新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1144、2011/8/19 15:27 https://www.shinginza.com/idoushin.htm

【行政処分・医師の免許取り消しと異議申し立て手続き・行政訴訟の特色】

質問:私は歯科医師をしておりましたが,覚せい剤使用の罪で実刑判決を受け,1年ほど前に出所してきました。出所後,約半年前に医道審議会にかけられ,医師免許取消の処分を受けています。処分を受けてからしばらくは,免許取消も仕方ないと思っていましたが,色々と調べているうちに,覚せい剤使用の罪で有罪判決を受けた人でも,2年程度の医業停止で済んでいる例もあることを知り,免許取消処分は重すぎるのではないかと考えるようになりました。処分について,不服申立をしたいのですが,どのような手続をとればよいのでしょうか。

回答:
1.医師免許の取消処分を争う方法としては,行政訴訟である取消訴訟(行訴法3条2項)及び無効確認訴訟(行訴法3条4項)が考えられます。前者については,出訴期間(6ヶ月)が設けられており,この期間を過ぎてしまうと,訴え自体が不適法とされてしまいますので,注意が必要です。無効確認訴訟については,出訴期間の制限はありませんが,無効とされるための要件との関係で,その実効性はほとんどないものと考えられます。
2.これらの不服申立手段が功を奏しなかった場合,あなたが再度歯科医師の免許を取得するためには,再免許申請(歯科医師法7条3項)によらざるを得ません。その場合には,再免許申請が可能になるまでの期間の過ごし方が重要になるでしょう。以下,詳しく解説します。
3.医道審議会に関して,法律相談事例集キーワード検索:1102番1079番1042番1034番869番735番653番551番313番266番246番211番48番参照。

解説:

(行政事件訴訟の基本的考え方)

   法の支配の理念により,すべての紛争,すなわち事件は,行政事件も含めて実体法を定める法律に従い,別個定められる訴訟手続により裁判所において判断(裁判)され解決されます(憲法76条 裁判所による司法権の独占。大陸法に属するドイツ,フランス等と異なり現在行政裁判所はありません。)。その事件は,民事,刑事,行政事件に分けられます。例えば,実体法として民法,刑法,行政法規があり,訴訟手続法として民事訴訟法,刑事訴訟法,行政事件訴訟法があります。行政事件とは,行政庁が持つ公権力行使に関する不服の訴訟その他行政法規の適用から生じる公法上の法律関係に関する事件をいいます。

   民事事件は,一般私人間(法人を含む)の権利,法律関係の事件であり,刑事事件は,国家権力(検察庁)が有する刑罰権行使と処罰の対象となる個人(法人)との紛争,事件を言います。行政事件は,行政庁が持つ行政権行使と私人(及び他の行政機関)間の紛争ですが,刑罰権行使の主体(検察庁)も広く言えば,行政権の主体ですから,正確に言うと,行政庁の中で,検察庁を除いた機関と個人(法人,他の行政機関)の関係に関する事件ということになります。国民の生命身体,財産所有の自由を強制的に剥奪する刑罰法規,及び刑事訴訟法は,その重要性から歴史的に独自,特別に規定されたものです。検察庁の刑罰権行使は,第三者(個人,社会,国家)の法益を侵害する違法行為を行った被告人の生命,自由等を,公益の代表として被害者に代わり強制的に剥奪して処罰し,各法益を回復復旧して公正な法社会秩序維持することを目的とします。
   
   これに対して,行政事件は,行政庁が国民の信託に基づき,公権力を付与され法令を根拠として国民生活を規律する公的なサービス業務を行うに際して,これらの行政行為側の違法性等を争う紛争であり,その訴訟を行政事件訴訟といい,手続きを定める法律が行政事件訴訟法です。違法性等を争うのであれば,私人間の権利関係を解決する民事訴訟手続きがありますが,これでは不十分であり別個特別に規定されています。なぜなら,行政行為は,公権力による国民への公的サービス業務を迅速,低廉に行うために,国民の選挙,信託により広範囲の妥当性判断の裁量権が公権力行使者に与えられているという特質を有するので(行政法30条),不服申し立て等の手段,手続きに関し,対等の私人間の民事訴訟法とは別個の規定を設ける必要があるからです(行政訴訟法7条,特則というより別個の訴訟類型と捉えられます。)。

