新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1245、2012/3/9 14:44 https://www.shinginza.com/idoushin.htm

【行政事件・医道審議会に関する弁護士との協議・東京地方裁判所平成18年2月24日判決・最高裁昭和63年7月1日判決】

質問:私は医師ですが,1年ほど前に16歳の高校生と性的関係を持ってしまい,青少年健全育成条例違反で書類送検され,略式手続により罰金50万円を支払いました。このときは,弁護士には依頼しておらず,被害者との示談などは一切していませんでした。ところで,最近,県庁から医道審議会についての通知が届きました。この手続について,弁護士に依頼することができると聞きましたが,それは本当でしょうか。法律に根拠はありますか。また,弁護士に依頼することにどのような意味があるのでしょうか。

回答:
1.医道審議会の手続については,予定される処分に応じて「意見の聴取」(医師法第7条5項)と「弁明の聴取」(同条11項)がありますが,いずれについても,法律上,代理人を選任することが認められています。
2.代理人は,「意見の聴取」や「弁明の聴取」について,あなたのために必要な一切の行為をすることができます。これらの期日は,あなたに不利益処分を科すにあたって,あなたの言い分を主張する場ですから,あなた自身からはもちろん,代理人からも,より軽い処分が相当である旨の意見を述べ,有利な証拠は余すことなく提出することが重要です。事案上,今回は医業停止が予想されると思われます。
3.判例によると「医業の停止を命ずるとしてその期間をどの程度にするかということは,当該刑事罰の対象となった行為又は当該医事に関する犯罪若しくは不正の行為の種類,性質,違法性の程度,動機,目的,影響のほか,当該医師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情を考慮し,同法7条2項の規定の趣旨に照らして判断すべきものである。」という基準が明らかにされています。
4.犯罪行為自体に関する資料としては,刑事記録を再度検討して行政処分の判断材料として再構成を行います。当該医師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情としては,具体的には,医師として地域医療への貢献を示す証拠,同僚医師等の嘆願書,被害者である未成年者の両親と再度和解(示談)の手続きが必要です。和解が終了していたとしても,被害者側の医師資格に関する上申書が必要でしょう。すでに終了したことですが,刑事事件発生時に専門的弁護士に依頼すれば,医師資格に関する上申書等も医道審議会を予想して作成することもできますし,今回の罰金50万円を回避できた可能性もあります。担当検察官に,貴方の医師としての地位,地域医療への貢献,医道審議会の予想結果を説明し,不起訴処分を求めることができたからです。勿論,その場合被害者側との和解書が必要不可欠です。
5.その他の手続きとしては,憲法14条は法の下の平等について規定していますから,行政処分を決定する際にも同条は妥当し,処分庁の合理的裁量権が認められるにしても,同条から導かれる平等原則,比例原則により統制されることとなります。よって,解釈上行政庁の裁量処分といえども他の同種事案と比較して不平等な処分であると認められる場合には,裁量を逸脱・濫用した違法な処分と評価されることになります。従って原則処分例が公開されていない過去の事例を詳細に調査し,当該刑事記録を閲覧,分析の上,比較対照して公平,平等な判断を求めることになります。
6.医道審議会 に関して,法律相談事例集キーワード検索:1144番1102番1079番1042番1034番869番735番653番551番313番266番246番211番48番参照。
  以下,解説します。

解説:
1 行政手続法による事前手続の整備

 (1) 行政手続において,ある処分(例えば,今回のケースにおける医師法に基づく行政処分)がなされる場合,この処分がなされた後に,これを違法・不当な処分であるとして,裁判手続や不服審査手続の中で事後的に争うことは可能ですが,このような事後救済手続のみで,国民の権利や利益が十分に保護されるのか,疑問が呈されていました。適正手続の見地からは,事後的な救済のみでなく,処分がなされる前に,処分の相手方に処分内容や理由を告知して,その言い分を聞いたうえで処分を決することによって,処分の適法性や妥当性を担保する必要があると考えられるからです。
   個々の行政法規の中には,行政庁が,私人に対して不利益な処分を行う場合に,「聴聞」や「弁明の機会の付与」という事前手続を踏まなければならないことを定めたものがいくつか存在しました(すぐ後に述べますが,医師法はこの事前手続について古くから定めを置いていました)が,これらをより一般的なものとすべきという要請から,平成5年,行政手続法という法律が制定され,行政庁が処分を行うにあたっての事前手続が整備されました。ただ,全ての行政処分が行政手続法の適用があるわけではありません(行政手続法 3条,4条)。適用にならない処分については性質上処分行政庁の大幅な裁量権を認める必要があるからです。ただ,適用が除外されている行政処分について独自の手続きが定められてなければ,行政手続法の趣旨は類推されてしかるべきでしょう。

