郊外住宅地の空き家所有者と連絡が取れない場合の対応

【民事|不在者財産管理人|相続財産管理人|所有者不明土地管理人】

質問

郊外の私道つき住宅地に住んでいます。私道は8軒の戸建て所有者の共有ですが、そのうち1軒が数年前から空き家になっていて、雑草が生い茂り、空き巣が入っている様子もあり心配です。私道の修理工事をする場合の費用負担も誰に請求したらよいのか分からず困っています。残された7軒の所有者はどのように対応すべきでしょうか。空き家の所有名義が個人の場合と法人の場合で変わりますか?不在者財産管理人、相続財産管理人、所有者不明土地管理人、どの制度を利用すべきですか?3つの制度の違いも教えてください。

回答

1、まずは、空き家といっても、本当に所有者との連絡が取れないのか、調査の努力を尽くすことが大切です。所有者が法人と個人の場合で調査方法も異なりますので、簡単に説明します。

2、そのうえで、どうしても連絡できる所有者が見つからない場合は、「不在者財産管理人」、「相続財産管理人」、「所有者不明土地管理人」の3つの制度の違いを良く比較検討した上で、適切な手続きを選択し、残された共有者7名で申し立てすると良いでしょう。令和5年4月に施行された民法改正で、不明共有者を除外して共有物に関する意思決定できる制度も創設されていますので、併せて解説致します。

3、お困りであれば、所有者調査の段階から、お近くの法律事務所にご相談なさり、弁護士と一緒に手続きを進めると良いでしょう。

解説

1、空き家および私道所有者の調査方法

(1)登記事項証明書の取得

まず、空き家(建物)、敷地(土地)及び私道(土地)について、現在の権利関係を調査します。空き家の建物、建物敷地、私道の登記事項証明書をそれぞれ取得して下さい。共有の私道については地番をご存じでしょうから、すぐに法務局で最新の登記事項証明書を取得できますが、空き家部分の土地建物の地番と家屋番号が分からない場合は、法務局で「公図」を取得して、住宅地の位置関係から、当該空き家の地番を特定し、その土地に所在する建物を検索して、土地と建物の登記事項証明書を取得することができます。

(2)登記事項証明書の甲区を確認

登記事項証明書が取得できたら、空き家である建物、その敷地である土地及び出入りに利用している私道の土地について、それぞれ、甲区に記載されている最新の登記内容を確認してください。建物と土地の所有者が同じとは限らず、私道については複数人の共有名義となっていることもあるため、各不動産を個別に確認する必要があります。

登記事項証明書の甲区は、所有権の保存、移転、差押えなど、所有権に関する事項が記録されている部分です。原則として、甲区の最後に記載された所有権移転登記又は所有権保存登記の名義人が、登記上の現在の所有者となります。個人であれば住所、法人であれば本店所在地が登記されているはずです。ただし、相続が発生しているにもかかわらず相続登記がされていない場合など、登記名義人と実際の所有者が一致しないこともあります。次に説明するように後日連絡先を確認するために住民票を取れば相続の有無は調査できます。

登記の記載内容や順位番号、共有持分、登記原因などの見方が分からない場合には、登記事項証明書を持参したうえで、弁護士や司法書士に相談し、現在の所有者や相続関係について一緒に確認してもらうのもよいでしょう。

(3)個人所有者の調査方法

最後の所有者・名義人が、数年前まで居住していた人物であれば、その人物が亡くなったのか、転居したのか、ご近所の皆様でご存知の事情が無いでしょうか。

不動産を取得する時の、所有権移転登記の登記申請では、登記権利者(所有権登記を受ける人物)の、移転登記した時点の「住所証明書」つまり住民票を添付して申請されますので、移転登記した時点の住所氏名は確認済みとなっています。問題は、その人物が、転居したり、亡くなったりした場合です。

登記名義人の住所に変更がないかどうか調べるために、登記名義人の住所地の市役所に対して、住民票の写し(戸籍附票)交付請求をされると良いでしょう。登記簿上の住所から既に転居している場合でも、住民票の除票や戸籍の附票等には移転先が記録されていますから、順番に辿って調査することにより、現在の転居先を確認できることがあります。