   民事訴訟は,基本的にいかなる権利,法律関係でも訴えの利益があれば提訴することができますが,以上の特質から行政事件訴訟では,4つの訴訟類型しか認められません(同法2条)。抗告訴訟(3条),当事者訴訟(4条,法令の規定により公権力行使により生じた公的法律関係の当事者を原告被告として行う訴訟。公務員の給与請求訴訟等。),民衆訴訟(5条,訴え提起の当事者に法的利益がない訴訟,例えば選挙無効の訴え),及び機関訴訟(6条,行政機関同士の紛争)です。

   その中心が,抗告訴訟であり,行政権が有する公権力の行使による処分に対する不服の訴訟です。行政権の行使または不行使によって生じた違法状態の除去を目的としています。国民主権に基づき国民は公的サービス業務を公平適正に受ける権利を有しており,違法状態除去のため,基本的に処分,裁決の取り消し,無効等確認,違法状態確認の4つの訴えを認めています(同法3条2項乃至5項)。公権力といえども,適正,公平,権利濫用禁止(憲法12条,14条)の大原則に服することになります。これらの訴えは,公権力自体が国民の総意に基づくことを理論的根拠とするため,又,公的サービスの迅速,低廉性を確保するため 公権力の合理的裁量権の存在により違法性の判断の範囲が限定され,訴訟手続き上種々の制限が科せられています。対等の当事者ではないので,公正な公的サービス保証を実現するため職権証拠調べ(同24条)等一般民事訴訟の当事者主義が修正されています。尚,行政処分による違法状態の除去請求は国民の当然の権利ですから,4つの訴訟類型に限定されない(法定外抗告訴訟)という考えがとられています。行政法規に関する各条文は,以上の趣旨に基づき解釈されます。

1 取消訴訟(行訴法3条2項)及び無効確認訴訟(行訴法3条4項)について
 (1) 取消訴訟について
   医師免許取消処分のような「行政処分」を違法であるとして争う場合,行政事件訴訟法は,原則として取消訴訟のみによってこれを争うべき事を定めています(これを,「取消訴訟の排他的管轄」とか,行政処分は取消訴訟もしくは行政上の不服申立によって取り消されない限り有効なものとして扱われるという意味で,行政行為(行政処分)に「公定力」があるなどと説明されています)。基本的に国民の信託により行政行為は行われるということが理論的背景となります。

  ア 取消訴訟の訴訟要件
    上述のとおり,取消訴訟は行政事件訴訟法において定められていますが,その訴訟を利用するための条件(これを「訴訟要件」といいます)についても,通常の民事訴訟とは異なる特殊なルールが採用されています。
    以下では,この「訴訟要件」のうち,特に問題になるものについて簡単に解説します。
   ア) 処分性
     上記のとおり,取消訴訟の対象は,裁決を含めた「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(これを一般に「行政処分」といいます)ですから,取り消しを求める対象が「行政処分」でなければ,そもそも取消訴訟を提起することはできません。対象の範囲を拡大すると行政行為の迅速性低廉性に反することになるからです。
     この「行政処分」について,最判昭和39年10月29日は,「…行政庁の処分とは,所論のごとく行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく,公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち,その行為によつて,直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう」と述べています。この判例の判示によっても,行政処分にあたるか否かがなお争われる行為類型はいくつも存在しますが,とりあえず,医師免許取消処分が「行政処分」にあたることについては特に争いがなく,取消訴訟の対象となると考えられています。

