新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1262、2012/4/26 11:58 https://www.shinginza.com/chikan.htm

【刑事・犯行の一部否認と準抗告の必要性・大阪地方裁判所平成15年2月28日第11刑事部判決】

質問:先日、夫が痴漢の疑いで、逮捕されました。夫は大筋で容疑を認めていたのですが、本日、夫に勾留決定が出たという連絡がありました。これ以上身柄拘束が続くと会社を解雇されてしまいます。勾留決定に対して準抗告という手続きをすることにより身柄を解放してもらえる可能性があることを知りました。どのような事情があれば準抗告を認めてもらえるものなのでしょうか。

回答:
1.まずは、ご主人の被疑罪名を確認して下さい。ご主人の身柄拘束期間や準抗告が認められるかどうかの見通しを立てるのに必要です。
2.ご主人の被疑罪名が迷惑防止条例違反である場合、準抗告の申立てによる身柄解放を検討する必要があります。ご主人の場合、(1)罪証隠滅のおそれがないこと、(2)逃亡のおそれがないこと、(3)勾留の必要性がないことをどれだけ説得的に主張、疎明できるかどうかがポイントとなります。
3.本件が、条例違反の場合、通常前科等がなければ罪を認めている限り強制捜査手続き(被疑者の意思に反する強制処分)すなわち、逮捕して、送検し、検察官が勾留請求等手続きを行いません。被疑者の無罪推定、人身の自由の保障(憲法18条、31条以下)から任意捜査が捜査の基本原則ですし(犯罪捜査規範99条)、罰金が予想されている犯罪では、強制捜査の要件が厳格で、これに該当しないことが多いからです。
 罪を大筋で認めているにもかかわらず勾留決定がなされたというのは、強制捜査をする理由が捜査機関にあるものと思われます。量刑に影響する犯罪行為態様の否認、例えば、接触行為の態様の違い、接触部分のくい違い、犯行時間の長短の争い、故意の内容についての一部否認(酒によっていて覚えていない、眠っていて記憶が一部ない、途中まで偶然の接触である。)があるものと推測することができます。勾留の制度趣旨が裁判の公正な刑事裁判手続きの保障,適正な刑罰執行の確保にあるので、要件である罪証隠滅(刑訴207条1項、60条1項2号。)の範囲も構成要件事実に限らず量刑の事情に関する事実も含むものであると実務上ある程度広く解釈されています。
 このような対策としては、直ちに弁護人と接見し、この主張が捜査機関、刑事裁判手続上裁判官に信用してもらえるか(くい違い点につき検察官、裁判所が認定するか)、量刑の影響(公判請求となるか、罰金の額の内容はどの程度になるか)を慎重に検討し、その上で、そのまま主張を通すか、一部追加、訂正しとりあえず準抗告により勾留を解き、勤務に復帰した後被害者側と交渉して不起訴処分を求めるか慎重考えるべきです。この場合、会社への連絡(懲戒委員会の問題となる可能性があります。)、報道の可能性(強制手続きの場合ニュース価値があると報道の可能性が高まります。)も考慮に入れる必要があるでしょう。時間的に予断を許しません。
4.一般的な痴漢事犯において準抗告が認められる方向に働き得る事情の一例を解説で説明しますので、ご参照下さい。
5.職場の解雇等重大な事態を回避するためには早急な対応が必要ですので、速やかに弁護士に相談されることをお勧めいたします。不安とは思いますが、とりあえず、弁護人と相談し最終処分が決まるまで、会社に対する連絡、説明は控えましょう。身元引受人を勤務先上司にすることも避ける必要があります。
6.関連事務所事例集論文1142番1113番1026番1077番944番906番819番817番738番691番598番595番557番457番399番396番369番333番243番183番参照。

解説:
1.(ご主人の現在置かれている状況)
 あなたのご主人に勾留決定が出たとのことですが、勾留とは逮捕に引き続き行われる比較的長期間の強制的な身柄拘束処分のことをいいます。刑事訴訟法上、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとして逮捕された者(被疑者)については、身柄拘束から48時間以内の送検手続(警察が事件を検察官に送致する手続き)を経た上、送検から24時間以内(逮捕と合わせて72時間以内)に検察官において裁判官に被疑者の勾留を請求するか被疑者を釈放するかを決定することとされており(刑事訴訟法203条1項、205条1項・2項・4項、216条)、勾留請求が認められた場合、原則10日間(刑事訴訟法208条1項)、検察官がさらに取調べや証拠収集をしなければ被疑者の最終的な処分を決定することが困難と判断した場合、さらに10日間(逮捕と合わせて最長23日間)身柄拘束が続くことになります(刑事訴訟法208条2項、216条)。あなたのご主人に勾留決定が出たということは、検察官からの勾留請求を受けた裁判官が被疑者であるご主人の勾留を認める裁判をしたことを意味します。したがって、ご主人はこのまま何もしなければ最大で20日間(検察官が公訴提起した場合はさらに長期間)の身柄拘束が続く可能性があります(刑事訴訟法208条2項、216条)。身柄拘束手続の流れについては、当事務所ホームページ事例集906番1142番を併せてご参照頂ければと思います。

