親権を取得できるか

家事|離婚|親権問題

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

主人と離婚することになりました。8歳の子供についてどちらを親権者とするかでもめております。親権とはどんなものでしょうか。親権を取ることはできますか?

回答:

親権(民法818条)は、財産管理権と監護教育権を含み、結婚中は夫婦が共同で行使しますが、離婚時にはいずれか一方を親権者として定めなければなりません。

親権のうち「同居・懲戒・教育」の権限は監護権として分離でき、民法766条に基づき家庭裁判所の調停や弁護士による合意書作成などで手続を行います。

ただし、これらの事項は戸籍や住民票には記載されません。親権や監護権の話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所に調停を申し立て、それでも合意できなければ審判や離婚訴訟で裁判所が決定します。

親権者を決める際は子どもの年齢が重視され、13歳前後を境に本人の意思が尊重されやすく、それ以前であれば母親が親権者とされることが多いです。たとえば8歳のお子さんであれば、母親が親権者と判断される可能性が高いといえます。兄弟姉妹が複数いる場合も同様です。

なお、親権や監護権を持たない親にも面接交渉権があり、1~3か月に1回程度の面会が認められます。これは条文に明記はありませんが、親子関係に基づく自然権と解され、裁判所も監護事項として扱っています。

面会の頻度や方法は協議で定めることが望ましく、違約金を設ける場合もあります。合意できない場合は調停や審判で裁判所が決定します。

※なお、親権の取り扱いについては令和6年5月改正民法で取り扱いが大きく変わっておりますので、別途弁護士に御相談なさることをお勧めいたします。

親権に関する関連事例集参照。

解説:

1、親権と監護権

親権(民法818条)には、財産上の管理権と、身分上の監護権とが含まれます。前者は法定代理人としての財産管理権であり、後者は同居して現実に養育・教育をしていく権限です。両親が結婚中は、夫婦が共同で親権を行使しますが、離婚する場合は、どちらか一方を親権者に決めて、離婚届に記入しなければなりません。

2、離婚する場合の取り扱い

両親が離婚する場合、親権のうち、「同居して懲戒・教育する」という権限だけを「監護権」として分離させることができます。民法766条で規定されています。但し、戸籍や住民票の記載事項ではありませんので、市役所に届け出をすることはできません。監護権者を決める場合は、家庭裁判所の調停で調停調書を作成するか、弁護士に協議離婚合意書の作成を依頼するなどの手続が必要です。

3、話し合いがまとまらない場合

親権や監護権を決める話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に調停を申し立てて、裁判所で話し合いをします。それでもどうしてもまとまらない場合は、家事審判や離婚裁判で強制的に裁判所に決めてもらいます。

4、親権者を決めるポイント

親権者を決めるにあたって重要なポイントは子供の年齢です。実務の考え方では子供は母親のもとで育てられた方が保育学上子供の福祉にかなうと考えられています。判断の分岐点として13才前後であれば子供に自由意思ありとして子供の意思を尊重する判断が下りやすく、逆にその年齢以前であれば母親を親権者とする判断が下されやすいです。あなたの場合、お子様が8才ですから母親であるあなたが親権者とされる可能性が高いと考えられます。お子さんが2人以上いる場合も同じです。

5、面接交渉権

親権や監護権を持たない方の親は、1ヶ月~3ヶ月に1回程度子供と面会することを要求できます。これを面接交渉権といいます。権利といっても,具体的に条文に記載されているわけではなく,解釈上,親子という身分関係から当然発生する自然権であるとか,監護に関連する権利であるなどといわれています。裁判手続きとしては,家事審判法9条乙類4に規定する子の監護に関する事項として扱われていると考えられます。したがって,親権や監護権者を決める場合は、あわせて面接交渉の頻度や方法についても取り決めをしておくと良いでしょう。約束が守られなかった場合の違約金を決めることもあります。面接交渉についての話し合いがまとまらないときも、調停や審判により裁判所に決めてもらうことができます。