 (2) 医師法は,行政手続法以前から,「意見の聴取」や「弁明の聴取」についての規定を置いていましたが,行政手続法の制定に伴い,これに合わせる形でその規定があらためて整備されました。
   以下では,医師法に基づく処分において求められる事前手続について,簡単に解説します。

  ア 「意見の聴取」手続
    医師法7条2項は,医師に対する行政処分として「免許取消,3年以内の医業停止,戒告」の3種類を定めていますが,このうち,免許取消処分が予定されている場合には,「意見の聴取」(同条5項)という手続を行わなければなりません。
    この手続は,行政手続法における「聴聞」の手続に対応するもので,予定される処分の重大性から,より慎重な手続が定められています(医師法7条6項,行政手続法第3章第2節〔第25条,第26条及び第28条を除く。〕)。これらの規定の中で特に注目されるべきなのは,代理人の選任が認められ,代理人は,各自,当事者のために,聴聞に関する一切の行為をすることができるとされていることです(行政手続法第16条)。当事者は,聴聞の期日に出頭して,意見を述べ,及び証拠書類等を提出することができるとされていますが(同法第20条2項),上記のとおり,代理人は,当事者のために聴聞に関する一切の行為をすることが認められていますから,代理人もこれらの活動を行うことができます。
    この代理人の資格は,法律上,弁護士に限られているわけではありません。しかし,意見陳述も,証拠の提出も,弁護士が日常的に行っている業務に含まれるものですから,弁護士は,同手続における代理人となることについて非常に高い適性を有しているといえるでしょう。

  イ 「弁明の聴取」手続
    これに対し,免許取消処分が予定されているいない場合には,「弁明の聴取」という簡易な手続になります。
    行政手続法上,「意見の聴取」との違いは,
    @「意見の聴取」では,代理人の他に参加人,補佐人の制度があるが(行政手続法17条,同法20条3項),「弁明の聴取」にはない
    A「意見の聴取」では,期日に出頭して意見を述べることとされているが,「弁明の聴取」では,行政庁が口頭ですることを認めた場合を除いて,弁明書,証拠書類等の提出によることとされている(同法29条)
    B「意見の聴取」では文書閲覧権が認められているが(同法18条),「弁明の聴取」では認められていない
    等の違いがあります。
    もっとも,医師法は,「弁明の聴取」について,行政手続法第3章の規定の適用を排除した上で(医師法第7条18項),「弁明の聴取」を口頭ですることを認め(同条12項3号),代理人を出頭させ,証拠物及び証拠書類を提出させることを認めていますので(同条14項),「意見の聴取」手続との違いは,参加人,補佐人の制度がないこと,文書閲覧権がないこと以外には大きな違いなないことになります。
    このとおり,「弁明の聴取」においても,代理人を選任できることが法律に定められていますし,代理人が弁明の聴取期日に出頭して意見を述べ,証拠物や証拠書類を提出することも認められています。弁護士が,この手続における代理人となることについて非常に高い適性を有しているといえることは,上記アの「意見の聴取」手続と全く同様です。

  ウ 今回のケース
    今回のケースでは,青少年健全育成条例違反により罰金50万円(略式)という刑事処分とのことですから,あなたに対して免許取消処分が予定されることは考えにくく,手続としては,上記イの「弁明の聴取」となるでしょう。
    この手続においても,法律上,代理人を選任して意見を述べ,証拠物及び証拠書類を提出することが認められていますから,弁護士を代理人に選任し,あなたの言い分や,あなたにとって有利な証拠を提出してもらうと良いでしょう。
    具体的な活動内容についてはケースバイケースですが,今回のケースでどのような活動が可能か,以下で簡単に解説します。

2 「弁明の聴取」手続における代理人の活動
 (1) 行政処分を決する上での考慮要素
代理人は,あなたに対する行政手続の中で,あなたに対する処分について意見を述べ,有利な証拠を提出することになりますが,その前提として,あなたに対する行政手続の中でどのような事情が考慮されるのかを把握しなければなりません。医師に対する行政処分を決する上での考慮要素について,裁判例は,以下のように述べており,代理人が活動するうえで大いに参考になります。