 ご主人の身柄拘束期間や準抗告が認められるかどうかの見通しについては、まずはご主人の罪名を確認する必要があります。あなたのご主人は痴漢の容疑がかけられているとのことですが、一言に「痴漢」といっても、被害者の衣類の外側から軽く触れる程度の軽微な態様のものから下着の中に手を入れるような重い態様のものまで様々です。前者の場合、都道府県のいわゆる迷惑防止条例違反の容疑ということになり、具体的な事情によっては準抗告等による早期の身柄解放を実現できる可能性もあるといえますが、後者の場合強制わいせつ(刑法176条)という重い犯罪に該当することになり、通常、被害者と示談ができて告訴の取下げ等を得られない限り、被疑者段階での身柄解放はまず認められないでしょう。
 以下では、ご主人の被疑罪名が迷惑防止条例違反であるという前提で準抗告の手続きについてご説明いたします(ご主人の被疑事実が強制わいせつである場合の対処については当事務所ホームページ事例集369番
をご参照下さい。)。

2.(準抗告とは)
 ご指摘の準抗告というのは、命令と呼ばれる裁判形式の裁判(裁判には判決、決定、命令という形式がありますが、被疑者段階での勾留決定のように裁判官が行う裁判は常に命令にあたります。)に対する不服申立の手続きをいい、本件では裁判官が行ったご主人の勾留を認める裁判に対する不服申立を意味します(刑事訴訟法429条1項2号)。準抗告が認められた場合、勾留の裁判が取り消され、検察官の勾留請求が却下されることになるので、ご主人は身柄拘束を解かれることになります(刑事訴訟法432条、426条2項)。あなたのご主人は未だ弁護人が付いておらず、各職に対する十分な意見の上申や関係資料の提出等ができなかった結果、ご主人に有利な事情を何ら考慮してもらえず勾留となってしまっている可能性があると思われるので、準抗告にあたっては、ご主人に有利な事情の主張や関係資料の提出等を積極的に行っていく必要があるといえます。このような活動を行うことができるのは弁護人だけです。

 準抗告が勾留の要件を満たすとして勾留を認めた裁判に対する不服申立であることから、準抗告においては勾留の要件を満たしていないことを主張すべきことになります。勾留の要件としては、刑事訴訟法上、@被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること(刑事訴訟法207条1項、60条1項柱書)、A被疑者に住所不定、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由、逃亡すると疑うに足りる相当な理由のいずれかの事情があること(刑事訴訟法207条1項、60条1項各号)、諸般の事情に照らして勾留の必要性があること(刑事訴訟法207条1項、87条1項)の3つが定められています。あなたのご主人の場合、犯行を認めているということであれば通常罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由の有無は問題とならず、定まった住居もあるようですので、準抗告においては、(1)罪証隠滅のおそれがないこと、(2)逃亡のおそれがないこと、(3)勾留の必要性がないことをどれだけ説得的に主張、疎明できるかどうかがポイントとなります。
 では、如何なる事情があれば勾留の要件が否定されるのでしょうか。

3.(準抗告が認められるような事情)
(1)罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がないこと(刑事訴訟法60条1項2号)

 ここでいう罪証とは、犯罪の成否および重要な情状に関する証拠のことを指します。そして、罪証隠滅のおそれが肯定されるためには、その程度が単なる抽象的可能性ではなく具体的資料に基礎づけられた相当程度高度な可能性に達している必要があると考えられています。以下では一般的な痴漢事犯においてかかる可能性を減殺する方向に働き得る事情の例を示しますが、実際はこれらの事情を含めたあらゆる要素を総合して判断されることになります。