通常は他人の住民票を勝手に請求することはできませんが、当該人物に対して債権を持っているなどの利害関係がある場合は、利害関係があることを示す文書を市役所に提示して、住民票の交付申請をすることができます。根拠規定は、住民基本台帳法12条の3第1項1号「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者」です。たとえば、登記名義人に対して私道の修理費用の負担を求める債権を有している場合や、共有物の管理に関する通知を送付する必要がある場合には、その利害関係を具体的に説明し、登記事項証明書、工事見積書、共有関係を示す資料、請求予定の内容を記載した文書などを添付して、住民票の交付を申請することが考えられます。民事手続きを代理する弁護士からの職務上請求として、空き家や私道所有者の住民票交付請求をすることも可能です。

登記名義人が死亡していた場合

住民票の写しや除票を取得した結果、登記名義人が既に死亡していることが判明した場合には、その死亡によって不動産の所有権を承継した相続人を調査する必要があります。そのため、次の段階として、亡くなった登記名義人の本籍地の市区町村に対し、戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本等の交付を請求することになります。登記名義人の出生から死亡までの戸籍を順次取得して法定相続人を確定し(配偶者、実子、養子の有無)、さらに必要に応じて、各相続人の現在戸籍や戸籍の附票を調査して、その生存状況や現在の住所を確認します。

第三者による戸籍謄本等の交付請求の根拠は、戸籍法10条の2第1項1号です。同号は、「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合」に、戸籍謄本等を請求できる旨を定めています。私道の補修費用について登記名義人又はその相続人に対する負担金請求権を有している場合などには、債権者として相続人を特定する必要があることを説明し、戸籍謄本等の交付を申請することが考えられます。

申請に際しては、単に「債権者であるから請求する」と記載するだけでは足りず、請求の根拠や戸籍を必要とする理由を具体的に明らかにする必要があります。たとえば、私道の登記事項証明書、共有持分を示す資料、補修工事の見積書、共有者間の協議書、費用負担を求める通知書などを提出し、どのような債権を、誰に対して行使するために、どの範囲の戸籍が必要なのかを説明します。戸籍には親族関係などの重要な個人情報が記載されているため、住民票の写しよりも必要性や請求範囲が厳格に審査されることが少なくありません。

相続人が多数に及ぶ場合や、転籍、再婚、代襲相続、数次相続などがある場合には、戸籍の収集と相続関係の判定が相当に複雑になります。ご自身での取得が難しい場合や、市区町村から交付を認められなかった場合には、債権回収や所有者不明土地管理命令等の法的手続を前提として、弁護士に代理人として手続きを依頼することも検討するとよいでしょう。

登記名義人に配偶者も子供も無く、両親が既に死去しており、兄弟も死去している場合、兄弟の子供、甥姪も代襲相続人として法定相続人になり得ますが、民法889条2項で甥姪の子供には再代襲が認められておりませんので、存命している甥姪も発見できなかった場合は、法定相続人が見当たらない、という事態に至ります。

相続人がいない場合

この場合、相続財産が直ちに国庫(財務省の地方財務局など)へ移転するわけではありません。まず、民法951条により、相続財産は法人とされます。その上で、利害関係人又は検察官が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、民法952条1項に基づいて相続財産清算人の選任を申し立てることになります。相続財産清算人は、相続財産を調査・管理し、相続人の捜索、相続債権者及び受遺者への弁済などの清算手続を行います。

さらに、特別縁故者(相続人ではないが生前世話をしていたなどの関係がある者)に対する相続財産の分与が行われる場合には、その手続を経ます(民法958条の2)。これらの清算手続を終えてもなお残った相続財産が、初めて民法959条により国庫に帰属します。したがって、国庫帰属に至るためには、通常、財務局にいきなり引取りを求めるのではなく、まず家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立て、その清算人を通じて所定の手続を進める必要があります。

(4)法人所有者の調査方法

登記名義人が法人の場合には、商業登記、本店所在地、役員及び代表者の住所などを調査することになります。

株式会社の登記事項証明書には、代表取締役の氏名及び住所が登記事項として記載されます(会社法911条3項14号)。そのため、まず会社の登記事項証明書を取得し、代表取締役の住所を手掛かりとして、会社や代表者への連絡を試みることになります。

商業登記簿(登記事項証明書)を取得したら、次の点を確認して下さい。現況調査の方法は、いわゆる5W1H(誰が、いつ、どこで、誰に、どのように、何を尋ねたのか、そしてその回答はどうだったのか)を、後日検証可能なようにメモしてください。法人と役員の活動実態があるかどうかに関する調査です。そして可能な限り、写真撮影し、現地写真も添付して保管して下さい。)

法人が現在も存続しているか、本店所在地の現況調査(写真撮影、近隣聴取メモ)

