新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1220、2012/1/24 11:34 https://www.shinginza.com/qa-syounen.htm

【少年法・13歳少年の刑事手続き・事件への対応・東京家庭裁判所平成20年6月26日決定】

質問:先日,息子が店でCDを万引きした疑いがあると警察から連絡を受けました。息子は,現在,13歳ですが,最近家にも帰ってこず,友人の家を転々としているようです。息子の携帯電話に連絡をし,問いただしたところ,万引きなどやってないの一点張りです。警察からは事情を聞きたいから,息子と一緒に警察署へ来てほしいと言われており,なんとか息子を説得して警察署へ事情説明に行くつもりなのですが,今後どのような手続きになるのでしょうか。息子は,以前何度も警察のお世話になるなどしているので,少年院などに行くことになってしまうのではないかと心配です。

回答:
1.息子さんは,14歳未満なので刑事上の責任能力はなく刑事処分を受けることはありませんが(刑法41条),少年法上の触法少年に該当するものと思われます(少年法3条2号)。警察で事情を話して,息子さんが万引きをしたという事実があったと警察が判断した場合,息子さんは,児童相談所へ行くことになるのが一般的です(少年法6条の2,児童福祉法25条,少年法6条の6)。これに対し,証拠なども少なく,息子さんが万引きをしたということが明らかでない場合には,そこで手続きが終わるのが一般的です。
2.もっとも,息子さんの日常生活に一定の不良行為があり,保護の必要があると判断された場合には,虞犯少年としての手続が開始される場合がありますので注意が必要です。そして,警察からの送致先である児童相談所では,福祉的な観点から,息子さんに対して色々な質問に答えることになります。仮に児童相談所が家庭裁判所における審判を必要と判断した場合には,その後,家庭裁判所へ行くことになります(児童福祉法27条1項4号)。他方,福祉的措置(具体的には,訓戒・誓約書の提出,児童福祉司等の指導,児童福祉施設入所措置,里親委託など)で足りると判断した場合にはそのような措置を受けることになります(児童福祉法27条1項1号ないし3号)。
3.家庭裁判所においては,鑑別所という少年の資質や性格の鑑別及び行動観察などを行う施設に入所する手続きがとられる可能性があります(観護措置)。入所期間についてですが,一般的には4週間程度入所するケースが多いように思われます(少年法17条)。家庭裁判所は,鑑別所での鑑別結果や調査官などの作成した資料をもとに審判を行うか否かを決定します(少年法19条1項,同法21条)。審判が行われた場合,裁判官が,審判の結果を踏まえ,不処分,保護観察,児童自立支援施設又は児童養護施設送致,知事又は児童相談所長送致,試験観察のいずれかを選択することになります(少年法24条,同法25条)。少年院送致という手続きは,保護観察の一種ということになります。ただ,単なる万引きだけでは観護処置は取られないでしょう。
4.(対策)以上が一般的手続きですが,万引きが事実であれば,以下の対応をとってください。@被害者と直ちに示談して商品を買い取り,領収書を頂いてください。A書面で被害届を取下げてもらってください。同時に迷惑料を支払ってその書面(示談書)を作成してください。B被害者に対して謝罪文を本人と両親が作成し手渡してください。C再度万引き等違法行為をしないという誓約書を本人と両親で作成し,被害者に提出してください。これは重要です。D被害者,捜査機関に対して学校への連絡をしないように要請してください。公立だと連絡するようです。私立ですと退学の危険があります。少額の万引きであれば,以上の手続きにより,警察段階で終了すると予想されます。自分でできないようであれば,選任した付添人(弁護士)と協議しましょう。
5.用語の意味や補足説明については,解説の項をご参照ください。ただし,本回答及び解説は一般的な事件における手続きの概略についての説明となりますので,手続きの詳細などにつきましては,お近くの法律事務所へご相談されることをお勧めいたします。
6.少年事件に関し,当事務所事例集検索:1113番1087番1039番777番716番714番649番461番403番291番245番244番161番参照。