   イ) 出訴期間
     まず,取消訴訟は,処分または裁決があったことを知った日から6か月を経過したときには,訴訟提起をすることができなくなります(これを「主観的出訴期間」といいます。行訴法14条1項)。さらに,処分または裁決の日から1年を経過したときにも,訴訟提起をすることはできません(これを,「客観的出訴期間」といいます。行訴法14条2項)。これらの期間を徒過すると,もはや行政処分の効力を争うことができなくなりますので,このことを,行政行為(行政処分)に「不可争力」が生ずるということもあります。
     なお,主観的出訴期間についても,客観的出訴期間についても,「正当な理由があるときは,この限りでない」とされていますが,ここでいう「正当な理由」とは。災害,病気,怪我,海外出張等の事情や行政庁の教示の懈怠等があることが必要であると考えられており,単なる多忙といった事情は含まれません。
     基本的には,処分の通知があなたに到達してから6か月を経過したら,もはや取消訴訟を提起することはできないと考えておいたほうが良いでしょう。これらの制限も,行政行為が,国民の総意という法的根拠を有することから導かれます。

  イ 本案で勝訴するための要件
    上記の処分性や出訴期間のほか,「訴訟要件」を備えることで,その訴訟は適法なものとなり,裁判所は,行政処分が違法か否かについて審理し,判決を下すことになります。
    取消訴訟は,違法な行政処分を取り消すものですから,あなたが勝訴判決を得るためには,行政処分が「違法」であるといえなければなりません。しかし,ある行政処分が「違法」といえるかどうかは,その処分について行政庁に裁量が与えられているか否かにより大きく異なります。
    以下,簡単に解説します。

   ア) 行政庁に裁量が与えられていない場合
     今回のケースからは少し外れますが,歯科医師法は,歯科医師が未成年者,成年被後見人又は被保佐人に該当するときは,厚生労働大臣は,その免許と取り消すと定めています(歯科医師法3条及び7条1項)。
     歯科医師が未成年者,成年被後見人又は被保佐人にあたるかどうかは,いずれも客観的に定まるものですし,厚生労働大臣は,これに該当する医師については免許を取り消す以外の選択肢はありません。そうすると,ある歯科医師が未成年者,成年被後見人又は補佐人に該当するか否かの判断や,該当する場合に免許を取り消すか否かの判断について,厚生労働大臣に裁量はないことになります。
     例えば,ある歯科医師が,未成年者でも成年被後見人でも補佐人でもないのにもかかわらず,厚生労働大臣からこれらに該当するとして免許を取り消された場合には,その歯科医師は,自分が未成年者でも成年被後見人でも補佐人でもないことさえ証明すれば,厚生労働大臣は免許取消処分をできないわけですから,その免許取消処分は違法となります。

   イ) 行政庁に裁量が与えられている場合
     これに対し,歯科医師法7条2項は,歯科医師が第4条各号のいずれかに該当し,又は歯科医師としての品位を損するような行為のあつたときは,厚生労働大臣は,戒告,3年以内の医業停止,又は免許の取消しをすることができると規定しています。この規定は,同法7条1項の「免許を取り消す」といった文言とはことなり,「・・・をすることができる」と定めていますので,厚生労働大臣は,処分をすることもしないこともできる,つまり,厚生労働大臣の裁量に委ねられていることになります。また,複数の処分が規定されていますが,どういう場合にどの処分をすべきかも一義的に定められていませんから,処分をするとしてどの処分を選択するかについても,厚生労働大臣の裁量に委ねられていることになります(これを「行政裁量」といいます)。
     このような行政裁量が認められている趣旨は,立法者が,裁判所の判断よりも行政庁の判断を尊重すると定めたことを意味します。そのため,裁量の与えられた範囲内での判断(その当不当の問題)については,裁判所は判断することができず,行政庁の判断がその裁量の範囲を逸脱し,または裁量権の濫用と認められる場合に限って,裁判所はその処分を違法として取り消すことができると定められています(行訴法30条)。
     以下では,医師に対する業務停止処分の効力が争われた裁判例をご紹介します。