※令和6年民法改正について

※注(令和7年9月4日)令和6年5月に改正民法(令和6年法律第33号)が成立し、令和8年5月までに共同親権を定める改正民法が施行予定です。改正後の手続きについて、本稿とは異なる場合がありますので、別途弁護士に御相談下さるようお願い致します。

法務省の解説パンフレット

以上

関連事例集

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※参照条文

(令和6年5月改正前民法)

(親権者)

第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。

2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。

3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

(離婚又は認知の場合の親権者)

第八百十九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。

3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。

4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。

5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。

6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

(令和6年5月改正民法、共同親権導入後)

(親の責務等)

第八百十七条の十二 父母は、子の心身の健全な発達を図るため、その子の人格を尊重するとともに、その子の年齢及び発達の程度に配慮してその子を養育しなければならず、かつ、その子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない。

2 父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない。

(親子の交流等)

第八百十七条の十三 第七百六十六条(第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の場合のほか、子と別居する父又は母その他の親族と当該子との交流について必要な事項は、父母の協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、父又は母の請求により、同項の事項を定める。

3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、父又は母の請求により、前二項の規定による定めを変更することができる。

4 前二項の請求を受けた家庭裁判所は、子の利益のため特に必要があると認めるときに限り、父母以外の親族と子との交流を実施する旨を定めることができる。

5 前項の定めについての第二項又は第三項の規定による審判の請求は、父母以外の子の親族(子の直系尊属及び兄弟姉妹以外の者にあっては、過去に当該子を監護していた者に限る。)もすることができる。ただし、当該親族と子との交流についての定めをするため他に適当な方法があるときは、この限りでない。

(親権)

第八百十八条 親権は、成年に達しない子について、その子の利益のために行使しなければならない。

2 父母の婚姻中はその双方を親権者とする。

3 子が養子であるときは、次に掲げる者を親権者とする。

一 養親(当該子を養子とする縁組が二以上あるときは、直近の縁組により養親となった者に限る。)

二 子の父母であって、前号に掲げる養親の配偶者であるもの

(離婚又は認知の場合の親権者)

第八百十九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。

2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。

3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父母の双方又は父を親権者と定めることができる。

4 父が認知した子に対する親権は、母が行う。ただし、父母の協議で、父母の双方又は父を親権者と定めることができる。

5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。

6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって、親権者を変更することができる。

7 裁判所は、第二項又は前二項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。

一 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。

二 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第一項、第三項又は第四項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。

8 第六項の場合において、家庭裁判所は、父母の協議により定められた親権者を変更することが子の利益のため必要であるか否かを判断するに当たっては、当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮するものとする。この場合において、当該協議の経過を考慮するに当たっては、父母の一方から他の一方への暴力等の有無、家事事件手続法による調停の有無又は裁判外紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)第一条に規定する裁判外紛争解決手続をいう。)の利用の有無、協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情をも勘案するものとする。

(親権の行使方法等)

第八百二十四条の二 親権は、父母が共同して行う。ただし、次に掲げるときは、その一方が行う。

一 その一方のみが親権者であるとき。

二 他の一方が親権を行うことができないとき。

三 子の利益のため急迫の事情があるとき。

2 父母は、その双方が親権者であるときであっても、前項本文の規定にかかわらず、監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独ですることができる。

3 特定の事項に係る親権の行使(第一項ただし書又は前項の規定により父母の一方が単独で行うことができるものを除く。)について、父母間に協議が調わない場合であって、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、当該事項に係る親権の行使を父母の一方が単独ですることができる旨を定めることができる。

(監護者の権利義務)

第八百二十四条の三 第七百六十六条(第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定により定められた子の監護をすべき者は、第八百二十条から第八百二十三条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。この場合において、子の監護をすべき者は、単独で、子の監護及び教育、居所の指定及び変更並びに営業の許可、その許可の取消し及びその制限をすることができる。

2 前項の場合には、親権を行う者(子の監護をすべき者を除く。)は、子の監護をすべき者が同項後段の規定による行為をすることを妨げてはならない。

(子に代わる親権の行使)

第八百三十三条 父又は母が成年に達しない子であるときは、当該子について親権を行う者が当該子に代わって親権を行う。