代表取締役その他の役員の最後の重任登記時期

代表取締役の住所地の現況調査(写真撮影、近隣聴取メモ)

解散登記の有無

清算人の有無

清算結了登記の有無

破産手続開始登記の有無

法人が存続しており、代表者や本店所在地も分かる場合には、法人に対して空き家管理及び私道費用の負担を求めます。

法人について破産手続が進行中であれば、通常は破産管財人が窓口になります。

法人が解散して清算中であれば、清算人が会社財産を管理します。解散会社に清算人となる者がいない場合には、利害関係人が、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に清算人の選任を申し立てることができます(会社法478条2項)。清算人は、債権の取り立て、債務の弁済、残余財産の換価および分配などの清算事務を行いますが、必要に応じて、私道の報酬工事などの保存行為や管理行為なども行います。

しかし、法人の商業登記が古く、本店には実体がなく、代表者も死亡又は所在不明であり、必要な調査を尽くしても法人に連絡する方法がない場合には、法人名義の特定の土地・建物又は私道持分について、所有者不明土地・建物管理人を選任する方法が有力です。

つまり、法人名義の場合は、概ね次の順に考えると良いでしょう。

・存続事業会社 → 会社及び代表者を探して請求する。

・破産会社 → 裁判所に問い合わせて、破産管財人に連絡する。

・解散会社で清算人がいる → 登記された清算人に請求する。

・解散会社で清算人がいない → 清算人選任を検討する。

・法人の本店、代表者等を調査しても連絡不能 → 特定不動産について所有者不明土地・建物管理人を検討する。

なお、令和6年10月1日から、株式会社の申出により、代表取締役など代表者の住所について、市区町村までを表示し、それより後の町名、番地等を登記事項証明書等に表示しない「代表取締役等住所非表示措置」が始まっています。根拠は、商業登記規則31条の3です。これは住所自体が登記されなくなる制度ではなく、一定の要件の下で、登記事項証明書等に表示される住所の一部を非表示にする制度です。

この措置が講じられていて、登記事項証明書から代表者の完全な住所を確認できない場合には、表示されている市区町村に対し、住民票の写しの交付を申し出ることを検討して下さい。たとえば、私道の修理費用について会社又は代表者に対する請求権があり、その権利を行使するために住所確認が必要であることを、登記事項証明書、共有関係を示す資料、工事見積書、請求書案等によって具体的に説明します。こちらも難しいようであれば、代理人弁護士の依頼を検討なさって下さい。法人の代表者の所在も確認できない場合は、所有者不明土地・建物管理人の選任申し立てを検討することになります。これは別途解説致します。

2 共有私道の修理は7軒だけで決められるか

(1)工事の内容によって必要な同意要件が違います

空き家については、所有者を確認する必要がありますが、私道は共有ということですから、わかっている共有者だけで工事を進められないか、検討することになります。

その工事が、共有物の「保存」「管理・軽微変更」「重大な変更」のどれに当たるかによって、必要な共有者の同意要件が変わります。

・保存行為

私道の現状を維持し、損傷や危険を防ぐために必要な行為です。たとえば、道路のアスファルトが陥没して通行に危険がある場合の応急補修、崩れた側溝の原状回復などが考えられます。当該資産の価値を維持するための、いわゆる応急処置に含まれる行為です。

保存行為は、共有者の一人が単独で行うことができます(民法252条5項)。

・管理行為、軽微な変更

通常の維持管理、老朽化した舗装の補修、従前と同程度の舗装への更新などは、工事内容や規模によって、管理行為又は形状・効用の著しい変更を伴わない軽微な変更と評価される可能性があります。

この場合、各共有者の人数ではなく、共有持分の価格の過半数で決定します(民法252条1項)。8軒がそれぞれ8分の1ずつ私道持分を有しているなら、7軒の持分は8分の7ですから、通常は過半数を大きく上回ります。7人の同意で、手続きを進めることが可能です。

・重大な変更

道路の幅を大幅に拡張する、道路の位置を変更する、従来なかった構造物を設置するなど、形状又は効用を著しく変更する工事については、原則として共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。

民法は、共有物の管理事項を持分価格の過半数で決定し、保存行為については各共有者が単独で行うことを認めています。また、形状又は効用の著しい変更を伴わない変更についても、持分価格の過半数による決定が可能です。