【東京地方裁判所平成18年2月24日判決】
  『…医師法7条2項は,医師が「罰金以上の刑に処せられた者」(同法4条3号)又は「医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者」(同条4号)に該当するときは,厚生労働大臣は,その免許を取消し,又は一定の期間を定めて医業の停止を命ずることができる旨規定している。前示のとおり,この医師法7条2項の規定は,医師が同法4条3号又は同条4号の規定に該当することから,医師として品位を欠き人格的に適格性を有しないと認める場合には医師の資格をはく奪し,そうまでいえないとしても,医師としての品位を損ない,あるいは医師の職業倫理に違背したものと認められる場合には一定期間医業の停止を命じて反省を促すべきものとし,これによって医療等の業務が適正に行われることを期するものであると解すべきである。このように医師法4条3号及び4号の関係で,同法7条2項を考えると,医師が同法4条3号又は4号の規定に該当する場合に,免許を取り消し又は医業の停止を命ずるかどうか,さらに,医業の停止を命ずるとしてその期間をどの程度にするかということは,当該刑事罰の対象となった行為又は当該医事に関する犯罪若しくは不正の行為の種類,性質,違法,性の程度,動機,目的,影響のほか,当該医師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情を考慮し,同法7条2項の規定の趣旨に照らして判断すべきものであるところ,その判断は,医道審議会の意見を聴く前提の下で,医師免許の免許権者である厚生労働大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。それ故,厚生労働大臣がその裁量権の行使としてした医業の停止を命ずる処分は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合でない限り,その裁量権の範囲内にあるものとして,違法とならないものというべきである(最高裁昭和61年(行ツ)第90号同63年7月1日第二小法廷判決・訟務月報35巻3号512頁参照)』

   以上のとおり,上記の裁判例は,医師に対する行政処分を決する際には,「当該刑事罰の対象となった行為又は当該医事に関する犯罪若しくは不正の行為の種類,性質,違法性の程度,動機,目的,影響のほか,当該医師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情を考慮」するものとしており,その考慮要素は非常に多岐にわたっています。

 (2) 具体的な主張・立証
   以上の考慮要素のうち,「当該刑事罰の対象となった行為又は当該医事に関する犯罪若しくは不正の行為の種類,性質,違法性の程度,動機,目的,影響」については,あなたご自身のお話を伺うほか,必要に応じて刑事記録を参照するなどして,法律的な主張を組み立てていく必要があります。また,行為の違法性の程度や影響という観点からいえば,被害者と示談をしているような場合には,違法性の程度や影響が減少しているとして,これを有利な証拠として提出することも考えられます(なお,行政手続の最初に,あなたから都道府県に対して,処分の対象となる事案について報告を求められますが,その報告すべき事項の中に,被害者との示談の成否について記載する欄がありますので,示談の成否が,あなたへの処分を決するうえで1つの考慮要素となっていることは明らかです)。
   また,「当該医師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情」についても,必要に応じて反省文や,他の医師等からの嘆願書等を提出し,処分の軽減を求めることが考えられます。
   これらの活動のうち,刑事記録の分析や被害者との示談は,弁護士に依頼しなければ現実的には不可能でしょうし,その他の証拠の作成についても,弁護士からの助言がなければ困難なものが多いものと考えられます。弁護士は,証拠の作成の専門家でもありますから,弁護士にご依頼され,的確な助言のもとに手続を進められることをお勧めします。

【判例参照】

最高裁第二小法廷 昭和61年(行ツ)第90号昭和63年7月1日判決(医業停止処分取消等請求上告事件)
     
「医師法七条二項によれば,医師が「罰金以上の刑に処せられた者」(同法四条二号)に該当するときは,被上告人厚生大臣(以下「厚生大臣」という。)は,その免許を取り消し,又は一定の期間を定めて医業の停止を命ずることができる旨定められているが,この規定は,医師が同法四条二号の規定に該当することから,医師として品位を欠き人格的に適格性を有しないものと認められる場合には医師の資格を剥奪し,そうまでいえないとしても,医師としての品位を損ない,あるいは医師の職業倫理に違背したものと認められる場合には一定期間医業の停止を命じ反省を促すべきものとし,これによつて医療等の業務が適正に行われることを期するものであると解される。したがつて,医師が同号の規定に該当する場合に,免許を取消し,又は医業の停止を命ずるかどうか,医業の停止を命ずるとしてその期間をどの程度にするかということは,当該刑事罰の対象となつた行為の種類,性質,違法性の程度,動機,目的,影響のほか,当該医師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情を考慮し,同法七条二項の規定の趣旨に照らして判断すべきものであるところ,その判断は,同法二五条の規定に基づき設置された医道審議会の意見を聴く前提のもとで,医師免許の免許権者である厚生大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。それ故,厚生大臣がその裁量権の行使としてした医業の停止を命ずる処分は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合でない限り,その裁量権の範囲内にあるものとして,違法とならないものというべきである。」