    @ 最判昭和63年7月1日
     『医師法七条二項によれば,医師が「罰金以上の刑に処せられた者」(同法四条二号)に該当するときは,被上告人厚生大臣(以下「厚生大臣」という。)は,その免許を取り消し,又は一定の期間を定めて医業の停止を命ずることができる旨定められているが,この規定は,医師が同法四条二号の規定に該当することから,医師として品位を欠き人格的に適格性を有しないものと認められる場合には医師の資格を剥奪し,そうまでいえないとしても,医師としての品位を損ない,あるいは医師の職業倫理に違背したものと認められる場合には一定期間医業の停止を命じ反省を促すべきものとし,これによつて医療等の業務が適正に行われることを期するものであると解される。したがつて,医師が同号の規定に該当する場合に,免許を取消し,又は医業の停止を命ずるかどうか,医業の停止を命ずるとしてその期間をどの程度にするかということは,当該刑事罰の対象となつた行為の種類,性質,違法性の程度,動機,目的,影響のほか,当該医師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情を考慮し,同法七条二項の規定の趣旨に照らして判断すべきものであるところ,その判断は,同法二五条の規定に基づき設置された医道審議会の意見を聴く前提のもとで,医師免許の免許権者である厚生大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。それ故,厚生大臣がその裁量権の行使としてした医業の停止を命ずる処分は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合でない限り,その裁量権の範囲内にあるものとして,違法とならないものというべきである。』

    A 東京地判平成18年2月24日
     「六 争点2(本件処分が重きに失するか。)について
1 医師法7条2項は,医師が「罰金以上の刑に処せられた者」(同法4条3号)又は「医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者」(同条4号)に該当するときは,厚生労働大臣は,その免許を取消し,又は一定の期間を定めて医業の停止を命ずることができる旨規定している。前示のとおり,この医師法7条2項の規定は,医師が同法4条3号又は同条4号の規定に該当することから,医師として品位を欠き人格的に適格性を有しないと認める場合には医師の資格をはく奪し,そうまでいえないとしても,医師としての品位を損ない,あるいは医師の職業倫理に違背したものと認められる場合には一定期間医業の停止を命じて反省を促すべきものとし,これによって医療等の業務が適正に行われることを期するものであると解すべきである。このように医師法4条3号及び4号の関係で,同法7条2項を考えると,医師が同法4条3号又は4号の規定に該当する場合に,免許を取り消し又は医業の停止を命ずるかどうか,さらに,医業の停止を命ずるとしてその期間をどの程度にするかということは,当該刑事罰の対象となった行為又は当該医事に関する犯罪若しくは不正の行為の種類,性質,違法性の程度,動機,目的,影響のほか,当該医師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情を考慮し,同法7条2項の規定の趣旨に照らして判断すべきものであるところ,その判断は,医道審議会の意見を聴く前提の下で,医師免許の免許権者である厚生労働大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。それ故,厚生労働大臣がその裁量権の行使としてした医業の停止を命ずる処分は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合でない限り,その裁量権の範囲内にあるものとして,違法とならないものというべきである(最高裁昭和61年(行ツ)第90号同63年7月1日第二小法廷判決・訟務月報35巻3号512頁参照)。」

  ウ まとめ
このように,判例も,(歯科)医師法に基づく厚生労働大臣の処分に広範な裁量を認めており,これを逸脱・濫用した違法な処分であると裁判所に認めてもらうことは簡単ではありません。しかし,どうしてもご納得いかないのであれば,医師免許取消処分には,あなたの行為に対する処分としては重すぎるという比例原則違反や,他の同種事例と比べて処分が重すぎるという平等原則違反(憲法14条)があり,厚生労働大臣に与えられた裁量を逸脱濫用した違法な処分であると主張されることになるでしょう。

 (2) 無効確認訴訟について
   なお,上述のとおり,「行政処分」を違法であるとして争う場合,行政事件訴訟法は,原則として取消訴訟のみによってこれを争うべき事を定めています。ただし,その違法の程度が,(行政処分を一応有効とみることができる程度ではなく)もはや無効であるとみられる程度の場合には,取消訴訟ではなく,無効等確認の訴えが認められます。
   取消訴訟と無効等確認の訴えの大きな違いは,取消訴訟の場合,出訴期間の制限があるのに対し,無効等確認の訴えの場合には,出訴期間の誓約を受けない点にあります。行政行為の違法状態が重大,明白であり国民の利益確保のために期間制限を定めていません。
   もっとも,違法の程度が無効であるとみられる程度とは,その瑕疵が重大かつ明白であることが必要と考えられていますので,今回のような裁量処分が問題となる場合に,瑕疵が重大かつ明白といえるケースはほとんど存在しないものと考えられます。