法務省は、共有私道の舗装、側溝、階段、上下水道等の工事を対象としたガイドラインを公表していますのでご参考になさって下さい。

※法務省による所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版、令和4年6月)

https://www.moj.go.jp/content/001375974.pdf

(2)連絡がつかない共有者を除外して決定する私道補修工事

所在不明の共有者がいるために私道工事が進められない場合には、財産管理人を選任する以外にも、令和5年4月1日に施行された改正民法上の共有制度を利用できる場合があります。

共有者の氏名を知ることができず、又は必要な調査をしてもその所在を知ることができない場合、他の共有者は、共有物の所在地を管轄する地方裁判所に不明共有者の除外を申し立てることができます。裁判所の決定を得れば、所在等不明共有者を除いた共有者の持分価格の過半数により、私道の通常の補修など、共有物の管理に関する事項を決定することができます(民法252条2項1号、非訟事件手続法85条1項)。

また、道路の位置を変更するなど、共有物の形状又は効用を著しく変更するため、本来は共有者全員の同意を必要とする変更行為についても、所在等不明共有者がいる場合には、裁判所の決定を得た上で、その共有者を除く他の共有者全員の同意により実施することができます(民法251条2項、非訟事件手続法85条1項)。

他方、共有者の住所は判明しており通知も届くものの、私道工事について賛成とも反対とも回答しない場合には、他の共有者が、工事内容を具体的に示した上で、相当の期間を定めて賛否を明らかにするよう催告します。それでも期間内に回答しないときは、地方裁判所に申し立て、賛否を明らかにしない共有者を除いた共有者の持分価格の過半数で、管理に関する事項を決定できる旨の裁判を求めることができます(民法252条2項2号、非訟事件手続法85条2項以下)。

目的が「今回の私道補修を有効に決定すること」に限られるのであれば、所有者不明土地管理人を選任するよりも、民法252条2項に基づき、所在等不明共有者又は賛否不明共有者を除外して管理事項を決定する裁判の方が、直接的で簡便な場合があるでしょう。

これに対し、今後も継続的に私道の管理費や補修費が発生する場合、空き家の敷地や建物について除草、修繕、防犯措置等を行う必要がある場合、あるいは将来的に土地・建物の売却や建物の解体まで検討する場合には、特定の土地、建物又は共有持分を継続的に管理させるため、所有者不明土地・建物管理人の選任を申し立てる方が適している可能性があります。

3 三つの財産管理制度の違い

ご質問にある三つの財産管理制度は、対象となる権利主体、管理する財産の範囲及び管轄裁判所が異なります。

なお、従来「相続財産管理人」と呼ばれていた、相続人がいない場合の清算担当者は、現在は正式には「相続財産清算人」と呼ばれています。

(1)不在者財産管理人

不在者財産管理人は、生存していると考えられる自然人が従来の住所又は居所を離れ、容易に戻る見込みがなく、その人の財産を管理する者もいない場合に利用する制度です。根拠規定は民法25条です。

民法第25条(不在者の財産の管理) 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。

2項 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。

第26条(管理人の改任) 不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。

第27条(管理人の職務) 前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。

2項 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。

3項 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

第28条(管理人の権限) 管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

第29条(管理人の担保提供及び報酬) 家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。

2項 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

不在者本人の配偶者、推定相続人、債権者などの利害関係人又は検察官が、不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所に選任を申し立てます。選任された管理人は、不在者が所有する土地・建物だけでなく、預貯金、有価証券その他の財産を含む財産全般を人単位で管理します。

家庭裁判所から任命された管理人は、財産の保存や通常の管理を行うことができますが、不動産の売却、遺産分割への参加など、管理の範囲を超える行為を行うためには、家庭裁判所の権限外行為許可を受ける必要があります。

したがって、私道の共有者が生存していることは判明しているものの、長年行方不明であり、私道持分だけでなく、その人の財産全般について継続的な管理が必要な場合には、不在者財産管理人を選任することが考えられます。

ただし、この制度の対象は自然人です。登記名義人が株式会社などの法人である場合には、原則として不在者財産管理人制度を利用することはできません。

(2)相続財産清算人

相続財産清算人は、登記名義人が死亡し、その相続人の存在が明らかでない場合に、亡くなった人の相続財産を管理し、清算するための制度です。相続人全員が相続放棄をした結果、相続する者がいなくなった場合も含まれます。根拠規定は民法951条、952条以下です。

民法第951条(相続財産法人の成立) 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

第952条(相続財産の清算人の選任) 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。

2項 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。

第953条(不在者の財産の管理人に関する規定の準用) 第二十七条から第二十九条までの規定は、前条第一項の相続財産の清算人(以下この章において単に「相続財産の清算人」という。)について準用する。