○被害者や目撃者等の連絡先を知らないこと
 痴漢事犯における罪証隠滅の態様としては、被疑者に不利な供述を封じたり供述を変遷させる目的で、被害者や犯行の目撃者等関係者に対して威迫等により働きかけをすることが考えられます。しかし、被害者等関係者の連絡先が分からないのであれば、かかる働きかけは困難であり、威迫等による罪証隠滅の可能性はないといえます。
 この点、裁判所としては、待ち伏せ等の手段により口封じが可能であるなどとして、安易に罪証隠滅のおそれを肯定する傾向にあるように思われますが、その場合でも被害者との接触可能性が低いことは後述する勾留の必要性との関係で有利に斟酌され得る事情となります。したがって、犯行現場となった鉄道路線がご主人の日常的に使用しているものではなかったり、犯行が行われたのが一般の通勤通学時間帯以外であるといった事情がある場合は、その点も積極的に主張していく必要があるでしょう。

○目撃者証言等の客観的証拠が確保されていること
 例えば、既に被害者の詳細な供述調書が作成されているような場合、既に捜査機関によって保全されている供述調書等の隠滅を図ることはおよそ不可能といえます。また、痴漢の事案においては、被害者の供述調書のみで有罪の立証として十分であることが多い上、かかる調書の作成後に被害者に働きかけをする等により供述を変遷させることに成功したとしても、変遷後の被害者供述に信用性がないことは明らかであり、働きかけ自体が無意味ともいえます。このように、被疑者の有罪を立証するに足りる証拠が捜査機関によって確保されている以上は、罪証隠滅の動機が生じえない故、罪証隠滅のおそれはないというべきでしょう。

○犯行態様が軽微であること
 犯行態様が軽微であること等により比較的軽い処分が見込まれる場合には、被疑者があえて悪情状を作り出してまで罪証隠滅を行う動機に乏しいといえ、罪証隠滅のおそれはないといえます。この点は、弁護人を依頼して直ちに接見に行ってもらい、ご主人から直接詳細な事情をお聞きする必要があるでしょう。

○供述状況
 被疑者が、逮捕された当初から犯行を全面的に認め、詳細な自白調書が作成されているような場合、かかる供述態度にある者が事件関係者に対する働きかけ等をすることは通常考えられないため、罪証隠滅のおそれはないといえます。逆に犯行を否認する供述(例えば、犯人性自体を否定する供述や、「手が触れていたのは事実だが、意図して触れたものではない」といった故意を否認する供述など)をしているような場合は罪証隠滅のおそれが肯定される方向に判断されることになるでしょう。ただし、犯行を大筋で認めていたとしても、犯行態様についての説明が被疑者と被害者等との間で食い違っているような場合や、供述内容等から余罪や常習性が合理的に疑われるような場合には、重要な情状事実についての罪証を隠滅するおそれがあると判断されてしまう例もあります。
 あなたのご主人の場合、大筋で容疑を認めているにもかかわらず勾留決定が出てしまっているとのことですが、軽微な痴漢の事案で勾留決定に至っているということはそれ相応の理由があるはずですので、弁護人に犯行態様の詳細や取調べ状況等について確認してもらうことが不可欠といえます。もし、事実に反して犯人性や故意等を否認しているような場合であれば、弁護人による指導の上、犯行を全面的に認める旨の上申書の作成等により対応する必要があるでしょう。

○示談の意思があること
 準抗告において、示談の意思があることを示すことは極めて重要です。示談を希望し、その具体的準備があることを明らかにすることで、罪証隠滅の主観的可能性がないことを示すことができますし、痴漢事犯の場合、示談を成立させることができれば不起訴処分となる可能性が高まるため、示談成立の見通しが高ければ重い処罰を恐れて逃亡する動機がないといえ、後述の逃亡のおそれとの関係でも有利に斟酌してもらえることになります。具体的には、被害者宛の謝罪文の作成や弁護人に示談金預かり証や示談経過報告書等を作成してもらうことで対応していく必要があるでしょう。
 この点は、勾留の必要性との関係でも重視される項目であるため、弁護人を依頼の上、最終的な不起訴処分の獲得を目指した示談交渉等の活動を行ってもらうことが、結局は早期の身柄解放に結びつくといえるでしょう。