解説:
(少年審判手続の趣旨,刑事事件手続きとの違い)
  20歳未満の少年が罪を犯した場合, 少年事件 (少年保護事件)と呼ばれています。刑法41条は,「14歳に満たない者の行為は罰しない」として14歳以上はたとえ未成年者でも刑事責任能力があると明言していますが,まずどうして14歳以上の未成年者も刑事罰において特別扱いされるのか説明します。刑罰とは罪を犯した者に対して科せられる行為者が持つ法益の剥奪を内容とする強制処分ですから,行為者自身に不利益(責任)を受ける理由がなければなりません。その刑事責任の根拠とは,犯罪行為者が犯罪行為のような悪いことをしてはいけないという社会一般規範(常識)を知りながら(理解可能であるのに)あえてそれを守らず,積極的に(故意犯)又は不注意で犯罪行為自体を認識せずに(過失犯)社会規範に反し行動にでた態度,行為に求める事が出来ます(刑法38条1項)。
  従って,14歳以上の少年は,すでに責任の前提となる社会規範,常識を理解できる能力(判断能力)を基本的に有するので,刑事責任能力は認められることになります。しかし,刑法の最終目標は,犯罪者を再教育し適正な法社会秩序を維持することであり,未成年者は,一般的に成人と異なり,日々社会全体から教育を受け人間として未だ成長過程にあり,判断能力は未だ未成熟なので,犯罪行為の個人的責任追及を行うよりもその少年をいかにして保護成長させ社会に適応させるかという視点から犯罪行為を明らかにして処遇,処分を決めるのが刑法の目的に合致し,刑事政策的にも妥当です。
  従って,刑罰を前提とした刑事訴訟法の原則である当事者主義,公開主義,厳格な証拠法則は少年事件に適用されません。又,処分内容も多様で,裁判所の裁量により合目的であり,犯罪行為時に少年であっても処遇を決定する時に成人になっていれば刑罰が適用されることになりますし,少年といえども具体的事情によっては逆送致され刑事手続により刑罰が科せられることもあるわけです。以上のように少年法の理念は,成人の刑事事件とは根本的に異なるものといえます。

  少年法第1条が,その基本理念として掲げている「少年の健全育成」とは,個々の少年が社会の一員,1個の人格として成長するように,国,社会において助力することを意味しています。少年法は,非行を犯した少年について,できるだけ処罰でなく,教育的手段によってその非行性を矯正し,更生を図ることを目的としており,刑罰は,このような教育的な手段によって処遇することができないか,不適当な場合に限って科せられることになっています。
  前述のように少年は,精神的に未熟,不安定で,環境の影響を受けやすく,非行を犯した場合にも必ずしも深い犯罪性を持たないものが多く,これを成人と同様に非難し,その責任を追及することは適当でないということと,少年は,たとえ罪を犯した場合にも人格の発展途上にあるものとして,成人に比べれば,なお豊かな教育的可能性(可塑性)を持っており,指導や教育によって更生させることができるのにそれを行わず前科の烙印を押してしまうことは,本人の将来のためばかりでなく,社会的損失と位置付けることができます。少年法は,この基本理念に基づいて,全ての少年事件を少年事件 の専門機関である家庭裁判所に送致することを定め(これを,「全件送致主義」,「家裁送致主義」といいます。少年法41条,42条),改善更生の可能性がある以上は,保護処分によって対処する(保護優先主義)という立場に立っています。以上の趣旨から,14歳未満であっても犯罪行為を行った少年に対し国家,社会的関与,処遇が同様に考えられ,手続きが規定されています。

