新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1569、2014/12/08 12:00 https://www.shinginza.com/idoushin.htm

【行政事件、最高裁昭和63年7月1日第二小法廷判決】


医師に対する行政処分と異議申立て、取消訴訟について


質問:私は医師をしていますが,1年ほど前,酒に酔って友人を殴ってけがを負わせた,という傷害罪で罰金50万円の刑事処分を受けました。これが初めての刑事処分です。刑事処分を受けた後,半年くらいしてから,医道審議会にかけられて,先週,医業停止3ヵ月の処分を受けました。医道審議会に対する弁明は,現在は真面目に医師として働いていること,怪我を負わせてしまった被害者とは刑事処分後に和解したこと等を口頭で説明しましたが,どこまで分かってもらえたかは分かりません。
 処分を受けること自体には勿論納得しているのですが,インターネット等で調べているうちに,傷害罪で刑事処分を受けても,不処分や戒告にとどまっている例があることを知り,医業停止3ヵ月は重すぎるのではないか,と思うようになりました。今から何か採ることのできる手段はありますでしょうか。



回答:
1 詳しい事情を伺わないと判断できかねるところではありますが,確かに本件で被害者との和解が成立したにもかかわらず,医業停止3ヵ月の処分は重過ぎるとも思われます。あなたの場合,弁明の機会において口頭で説明しただけですから,もしかしてそういった有利なご事情が十分に反映されていないのかもしれません。そういった意味では,今回の処分について争う余地もある可能性はあります。

2 今回科せられた行政処分に対して不服がある場合に,採ることのできる手段は@行政不服審査法に基づく異議申立て(以下では単に「異議申立て」といいます。)と,A行政事件訴訟法に基づく取消訴訟(以下では単に「取消訴訟」といいます。)の大きく分けて2つが考えられます。

3 異議申立てと取消訴訟は大きく@判断機関,A申立ての期間及びB判断対象等において違いがありますが,特に本件のようなケースではB判断対象の違いが重要です。

 取消訴訟は,違法な行政処分を取り消す訴訟であるところ,裁判例上,医師に対する行政処分に違法性が認められるケースが極めて限定されている一方,異議申立ては,処分の違法性だけではなく,その不当性も判断の対象となっています。つまり,「違法とまでは言えないが不当な行政処分」がなされた場合,取消訴訟では当該処分の取り消しが認められなくとも,異議申立ては認められる可能性がある,ということになります。

4 したがって,認定事実や行政処分の手続に問題があったというわけではなく,処分が相対的に重すぎる,という主張をするような場合は,不当性を争うために異議申立てがまず考えられるところです。

5 なお,異議申立て及び取消訴訟のいずれについても,申立てただけでは医業停止の効力は止まりません。そのため,別途執行停止という手続きをとる必要があります。執行停止については,本ホームページの法律相談事例集の1263番に詳しい記載がありますのでご参照ください。

6 いずれにしても,あなたに対する処分が不当であるのかどうか,異議申立てと取消訴訟のいずれを選択するべきなのか,見通しはどうか等については,期間制限の関係上,早急に専門の弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

医道審議会関連事例集1540番1538番1523番1510番1489番1485番1411番1343番1325番1303番1268番1241番1144番1102番1085番1079番1042番1034番869番735番653番551番313番266番246番211番48番参照。


解説:
1 はじめに

(1)本件のように,すでに行政処分を受けてしまった医師が,受けた行政処分に対して不服を申立てる手段としては,@行政不服審査法に規定のある,異議申立てという手続と,A行政事件訴訟法に規定のある,取消訴訟(無効訴訟を含む)という手続が考えられるところです。

   この二つの手段は,行政上の不服申立ての手続(異議申立て)と司法上の不服申立ての手続(取消訴訟)という点でその大本から異なる手続なので,様々な点で違いがあります。

   そこで,以下では,本件において重要な点に限って異議申立てと取消訴訟のメリット・デメリットを挙げた上で,本件ではいずれの選択をするべきであるのか,という点について説明します。