第954条(相続財産の清算人の報告) 相続財産の清算人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。

この清算担当者のことは、以前は「相続財産管理人」と呼ばれていましたが、令和5年4月1日施行の改正民法により、正式には相続財産清算人と呼ばれるようになりました。

被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者などの利害関係人又は検察官が、被相続人(登記名義人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に選任を申し立てます。

相続財産清算人は、特定の土地だけを管理するのではなく、被相続人の土地・建物、預貯金、動産、債権などの積極財産と、借入金、未払税金、私道の補修費負担などの債務を含む相続財産全体を管理・清算します。

清算人は、相続人の捜索、財産の調査・保全、債権者への弁済などを行います。不動産の売却などについては、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。債務の弁済や特別縁故者への財産分与を終えても財産が残った場合には、最終的に残余財産が国庫に引き継がれます。

したがって、空き家の登記名義人が死亡しており、戸籍を調査しても相続人の存在が明らかでない場合や、相続人全員が相続放棄をしている場合には、相続財産清算人の選任が考えられます。

もっとも、相続人が存在し、その氏名や住所も判明している場合には、相続登記が未了であっても、原則としてその相続人に空き家の管理や私道補修費の負担を求めることになります。単に登記名義人が死亡しているというだけで、相続財産清算人を選任できるわけではありません。

なお、法人は死亡せず、相続も発生しないため、法人名義の財産について相続財産清算人を選任することはできません。

(3)所有者不明土地・建物管理人

所有者不明土地・建物管理人は、必要な調査をしても土地・建物の所有者を知ることができない場合、又は所有者は判明していてもその所在を知ることができない場合に、特定の不動産を管理するための制度です。令和5年4月1日に施行された新しい制度で、所有者不明土地については民法264条の2以下、所有者不明建物については民法264条の8が根拠規定となります。

第264条の2(所有者不明土地管理命令)

1項 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。

2項 所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)にある動産(当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

3項 所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地管理命令が発せられた後に当該所有者不明土地管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

4項 裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。

この制度の大きな特徴は、不在者財産管理人や相続財産清算人のように、その人の財産全般を管理するのではなく、申立ての対象とした特定の土地、建物又は共有持分だけを不動産単位で管理する点にあります。

対象不動産の管理について利害関係を有する者が、その不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てます。たとえば、所有者不明の空き家によって不利益を受けるおそれのある隣接地所有者や、共有者の一部が所在不明となっている場合の他の共有者は、利害関係人に当たり得ます。

本件であれば、次の不動産をそれぞれ管理対象とすることが考えられます。

空き家の敷地

空き家の建物

所在不明者が有する私道の共有持分

土地とその上の建物は別個の不動産なので、両方を管理してもらう必要がある場合には、土地と建物の双方について管理命令を申し立てる必要があります。官報公告費用も含めて、所有者不明土地建物管理人選任申し立て事件の予納金は20万円以上であることが多いでしょう。これは一旦申立人の負担となります。

管理命令が発令されると、対象不動産の管理・処分権は管理人に専属することになります。管理人は、雑草の除去、危険物の撤去、必要な修繕、管理費用の支払などを行います。当該不動産から上がる収益は、管理人が保管して収支を記録します。

不動産の売却や建物の解体など、通常の保存・管理の範囲を超える行為を行う場合には、地方裁判所の許可が必要です。対象不動産が売却された場合には、管理人は、売却代金から管理に要した費用及び管理人の報酬などを控除した残金を、対象不動産の所有者又は共有持分を有する者のために、対象不動産の所在地を管轄する供託所へ供託することができます(非訟事件手続法90条8項・16項)。

管理人が供託をした場合には、対象不動産の所在、供託所、供託番号、供託金額、事件番号などを官報で公告します。売却によって管理すべき不動産がなくなり、残った金銭も供託された場合には、管理命令が取り消され、管理人の職務が終了することになります。

この制度は、登記名義人が自然人の場合だけでなく、株式会社などの法人名義の場合にも利用できます。法人が登記名義人である場合には、商業登記上の本店所在地、代表者や役員の住所などを調査し、それでも法人の担当者に連絡できない場合は、対象不動産を管理する必要があることを裁判所に資料を提出して示す必要があります。

(4)三つの制度の使い分け

三つの制度の使い分けは、次のように整理できます。

・生存している自然人が行方不明で、その人の財産全般を管理する必要がある場合

→ 不在者財産管理人(管轄は、不在者の従来の住所地等の家庭裁判所)