1 用語説明
(1)少年法における少年とは
   少年法における少年とは,二十歳に満たない者をいい(少年法2条1項),男女を問いません。女子でも「少年」と呼びます。
(2)虞犯少年とは
   虞犯少年とは,少年法3条1項3号イないしニに該当する事由があり, かつ,その性格または環境に照らして,将来,罪を犯し,または刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年をいいます(少年法3条1項3号参照)。
(3)触法少年とは
   触法少年とは,十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年を いいます(少年法3条2号)。
(4)犯罪少年とは
   犯罪少年とは,罪を犯した少年をいいます(少年法3条1号)。
(5)鑑別所とは
   鑑別所とは,少年の科学的な調査と診断を行うことを目的とした法務省管轄の専門施設をいいます(少年院法16条)。
(6)保護観察とは
   保護観察とは,少年を家庭や職場に置いたまま,保護観察官や保護司が指導監督と補導援護を加え,少年の改善更生を図るものです(少年法24条1項1号)。
(7)試験観察とは
   試験観察とは,裁判官が調査の結果又は審判を行った結果,少年に対していかなる処分をするか直ちに決めることが困難な場合に,おおよそ3か月から4か月間位の期間,少年を家庭裁判所調査官の観察に付する制度をいいます(少年法25条)。
   試験観察には,在宅試験観察と補導委託の2種類があります。
(8)知事又は児童相談所長送致とは
   知事又は児童相談所長送致とは,児童福祉法による措置に委ねるために,児童福祉期間に事件を送致する処分をいいます(少年法18条)
(9)児童自立支援施設とは
   児童自立支援施設とは,不良行為をなす児童などに必要な指導を行い,その自立を支援することを目的とする施設をいいます(児童福祉法44条)。
(10)児童養護施設とは
   児童養護施設とは,環境上養護を要する児童を養護し,併せてその自立を支援することを目的とする施設をいいます(児童福祉法41条)。
(11)少年院とは
   少年院とは,生活指導,教科教育,職業補導,情操教育,医療措置等を施すことにより,非行性の矯正を行うことを目的とする男女別の収容施設をいいます(少年院法1条)。
2 虞犯少年の手続の概略
  「参考資料1」をご参照ください。
3 触法少年の手続の概略
  「参考資料2」をご参照ください。
4 犯罪少年の手続の概略
  「参考資料3」をご参照ください。

2(判例検討)
東京家庭裁判所平成20年6月26日決定。本判例では,14歳未満ではありませんが虞犯少年として中等少年院に送致を決定しています。(少年法3条1項3号イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。)この決定は,東京高裁,最高裁でも維持されています。やむを得ない判断です。
決定抜粋
(処遇の理由)
 本件非行の内容は前記のとおりであるが,少年は,手許に金銭が少ないときに洋服が欲しいと感じると,Bにうそを言って金銭を引き出させて,その金銭を受け取っている。少年は,平成18年にも,Bにキャッシュカードを持ち出させて,そのキャッシュカードを使用して金銭を引き出したことがあり,今回もBなら金銭を引き出してくれるだろうとして前記行為に及んだものである。そして,本件において,妹にも金策を要求している。これは,少年が,普段から妹に対しては自分の方が立場が上だと考えていたからだという。少年については,前件ぐ犯保護事件の時に,対人関係を上下関係で捉え,自分より弱い者を都合良く利用するところがあると指摘されていたが,本件においても,なおその傾向が残っているといわざるを得ない。
 少年がこれらの金銭受取り・金策要求に出た背景には,ぐ犯事由としても一部取り上げた生活の不安定さがある。すなわち,少年は,赤城少年院を仮退院して,当初は飲食店の正社員として就職したものの,少年によれば周囲の期待に応えられない等として3か月弱で退社し,厩務員の学校を受験し仮合格したものの進学しなかった。本年2月ころには派遣会社に登録したものの,実際に仕事をしたのは週2,3日であり,5月に入ると全く働かなくなっていた。