(2)なお,本件は,@刑事処分として傷害罪(刑法204条)の最大額である50万円の罰金を科されている点,A弁明の機会において,和解等の有利な事情について整理した書面等を提出せず,単に口頭で説明するだけで,担当者に内容が把握されたかどうかについて確認していない点にそもそもの問題があります。刑事処分段階の適切な弁護人活動,あるいは弁明の機会における適切な代理人活動が,医師に対する行政処分を決める上で大きく影響することについては,本ホームページの他の法律相談事例集(1245番1144番1102番1079番1042番1034番869番735番653番551番313番266番246番211番48番等)をご参照ください。

2 異議申立てについて

(1)行政不服申立て制度一般について

 ア 行政不服申立て制度は,行政庁による処分が,「違法又は不当」であった場合において,「簡易迅速な手続に」より是正を図ることで,「国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的」とする制度です(括弧内は行政不服審査法1条1項)。

 イ 行政不服申立てには,大きく分けて@異議申立てとA審査請求,B再審査請求の3種類がありますが,一度審査を経ているかという点で@異議申立て及びA審査請求とB再審査請求に区分され(法3条1項),不服を申し立てる相手方を処分庁にするかという点で@異議申立てとA審査請求に区分されます(同条2項)。
   つまり,@異議申立ては,処分をおこなった行政庁(処分庁)に再考を促す手続であり,A審査請求は処分庁の上級庁もしくは法律等で定められている行政庁(審査庁)に処分について「審査」するよう求める手続ということになります。行政不服申立て制度の実効性を図る観点からは,当然,処分庁とは別の行政庁により,客観的な審査がなされた方が良いので,審査請求が中心(原則)となった制度設計となっています。

 ウ では,本件のような医師に対する行政処分に対する不服申立ては,異議申立てと審査請求のいずれによることになるのでしょうか。
   医師に対する行政処分は,厚生労働大臣により行われます(医師法7条2項。歯科医師の場合も同様)。したがって,処分庁は厚生労働大臣ということになります。
   そのため,「処分庁が主任の大臣」であるとして,行政不服審査法5条1項ただし書,同法6条1項2号に該当することになります。そして,医師法その他の法律には,医師に対する行政処分への不服申立てについて審査請求を許す規程がないので,行政不服審査法5条1項2号,同法6条1項ただし書の適用もありません。
   その結果,医師に対する行政処分に対する不服申立ては,審査請求ではなく異議申立てによる,ということになります。

(2)判断機関について

   異議申立てですから,上記のとおり申立ての相手方(判断機関)は処分庁である厚生労働大臣ということになります。
   判断機関が処分庁とイコールである,という点は,適正な判断がなされるのか疑問を抱かせますから,不服申立ての手段として異議申立てを採用する場合の最も大きなデメリットの一つとなります。

(3)申立てまでの期間について

   異議申立ては,処分があったことを知った日から60日以内におこなう必要があります(行政不服審査法45条)。医師に対する行政処分の効力は,通常処分が決定してから2週間後を始期としますから,医業停止期間をできるだけ作らないようにするためには,異議申立てと執行停止(後述)の手続きをおこなうことが望ましいことになります。そのため,60日以内といっても猶予がある訳ではありません。

(4)判断対象について

   上記のとおり,異議申立てを始めとする行政不服申立てが対象とするのは,「違法又は不当」な行政処分です。
   ここで重要なのは,行政不服申立てによれば,不当な行政処分の是正が可能だ,ということです。

3 取消訴訟について

(1)制度一般について

 ア 取消訴訟は,抗告訴訟という訴訟の一種(行政事件訴訟法3条1項)です。同条によれば,抗告訴訟とは,「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」であり,取消訴訟は,そのうち,「処分」の取り消しを求める訴訟ということになります(同条2項)。
   抗告訴訟でその違法性を問うのは行政の行為ですから,一方で行政活動の円滑な遂行という要請も観念することができ,この点で通常の民事訴訟とは異なります。

 イ したがって,取消訴訟には,通常の民事訴訟とは異なる要件が課されています。取消訴訟(抗告訴訟)の要件としては,特に@処分性(後述),A原告適格(法9条1項参照)が特に問題となることが多く,その解釈や運用については裁判例,学説上の争いがあるところです。
   もっとも,本件のような医師に対する医業停止・あるいは免許取消等の処分に対して,処分を受けた医師自身が取消訴訟を提起して当該処分の取り消しを求める,という場面においては,@処分性もA原告適格もあまり問題にはなりません。むしろ,後述のとおり,本件で問題となるのは,どのようなケースで処分の取り消しが認められるか,という本案の部分です。