2 再免許申請について
   上記の取消訴訟又は無効確認等の訴えによっても,免許取消処分の効力を否定できない場合に,あなたが再度歯科医師として稼働するためには,歯科医師の国家試験に再度合格する場合を除くと,再免許を申請するほかありません(歯科医師法7条3項)。
   再免許申請につきましては,当事務所HP(https://www.shinginza.com/saimenkyo.htm)をご覧下さい。近時,数件再免許交付が認められた事例がありますが,ここ十数年以上再免許交付の例はほとんどありませんでした。過去に再免許交付が行われた対象者が再度刑事事件を起こしたということが影響されているようです。根底には,医師人口の増加と過剰状態があるものと思われます。従って,再免許交付申請は,医師過疎地帯への勤務,法規範遵守の具体的行動,誓約を行い,厚生労働省を説得することが必要と思われます。分からない場合は,専門家の指導を受けることが重要です。

<参考条文>

歯科医師法
第三条  未成年者,成年被後見人又は被保佐人には,免許を与えない。
第四条  次の各号のいずれかに該当する者には,免許を与えないことがある。
一  心身の障害により歯科医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二  麻薬,大麻又はあへんの中毒者
三  罰金以上の刑に処せられた者
四  前号に該当する者を除くほか,医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者
第七条  歯科医師が,第三条に該当するときは,厚生労働大臣は,その免許を取り消す。
2  歯科医師が第四条各号のいずれかに該当し,又は歯科医師としての品位を損するような行為のあつたときは,厚生労働大臣は,次に掲げる処分をすることができる。
一  戒告
二  三年以内の歯科医業の停止
三  免許の取消し
3  前二項の規定による取消処分を受けた者(第四条第三号若しくは第四号に該当し,又は歯科医師としての品位を損するような行為のあつた者として前項の規定による取消処分を受けた者にあつては,その処分の日から起算して五年を経過しない者を除く。)であつても,その者がその取消しの理由となつた事項に該当しなくなつたとき,その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至つたときは,再免許を与えることができる。この場合においては,第六条第一項及び第二項の規定を準用する。
4  厚生労働大臣は,前三項に規定する処分をなすに当つては,あらかじめ医道審議会の意見を聴かなければならない。
5  厚生労働大臣は,第一項又は第二項の規定による免許の取消処分をしようとするときは,都道府県知事に対し,当該処分に係る者に対する意見の聴取を行うことを求め,当該意見の聴取をもつて,厚生労働大臣による聴聞に代えることができる。
6  行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第三章第二節 (第二十五条,第二十六条及び第二十八条を除く。)の規定は,都道府県知事が前項の規定により意見の聴取を行う場合について準用する。この場合において,同節 中「聴聞」とあるのは「意見の聴取」と,同法第十五条第一項 中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と,同条第三項 (同法第二十二条第三項 において準用する場合を含む。)中「行政庁は」とあるのは「都道府県知事は」と,「当該行政庁が」とあるのは「当該都道府県知事が」と,「当該行政庁の」とあるのは「当該都道府県の」と,同法第十六条第四項 並びに第十八条第一項 及び第三項 中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と,同法第十九条第一項 中「行政庁が指名する職員その他政令で定める者」とあるのは「都道府県知事が指名する職員」と,同法第二十条第一項 ,第二項及び第四項中「行政庁」とあるのは「都道府県」と,同条第六項 ,同法第二十四条第三項 及び第二十七条第一項中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と読み替えるものとする。
7  厚生労働大臣は,都道府県知事から当該処分の原因となる事実を証する書類その他意見の聴取を行う上で必要となる書類を求められた場合には,速やかにそれらを当該都道府県知事あて送付しなければならない。
8  都道府県知事は,第五項の規定により意見の聴取を行う場合において,第六項において読み替えて準用する行政手続法第二十四条第三項 の規定により同条第一項 の調書及び同条第三項 の報告書の提出を受けたときは,これらを保存するとともに,当該処分の決定についての意見を記載した意見書を作成し,当該調書及び報告書の写しを添えて厚生労働大臣に提出しなければならない。
9  厚生労働大臣は,意見の聴取の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認めるときは,都道府県知事に対し,前項の規定により提出された意見書を返戻して主宰者に意見の聴取の再開を命ずるよう求めることができる。行政手続法第二十二条第二項 本文及び第三項 の規定は,この場合について準用する。
10  厚生労働大臣は,当該処分の決定をするときは,第八項の規定により提出された意見書並びに調書及び報告書の写しの内容を十分参酌してこれをしなければならない。
11  厚生労働大臣は,第二項の規定による歯科医業の停止の命令をしようとするときは,都道府県知事に対し,当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行うことを求め,当該弁明の聴取をもつて,厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えることができる。
12  前項の規定により弁明の聴取を行う場合において,都道府県知事は,弁明の聴取を行うべき日時までに相当な期間をおいて,当該処分に係る者に対し,次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一  第二項の規定を根拠として当該処分をしようとする旨及びその内容
二  当該処分の原因となる事実
三  弁明の聴取の日時及び場所
13  厚生労働大臣は,第十一項に規定する場合のほか,厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えて,医道審議会の委員に,当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行わせることができる。この場合においては,前項中「前項」とあるのは「次項」と,「都道府県知事」とあるのは「厚生労働大臣」と読み替えて,同項の規定を適用する。
14  第十二項(前項後段の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の通知を受けた者は,代理人を出頭させ,かつ,証拠書類又は証拠物を提出することができる。
15  都道府県知事又は医道審議会の委員は,第十一項又は第十三項前段の規定により弁明の聴取を行つたときは,聴取書を作り,これを保存するとともに,当該処分の決定についての意見を記載した報告書を作成し,厚生労働大臣に提出しなければならない。
16  厚生労働大臣は,第五項又は第十一項の規定により都道府県知事が意見の聴取又は弁明の聴取を行う場合においては,都道府県知事に対し,あらかじめ,次に掲げる事項を通知しなければならない。
一  当該処分に係る者の氏名及び住所
二  当該処分の内容及び根拠となる条項
三  当該処分の原因となる事実
17  第五項の規定により意見の聴取を行う場合における第六項において読み替えて準用する行政手続法第十五条第一項 の通知又は第十一項 の規定により弁明の聴取を行う場合における第十二項 の通知は,それぞれ,前項の規定により通知された内容に基づいたものでなければならない。
18  第五項若しくは第十一項の規定により都道府県知事が意見の聴取若しくは弁明の聴取を行う場合又は第十三項前段の規定により医道審議会の委員が弁明の聴取を行う場合における当該処分については,行政手続法第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は,適用しない。