・自然人である登記名義人が死亡し、相続人の存在が明らかでなく、相続財産全体を清算する必要がある場合

→ 相続財産清算人(管轄は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所)

・自然人もしくは法人である所有者又はその所在が分からない特定の土地、建物又は共有持分だけを管理する必要がある場合

→ 所有者不明土地・建物管理人(管轄は、不動産所在地の地方裁判所)

今回のような私道付き住宅地の問題では、目的が所在不明者の私道持分、空き家の土地及び建物の管理に限られるのであれば、物件単位で利用できる所有者不明土地・建物管理人が適することがあります。

これに対し、名義人が死亡し、相続人がおらず、空き家以外の預貯金や債務を含めて遺産全体を清算する必要がある場合には、相続財産清算人が適しています。名義人が生存中の行方不明者で、その人の財産全般について管理が必要であれば、不在者財産管理人を検討することになります。

4 不在者財産管理人の選任申立て手続

不在者財産管理人制度は、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない自然人に財産管理人がいない場合に、利害関係人又は検察官の申立てにより、家庭裁判所が管理人を選任する制度です(民法25条1項)。

管理人は、不在者の不動産だけでなく、預貯金、有価証券その他の財産全般を管理します。不動産の売却など、通常の保存・管理の範囲を超える行為を行う場合には、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です(民法28条)。申立人となるのは、不在者の配偶者、推定相続人、債権者などの利害関係人又は検察官です。

申立てに先立ち、不在者の戸籍謄本及び戸籍附票を取得し、最後の住所への郵便送付、現地確認、親族・近隣住民等への照会など、所在調査を行います。調査の経過は調査報告書にまとめ、返送された郵便物、現地写真、照会結果などを添付します。

申立先は、原則として不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法145条)。主な提出書類は、申立書、不在者の戸籍謄本・戸籍附票、所在不明を示す資料、財産目録、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金資料、申立人の利害関係を示す資料などです。

申立手数料は収入印紙800円分で、別途、郵便料が必要です。また、不在者の財産から管理費用や管理人報酬を支払えない場合には、申立人に予納金の納付を求められることがあります。

申立て後、家庭裁判所は、不在者性、申立人の利害関係及び管理人選任の必要性を審理します。必要に応じて申立人から事情を聴いたり、親族への照会や面接を行ったりします。管理人候補者を挙げることはできますが、必ず選任されるわけではなく、事案によっては弁護士や司法書士などの専門職が選任されます。

管理人は、選任後、不在者の財産を調査して財産目録を作成し、家庭裁判所の監督の下で財産を管理します。不動産を売却する場合には、売買契約書案や価格査定資料などを提出し、別途、権限外行為許可を受ける必要があります。

空き家の登記名義人が生存しているものの長期間行方不明であり、不動産以外の財産も含めて包括的に管理する必要がある場合には、この制度が適しています。他方、目的が空き家や私道持分など特定不動産の管理、補修、売却に限られる場合には、所有者不明土地・建物管理制度の方が効率的なことがあります。

5 相続財産清算人の選任申立て手続

登記名義人が死亡している場合でも、直ちに相続財産清算人を選任できるわけではありません。まず、被相続人の出生から死亡までの戸籍に加え、父母、子、兄弟姉妹、甥・姪などに関する戸籍を調査し、法定相続人がいるか、相続放棄をしているかを確認します。

相続人が存在し、その所在も分かっている場合には、その相続人が土地、建物及び私道持分を承継しています。相続登記がされていなくても、原則として相続人に対し、空き家の管理や私道の補修費用の負担を求めることができます。

これに対し、相続人の存在・不存在が明らかでない場合や、すべての相続人が相続放棄をし、結果として相続する者がいなくなった場合には、利害関係人又は検察官が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続財産清算人の選任を申し立てることができます(民法952条1項、家事事件手続法203条1号)。

申立てに当たっては、申立書、相続関係図、被相続人及び関係親族の戸籍謄本、住民票除票又は戸籍附票、相続放棄申述受理証明書、財産目録、不動産登記事項証明書、預貯金資料、申立人の利害関係を示す資料などを提出します。申立手数料は収入印紙800円分で、郵便料及び官報公告料が必要です。遺産から管理費用や清算人報酬を支払えない可能性があるときは、予納金納付を求められることもあります。

家庭裁判所は、戸籍調査の内容、清算の必要性、財産の状況などを審理し、必要に応じて追加資料の提出を求めたり、申立人から事情を聴いたりします。清算人候補者を挙げることもできますが、必ずその候補者が選任されるとは限らず、事案によっては弁護士や司法書士などの専門職が選任されます。