 ウ そこで,以下では,取消訴訟の要件には触れずに,異議申立てとの比較,という観点から検討されるべき特徴に絞って説明していきます。

(2)判断機関について

   上記のとおり取消訴訟は,抗告訴訟という訴訟の一種(行政事件訴訟法3条1項)ですから,判断機関は裁判所ということになります(憲法76条1項参照)。

(3)申立てまでの期間(出訴期間)について

   取消訴訟は,処分があったことを知った日から6か月以内,あるいは処分の日から1年以内に提起する必要があります(行政事件訴訟法14条1項,同条2項)。
   もっとも,本件のような医師に対する行政処分において,医業停止期間を短くするためには,できる限り早く申し立てる必要がある点については,上記異議申立ての場合と同様です。

(4)判断対象について

 ア 取消訴訟の判断対象は,違法な行政処分です(行政事件訴訟法3条2項,同法10条1項参照)。上記のとおり取消訴訟においては,対象となる「行政処分」の範囲,いわゆる「処分性」が要件となっていて,その解釈について争いがあるのですが,本件のような医師に対する行政処分が取消訴訟の対象となる行政処分であることについては争いがありません。

 イ ここで重要な点は,「違法」という部分です。上記異議申立ての場合と異なり,不当性が含まれていません。したがって,不当な処分については,取消訴訟により取り消すことができない,ということになります。

 ウ では,具体的に取消訴訟における「違法」で取り消すことのできる行政処分とはどのような場合を指すか,というと,裁量のある行政処分について取り消すことが認められるのは,「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合」とする旨の規定があります(行政事件訴訟法30条)。

 エ そこで,本件のような医師に対する行政処分の場合ですが,医師に対する行政処分について,「免許を取消し、又は医業の停止を命ずるかどうか、医業の停止を命ずるとしてその期間をどの程度にするかということは、当該刑事罰の対象となつた行為の種類、性質、違法性の程度、動機、目的、影響のほか、当該医師の性格、処分歴、反省の程度等、諸般の事情を考慮し、同法七条二項の規定の趣旨に照らして判断すべきものであるところ、その判断は、同法二五条の規定に基づき設置された医道審議会の意見を聴く前提のもとで、医師免許の免許権者である厚生大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。」として,厚生労働大臣に裁量があると認めた最高裁判所の判例があります(下記参照判例)。

 この判例は,続けて「それ故、厚生大臣がその裁量権の行使としてした医業の停止を命ずる処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならない」と判断しています。

 オ 以上,取消訴訟によって医師に対する行政処分を取り消すためには,「社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる」必要があることになります。

4 両者の比較と主張の内容

(1)以上,ここまで異議申立てと取消訴訟の主な特徴を挙げてきましたが,本件のようなケースではいずれの手段によるべきでしょうか。

   本件のようなケースでは,いずれにしてもすぐに申立てをするべきである以上,出訴期間はあまり問題になりません。

   結論としては,異議申立てによることをお勧めいたします。確かに,異議申立ての場合,処分庁である厚生労働大臣が再度判断する,という点で更正な審査に疑義が生じるところではありますが,上記のとおり取消訴訟によって裁量による行政処分が取り消される余地は極めて小さい(「社会観念上著しく妥当を欠く」必要がある)ためです。

   本件のように,明確な違法性はないが,相対的に処分が重い,というような場合には,不当性を争うことができる異議申立てによるべきである,ということになります。

(2)異議申立てを選択した場合,不当性を主張していくことになりますので,書面で(行政不服審査法25条参照),あなたにとって有利な事情を改めて整理した上で,他の処分事例等と比較しながら,相対的に処分が重すぎる,ということ示していくことになります。

5 異議申立てにおける執行停止について

(1)ここまで,医師に対してなされた行政処分に対する不服申立ての方法についてご説明してきましたが,ここで注意が必要なのは,異議の申し立てをするにしても,取消訴訟を提起するにしても,申立てをしただけでは行政処分自体の効力が停止するわけではない,という点です。

   これを,「執行不停止の原則」といいます(異議申立てについて行政不服審査法34条1項の準用,取消訴訟について行政事件訴訟法25条1項)。これは,濫訴(理由のない申立て)によって行政活動の円滑な遂行が妨げられることを避けるための原則です。

