医道審議会・資格停止中の個人病院の営業について

行政|医師免許|医業停止

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

私は医師ですが、先日酒酔い運転で人身事故を起こしてしまい、業務上過失致傷で有罪判決を受けてしまいました。今後、医道審議会で処分が下されることになるようです。私は一人で診療所を開設していますが、仮に医業停止処分になった場合、診療所は閉鎖しなくてはならないのでしょうか?

回答:

1、医師法7条の医業停止処分が避けられない場合、医療法8条の診療所の開設届をやり直す必要があるのか、管理者の変更届を提出する必要があるのかどうかについて、医療法には明確な定めがありません。個々の事例において、保健所や厚生労働省に問い合わせることにより、個別に対処していくことになりますが、原則として、医業停止処分を受けている医師は診療所の管理者を継続することはできないと考えるべきでしょう。

2、医道審議会に関する関連事例集参照。

解説:

1、医業停止処分

医師が犯罪をおかしてしまい、有罪判決を受けた場合、刑事処分とは別に、厚生労働省から行政処分を受けることがあります。厚生労働省の部会である医道審議会において、被処分者への告知・聴聞を経て、医師免許の取消、一定期間の医業停止、訓告などの処分が下されます。本件では、業務上過失致傷で有罪判決を受けられたとのことですが、近時、厚生労働省は有罪判決を受けた医師の情報を法務省と連携して交換し、処分の遺漏がないように努めているようですので、処分を免れるという可能性はないと考えるべきでしょう。

2、医業停止期間中の診療所の管理者について

さて、相談者はご自身の診療所をお持ちである、いわゆる「個人病院」のような形態で活動をなさっているようです。では、個人病院の医師が医業停止処分を受けた場合、診療所は少なくとも停止期間の間、閉鎖しなくてはならないのでしょうか。医道審議会に関連して、医業停止処分を受けた場合、個人で経営している病院はどのようにするべきか?という問題について、当事務所では、以下のような内容をHP上で発表していました。

「この点、特に法律上の規定があるわけではありませんが、厚生労働省に問い合わせしたところ、以下のような回答を得ました。

(1)医業停止で停止する必要があるのは、医療行為であり、停止処分を受けている医師が医療行為を行わなければよい。

(2)したがって、別の医師が診療を行う等、被処分者が医療行為を行わない形式であれば、診療所を閉鎖する義務があるわけではない。

(3)開設の際に届け出た、診療所の開設者、管理者については、その地位を維持しても問題ない。

(4)代診の医師を頼む等して診療所を継続する場合、新たに「診療に従事する医師」が増えることになるので、これについて追加的に届出をする必要はある。

すなわち、診療に従事する者がいれば、診療所を継続することは可能だということです。具体的には、一定期間代診をしてくれる医師を探す、等の方法が考えられます。

3、診療所の管理者について別の解釈

以上のように、医師一名の診療所でも、医業停止期間中に代診を請け負ってくれる医師が見つかれば、診療所の継続は可能でしょう。有罪判決を受けただけでは医業停止の効果は発生せず、医道審議会から処分が出てからになりますが、その間1~数ヶ月間時間があります(その間医療行為を行うことも可能です)ので、その間に代診の医師の選定や、勤務医師の場合には勤務先との協議など、停止期間中の対策を検討しておく必要があるでしょう。ただし、下記参照条文記載の通り、厚生労働省、都道府県知事には、病院・診療所の管理者に対して、管理者の変更や、診療所の閉鎖を命ずる権限もありますので、別途このような処分をうけた場合には、上記のようにはなりませんのでご注意ください。医道審議会の流れや見通し等関連事項についても、当事務所HPをご参照ください。弁護士にご相談なさることをお勧めいたします。」

この記載は、当事務所に医道審議会に関する弁護をご依頼いただいたことをきっかけとして、当事務所担当弁護士が、厚生労働省の担当者に対して電話で聴取し、確認した内容を記載したものです。ところがその後、ある保健所において、上記見解は誤りであり、保健所としては医業停止中の医師については病院の管理者の継続も認めない方向で取り扱っているという事実が判明しました。当事務所から保健所の担当職員に確認したところ、そのような扱いが厚生労働省の見解である、とのことでした。

そこで、厚生労働省に再度確認したところ、やはり管理者の継続は不可能という方向で考えている、という返答でした。当事務所は、ホームページで発表していた事実および、その内容が厚生労働省担当職員から確認した内容に基づくものであることを伝え、管理者の継続を認めない根拠について問い合わせを行いました。同省は、「検討する」との回答でしたが、現在のところ、同省からの確答は得られておりません。

この問題は、法律や制度の「解釈」の問題になります。「解釈」は、必ずしも一義的に定まるものではありません。法律の条文は敢えて抽象的に書かれていますので、通常は、これを補うために、判例や、運用、行政庁による通達などで具体的な適用関係について明らかにされます。その過程において、見解が修正、変更、統一等される可能性はあります。

本件に関して、二つの全く異なった結論が出されているわけですが、その理由が、当事務所が問い合わせをした後に厚生労働省としての見解が変更されたのか、あるいは当時から厚生労働省としての見解が統一されていなかったのかどちらなのかは不明です。いずれにしろ、現時点では医業停止中の医師については病院、診療所の管理者の継続は認められないことになることを前提に、病院等の継続を希望するのであれば事前に管理者となる医師を探しておく必要があります。

当事務所といたしましては、医業停止中の医師についても管理者の継続は可能である、という解釈ができることから引き続きこの問題について厚生労働省に協議を申し入れ、この問題でお困りの方々のために有益な情報を提供したいと考えています。今後、厚生労働省の見解が明らかになり次第ホームページ上で発表していく予定です。

以上

関連事例集

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※参照条文

医療法

第八条 臨床研修修了医師、臨床研修修了歯科医師又は助産師が診療所又は助産所を開設したときは、開設後十日以内に、診療所又は助産所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない。

第十四条の二 病院又は診療所の管理者は、厚生労働省令の定めるところにより、当該病院又は診療所に関し次に掲げる事項を当該病院又は診療所内に見やすいよう掲示しなければならない。

一 管理者の氏名

二 診療に従事する医師又は歯科 医師の氏名

三 医師又は歯科医師の診療日及び診療時間

四 前三号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

第二十八条 都道府県知事は、病院、診療所又は助産所の管理者に、犯罪若しくは医事に関する不正行為があり、又はその者が管理をなすのに適しないと認めるときは、開設者に対し、期限を定めて、その変更を命ずることができる。

第二十九条 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、病院、診療所若しくは助産所の開設の許可を取り消し、又は開設者に対し、期間を定めて、その閉鎖を命ずることができる。

一 開設の許可を受けた後正当の理由がないのに、六月以上その業務を開始しないとき。

二 病院、診療所(第八条の届出をして開設したものを除く。)又は助産所(同条の届出をして開設したものを除く。)が、休止した後正当の理由がないのに、一年以上業務を再開しないとき。

三 開設者が第二十四条第一項又は前条の規定に基づく命令又は処分に違反したとき。

四 開設者に犯罪又は医事に関する不正の行為があつたとき。

第二十九条の二 厚生労働大臣は、国民の健康を守るため緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長に対し、第二十八条並びに前条第一項及び第二項の規定による処分を行うべきことを指示することができる。

第三十条 都道府県知事は、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第二項第一号の規定により、あらかじめ弁明の機会の付与又は聴聞を行わないで第二十三条の二、第二十四条第一項、第二十八条又は第二十九条第一項若しくは第三項の規定による処分をしたときは、当該処分をした後三日以内に、当該処分を受けた者に対し、弁明の機会の付与を行わなければならない