清算人が選任されると、家庭裁判所は、清算人の選任と相続人の捜索について、6か月以上の期間を定めて公告します。清算人も、2か月以上の期間を定めて、相続債権者及び受遺者に届出を求める公告を行います。その後、清算人は財産を調査し、債権者への弁済や財産の換価を行います。不動産を売却する場合には、原則として家庭裁判所の許可を受ける必要があります。

相続人が現れなかった場合には、公告期間の満了後3か月以内に、特別縁故者が財産分与を申し立てることができます。債権者への弁済や特別縁故者への分与を終えても財産が残った場合には、最終的に国庫へ引き継がれます。

したがって、空き家の所有者が死亡し、相続人全員が相続放棄している場合などで、空き家だけでなく、預貯金、債務その他の遺産全体を清算する必要があるときは、相続財産清算人制度が適しています。

一方、目的が特定の空き家、敷地又は私道持分の管理や売却だけである場合には、相続財産法人を不明所有者として、所有者不明土地・建物管理命令を申し立てる方法を検討できることがあります。裁判所のサイトでも、相続人の有無が明らかでない場合や全員が相続放棄した場合には、この方法を検討することができると解説されています。

6 所有者不明土地・建物管理人の選任申し立て手続

所有者不明土地・建物管理制度は、令和5年4月に施行された新しい制度です。

調査を尽くしても土地・建物の所有者を特定できない場合、又は所有者は特定できるものの、その所在を知ることができない場合に、債権者などの利害関係人が不動産所在地を管轄する地方裁判所に申し立てます。

この制度は、所有者の全財産を管理するのではなく、空き家の土地、建物又は私道の共有持分といった、特定の不動産だけを対象にできる点に大きな特徴があります。従来の不在者財産管理人や相続財産清算人が「人の財産全体」を対象とするのに対し、所有者不明土地・建物管理人は「物単位」の制度です。

所有者不明土地・建物が適切に管理されないため不利益を受けるおそれのある隣接地所有者や、共有者の一部が所在不明となっている場合の他の共有者は、利害関係人に該当し得ます。今回の7軒の所有者は、私道を共同利用し、その補修費用を負担する立場にあるため、少なくとも私道持分の管理については、利害関係人に当たる可能性が高いと考えられます。

申立ての主要な要件は、次の三つです。いずれについても、関係資料を提出し、一応確からしいと認められる程度に示すこと、すなわち疎明をする必要があります。

・申立人が利害関係人であること

・必要な調査を尽くしても所有者又はその所在を知ることができないこと

・管理人による管理の必要性があること

申立て後、裁判所は、提出された資料に基づき、管理命令の発令に必要な要件が備わっているかを審理します。必要に応じて審問期日(裁判官の面接)が開かれ、申立人又は代理人から事情を聴かれることもあります。また、裁判所から、所有者の探索その他の追加調査や、申立書の補充、資料の追加提出を求められることもあります。

その後、裁判所は、所有者等に対し、管理命令の発令について異議がある場合には申し出るよう、官報への掲載及び裁判所の掲示場への掲示によって公告します。異議申出期間は1か月以上とされています。期間内に異議の届出がなく、その他の要件も満たされていると裁判所が判断した場合には、管理命令が発令され、管理人が選任されます。管理人には、予定される管理業務の内容などを踏まえ、対象不動産を公平かつ適切に管理することのできる者(通常は弁護士や司法書士や土地家屋調査士など)が選任されます。管理人が選任されると、対象となる土地建物の登記簿の甲区に、「登記の目的 所有者不明土地管理命令」として、「権利者その他の事項 原因 令和〇年〇月〇日〇〇地方裁判所決定」などと登記されます。

管理人には、対象不動産の管理・処分権が専属します。雑草の除去、危険物の撤去、必要な修繕、管理費用の支払等を行うことができます。売却、建物の解体など通常の保存・管理の範囲を超える行為については、裁判所の許可が必要です。

所有者不明土地管理人による(売却)処分では、所有者本人の同意を得ることができないことを前提にしているため、裁判所が必要性、相当性、売却価格の適正性などを審査します。裁判所の許可を得たからといって、申立人が必ず土地を買えるわけでも、建物を必ず取り壊してもらえるわけでもありません。