【参照条文】

≪医師法≫
第七条  医師が,第三条に該当するときは,厚生労働大臣は,その免許を取り消す。
2  医師が第四条各号のいずれかに該当し,又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは,厚生労働大臣は,次に掲げる処分をすることができる。
一  戒告
二  三年以内の医業の停止
三  免許の取消し
4  厚生労働大臣は,前三項に規定する処分をなすに当つては,あらかじめ,医道審議会の意見を聴かなければならない。
5  厚生労働大臣は,第一項又は第二項の規定による免許の取消処分をしようとするときは,都道府県知事に対し,当該処分に係る者に対する意見の聴取を行うことを求め,当該意見の聴取をもつて,厚生労働大臣による聴聞に代えることができる。
6  行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第三章第二節 (第二十五条,第二十六条及び第二十八条を除く。)の規定は,都道府県知事が前項の規定により意見の聴取を行う場合について準用する。この場合において,同節 中「聴聞」とあるのは「意見の聴取」と,同法第十五条第一項中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と,同条第三項 (同法第二十二条第三項 において準用する場合を含む。)中「行政庁は」とあるのは「都道府県知事は」と,「当該行政庁が」とあるのは「当該都道府県知事が」と,「当該行政庁の」とあるのは「当該都道府県の」と,同法第十六条第四項 並びに第十八条第一項 及び第三項 中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と,同法第十九条第一項 中「行政庁が指名する職員その他政令で定める者」とあるのは「都道府県知事が指名する職員」と,同法第二十条第一項 ,第二項及び第四項中「行政庁」とあるのは「都道府県」と,同条第六項 ,同法第二十四条第三項 及び第二十七条第一項 中「行政庁」とあるのは「都道府県知事」と読み替えるものとする。
11  厚生労働大臣は,第二項の規定による医業の停止の命令をしようとするときは,都道府県知事に対し,当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行うことを求め,当該弁明の聴取をもつて,厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えることができる。
12  前項の規定により弁明の聴取を行う場合において,都道府県知事は,弁明の聴取を行うべき日時までに相当な期間をおいて,当該処分に係る者に対し,次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一  第二項の規定を根拠として当該処分をしようとする旨及びその内容
二  当該処分の原因となる事実
三  弁明の聴取の日時及び場所
13  厚生労働大臣は,第十一項に規定する場合のほか,厚生労働大臣による弁明の機会の付与に代えて,医道審議会の委員に,当該処分に係る者に対する弁明の聴取を行わせることができる。この場合においては,前項中「前項」とあるのは「次項」と,「都道府県知事」とあるのは「厚生労働大臣」と読み替えて,同項の規定を適用する。
14  第十二項(前項後段の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の通知を受けた者は,代理人を出頭させ,かつ,証拠書類又は証拠物を提出することができる。
16  厚生労働大臣は,第五項又は第十一項の規定により都道府県知事が意見の聴取又は弁明の聴取を行う場合においては,都道府県知事に対し,あらかじめ,次に掲げる事項を通知しなければならない。
一  当該処分に係る者の氏名及び住所
二  当該処分の内容及び根拠となる条項
三  当該処分の原因となる事実
17  第五項の規定により意見の聴取を行う場合における第六項において読み替えて準用する行政手続法第十五条第一項 の通知又は第十一項 の規定により弁明の聴取を行う場合における第十二項 の通知は,それぞれ,前項の規定により通知された内容に基づいたものでなければならない。
18  第五項若しくは第十一項の規定により都道府県知事が意見の聴取若しくは弁明の聴取を行う場合又は第十三項前段の規定により医道審議会の委員が弁明の聴取を行う場合における当該処分については,行政手続法第三章 (第十二条及び第十四条を除く。)の規定は,適用しない。