(2)本件のように,医業停止3ヵ月という行政処分に対する異議申立て(あるいは取消訴訟)をおこなう場合には,特に審理期間中に医業停止期間が経過してしまう,という事態が考えられるところです(特に取消訴訟の場合には,裁判にかかる時間が比較的長期間に亘ることが多いため,このような事態が予想されます)。少なくとも,医業停止処分を受けてから,その効力が生じるまでの間に,不服申立ての結果が出ることはありません。

   そのため,医業停止処分を受けてしまうと大きな実害が生じる様な場合,具体的には個人で病院を開業していて,自分が医業停止処分を受けてしまうと,病院の運営に著しい支障が出る等の場合には,医業停止処分(の効力)をとりあえず止めるため,異議申立て等の手続とは別の執行停止という手続をとる必要があります。

(3)取消訴訟における執行停止の手続きについては,本ホームページのbP263に詳細な説明がありますので,ここでは,異議申立ての場合の執行停止の手続きについて簡単にご説明いたします。

   異議申立ての執行停止の手続は,行政不服審査法34条2項以下(同条3項を除く)を同法48条で準用する形で定めています。

   それによると,取消訴訟における執行停止とほぼ同様,申立人が処分庁に申立てをし,@「処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるとき」に,A「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、処分の執行若しくは手続の続行ができなくなるおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるとき」には処分庁が執行停止をしなければならない旨の規定があります(行政不服審査法34条4項)。

   そして,その「重大な損害」については,「損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質」を考慮することになります(同条5項)。

  本件のような医師に対する行政処分の場合,医業停止を受けることになると,その間の医療行為の停止により,患者に大きな損害が出ることや,患者が離れることにより医院の経営等に大きな支障が出ること等を,実際の1日の患者数等の具体的数値を示して主張することになります。

(4)執行停止は,その趣旨からしても,迅速な申立てが不可欠です。資料等を集める時間も考慮に入れれば,処分後からすぐに執行停止の準備を始めることが望ましいところです。

6 まとめ

  以上が,既になされてしまった医師に対する行政処分への不服申立ての方法とその流れです。もちろん,取消訴訟と異議申立ての手段選択や,選択した手段における主張の方法やその内容等については,それぞれのケースごとに異なります。申立てには事前の検討と準備が不可欠ですから,余裕をもって専門家にご相談されることをお勧めいたします。

