家賃差年数

3倍超・・・4年

2倍超3倍以下・・・3年

2倍以下・・・2年

イ 営業休止損失

営業休止損失とは、移転に伴い営業の休止を要する場合に、見込まれる休業期間に相応する損失を補填するものをいいます。相応する損失には、営業利益の他、固定経費の補償(休業期間中であっても通常の営業を行っていた時と同じように固定して支出される経費、公訴公課や水道光熱費の基本料金など)、従業員に対する休業補償、移転広告費等が含まれる場合があります。

ウ 得意先喪失補償

得意先喪失補償とは、一時的に得意先が減少することなどにより、事業収入が減少することが見込まれる場合に、当該減少分を補償することです。用体連基準では業種ごとに一定の売上減少率が定められており、これを参考にして算定されます(用体連基準細則第27、別表8)。

⑵ 借家権価格

借家権価格とは、建物の賃借人の地位に財産的価値が認められる場合、当該価値が借家権と言われます。

借家権価格は、一般に、建物の底地部分の更地価格×借地権割合×借家権割合で計算されると言われます。借地権割合は、都市部では、住宅地で60%程度、商業地域で70%から80%程度、借家権割合は30%とされることが一般的です。もっともかかる算定方法は、そもそも借家権の取引慣行があること、すなわち借家権が市場において取引されていることが前提となりますが、これは都市部の一等地等に限られ、非常に限定的です。通常の物件であれば借家権に評価額が付されることはまずないでしょう。

借家権の取引慣行がない場合に借家権はどのように算定されるのかというと、不動産鑑定評価基準上(国土交通省、平成14年7月3日)に例示があります。これによると借家権価格は、「当該建物及びその敷地と同程度の代替建物等の賃借の際に必要とされる新規の実際支払い賃料と現在の実際支払い賃料との差額の一定期間に相当する額に賃料の前払い的性格を有する一時金の額等を加えた額、並びに、自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除し、所要の調整を行って得た価格を関連づけて決定するもの」とされています。これは要するに差額家賃を基準に算定するものであり、実質的には移転実費の家賃差額補償と同趣旨のものです。取引慣行がない場合も、借家権に賃借人の既得権を認めてこれを保護するということです。

⑶ 立退料の算定方法

実際の裁判例における立退料の内容を確認すると、㋐移転実費のみを立退料とするものと、㋑移転実費に借家権価格を加えた金額を立退料とするもの(以下、「併用方式」といいます)、㋒借家権価格のみを立退料とするものがあります。もっとも近時の裁判例では、㋒借家権価格のみを立退料とするものは、弊所で参照したところほとんど見受けられませんでした。

㋐移転実費のみの場合または㋑移転実費と借家権価格の併用方式に基づいて算定されるのであれば、多くの立退料を得たい賃借人側においては、当然に㋑併用方式での算定を求めることになります。しかしながら、㋐移転実費のみと㋑併用方式の場合に、内訳は違うもののその総額としてはそう変わらないものと考えられます。

というのも、前述のとおり、借家権価格に独自の価値が認められる場合は例外的な事例であり、その実質は家賃差額です。仮に㋑併用方式を用いて、借家権価格として家賃差額を考慮した場合、移転実費において家賃差額を考慮すると、二重の考慮となりますので、移転実費は家賃差額を除いた形で算定されます。

裁判例においても、㋑併用方式を用いた場合、㋐移転実費方式とは異なり、立退料に借家権価格を加算する一方、移転実費には差額賃料の補償を含まない例が見受けられます(東京地裁令和5年3月23日2023WLJPCA03238035)。

したがって一概に言えないものの、借家権価格を考慮するか否かは、多くの事案において議論する意味は乏しく、議論する意義があるとすれば、借家権価格に取引慣行があって独自の価値が認められるような事案に限られるものと思われます。

5 近時の裁判例について

近似の建物老朽化を理由とする建物の明渡の事案について、以下のとおり何点か裁判例を分析の上、立退料の金額やその傾向を示します。

裁判所及び日付場所、賃貸借の条件(賃料、賃貸期間)認定された立退料、コメント

※東京地裁 R5.3.23

令元(ワ)22290号 東京都豊島区 鉄筋コンクリート造 喫茶店

賃料27万円 期間20年1940万

・築50年以上が経過、新耐震基準の適用なし。

・建物の一部は大地震の発生時に倒壊の危険が高いとの診断、修繕金額も多額にのぼり経済的合理性が認められない。

・原告の建替え計画にも一定の合理性

・一方、被告が喫茶店を移転する場合にはその売上や業務形態に一定程度の影響を受け得る、解約申し入れも予測が困難であった。

・営業補償については立証を欠いて算定不可。

※東京地裁 R4.11.28

令枝3年(ワ)18798号 東京都江東区 タクシー洗車場

賃料26万5000円 期間12年

0円(原告の請求を棄却して、明け渡しを認めませんでしたので、立ち退き料はゼロになりました。)