≪行政手続法≫
第一章 総則
(目的等)
第一条  この法律は,処分,行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し,共通する事項を定めることによって,行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について,その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第四十六条において同じ。)の向上を図り,もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
2  処分,行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律に規定する事項について,他の法律に特別の定めがある場合は,その定めるところによる。 (定義)
第二条  この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。
一  法令 法律,法律に基づく命令(告示を含む。),条例及び地方公共団体の執行機関の規則(規程を含む。以下「規則」という。)をいう。
二  処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
三  申請 法令に基づき,行政庁の許可,認可,免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって,当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
四  不利益処分 行政庁が,法令に基づき,特定の者を名あて人として,直接に,これに義務を課し,又はその権利を制限する処分をいう。ただし,次のいずれかに該当するものを除く。
イ 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲,時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
ロ 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分
ハ 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
ニ 許認可等の効力を失わせる処分であって,当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの
五  行政機関 次に掲げる機関をいう。
イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関若しくは内閣の所轄の下に置かれる機関,宮内庁,内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項 若しくは第二項 に規定する機関,国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 に規定する機関,会計検査院若しくはこれらに置かれる機関又はこれらの機関の職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員
ロ 地方公共団体の機関(議会を除く。)
六  行政指導 行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導,勧告,助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。
七  届出 行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって,法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう。
八  命令等 内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいう。
イ 法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む。次条第二項において単に「命令」という。)又は規則
ロ 審査基準(申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。)
ハ 処分基準(不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。)
ニ 行政指導指針(同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいう。以下同じ。)
(適用除外)
第三条  次に掲げる処分及び行政指導については,次章から第四章までの規定は,適用しない。
一  国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分
二  裁判所若しくは裁判官の裁判により,又は裁判の執行としてされる処分
三  国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て,又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分
四  検査官会議で決すべきものとされている処分及び会計検査の際にされる行政指導
五  刑事事件に関する法令に基づいて検察官,検察事務官又は司法警察職員がする処分及び行政指導
六  国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官,国税局長,税務署長,収税官吏,税関長,税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び行政指導並びに金融商品取引の犯則事件に関する法令に基づいて証券取引等監視委員会,その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。),財務局長又は財務支局長がする処分及び行政指導
七  学校,講習所,訓練所又は研修所において,教育,講習,訓練又は研修の目的を達成するために,学生,生徒,児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者,講習生,訓練生又は研修生に対してされる処分及び行政指導
八  刑務所,少年刑務所,拘置所,留置施設,海上保安留置施設,少年院,少年鑑別所又は婦人補導院において,収容の目的を達成するためにされる処分及び行政指導
九  公務員(国家公務員法 (昭和二十二年法律第百二十号)第二条第一項 に規定する国家公務員及び地方公務員法 (昭和二十五年法律第二百六十一号)第三条第一項 に規定する地方公務員をいう。以下同じ。)又は公務員であった者に対してその職務又は身分に関してされる処分及び行政指導
十  外国人の出入国,難民の認定又は帰化に関する処分及び行政指導
十一  専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
