新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1819、2018/04/24 14:16 http://www.shinginza.com/saikaihatsu.htm

【民事、都市再開発法、権利変換による組合員の従前資産価値と権利床の価値の著しい差額、参加組合員と組合員の平等、東京地裁昭和60年9月26日判決】

権利変換における著しい差額とは



質問:
駅前に小さな戸建て店舗を所有して飲食店を経営しています。駅前一帯の再開発計画が進行中で、モデル権利変換について、準備組合の説明会が開かれました。再開発計画では30階建ての駅直結ビルが計画されています。現在の容積率の3倍以上に緩和されると聞いています。容積率が緩和されるのだから、自分の権利についても床面積が増加することを期待していたのですが、準備組合の担当者によると、「都市再開発法で権利変換の前後で価値が同じになるように定めなければならない規定になっているから、床面積を増やすことはできない」と説明されました。容積率が緩和されるのにそのようなことがあるのでしょうか。




回答:

1 都市再開発法77条2項で、権利変換後の建物の価額と従前の価額との間に著しい差額が生じないように定めなければならない、と定められています。「等価原則」といいます。準備組合担当者の説明はこの規定に基づくものと思われます。

 しかし、権利変換における等価原則は、権利変換により従来の権利を失う者が不利益を受けないようにし、再開発の当事者の公平を担保するための法原則と考えられますから、当事者の公平が担保されているかぎり、再開発に伴う容積率の緩和によって、権利床の面積が従来の床面積より増加し、権利変換計画において、従前資産と従後資産の評価に多少の差異、増加を生じることも法は許容していると考えることができます。再開発の参加組合員(デベロッパー)が大量の保留床を取得する根拠として当該条文を援用しようとしているならば、それは法律の解釈を誤った主張と言えるでしょう。

 尚、77条2項の趣旨は、参加組合員にも組合員にも同様に当てはまります。参加組合員は、一般組合員と異なり、土地、建物を原則的に有していませんので、建築費等の拠出額に応じて保留床を取得しますが、一般組合員が取得する権利床の価値と基本的に平等となります。容積率の緩和の内容により建築等の拠出金、従前資産の合計額よりも権利変換される床面積が大幅に生じた場合はこれを一般組合員、参加組合員で平等に取得する場合が生じますので一般組合員は、建築費等の妥当性について慎重に検討調査して事業計画決定に臨む必要があります。事前に準備組合側に資料の提出を求めなければいけません。準備組合側が資料開示を種々の理由をつけて拒む場合、組合員は法的専門家とともに抗議し所轄行政機関に意見書を提出する必要があります。以上の趣旨は 権利変換決定の基準として74条2項に示されています。

2 都市再開発法77条2項について参考判例(東京地裁昭和60年9月26日判決)がありますので、御紹介致します。

3 都市再開発法関連QA事例集1759番1756番1720番1705番1702番1701番1684番1678番1649番1513番1512番1490番1455番1448番参照。


解説:

1、 都市再開発手続き

 第一種市街地再開発事業は、都市再開発法で定められた、権利変換方式を用いる再開発(建て替え)の手法です。ちなみに、第二種市街地再開発事業は、管理処分方式(用地買収方式)と言って、公共性の高い事業について、地方自治体などが主体となり、区域内の権利を全て取得し、その上で希望者に再入居させて、再開発を進める方式です。

 第一種再開発事業は、従前建物の耐震性や耐火性を高め、商業施設などの利便性を高めるために、都市計画決定を経た上で、区域内の地権者5名以上で、区域内の宅地所有者及び借地権者の3分の2以上(面積及び人数)の同意により、市街地再開発組合を設立し、権利変換計画を定め、従来の土地建物の権利を、新しい建物の敷地権と区分所有権に変換させて、円滑に建て替えを進めるための事業です。都市機能の向上と安全性・防災性の向上は公共の福祉に役立つことであるので、ある程度私権を制限してでも手続を進めてしまうという制度趣旨です(都市再開発法第1条、74条1項)。