 少年は,平成16年秋ころから平成18年6月ころまでの間に,児童養護施設内での器物損壊,他児童への暴力,祖母に対する暴力,土下座の強要,妹に対する暴言,祖母からの金員の詐取,前述したBにキャッシュカードを持ち出させてお金をおろしたことなどをぐ犯事由とするぐ犯保護事件で,初等少年院送致決定を受け,平成18年7月14日から平成19年9月6日まで赤城少年院で教育を受けた。同決定前の調査によれば,少年について,前述の弱い者を利用するところがあることのほかにも,共感性が乏しく他者の気持ちや考えを察知しにくいことから,相手のことや状況を理解できずに,不安が高まりやすいこと,問題を解決する手段として暴力を用いることも多いこと,感情の起伏が激しく,感情を統制しようとする気持ちにも乏しいことから,いったん怒りを表出すると,粗暴な振る舞いによって,気が済むまで感情を発散させることが多いことなどが指摘されていた。少年は,赤城少年院で教育を受けたことにより,感情を暴発させて暴力行為に及ぶことはなくなってきており,我慢することへの意識も幾分持つようになっている。また,母や妹の気持ちを推し量り,謝罪の言葉を述べるなど,他者の感情にも関心を向けられるようになっている。しかしながら,前述のごとく,自分よりも弱い立場の人間を利用すること,そして,その者が自己の意に従わないと,むき出しの暴力とまでは行かないまでも水たまりでの土下座という相手を服従させる行為に及ぶ傾向はなお残されており,少年の問題性は深い。
 少年の保護環境を見ると,少年は,母,祖母,妹と4人暮らしであるが,今まで母の指導に従わずに問題行動をくり返しており,本件でも母の制止を聞かずに妹に対する行為に及んでいる。少年は,かつて祖母に対して激しい暴行に及んでおり,祖母に少年への指導を期待することもできない。総じて,家庭の監護力は弱い。
 そうすると,少年については,今一度少年院に収容して,対人関係の結び方,就労に対する意識等について教育する必要がある。 
 よって,少年法24条1項3号,少年審判規則37条1項を適用して,主文のとおり決定する。
       主   文

