新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1140、2011/8/15 16:09 http://www.shinginza.com/qa-jiko.htm

【民事・車両保険・盗難事故・盗難の外形的事実・保険金請求者の立証責任の内容と程度】

質問:先日私の自動車が,盗難にあいました。警察に被害届を出し,車両盗難保険に入っていたので保険会社にも連絡したのですが,保険会社から返答がきません。盗難にあった駐車場には防犯カメラは設置されていないようで,犯人の盗難の瞬間をとらえた証拠はないようです。はたして車両保険はおりるのでしょうか。

回答:
1.保険がおりるには,盗難の事実が認められることが必要です。盗難の事実が認められるためには「自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと」,「第三者がその場所から自動車を持ち去ったこと」の両事実が,明らかになる必要があります。
保険会社側でこれらの事実について確認するための調査に時間を要し,返答までに時間がかかっていると考えられます。
2.盗難の事実それ自体を確認することは,防犯カメラに写っていたり目撃者がいたりした場合は容易でしょうが,多くの場合直接の事実でなく,盗難を推測させる外形的事実から確認される場合が多いでしょう。外形的事実を推認させる事情としては,@被害届提出の時期・経緯,A盗難現場の状況,B車両の性質・設備・使用管理状況,C保険金請求者の事後の対応,D盗難車両の発見場所や発見時の車両の状態,D車両購入の時期・経緯,E車両保険契約締結の時期・経緯,E保険金請求者の属性,保険金請求者の動機などがあげられます。
3.仮に保険会社が,請求に疑いがあるとして保険金の支払いを拒否した場合,訴訟をする必要があります。訴訟となった場合には請求する側に主張立証責任がありますから,以上の外形的事実を裏付ける証拠が必要です。防犯カメラの映像や目撃者の供述等の直接証拠があればそれほど問題なく立証が可能ですが,盗難行為の性質上,直接証拠はないのが通常でしょう。また,訴訟の場合,盗難の事実自体を要件事実と言い,要件事実を裏付ける間接的な事実を間接事実と言います。間接事実についても客観的証拠がないことも多々あります。もっとも,間接事実を裏付ける証拠が供述のみである場合でも,盗難の外形的事実の認定はされうるところです。
4.盗難の事実の有無のほかにも,保険金請求者の故意による盗難招致の有無,免責条項該当性など,他の要素が問題となるケースもあります。今後の見通しや.保険会社との交渉,保険金請求等に際してご心配な点があるようでしたら,一度弁護士に相談されることが望ましいでしょう。
5.法律相談事例集キーワード検索:704番参照。

解説:
1.車両保険の主張立証責任

(1)(問題点の指摘)
  車両保険をかけた会社から連絡が来ないとのことですが,これは盗難の事実を立証する証拠を調査しているからでしょう。本来であれば,警察に盗難の被害届けを出しているのですから直ちに保険金が下りてもいいはずです。しかし,盗難の直接証拠がないので保険会社は立証が不十分であると考えていると思われます。それでは,保険契約者はどこまで盗難の事実関係を立証すればいいのでしょうか。これは所謂立証責任の問題です。そもそも車両盗難保険の場合どうして立証責任が問題になるのでしょうか。それは,条文上保険金請求者と保険者(保険会社)の立証事実の責任の範囲が不明確であり,これを解釈により確定しなければならないからです。

  (商法)第629条は,「損害保険契約ハ当事者ノ一方カ偶然ナル一定ノ事故ニ因リテ生スルコトアルヘキ損害ヲ填補スルコトヲ約シ相手方カ之ニ其報酬ヲ与フルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス」と規定していますから,これを素直に読むと保険金請求者は,「偶然なる」という事実と,「一定の事故」を基本的に立証することになります。偶然なるとは,保険金請求者等(被保険者も含む)が盗難という事実に関与していないということです(極端に言えば保険金詐欺等ではないということ)。一定の事故とは,盗難の事実すなわち「自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと」,「第三者がその場所から自動車を持ち去ったこと」の両事実を意味します。後述のように立証責任の基本原則は,立証する事実関係による法的効果によって法的利益を受けるものが責任を負うことになるので,保険金請求により利益を受ける保険契約者がこの2つの事実を立証する義務をおうことになります。