都市再開発法
第1条(目的)この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。
第74条(権利変換計画の決定の基準)
第1項 権利変換計画は、災害を防止し、衛生を向上し、その他居住条件を改善するとともに、施設建築物、施設建築敷地及び個別利用区内の宅地の合理的利用を図るように定めなければならない。


 本邦の民法典では、基本的人権、財産権の保障、経済的自由を定めた日本国憲法をベースとして、所有権絶対の原則、私的自治の原則が認められており、土地建物の所有権者は、自己の所有する土地建物を、どのように使用・収益・処分するかは、所有権者の判断により自由に決めることができるはずですが、それでは、いつまで経っても駅前の木造密集地を建て替えすることができず、地震や火災など大規模災害時に被害の拡大を防止できない不都合を生じてしまいます。

民法第206条(所有権の内容)所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

建物の区分所有等に関する法律第62条(建替え決議)
第1項 集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。


 戸建てについては全員の同意(民法206条)、マンションなど区分建物については5分の4以上の同意(区分所有法62条1項)がなければ、建て替えをすることができないのが原則ですが、都市再開発法では、この要件を緩和して3分の2以上の同意で、戸建てもマンションも含めて区域一帯の再開発を可能にする権利変換の手続きを定めています。


2、権利変換

 権利変換とは、組合が定めた計画を都道府県知事や国土交通大臣が認可した場合に、権利変換期日に次の(1)〜(4)の効力が生じるものです。建物は一旦組合に権利が移行しますが、建物除却及び再建築を経て、新しい建物の権利は、権利変換計画に定められた者が新たに取得することができます(都市再開発法73条1項2号)。

(1)施行区域内の土地は、権利変換計画の定めるところに従い、新たに所有者となるべき者に帰属する(都市再開発法87条1項前段)。
(2)従前の土地を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する(都市再開発法87条1項後段)。
(3)施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者の当該建築物は、施行者(組合)に帰属する(都市再開発法87条2項前段)。
(4)当該建築物を目的とする所有権以外の権利は、この法律に別段の定めがあるものを除き、消滅する(都市再開発法87条2項後段)。

 面積と人数で3分の2以上という多数の意思形成は必要ですが、逆に言えば、区域住民の大多数が同意できるような合理的な計画を策定・提示できれば、多少の反対があっても事業を進めることができるように法令が整備されています。

都市再開発法
第14条(宅地の所有者及び借地権者の同意)
第1項 第十一条第一項又は第二項の規定による認可を申請しようとする者は、組合の設立について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの三分の二以上の同意を得なければならない。この場合においては、同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上でなければならない。

 このように再開発手続きは、公益目的を実現するために、部分的に私権を制限して強制的に建て替えを行う手続きとなっていますので、意思に反して建て替えを強制されてしまう地権者に配慮し、権利変換手続きにおいては、権利者相互の公平性について特別の注意が払われています。

 都市再開発法では権利変換計画認可の基準が法定されていますので、主なものを御紹介いたします。

(1)総則規定

 まず、権利変換計画自体が、都市再開発法74条1項で、そもそも再開発を施行するための公益目的(災害を防止し、衛生を向上し、その他住条件を改善する)に適合するような計画でなければならないと定められています。強制的に建て替えをするのですから、公益目的が実現できるような計画でなければならないというわけです。条文の「宅地の合理的利用を図る」というのは、法規制の範囲内で可能な限り土地の有効活用を行うという趣旨ですから、容積率規制の範囲内で合理的な最大限の床面積の建物を計画するという趣旨になります。また、強制的に建て替えを行う以上、権利者相互の公平性に十分考慮する必要がある旨が法定されています(都市再開発法74条2項)。

都市再開発法第74条(権利変換計画の決定の基準)
第1項 権利変換計画は、災害を防止し、衛生を向上し、その他居住条件を改善するとともに、施設建築物、施設建築敷地及び個別利用区内の宅地の合理的利用を図るように定めなければならない。
第2項 権利変換計画は、関係権利者間の利害の衡平に十分の考慮を払つて定めなければならない。