【参照条文】
行政不服審査法
(この法律の趣旨)
第一条  この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
2  行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
(不服申立ての種類)
第三条  この法律による不服申立ては、行政庁の処分又は不作為について行なうものにあつては審査請求又は異議申立てとし、審査請求の裁決を経た後さらに行なうものにあつては再審査請求とする。
2  審査請求は、処分をした行政庁(以下「処分庁」という。)又は不作為に係る行政庁(以下「不作為庁」という。)以外の行政庁に対してするものとし、異議申立ては、処分庁又は不作為庁に対してするものとする。
(処分についての審査請求)
第五条  行政庁の処分についての審査請求は、次の場合にすることができる。
一  処分庁に上級行政庁があるとき。ただし、処分庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは外局若しくはこれに置かれる庁の長であるときを除く。
二  前号に該当しない場合であつて、法律(条例に基づく処分については、条例を含む。)に審査請求をすることができる旨の定めがあるとき。
2  前項の審査請求は、同項第一号の場合にあつては、法律(条例に基づく処分については、条例を含む。)に特別の定めがある場合を除くほか、処分庁の直近上級行政庁に、同項第二号の場合にあつては、当該法律又は条例に定める行政庁に対してするものとする。
(処分についての異議申立て)
第六条  行政庁の処分についての異議申立ては、次の場合にすることができる。ただし、第一号又は第二号の場合において、当該処分について審査請求をすることができるときは、法律に特別の定めがある場合を除くほか、することができない。
一  処分庁に上級行政庁がないとき。
二  処分庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは外局若しくはこれに置かれる庁の長であるとき。
三  前二号に該当しない場合であつて、法律に異議申立てをすることができる旨の定めがあるとき。
(証拠書類等の提出)
第二十六条  審査請求人又は参加人は、証拠書類又は証拠物を提出することができる。ただし、審査庁が、証拠書類又は証拠物を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。
(執行停止)
第三十四条  審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2  処分庁の上級行政庁である審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をすることができる。
3  処分庁の上級行政庁以外の審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取したうえ、執行停止をすることができる。ただし、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をすることはできない。
4  前二項の規定による審査請求人の申立てがあつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない。ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、処分の執行若しくは手続の続行ができなくなるおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない。
5  審査庁は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
6  第二項から第四項までの場合において、処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によつて目的を達することができるときは、することができない。
7  執行停止の申立てがあつたときは、審査庁は、すみやかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。
(異議申立期間)
第四十五条  異議申立ては、処分があつたことを知つた日の翌日から起算して六十日以内にしなければならない。
(決定)
第四十七条  異議申立てが法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるときは、処分庁は、決定で、当該異議申立てを却下する。
2  異議申立てが理由がないときは、処分庁は、決定で、当該異議申立てを棄却する。
3  処分(事実行為を除く。)についての異議申立てが理由があるときは、処分庁は、決定で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。ただし、異議申立人の不利益に当該処分を変更することができず、また、当該処分が法令に基づく審議会その他の合議制の行政機関の答申に基づいてされたものであるときは、さらに当該行政機関に諮問し、その答申に基づかなければ、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更することができない。
4  事実行為についての異議申立てが理由があるときは、処分庁は、当該事実行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更するとともに、決定で、その旨を宣言する。ただし、異議申立人の不利益に事実行為を変更することができない。
5  処分庁は、審査請求をすることもできる処分に係る異議申立てについて決定をする場合には、異議申立人が当該処分につきすでに審査請求をしている場合を除き、決定書に、当該処分につき審査請求をすることができる旨並びに審査庁及び審査請求期間を記載して、これを教示しなければならない。
(審査請求に関する規定の準用)
第四十八条  前節(第十四条第一項本文、第十五条第三項、第十七条、第十八条、第二十条、第二十二条、第二十三条、第三十三条、第三十四条第三項、第四十条第一項から第五項まで、第四十一条第二項及び第四十三条を除く。)の規定は、処分についての異議申立てに準用する。

行政事件訴訟法
(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)
第八条  処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。
2  前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。
一  審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。
二  処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。
三  その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。
3  第一項本文の場合において、当該処分につき審査請求がされているときは、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで)、訴訟手続を中止することができる。
(取消しの理由の制限)
第十条  取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。
2  処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。
(出訴期間)
第十四条  取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2  取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
3  処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二項の規定にかかわらず、これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
(執行停止)
第二十五条  処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2  処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
3  裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
4  執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。
5  第二項の決定は、疎明に基づいてする。
6  第二項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。
7  第二項の申立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
8  第二項の決定に対する即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない。
(裁量処分の取消し)
第三十条  行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。

【参考裁判例】
最判昭和63年7月1日第二小法廷判決・裁判集民事154号261頁,判例時報1342号68頁(抜粋)
「医師法七条二項によれば、医師が「罰金以上の刑に処せられた者」(同法四条二号)に該当するときは、被上告人厚生大臣(以下「厚生大臣」という。)は、その免許を取り消し、又は一定の期間を定めて医業の停止を命ずることができる旨定められているが、この規定は、医師が同法四条二号の規定に該当することから、医師として品位を欠き人格的に適格性を有しないものと認められる場合には医師の資格を剥奪し、そうまでいえないとしても、医師としての品位を損ない、あるいは医師の職業倫理に違背したものと認められる場合には一定期間医業の停止を命じ反省を促すべきものとし、これによつて医療等の業務が適正に行われることを期するものであると解される。したがつて、医師が同号の規定に該当する場合に、免許を取消し、又は医業の停止を命ずるかどうか、医業の停止を命ずるとしてその期間をどの程度にするかということは、当該刑事罰の対象となつた行為の種類、性質、違法性の程度、動機、目的、影響のほか、当該医師の性格、処分歴、反省の程度等、諸般の事情を考慮し、同法七条二項の規定の趣旨に照らして判断すべきものであるところ、その判断は、同法二五条の規定に基づき設置された医道審議会の意見を聴く前提のもとで、医師免許の免許権者である厚生大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。それ故、厚生大臣がその裁量権の行使としてした医業の停止を命ずる処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。」

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