少年を中等少年院に送致する。

≪参照条文≫

刑法
(責任年齢)
第四十一条  十四歳に満たない者の行為は,罰しない。

少年法
(少年,成人,保護者)
第2条 この法律で「少年」とは,20歳に満たない者をいい,「成人」とは,満20歳以上の者をいう。
2 この法律で「保護者」とは,少年に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者をいう。
(審判に付すべき少年)
第3条 次に掲げる少年は,これを家庭裁判所の審判に付する。
1.罪を犯した少年
2.14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
3.次に掲げる事由があつて,その性格又は環境に照して,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
ロ 正当の理由がなく家屋に寄り附かないこと。
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し,又はいかがわしい場所に出入すること。
ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
2 家庭裁判所は,前項第2号に掲げる少年及び同項第3号に掲げる少年で14歳に満たない者については,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り,これを審判に付することができる。
(警察官等の調査)
第6条の2 警察官は,客観的な事情から合理的に判断して,第3条第1項第2号に掲げる少年であると疑うに足りる相当の理由のある者を発見した場合において,必要があるときは,事件について調査をすることができる。
2 前項の調査は,少年の情操の保護に配慮しつつ,事案の真相を明らかにし,もつて少年の健全な育成のための措置に資することを目的として行うものとする。
3 警察官は,国家公安委員会規則の定めるところにより,少年の心理その他の特性に関する専門的知識を有する警察職員(警察官を除く。)に調査(第6条の5第1項の処分を除く。)をさせることができる。
(警察官の送致等)
第6条の6 警察官は,調査の結果,次の各号のいずれかに該当するときは,当該調査に係る書類とともに事件を児童相談所長に送致しなければならない。
1.第3条第1項第2号に掲げる少年に係る事件について,その少年の行為が第22条の2第1項各号に掲げる罪に係る刑罰法令に触れるものであると思料するとき。
2.前号に掲げるもののほか,第3条第1項第2号に掲げる少年に係る事件について,家庭裁判所の審判に付することが適当であると思料するとき。
2 警察官は,前項の規定により児童相談所長に送致した事件について,児童福祉法第27条第1項第4号の措置がとられた場合において,証拠物があるときは,これを家庭裁判所に送付しなければならない。
3 警察官は,第1項の規定により事件を送致した場合を除き,児童福祉法第25条の規定により調査に係る少年を児童相談所に通告するときは,国家公安委員会規則の定めるところにより,児童相談所に対し,同法による措置をとるについて
参考となる当該調査の概要及び結果を通知するものとする。
(観護の措置)
第17条 家庭裁判所は,審判を行うため必要があるときは,決定をもつて,次に掲げる観護の措置をとることができる。
1.家庭裁判所調査官の観護に付すること。
2.少年鑑別所に送致すること。
2 同行された少年については,観護の措置は,遅くとも,到着のときから24時間以内に,これを行わなければならない。検察官又は司法警察員から勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも,同様である。
3 第1項第2号の措置においては,少年鑑別所に収容する期間は,2週間を超えることができない。ただし,特に継続の必要があるときは,決定をもつて,これを更新することができる。
4 前項ただし書の規定による更新は,1回を超えて行うことができない。ただし,第3条第1項第1号に掲げる少年に係る死刑,懲役又は禁錮に当たる罪の事件でその非行事実(犯行の動機,態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)の認定に関し証人尋問,鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行つたものについて,少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には,その更新は,更に2回を限度として,行うことができる。
5 第3項ただし書の規定にかかわらず,検察官から再び送致を受けた事件が先に第1項第2号の措置がとられ,又は勾留状が発せられた事件であるときは,収容の期間は,これを更新することができない。
6 裁判官が第43条第1項の請求により,第1項第1号の措置をとつた場合において,事件が家庭裁判所に送致されたときは,その措置は,これを第1項第1号の措置とみなす。
7 裁判官が第43条第1項の請求により第1項第2号の措置をとつた場合において,事件が家庭裁判所に送致されたときは,その措置は,これを第1項第2号の措置とみなす。この場合には,第3項の期間は,家庭裁判所が事件の送致を受けた日から,これを起算する。
8 観護の措置は,決定をもつて,これを取り消し,又は変更することができる。
9 第1項第2号の措置については,収容の期間は,通じて8週間を超えることができない。ただし,その収容の期間が通じて4週間を超えることとなる決定を行うときは,第4項ただし書に規定する事由がなければならない。
10 裁判長は,急速を要する場合には,第1項及び第8項の処分をし,又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
(児童福祉法の措置)
第18条 家庭裁判所は,調査の結果,児童福祉法の規定による措置を相当と認めるときは,決定をもつて,事件を権限を有する都道府県知事又は児童相談所に送致しなければならない。
2 第6条の7第2項の規定により,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けた少年については,決定をもつて,期限を付して,これに対してとるべき保護の方法その他の措置を指示して,事件を権限を有する都道府県知事又は児童相談所長に送致することができる。
(審判を開始しない旨の決定)
第19条 家庭裁判所は,調査の結果,審判に付することができず,又は審判に付するのが相当でないと認めるときは,審判を開始しない旨の決定をしなければならない。
2 家庭裁判所は,調査の結果,本人が20歳以上であることが判明したときは,前項の規定にかかわらず,決定をもつて,事件を管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
(審判開始の決定)
第21条 家庭裁判所は,調査の結果,審判を開始するのが相当であると認めるときは,その旨の決定をしなければならない。
(保護処分の決定)
第24条 家庭裁判所は,前条の場合を除いて,審判を開始した事件につき,決定をもつて,次に掲げる保護処分をしなければならない。ただし,決定の時に14歳に満たない少年に係る事件については,特に必要と認める場合に限り,第3号の保護処分をすることができる。
1.保護観察所の保護観察に付すること。
2.児童自立支援施設又は児童養護施設に送致すること。
3.少年院に送致すること。
2 前項第1号及び第3号の保護処分においては,保護観察所の長をして,家庭その他の環境調整に関する措置を行わせることができる。
(家庭裁判所調査官の観察)
第25条 家庭裁判所は,第24条第1項の保護処分を決定するため必要があると認めるときは,決定をもつて,相当の期間,家庭裁判所調査官の観察に付することができる。
2 家庭裁判所は,前項の観察とあわせて,次に掲げる措置をとることができる。
1.遵守事項を定めてその履行を命ずること。
2.条件を附けて保護者に引き渡すこと。
3.適当な施設,団体又は個人に補導を委託すること。