(2)一棟一筆の原則

 従来の複雑な権利関係を清算し、新たな建物を建築しますので、新しい建物の敷地は原則として一筆の土地として計画されなければなりません(都市再開発法75条1項)。そして、新しい建物の敷地所有権は、従来の宅地の所有者に対して、従前評価額の割合に応じて共有持分が与えられます。また、原則として、敷地所有権には、建物所有を目的とする地上権(借地権)が設定され、この地上権について、建物所有者が床面積に応じて共有持分を取得することになります。従来の権利者は建物区分所有権と敷地権(地上権)を有することになります。

都市再開発法第75条(施設建築敷地)
第1項 権利変換計画は、一個の施設建築物の敷地は一筆の土地となるものとして定めなければならない。
第2項 権利変換計画は、施設建築敷地には施設建築物の所有を目的とする地上権が設定されるものとして定めなければならない。
第3項 第七十三条第一項第二号に掲げる者が取得することとなる施設建築物の所有を目的とする地上権の共有持分及び当該施設建築物の共用部分の共有持分の割合は、政令で定めるところにより、その者が取得することとなる施設建築物の一部の位置及び床面積を勘案して定めなければならない。
第76条
第1項 権利変換計画においては、施行地区内に宅地(指定宅地を除く。)を有する者に対しては、施設建築敷地の所有権が与えられるように定めなければならない。
第2項 二以上の施設建築敷地がある場合において、各宅地(指定宅地を除く。)の所有者に与えられる施設建築敷地は、個別利用区以外の土地であつて、当該第一種市街地再開発事業のうち建築敷地及び公共施設の整備に関する事業を土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)による土地区画整理事業として施行したならば、当該宅地につき換地と定められるべき土地の属すべき施設建築敷地とする。
第3項 一の施設建築敷地について二人以上の宅地(指定宅地を除く。)の所有者が所有権を与えられるときは、当該施設建築敷地は、各宅地の価額に応ずる割合によりこれらの者の共有に属するものとする。
第4項 第七十一条第一項の申出をした宅地の所有者の有する宅地については、施行者をその宅地の所有者とみなして前三項の規定を適用する。

(3)均衡原則、等価原則

 土地や建物などの従前権利者に対して、権利変換により与えられる建物所有権は、施行地区内の従前土地建物の位置、地積又は床面積、環境及び利用状況と、権利変換により与えられる施設建築物の一部の位置、床面積及び環境とを総合的に勘案して、権利者相互間に不均衡が生じないように、かつ、新しい地上権つき建物の評価額と従前権利の評価額との間に著しい差額が生じないように定めなければならないと規定されています(法77条2項)。これを、権利変換手続きにおける均衡原則、等価原則と言います。

都市再開発法第77条(施設建築物の一部等)※抜粋
第1項 権利変換計画においては、第七十一条第一項の申出をした者を除き、施行地区内の宅地(指定宅地を除く。)について借地権を有する者及び施行地区内の土地(指定宅地を除く。)に権原に基づき建築物を所有する者に対しては、施設建築物の一部等が与えられるように定めなければならない。組合の定款により施設建築物の一部等が与えられるように定められた参加組合員又は特定事業参加者に対しても、同様とする。
第2項 前項前段に規定する者に対して与えられる施設建築物の一部等は、それらの者が権利を有する施行地区内の土地又は建築物の位置、地積又は床面積、環境及び利用状況とそれらの者に与えられる施設建築物の一部の位置、床面積及び環境とを総合的に勘案して、それらの者の相互間に不均衡が生じないように、かつ、その価額と従前の価額との間に著しい差額が生じないように定めなければならない。この場合において、二以上の施設建築敷地があるときは、その施設建築物の一部は、特別の事情がない限り、それらの者の権利に係る土地の所有者に前条第一項及び第二項の規定により与えられることと定められる施設建築敷地に建築される施設建築物の一部としなければならない。