申立てには、申立手数料のほか、郵便料、官報公告費、管理人報酬、草木の剪定その他の管理費用に充てる予納金及び管理命令登記に関する登録免許税などが必要です。予納金の額は事案ごとに裁判所が判断します。大阪地方裁判所の令和8年4月版案内では、申立手数料は対象不動産又は共有持分1個につき1000円とされていますが、郵便料等は申立先の裁判所に確認する必要があります。

7 所有者が判明しているが、放置している場合

所有者も住所も分かっており、通知も届いているのに、単に空き家を放置している場合には、所有者不明土地・建物管理制度は原則として利用できません。

「返事をしない」「管理する気がない」ということと、法律の要件である「所在を知ることができない」ということは別だからです。

この場合には、次の方法を検討します。

所有者本人への管理・修繕請求

私道費用の支払請求

空家法に基づく市町村への相談

妨害予防請求、妨害排除請求、損害賠償請求

管理不全土地・建物管理命令の申立て

管理不全土地・建物管理制度は、所有者は判明しているものの、所有者による土地又は建物の管理が不適当であるため、他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合に、利害関係人の申立てにより、裁判所が管理人による管理を命ずる制度です。土地については民法264条の9第1項、建物については同法264条の14第1項に定められています。

民法264条の9(管理不全土地管理命令)

1項 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(第三項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。

2項 管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

3項 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。

裁判所は、管理命令を発令する場合、その命令において管理不全土地管理人又は管理不全建物管理人を選任します(民法264条の9第3項、264条の14第3項)。申立先は、対象となる土地又は建物の所在地を管轄する地方裁判所です(非訟事件手続法91条1項)。

たとえば、長期間放置された空き家が倒壊しそうである、敷地から大量のゴミや建材が飛散する、樹木が越境して危険を生じさせているといったケースが考えられます。管理不全土地とその上の管理不全建物の双方を対象にするには、土地と建物の両方について管理命令を申し立てる必要があります。

ただし、管理不全土地・建物管理人が対象土地を売却したり建物を取り壊したりするには、裁判所の許可だけでなく、原則として所有者本人の同意も必要です。この点が、所有者不明土地・建物管理制度との大きな違いです。

8 まとめ

ご相談のケースでは、当該空き家と私道の名義人が、法人なのか個人なのか、存続している会社なのか、相続が発生しているのかによって、大きく事情が変わって参ります。

また、目的が、私道の補修工事だけなのか、空き家の解消も実現したいのかなどにより、どの手続きを選択するのかも変わってきます。

今回のように、7軒の所有者が共有私道の修理を行いたいという場面では、まず、必要な補修を持分過半数で決定できるかを検討します。所在不明者を除いて工事を決定するための共有物管理の裁判だけで解決できる場合もあります。

他方、空き家の雑草除去、建物の防犯・修繕、私道費用の精算、売却による空き家の解消など、継続的かつ包括的な対応が必要であれば、特定の空き家、敷地及び私道持分を対象とする所有者不明土地・建物管理人の選任が、有力な解決方法になり得るでしょう。ご心配であれば、お近くの法律事務所にご相談なさり、弁護士と一緒に対応を進められると良いでしょう。

以上

※国土交通省「所有者不明土地ガイドブック~迷子の土地を出さないために!~」(令和4年3月)参照。所有者不明土地・建物管理制度及び管理不全土地・建物管理制度の概要やQ&Aが掲載されています。

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001618381.pdf

※空き家権利者向け対策解説サイト(国土交通省)

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/index.html

参考条文

第264条の2(所有者不明土地管理命令)

1項 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。

2項 所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)にある動産(当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

3項 所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地管理命令が発せられた後に当該所有者不明土地管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

4項 裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。

第264条の3(所有者不明土地管理人の権限)

1項 前条第四項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。

2項 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。

一号 保存行為

二号 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

第264条の4(所有者不明土地等に関する訴えの取扱い) 所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。

第264条の5(所有者不明土地管理人の義務)

1項 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

2項 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

第264条の6(所有者不明土地管理人の解任及び辞任)

1項 所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。

2項 所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

第264条の7(所有者不明土地管理人の報酬等)

1項 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

2項 所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

第264条の8(所有者不明建物管理命令)

1項 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(第四項に規定する所有者不明建物管理人をいう。以下この条において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。

2項 所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有し、又は当該建物の共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

3項 所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発せられた後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産及び建物の敷地に関する権利の管理、処分その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

4項 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、当該所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。

5項 第二百六十四条の三から前条までの規定は、所有者不明建物管理命令及び所有者不明建物管理人について準用する。

判例