十二  相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として法令の規定に基づいてされる裁定その他の処分(その双方を名あて人とするものに限る。)及び行政指導
十三  公衆衛生,環境保全,防疫,保安その他の公益にかかわる事象が発生し又は発生する可能性のある現場において警察官若しくは海上保安官又はこれらの公益を確保するために行使すべき権限を法律上直接に与えられたその他の職員によってされる処分及び行政指導
十四  報告又は物件の提出を命ずる処分その他その職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的としてされる処分及び行政指導
十五  審査請求,異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の処分
十六  前号に規定する処分の手続又は第三章に規定する聴聞若しくは弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において法令に基づいてされる処分及び行政指導
2  次に掲げる命令等を定める行為については,第六章の規定は,適用しない。
一  法律の施行期日について定める政令
二  恩赦に関する命令
三  命令又は規則を定める行為が処分に該当する場合における当該命令又は規則
四  法律の規定に基づき施設,区間,地域その他これらに類するものを指定する命令又は規則
五  公務員の給与,勤務時間その他の勤務条件について定める命令等
六  審査基準,処分基準又は行政指導指針であって,法令の規定により若しくは慣行として,又は命令等を定める機関の判断により公にされるもの以外のもの
3  第一項各号及び前項各号に掲げるもののほか,地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導,地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については,次章から第六章までの規定は,適用しない。
(国の機関等に対する処分等の適用除外)
第四条  国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については,この法律の規定は,適用しない。
2  次の各号のいずれかに該当する法人に対する処分であって,当該法人の監督に関する法律の特別の規定に基づいてされるもの(当該法人の解散を命じ,若しくは設立に関する認可を取り消す処分又は当該法人の役員若しくは当該法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については,次章及び第三章の規定は,適用しない。
一  法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人
二  特別の法律により設立され,かつ,その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち,その行う業務が国又は地方公共団体の行政運営と密接な関連を有するものとして政令で定める法人
3  行政庁が法律の規定に基づく試験,検査,検定,登録その他の行政上の事務について当該法律に基づきその全部又は一部を行わせる者を指定した場合において,その指定を受けた者(その者が法人である場合にあっては,その役員)又は職員その他の者が当該事務に従事することに関し公務に従事する職員とみなされるときは,その指定を受けた者に対し当該法律に基づいて当該事務に関し監督上される処分(当該指定を取り消す処分,その指定を受けた者が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる処分又はその指定を受けた者の当該事務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については,次章及び第三章の規定は,適用しない。
4  次に掲げる命令等を定める行為については,第六章の規定は,適用しない。
一  国又は地方公共団体の機関の設置,所掌事務の範囲その他の組織について定める命令等
二  皇室典範 (昭和二十二年法律第三号)第二十六条 の皇統譜について定める命令等
三  公務員の礼式,服制,研修,教育訓練,表彰及び報償並びに公務員の間における競争試験について定める命令等
四  国又は地方公共団体の予算,決算及び会計について定める命令等(入札の参加者の資格,入札保証金その他の国又は地方公共団体の契約の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定める命令等を除く。)並びに国又は地方公共団体の財産及び物品の管理について定める命令等(国又は地方公共団体が財産及び物品を貸し付け,交換し,売り払い,譲与し,信託し,若しくは出資の目的とし,又はこれらに私権を設定することについて定める命令等であって,これらの行為の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定めるものを除く。)
五  会計検査について定める命令等
六  国の機関相互間の関係について定める命令等並びに地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二編第十一章 に規定する国と普通地方公共団体との関係及び普通地方公共団体相互間の関係その他の国と地方公共団体との関係及び地方公共団体相互間の関係について定める命令等(第一項の規定によりこの法律の規定を適用しないこととされる処分に係る命令等を含む。)
七  第二項各号に規定する法人の役員及び職員,業務の範囲,財務及び会計その他の組織,運営及び管理について定める命令等(これらの法人に対する処分であって,これらの法人の解散を命じ,若しくは設立に関する認可を取り消す処分又はこれらの法人の役員若しくはこれらの法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分に係る命令等を除く。)
第三章 不利益処分
第一節 通則
(処分の基準)
第十二条  行政庁は,処分基準を定め,かつ,これを公にしておくよう努めなければならない。
2  行政庁は,処分基準を定めるに当たっては,不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
(不利益処分をしようとする場合の手続)
第十三条  行政庁は,不利益処分をしようとする場合には,次の各号の区分に従い,この章の定めるところにより,当該不利益処分の名あて人となるべき者について,当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
一  次のいずれかに該当するとき 聴聞
イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
ロ イに規定するもののほか,名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