3、等価原則に関する準備組合担当者の説明

 前記のように都市再開発法77条2項に、権利変換の前後で価額に著しい差額を生じてはならないという等価原則を定めた規定がありますので、準備組合担当者が、「都市再開発法で権利変換の前後で価値が同じになるように定めなければならない規定になっているから、床面積を増やすことはできない」という説明は、この規定を根拠としていると思われます。

 しかし、そもそも、権利変換に関する均衡の原則や等価原則が定められた制度趣旨は、都市再開発法第一条の目的規定までさかのぼれば、「都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与すること」という公益目的を実現するにあたって、権利者相互の公平性を担保するために、権利の均衡や権利変換前後の等価性が求められていると解釈することができます。従前の権利者は、関係者の多数意見により、再開発の結果、以前に有していた権利を失って、建物の区分所有権を取得することになる訳ですから、開発の前と後では同様の価値の権利が保障されていなくてはならない、という当然のことを定めたものと解されます。権利を保障する規定ですから、権利が制限される根拠にはならないのですから、準備組合の担当者の説明は誤りと言わざるを得ません。

 権利変換前後の等価性を具体的に検討してみましょう。

(1) 従前資産の評価(都市再開発法73条1項3号)

従前資産:施行地区内の宅地若しくはその借地権又は施行地区内の土地に権原に基づき建築物を有する者が施行地区内に有する宅地、借地権又は建築物及びそれらの価額

評価基準日:都市再開発法80条により、組合設立認可公告から31日目(都市再開発法11条2項、3項により事業計画を定めずに設立した場合は、事業計画認可公告から31日目)

評価方法:近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額

都市再開発法第80条(宅地等の価額の算定基準)
第1項 第七十三条第一項第三号、第八号、第十六号又は第十七号の価額は、第七十一条第一項又は第四項(同条第五項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定による三十日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とする。


(2) 従後資産の評価(都市再開発法73条1項4号)

従後資産:従前資産に対応して与えられることとなる施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等の価額の概算額

評価基準日:都市再開発法81条により、組合設立認可公告から31日目(都市再開発法11条2項、3項により事業計画を定めずに設立した場合は、事業計画認可公告から31日目)。これは従前資産の評価基準日と同じ扱いです。

評価方法:敷地については、都市再開発法施行令28条1項により、「従前宅地及び従前借地権の価額の合計額と当該施設建築敷地の整備に要する費用の額とを合計した額」又は「基準日における近傍類似の土地の価額を参酌して定めた当該施設建築敷地の価額の見込額を超えない範囲内において定めた当該施設建築敷地の価額」いずれか低い額から、「当該敷地価額に基準日における近傍同種の建築物の所有を目的とする地上権の価額がその敷地の価額に占める割合を参酌して定めた施設建築物の所有を目的とする地上権の価額が当該敷地価額に占める割合を乗じて得た額を控除した額」とする。

 建物については、都市再開発法施行令28条3項により、「施設建築物の整備に要する費用のうち当該施設建築物の一部の整備に要する費用」又は「基準日における近傍同種の建築物の価額を参酌して定めた当該施設建築物の一部の価額の見込額をこえない範囲内において定めた当該施設建築物の一部の価額」いずれか低い額に、「敷地価額に地上権の割合を乗じて得た額に地上権の共有持分の割合を乗じて得た額を加えた額」とする。つまり、建物整備費用又は権利変換後の床面積に対応する近隣新築建物の時価相当額に、地上権敷地権の価額を加算したものが、従後資産評価の概算となります。


都市再開発法第81条(施設建築敷地及び個別利用区内の宅地等の価額等の概算額の算定基準)権利変換計画においては、第七十三条第一項第四号、第九号、第十四号又は第十五号の概算額は、政令で定めるところにより、第一種市街地再開発事業に要する費用及び前条第一項に規定する三十日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額を基準として定めなければならない。