少年院法
第1条  少年院は,家庭裁判所から保護処分として送致された者及び少年法 (昭和二十三年法律第百六十八号)第五十六条第三項 の規定により少年院において刑の執行を受ける者(以下「少年院収容受刑者」という。)を収容し,これに矯正教育を授ける施設とする。
第16条  少年鑑別所は,少年法第十七条第一項第二号 の規定により送致された者を収容するとともに,家庭裁判所の行う少年に対する調査及び審判並びに保護処分及び懲役又は禁錮の言渡しを受けた十六歳未満の少年に対する刑の執行に資するため,医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的知識に基づいて,少年の資質の鑑別を行う施設とする。
児童福祉法
第25条  要保護児童を発見した者は,これを市町村,都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村,都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。ただし,罪を犯した満十四歳以上の児童については,この限りでない。この場合においては,これを家庭裁判所に通告しなければならない。
第27条  都道府県は,前条第一項第一号の規定による報告又は少年法第十八条第二項 の規定による送致のあつた児童につき,次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。
一  児童又はその保護者に訓戒を加え,又は誓約書を提出させること。
二  児童又はその保護者を児童福祉司,知的障害者福祉司,社会福祉主事,児童委員若しくは当該都道府県の設置する児童家庭支援センター若しくは当該都道府県が行う相談支援事業に係る職員に指導させ,又は当該都道府県以外の者の設置する児童家庭支援センター,当該都道府県以外の相談支援事業を行う者若しくは前条第一項第二号に規定する厚生労働省令で定める者に指導を委託すること。
三  児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し,又は乳児院,児童養護施設,知的障害児施設,知的障害児通園施設,盲ろうあ児施設,肢体不自由児施設,重症心身障害児施設,情緒障害児短期治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。
四  家庭裁判所の審判に付することが適当であると認める児童は,これを家庭裁判所に送致すること。
2  都道府県は,第四十三条の三又は第四十三条の四に規定する児童については,前項第三号の措置に代えて,指定医療機関に対し,これらの児童を入院させて肢体不自由児施設又は重症心身障害児施設におけると同様な治療等を行うことを委託することができる。
3  都道府県知事は,少年法第十八条第二項 の規定による送致のあつた児童につき,第一項の措置を採るにあたつては,家庭裁判所の決定による指示に従わなければならない。
4  第一項第三号又は第二項の措置は,児童に親権を行う者(第四十七条第一項の規定により親権を行う児童福祉施設の長を除く。以下同じ。)又は未成年後見人があるときは,前項の場合を除いては,その親権を行う者又は未成年後見人の意に反して,これを採ることができない。
5  都道府県知事は,第一項第二号若しくは第三号若しくは第二項の措置を解除し,停止し,又は他の措置に変更する場合には,児童相談所長の意見を聴かなければならない。
6  都道府県知事は,政令の定めるところにより,第一項第一号から第三号までの措置(第三項の規定により採るもの及び第二十八条第一項第一号又は第二号ただし書の規定により採るものを除く。)若しくは第二項の措置を採る場合又は第一項第二号若しくは第三号若しくは第二項の措置を解除し,停止し,若しくは他の措置に変更する場合には,都道府県児童福祉審議会の意見を聴かなければならない。
第41条  児童養護施設は,保護者のない児童(乳児を除く。ただし,安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には,乳児を含む。以下この条において同じ。),虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて,これを養護し,あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設とする。
第44条  児童自立支援施設は,不良行為をなし,又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ,又は保護者の下から通わせて,個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い,その自立を支援し,あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。

■参考文献
『少年事件ビギナーズ(季刊刑事弁護増刊)』 桑山亜也・中村聡編(現代人文社 2011.8.30)
『少年事件マニュアル』 子どもの人権と少年法に関する特別委員会(東京弁護士会 2010.4.1)
『少年審判手続きについて』 司法研修所 2009.9

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