ハ 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分,名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。
ニ イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。
二  前号イからニまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与
2  次の各号のいずれかに該当するときは,前項の規定は,適用しない。
一  公益上,緊急に不利益処分をする必要があるため,前項に規定する意見陳述のための手続を執ることができないとき。
二  法令上必要とされる資格がなかったこと又は失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている不利益処分であって,その資格の不存在又は喪失の事実が裁判所の判決書又は決定書,一定の職に就いたことを証する当該任命権者の書類その他の客観的な資料により直接証明されたものをしようとするとき。
三  施設若しくは設備の設置,維持若しくは管理又は物の製造,販売その他の取扱いについて遵守すべき事項が法令において技術的な基準をもって明確にされている場合において,専ら当該基準が充足されていないことを理由として当該基準に従うべきことを命ずる不利益処分であってその不充足の事実が計測,実験その他客観的な認定方法によって確認されたものをしようとするとき。
四  納付すべき金銭の額を確定し,一定の額の金銭の納付を命じ,又は金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分をしようとするとき。
五  当該不利益処分の性質上,それによって課される義務の内容が著しく軽微なものであるため名あて人となるべき者の意見をあらかじめ聴くことを要しないものとして政令で定める処分をしようとするとき。
(不利益処分の理由の提示)
第十四条  行政庁は,不利益処分をする場合には,その名あて人に対し,同時に,当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし,当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は,この限りでない。
2  行政庁は,前項ただし書の場合においては,当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き,処分後相当の期間内に,同項の理由を示さなければならない。
3  不利益処分を書面でするときは,前二項の理由は,書面により示さなければならない。
    第二節 聴聞
(聴聞の通知の方式)
第十五条  行政庁は,聴聞を行うに当たっては,聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて,不利益処分の名あて人となるべき者に対し,次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一  予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
二  不利益処分の原因となる事実
三  聴聞の期日及び場所
四  聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地
2  前項の書面においては,次に掲げる事項を教示しなければならない。
一  聴聞の期日に出頭して意見を述べ,及び証拠書類又は証拠物(以下「証拠書類等」という。)を提出し,又は聴聞の期日への出頭に代えて陳述書及び証拠書類等を提出することができること。
二  聴聞が終結する時までの間,当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができること。
3  行政庁は,不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合においては,第一項の規定による通知を,その者の氏名,同項第三号及び第四号に掲げる事項並びに当該行政庁が同項各号に掲げる事項を記載した書面をいつでもその者に交付する旨を当該行政庁の事務所の掲示場に掲示することによって行うことができる。この場合においては,掲示を始めた日から二週間を経過したときに,当該通知がその者に到達したものとみなす。
(代理人)
第十六条  前条第一項の通知を受けた者(同条第三項後段の規定により当該通知が到達したものとみなされる者を含む。以下「当事者」という。)は,代理人を選任することができる。
2  代理人は,各自,当事者のために,聴聞に関する一切の行為をすることができる。
3  代理人の資格は,書面で証明しなければならない。
4  代理人がその資格を失ったときは,当該代理人を選任した当事者は,書面でその旨を行政庁に届け出なければならない。
(参加人)
第十七条  第十九条の規定により聴聞を主宰する者(以下「主宰者」という。)は,必要があると認めるときは,当事者以外の者であって当該不利益処分の根拠となる法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者(同条第二項第六号において「関係人」という。)に対し,当該聴聞に関する手続に参加することを求め,又は当該聴聞に関する手続に参加することを許可することができる。
2  前項の規定により当該聴聞に関する手続に参加する者(以下「参加人」という。)は,代理人を選任することができる。
3  前条第二項から第四項までの規定は,前項の代理人について準用する。この場合において,同条第二項及び第四項中「当事者」とあるのは,「参加人」と読み替えるものとする。
(文書等の閲覧)
第十八条  当事者及び当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人(以下この条及び第二十四条第三項において「当事者等」という。)は,聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間,行政庁に対し,当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。この場合において,行政庁は,第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ,その閲覧を拒むことができない。
2  前項の規定は,当事者等が聴聞の期日における審理の進行に応じて必要となった資料の閲覧を更に求めることを妨げない。
3  行政庁は,前二項の閲覧について日時及び場所を指定することができる。
(聴聞の主宰)
第十九条  聴聞は,行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰する。
2  次の各号のいずれかに該当する者は,聴聞を主宰することができない。