都市再開発施行令第28条(施設建築敷地等の価額の概算額)
第1項 法第七十三条第一項第四号に掲げる施設建築敷地の価額の概算額は、同項第三号、第十六号及び第十七号に掲げる宅地及び借地権の価額の合計額と当該施設建築敷地の整備に要する費用の額とを合計した額(以下「合計価額」という。)以上であり、かつ、法第八十条第一項に規定する三十日の期間を経過した日(以下この章及び付録第三において「基準日」という。)における近傍類似の土地の価額を参酌して定めた当該施設建築敷地の価額の見込額を超えない範囲内において定めた当該施設建築敷地の価額(以下「敷地価額」という。)から、当該敷地価額に基準日における近傍同種の建築物の所有を目的とする地上権の価額がその敷地の価額に占める割合を参酌して定めた施設建築物の所有を目的とする地上権の価額が当該敷地価額に占める割合(以下「地上権の割合」という。)を乗じて得た額を控除した額とする。この場合において、合計価額が当該施設建築敷地の価額の見込額を超えるときは、当該施設建築敷地の価額の見込額をもつて敷地価額とする。
第2項 法第七十三条第一項第四号に掲げる施設建築敷地の共有持分の価額の概算額は、前項の規定により定めた施設建築敷地の価額の概算額に、法第七十六条第三項に規定する割合を乗じて得た額とする。
第3項 法第七十三条第一項第四号に掲げる施設建築物の一部等の価額の概算額は、施設建築物の整備に要する費用のうち当該施設建築物の一部の整備に要するものを償い、かつ、基準日における近傍同種の建築物の価額を参酌して定めた当該施設建築物の一部の価額の見込額をこえない範囲内において定めた当該施設建築物の一部の価額(以下「建築物価額」という。)に、敷地価額に地上権の割合を乗じて得た額に第二十六条の規定により定めた地上権の共有持分の割合を乗じて得た額を加えた額とする。この場合において、当該施設建築物の一部の整備に要する費用の額が当該施設建築物の一部の価額の見込額をこえるときは、当該施設建築物の一部の価額の見込額をもつて建築物価額とする。
第4項 前項の施設建築物の一部の整備に要する費用は、付録第二の式によつて算出するものとする。


※参考URL、都市再開発施行令付録第二
http://elaws.e-gov.go.jp/search/html/344CO0000000232_20170401/pict/344CO0000000232-002.jpg

C1は、その者が取得することとなる施設建築物の一部の整備に要する費用
Cbは、当該施設建築物の整備に要する費用のうち、施設建築物の共用部分以外の部分に係るもの
C′bは、当該施設建築物の整備に要する費用のうち、施設建築物の共用部分でRb1に対応するものに係るもの
A1は、その者が取得することとなる施設建築物の一部の床面積
Aiは、当該施設建築物に属する各施設建築物の一部の床面積
Rb1は、その者が取得することとなる各施設建築物の共用部分の共有持分の割合
備考 A1及びAiについては、各施設建築物の一部の同一床面積当たりの容積が異なるときは、必要な補正を行なうものとする。


(3) 検討

 このように見てくると、従前資産の評価については、近隣同種の土地建物の取引価格を考慮して定める相当の価額とされていますが、当該従前資産の土地は、都市計画決定により、指定容積率が変更され、再開発促進区を定める都市計画決定を経て、再開発の事業計画の認可決定があり、これが公告された31日目の時点の評価となることから、当該土地は、事業計画における計画容積率の建物を建てることができる土地として評価すべきことになります。都市再開発法80条1項の「近傍同種の土地」というものは、再開発計画を考慮しなければ全く観念しえないことになります。再開発計画を考慮するならば、事業計画が認可された再開発計画の計画容積率を基準として、近傍の同程度の容積率を持つ土地の価格を基準として評価すべきことになるでしょう。