○前科前歴がないこと
 軽微な痴漢事犯の場合、犯行を認めていて前科前歴もないケースでは、通常公判請求されることはなく、仮に示談が成立していなくても、簡易裁判所が書面審理だけで罰金を科す略式手続によって処分されることが殆どです(逆に同種前科が多数ある場合、示談が成立していたとしても公判請求されることもあります。)。したがって、前科前歴がない場合、被疑者があえて悪情状を作り出してまで罪証隠滅を行う動機に乏しいといえ、罪証隠滅のおそれはないといえます(同種前科が多数ある場合、犯行に至る経緯や常習性等の重要な情状事実に関する罪証隠滅のおそれも懸念されるところでしょう。)。
 もっとも、たとえ同種前科があったとしても、直ちに準抗告が認められなくなるわけではありません。他の事情によっては後述の勾留の必要性が否定されることで準抗告が認められる可能性も十分にあります。当事務所の例をみても、痴漢の同種の罰金前科が2件あったケースにおいて、罪証隠滅のおそれが肯定されたものの、被疑者が定職に就いていることや同居の家族による監督の誓約、被害者に対する謝罪金の準備等の事情から、後述の逃亡のおそれ及び勾留の必要性が否定され、準抗告認容の決定を勝ち取った例もあります。
 前科前歴については、たとえ家族であっても把握していないことが多いので、この点も弁護人に接見してもらって確認の上、対応を検討する必要があるでしょう。

 道交法違反の犯罪ですが、酒気帯び、無免許運転で準抗告が認められた判例があります。大阪地方裁判所平成15年2月28日第11刑事部判決 。(道路交通法違反被疑事件)後記参照。条例違反より罪状が重い場合(3年以下の懲役、50万円以下の罰金、1年以下の懲役、30万円以下の罰金)でも、準抗告認められています。

(2)逃亡すると疑うに足りる相当な理由がないこと(刑事訴訟法60条1項3号)

○扶養家族がいること
 被疑者に扶養している配偶者や子がいる場合、家族を捨ててまで逃亡しようとすることなど通常考えられないため、逃亡の恐れはないといえます。この点は、家族による上申書の作成等により明らかにする必要があります。

○身元引受人がいること
 身元引受人とは、釈放の際被疑者の身元を責任を持って引き受け、再び罪を犯したり逃亡等しないよう指導、監督することを誓約する者のことです。被疑者と同居する配偶者等、適切な者が被疑者の指導、監督を約することによって逃亡のおそれは低減すると考えられるため、弁護人の指導の下、身元引受書を作成すること等により逃亡のおそれがないことを積極的に明らかにしていくべきであるといえます。

○定職に就いていること
 被疑者が定職に就いている場合、職場を捨ててまで逃亡しようとすることなど通常考えられないため、逃亡の恐れはないといえます(逆に、アルバイト暮らしや無職である場合、逃亡によって失うものがないため、逃亡のおそれがあると判断され易いと思われます。)。この点も、家族による上申書の作成等により明らかにする必要があるでしょう。

○犯行態様が軽微であること
 犯行態様が軽微であること等により比較的軽い処分が見込まれる場合には、被疑者があえて悪情状を作り出してまで逃亡を図る動機に乏しいといえ、逃亡のおそれはないといえます。弁護人に直ちに接見に行ってもらい、ご主人から直接詳細な事情をお聞きする必要があることは(1)罪証隠滅のおそれについての該当箇所で述べたとおりです。

○示談の意思があること
 上記(1)罪証隠滅のおそれについての該当箇所で述べたとおり、示談の準備があることは逃亡のおそれとの関係でも極めて重要な意味を持つものです。直ちに弁護人と協議の上、示談の具体的な準備を進めていく必要があります。

○前科前歴がないこと
 前科前歴がない場合、比較的軽い処分が見込まれるため、処罰をおそれ、あえて悪情状を作り出してまで逃亡する動機に乏しいといえ、逃亡のおそれはないといえます。

(3)勾留の必要性がないこと(刑事訴訟法87条1項)

 勾留の必要性とは、刑事訴訟法60条1項各号の理由がある場合において、それらを含めた具体的事情の下で被疑者を勾留することの相当性を指します。勾留の必要性の有無は、痴漢事犯等略式手続による罰金刑が予想されるような軽微な事案において問題とされる事が多く、勾留することによって得られる捜査機関側の利益と被疑者の不利益の比較考量により検討されることになります。具体的には、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれ等が存在することを前提に、それらの事由の強さの程度や以下に例示するような被疑者側の事情等を総合して判断されることになります。

○身柄拘束が続くことで失職するおそれがあること
 逮捕に引き続き10日間の勾留が続いた場合、解雇等により職場を退職せざるを得ない状況に陥ることが多いといえます。解雇になると被疑者としては生活の基盤を失うという極めて重大な事態に陥る一方、被疑者が犯行を全面的に認めているような場合であれば、捜査機関としても捜査上の不都合は事実上ないはずですので、準抗告においては、この点、特に力点を置いて主張しなければなりません。特に、被疑者に養うべき家族がいる場合、犯行とは本来無関係な家族の生活を危険にさらしてまで被疑者の身柄拘束を続けることは明らかに相当性を欠いているといえます。