一  当該聴聞の当事者又は参加人
二  前号に規定する者の配偶者,四親等内の親族又は同居の親族
三  第一号に規定する者の代理人又は次条第三項に規定する補佐人
四  前三号に規定する者であったことのある者
五  第一号に規定する者の後見人,後見監督人,保佐人,保佐監督人,補助人又は補助監督人
六  参加人以外の関係人
(聴聞の期日における審理の方式)
第二十条  主宰者は,最初の聴聞の期日の冒頭において,行政庁の職員に,予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項並びにその原因となる事実を聴聞の期日に出頭した者に対し説明させなければならない。
2  当事者又は参加人は,聴聞の期日に出頭して,意見を述べ,及び証拠書類等を提出し,並びに主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる。
3  前項の場合において,当事者又は参加人は,主宰者の許可を得て,補佐人とともに出頭することができる。
4  主宰者は,聴聞の期日において必要があると認めるときは,当事者若しくは参加人に対し質問を発し,意見の陳述若しくは証拠書類等の提出を促し,又は行政庁の職員に対し説明を求めることができる。
5  主宰者は,当事者又は参加人の一部が出頭しないときであっても,聴聞の期日における審理を行うことができる。
6  聴聞の期日における審理は,行政庁が公開することを相当と認めるときを除き,公開しない。
(陳述書等の提出)
第二十一条  当事者又は参加人は,聴聞の期日への出頭に代えて,主宰者に対し,聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。
2  主宰者は,聴聞の期日に出頭した者に対し,その求めに応じて,前項の陳述書及び証拠書類等を示すことができる。
(続行期日の指定)
第二十二条  主宰者は,聴聞の期日における審理の結果,なお聴聞を続行する必要があると認めるときは,さらに新たな期日を定めることができる。
2  前項の場合においては,当事者及び参加人に対し,あらかじめ,次回の聴聞の期日及び場所を書面により通知しなければならない。ただし,聴聞の期日に出頭した当事者及び参加人に対しては,当該聴聞の期日においてこれを告知すれば足りる。
3  第十五条第三項の規定は,前項本文の場合において,当事者又は参加人の所在が判明しないときにおける通知の方法について準用する。この場合において,同条第三項中「不利益処分の名あて人となるべき者」とあるのは「当事者又は参加人」と,「掲示を始めた日から二週間を経過したとき」とあるのは「掲示を始めた日から二週間を経過したとき(同一の当事者又は参加人に対する二回目以降の通知にあっては,掲示を始めた日の翌日)」と読み替えるものとする。
(当事者の不出頭等の場合における聴聞の終結)
第二十三条  主宰者は,当事者の全部若しくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず,かつ,第二十一条第一項に規定する陳述書若しくは証拠書類等を提出しない場合,又は参加人の全部若しくは一部が聴聞の期日に出頭しない場合には,これらの者に対し改めて意見を述べ,及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく,聴聞を終結することができる。
2  主宰者は,前項に規定する場合のほか,当事者の全部又は一部が聴聞の期日に出頭せず,かつ,第二十一条第一項に規定する陳述書又は証拠書類等を提出しない場合において,これらの者の聴聞の期日への出頭が相当期間引き続き見込めないときは,これらの者に対し,期限を定めて陳述書及び証拠書類等の提出を求め,当該期限が到来したときに聴聞を終結することとすることができる。
(聴聞調書及び報告書)
第二十四条  主宰者は,聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し,当該調書において,不利益処分の原因となる事実に対する当事者及び参加人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない。
2  前項の調書は,聴聞の期日における審理が行われた場合には各期日ごとに,当該審理が行われなかった場合には聴聞の終結後速やかに作成しなければならない。
3  主宰者は,聴聞の終結後速やかに,不利益処分の原因となる事実に対する当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し,第一項の調書とともに行政庁に提出しなければならない。
4  当事者又は参加人は,第一項の調書及び前項の報告書の閲覧を求めることができる。
(不服申立ての制限)
第二十七条  行政庁又は主宰者がこの節の規定に基づいてした処分については,行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。
2  聴聞を経てされた不利益処分については,当事者及び参加人は,行政不服審査法 による異議申立てをすることができない。ただし,第十五条第三項後段の規定により当該通知が到達したものとみなされる結果当事者の地位を取得した者であって同項に規定する同条第一項第三号(第二十二条第三項において準用する場合を含む。)に掲げる聴聞の期日のいずれにも出頭しなかった者については,この限りでない。
    第三節 弁明の機会の付与
(弁明の機会の付与の方式)
第二十九条  弁明は,行政庁が口頭ですることを認めたときを除き,弁明を記載した書面(以下「弁明書」という。)を提出してするものとする。
2  弁明をするときは,証拠書類等を提出することができる。
(弁明の機会の付与の通知の方式)
第三十条  行政庁は,弁明書の提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には,その日時)までに相当な期間をおいて,不利益処分の名あて人となるべき者に対し,次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一  予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
二  不利益処分の原因となる事実
三  弁明書の提出先及び提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には,その旨並びに出頭すべき日時及び場所)
(聴聞に関する手続の準用)
第三十一条  第十五条第三項及び第十六条の規定は,弁明の機会の付与について準用する。この場合において,第十五条第三項中「第一項」とあるのは「第三十条」と,「同項第三号及び第四号」とあるのは「同条第三号」と,第十六条第一項中「前条第一項」とあるのは「第三十条」と,「同条第三項後段」とあるのは「第三十一条において準用する第十五条第三項後段」と読み替えるものとする。

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