 また、従後資産の評価については、整備費用の項目も出てきますが、基本的には基準日における近傍同種の建築物の価額を参酌して定めた当該施設建築物の一部の価額の見込額に、当該建物の地上権の時価相当額を加算したものとなりますが、一般に、高層建物の敷地権は、敷地全体面積に敷地権共有持分割合を乗算しますと、数平方メートル以下の面積に相当するまで減少していることが多くなっていますので、従前資産の土地の大半を譲渡して、譲渡の代償として新築建物を取得しているのと同じことになります。これは等価交換方式による建物の建て替えスキームと全く同じと考えることができます。つまり、従前資産も従後資産も正当に正確に評価するならば、基準日の前後で、権利変換の前後で、地権者が所有している権利に変化は生じることはありませんので、都市再開発法77条2項の「均衡原則」「等価原則」は、いわば当たり前のことを規定しているに過ぎないのです。もしも、権利変換の前後で大きく資産価値の変化を生じている場合には、他の地権者にそのしわ寄せが起こっていることになるので、公平性を担保するために、このような規定が設けられていると考えることができます。

 このように見てくると、法77条2項の等価原則は、地権者を保護する趣旨のものであって、地権者の権利を制限する理由に援用することは全く出来ない規定であると分かります。準備組合担当者が、権利変換比率が低いことの根拠にこの条文を引用しているのは誤りと言えるでしょう。勿論、権利変換の前後で床面積が増えることも当然有り得ることです。


4、判例紹介

 下級審判例ですが、都市再開発法77条2項の等価原則について言及しているものがありますので御紹介致します。

※参考URL、最高裁判所裁判例情報、東京地裁昭和60年9月26日判決
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/879/035879_hanrei.pdf

『更に、法七七条二項は、権利者相互間及び前後の価額の相当程度の不一致を許容
しているものと解するのが相当である けだし 。 (1) 同条項が「総合的に勘案して 」と、また「著しい差額が生じないように」と各規定し、(2)さらに、実際上も、権利者相互間の均衡に関していえば、従前の資産における均衡の要素に「利用状況」があることから、また、法が土地の平面的利用の現状を立体的利用へと転換してゆくものであることから、その位置、面積、環境について権利者相互間で完全な均衡をとることは技術的に極めて困難である。従前の価額と権利変換処分によつて与えられる価額との均衡に関していえば、法が不良建築物を除去し、住宅、事務所等の建築物を建設するとともに地域に必要な公共施設等を確保し、土地の高度利用を行うことによつて、良好な市街地環境の創造、都市の安全性の確保等を図るというものであるから、全般的傾向として従前の資産の価額に比べ与えられる資産の価値が上昇し、その価額が高くなることは避けられず、その結果、両者の価額を一致させることは技術的にも極めて困難なのである。
このような理解に立てば、権利変換処分が右条項に違反し違法となるためには、例えば店舗を有しているAに店舗を与える一方、店舗を有しているBに他に合理的理由がないにもかかわらず店舗を与えないような場合、従前の価額と与えられた価額に数倍の差額が生じた場合等、著しい権利者相互間の不一致及び著しい前後の価額の不一致がある場合に限定されるべきである。』

 この判例は、従前資産の評価に開発利益を加味しない立場に立っているものと推察されますが、権利変換の前後で、資産価値を完全に一致させることは技術的に不可能であって、当該規定の目的が、権利者相互の公平を担保するものであることから、次のような例外的事例に限って、権利変換計画が違法になると解釈しています。

(1)権利の種類の割り当てに不平等な取り扱いがある場合:例えば、店舗を有しているAに店舗を与える一方、店舗を有しているBに他に合理的理由がないにもかかわらず店舗を与えないような場合

(2)評価額の差異が大きい場合:例えば、従前の価額と与えられた価額に数倍の差額が生じた場合

 この判例では具体的な基準を明示していませんが、例えば2倍未満の差異については77条2項でも想定の範囲内として許容されていると考えることができるでしょう。

 再開発の事業計画案が承認決議されてしまいますと、なかなか手続きを修正していくことは困難となってしまいます。準備組合側からの事業計画の説明に納得が行かない場合は、なるべく早い段階で再開発手続きに詳しい弁護士に御相談なさり、一緒に交渉してもらうと良いでしょう。

以上


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