○病気を患っていること
 被疑者が病気等により心身の状態が悪い場合、被疑者の健康を危険にさらしてまで敢えて身柄拘束を続けることに合理性はありません。被疑者に持病等がある場合、その病名や病状が分かる診断書等の資料の提出や弁護人による報告書の作成等により、これを明らかにする必要があります。

4.(本件における対応)
 以上に示したのは、あくまで痴漢事犯において勾留要件を否定する方向に働き得る事情の一例に過ぎません。実際に準抗告の申立てを行うにあたっては、弁護人においてあなたとの打ち合わせやご主人と接見して詳細な事情を把握した上、勾留の要件との関係で説得的な主張を記載した申立書面を作成してもらうことが不可欠といえます。また、場合によっては準抗告に対する決定を行う裁判所の担当裁判官との面談に同伴して頂くことが有効な場合もあるでしょう。前述のとおり、ご主人はこのまま何もしなければ10日間は身柄拘束が続くことになりますので、職場の解雇等重大な事態を回避するためには早急な対応が必要です。速やかに弁護士に相談されることをお勧めいたします。

≪参照条文≫

刑法
(強制わいせつ)
第百七十六条  十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
(参考までに東京都の迷惑防止条例の条文を掲げます。東京都以外の各道府県でもほぼ同様の条例が制定されています。)
第5条(粗暴行為の禁止)
1項 何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。
第8条(罰則)
1項 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
1 第2条の規定に違反した者
2 第5条第1項の規定に違反した者
3項 常習として第一項の違反行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

刑事訴訟法
第六十条  裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一  被告人が定まつた住居を有しないとき。
二  被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
第八十七条  勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
第二百三条  司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
第二百五条  検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
○2  前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
○4  第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
第二百七条  前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
第二百八条  前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
○2  裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。
第二百十二条  現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
○2  左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一  犯人として追呼されているとき。
二  贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三  身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四  誰何されて逃走しようとするとき。
第二百十三条  現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
第二百十四条  検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。
第二百十五条  司法巡査は、現行犯人を受け取つたときは、速やかにこれを司法警察員に引致しなければならない。
○2  司法巡査は、犯人を受け取つた場合には、逮捕者の氏名、住居及び逮捕の事由を聴き取らなければならない。必要があるときは、逮捕者に対しともに官公署に行くことを求めることができる。
第二百十六条  現行犯人が逮捕された場合には、第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。

第四百二十六条  抗告の手続がその規定に違反したとき、又は抗告が理由のないときは、決定で抗告を棄却しなければならない。
○2  抗告が理由のあるときは、決定で原決定を取り消し、必要がある場合には、更に裁判をしなければならない。
第四百二十九条  裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
二  勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
第四百三十二条  第四百二十四条、第四百二十六条及び第四百二十七条の規定は、第四百二十九条及び第四百三十条の請求があつた場合にこれを準用する。

≪判例参照≫

大阪地方裁判所平成15年2月28日第11刑事部判決
判旨

一 本件は、被害者が、運転免許を受けないで、かつ、酒気を帯びた状態で、普通乗用自動車を運転したという道路交通法違反(無免許運転、酒気帯び運転)の事案である。一件記録によれば、被疑者が上記事実を犯したと疑うに足りる相当な理由があるものと認められる。しかし、本件は、いわゆる交通検問により発覚したものであり、罪体自体については、罪証を隠滅するといったことは想定し難く、さらに、情状に関連する事実等についても、被疑者は、本件によって現行犯逮捕された時点から、本件犯行を認めるなどしているものであって、その供述内容、供述態度等に照らし、罪証を隠滅すると疑うに足りる事情があるとまでは認められない。また、被疑者は、住居を有する上、道路交通法違反(酒気帯び運転)による罰金前科一犯以外に前科を有していないこと、本件事案の性質等に照らし、被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるものとも認め難い。
二 よって、刑事訴訟法六〇条一項各号所定の要件は認められず、本件準抗告申立ては理由があるから、刑事訴訟法四三二条、四二六条二項により、主文のとおり決定する。

法律相談事例集データベースのページに戻る

法律相談ページに戻る(電話03−3248−5791で簡単な無料法律相談を受付しております)

トップページに戻る