行政事件訴訟法
(抗告訴訟)
第三条  この法律において「抗告訴訟」とは,行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2  この法律において「処分の取消しの訴え」とは,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決,決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3  この法律において「裁決の取消しの訴え」とは,審査請求,異議申立てその他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決,決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
4  この法律において「無効等確認の訴え」とは,処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
5  この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは,行政庁が法令に基づく申請に対し,相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず,これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
6  この法律において「義務付けの訴え」とは,次に掲げる場合において,行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一  行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二  行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において,当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
7  この法律において「差止めの訴え」とは,行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において,行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。
(当事者訴訟)
第四条  この法律において「当事者訴訟」とは,当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。
(民衆訴訟)
第五条  この法律において「民衆訴訟」とは,国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で,選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。
(機関訴訟)
第六条  この法律において「機関訴訟」とは,国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう。
(この法律に定めがない事項)
第七条  行政事件訴訟に関し,この法律に定めがない事項については,民事訴訟の例による。
(出訴期間)
第十四条  取消訴訟は,処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは,提起することができない。ただし,正当な理由があるときは,この限りでない。
2  取消訴訟は,処分又は裁決の日から一年を経過したときは,提起することができない。ただし,正当な理由があるときは,この限りでない。
3  処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において,審査請求があつたときは,処分又は裁決に係る取消訴訟は,その審査請求をした者については,前二項の規定にかかわらず,これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から一年を経過したときは,提起することができない。ただし,正当な理由があるときは,この限りでない。
(裁量処分の取消し)
第三十条  行政庁の裁量処分については,裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り,裁判所は,その処分を取り消すことができる。

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