・周辺一帯の新たなビル建築のために取り壊し予定、もっとも建物自体は築20年程度で顕著な老朽化はみられず建築法規にも適合。

・本件賃室は、全国65カ所のみに設置されたLPガススタンドの近隣に所在、LPガススタンドはタクシーの利用が想定されており、本件賃室の立地は重要。

・原告は立退料1825万円を提示しているものの、「正当な事由」の補完としては不十分。

・本件賃室の売上は、被告会社のおよそ半分を占めており、営業拠点として重要。

・以上より立退きを認めず。

※東京地裁 R4.10.28

令2(ワ)31124号 東京都港区 鉄筋コンクリート等 居酒屋

賃料20万2000円 期間45年

3058万円

・繁華な商業地域に所在、もっとも場所の代替性が認められないわけではない。

・本件建物は昭和37年に建築、築58年以上経過。

・多数の外壁のクラック等が見受けられ、建築基準法に適合せず、大地震での倒壊も懸念。

・立退料3058万円の鑑定額内訳は、家賃保証201万、営業補償2039万、設備機器317万円、容積率増加に依る増分価格508万円(借家権価額は市場性の欠如を理由に考慮せず)。鑑定結果をそのまま採用。

東京地裁 R4.8.3

令3(ワ)26169号他 東京都文京区 木造瓦葺2階建 飲食店

賃料30万円 期間10年以上

2037万5000円

・本件建物は築後70年以上経過した木造建築、大規模修繕が行われた形跡もなし。

・耐震性には重大な疑義、修繕費用をかけても経済的合理性は認められ難い。

・代替物件は比較的容易に参照可能。

・立退料2037万5000円の内訳は、①借家権価額800万円、②工作物補償1037万000円、③営業利益減少分200万円(家賃差額補償は周辺の賃借事例の比較から発生せず)。

※東京地裁 R4.7.28

令和2(ワ)31584号 東京都渋谷区 鉄骨鉄筋コンクリート造 自動二輪販売・整備業

賃料13万8000円 期間40年以上

4540万円

・本件建物は建築後40年以上経過、地震の振動及び衝撃によって倒壊のおそれあり。

・大規模修繕によって耐震強度の増強は期待できるものの、移住性等が減殺されるおそれがあり経済的合理性は認められない。

・売り上げの内、半額以上が車両販売を占めており、また周辺地域で整備業を営むこともできるため、場所の代替性はある。

・立退料4540万円は、①借家権価額689万円、②用体連基準に基づく損失補償額3850万円(営業権等の価格、売却損補償、解雇予告手当補償、休業手当等)

※東京地裁 R4.3.4

令和元(ワ)22766号 新宿駅 鉄骨・鉄筋コンクリート そば飲食店

賃料は、月額売上金額に対する歩合制 期間50年以上

2億9650万円

・昭和41年に建築、新宿駅直結の駅ビル。希少性の高い立地条件。

・本件建物は建築後50年以上経過、耐震性能の確保のため、東京都から建替え等を指導、耐震性には疑義。

・新宿の拠点再整備方針に基づく本件建物の建替え計画が発案され、地域全体の街づくりのために高度の利用必要性

・本件店舗は被告会社の売上の多くを占めており、本件店舗の必要性は高い。

・立退料2億9650円の内訳は、①借家権価格2億円(算定方法は裁判例からは不明、ただし場所的特殊性が反省された可能性あり)、②立退きにより事実上失う利益の補償額9650万円。鑑定額に依拠。

※東京地裁 R3.11.10

令2(ワ)27172号ケータリングサービス事業所

賃料57万円 期間5年

4055万円

・本件建物は昭和39年頃建築(築後55年以上経過)。

・原告において新たなビルの建築を予定。

・立退料4055万円の内訳は、①家賃差額補償852万、②移設費用2300万円、③営業補償750万、④その他153万円。

※東京地裁 R3.3.12

平成31(ワ)2480号 東京都新宿区 鉄筋コンクリート造 バー

賃料65万円 期間30年0円

(請求棄却)

・建築から37年程度経過、もっともどのような点で老朽化し使用に支障が生じているのかは不明。修繕により対処は可能。

・本件建物の取り壊しに伴い、周辺地域の再整備を計画しているものの計画の具体性は乏しい。

・被告は30年以上、本件建物にてバーを営んでおり営業継続の必要性は高い。

※東京地裁 R2.12.10

平31(ワ)9413号 東京都墨田区 軽量鉄骨造 個室ビデオ店

賃料120万円 期間7年

5238万3000円

・昭和40年建築、旧耐震基準、現在の耐震基準には不適格。震度6以上の地震によって局部的な崩壊や倒壊の危険が認められる。

・平成26年頃に本件建物の補強工事をしたものの、依然として老朽化を理由とするひび割れや外壁の剥がれが見受けられる。

・被告はビル1棟を借りて個室ビデオ店を営業。3350万円の初期費用、月180万円程度の営業利益を計上。全国160店にわたって事業を展開しており、本件建物の立退によって被告の事業全体の存続等に大きな影響を及ぼすとまでは言えない。

・立退料に係る裁判所鑑定額は5238万3000円(賃貸借期間が8年に満たず長期と言い難いことから、借家権の評価は移転補償としての試算価格にとどめた点は妥当と判断)。

6 結語

建物老朽化に伴う明渡しにおいては、明渡しの見通しを踏まえなければ立退料の金額感も判断できず、どのような項目が立退料として主張できるか、仔細検討する必要があります。お困りの場合はお近くの法律事務所にご相談ください。

以上

関連事例集

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※参照条文

(借地借家法)

(建物賃貸借契約の更新等)

第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)

第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。