  しかし他方,商法第641条は,「保険ノ目的ノ性質若クハ瑕疵其自然ノ消耗又ハ保険契約者若クハ被保険者ノ悪意若クハ重大ナル過失ニ因リテ生シタル損害ハ保険者之ヲ填補スル責ニ任セス」と規定しており,盗難が保険契約者(請求者)側の関与により生じた場合は,保険金請求はできないと規定しています。この条文を素直に読むと,保険契約者側が盗難に関与している場合は支払いを免れるので,支払いを免れる利益を有する保険者(保険会社)が盗難に保険契約者側が関与しているという事実,いわゆる「偶然性がない」という事実を立証しなければならないということになり,その結果,保険契約者は盗難の事実のみを立証すればいいことになります。従って,どちらが「偶然性」について立証責任を負うのか不明ですから解釈により決定することになります。勿論解釈は,立証責任,盗難保険の制度趣旨から法の理想(公平,公平の理念 民法1条 民事訴訟法2条)に基づき行われます。法律の解釈の必要性は,基準となる条文自体が存在しない場合だけでなく,本件のように一見矛盾した条文が存在するときにも生じることになります。

(2)(挙証責任の原則の趣旨・法律要件分類説)
  法的効果が発生するある事実を証明する必要がある場合には,立証できない時に不利益をこうむる側に立証責任あるいは挙証責任が発生します。学問上,「立証責任」「挙証責任」とは,訴訟において一定の事実の存否が証拠により確定されない場合に(真偽不明,ノンリケット,non riquetといいます)当事者の一方に科せられる不利益をいいます。条文上には明確に規定されておりません。民事訴訟法とは,私的紛争を適正,公平,迅速,低廉に公的,強制的に解決するものですから(民事訴訟法2条),裁判所の判断である判決を言い渡すためには,その前提となる事実を確定しなければなりません。そこで,当事者間に争いがある事実は当事者の提出した一切の証拠によって裁判官が認定するのが裁判です。しかし,証拠によってもその事実を裁判官が確定できない事態が生じてしまう場合があります。しかし,事実を確定できなければ法的判断(判決)が出来ませんので,そのまま放置する事になると私人間の勝手な自力救済を禁じ国家が紛争解決機能を独占的に有し公的に,そして強制的に解決し社会秩序を維持し,個々人の権利を保護しようとした裁判制度の趣旨が失われますし,迅速な解決,訴訟経済上の要請にも反する事になってしまいます。そこで立証責任あるいは挙証責任という概念,制度が必要になるのです。勿論刑事訴訟法にても同様です。

(3)このように,立証責任,挙証責任は重要な概念ですが,誰が挙証責任を負うかについて民事訴訟法は条文で明確に規定していません。そこで,誰がその責任を負うかを解釈により決定しなければなりません。これを挙証責任分配の原則といいます。これについてはいろいろな考え方がありますが,法的な権利の発生,変更,消滅を裁判上主張する当事者がそれぞれの法的効果を規定する条文の内容となっている要件事実について挙証責任を負うものと解釈すべきです。なぜなら,民事訴訟法の対象が当事者間の私的紛争であることから公的機関である裁判所は当事者にとり公平,公正でなければならず,法的な権利の発生,変更,消滅により法的利益を受けようとする者が利益を受ける前提となる事実を立証する最終的責任を負うとすることが公平の観念に最も合致するからです。

  例えば,売買により代金を請求する当事者は代金請求により利益を受けるので民法555条の売買契約合意の要件事実(当事者,目的物,代金,支払期限)の立証責任を負うことになりますし,売買契約で契約が錯誤により無効であるから代金を支払わないというという場合は支払わない事により利益を受ける買主が民法95条の規定する要件事実(錯誤の事実)を立証する責任があります。更に売買契約の代金請求権が時効で消滅していると主張する時は時効により利益を受ける買主が民法167条の時効の要件事実を明らかにしなければなりません。この考え方は,学問上通説であり法律要件分類説といわれており,分配の基準は,法律の要件によって振り分けられるとされています。前述の例に述べたように@権利根拠規定(売買),A権利消滅規定(時効)は,その法律効果を主張する者が,B権利障害規定(錯誤)についてはその法律効果を争う者が証明責任を負うとされています。

(4)(保険金請求者の立証事実の問題点)
  次に,法律要件分類説によると本件保険契約ではどのようになるかもう一度考えてみます。貴方は,保険金請求をしていますから前述のように保険契約を規定している商法629条の規定している要件事実を立証しなければならないことになります。保険契約とは,火災,盗難、死亡などについて偶然的な事故が発生した場合に当事者(保険者,保険会社)が,その損害の填補,又は損害金を支払い,これに対し他方(保険契約者)が保険料という報酬を支払う契約です。この条文,定義を読むと保険金を請求する保険契約者は,「偶発的な」「事故」という2つの要件事実を立証する事になります。他方,641条には保険者(保険会社)の免責事由として「保険契約者の悪意,重過失による損害について」保険者は責任がないと規定しているので,保険契約者の悪意,重過失はとどのつまり偶発的事故(予想できない事故)ではないということになりますから,偶発性を否定して保険金支払いの責任を逃れ利益を受ける保険者(保険会社)に保険契約者(又被保険者)の悪意,重過失(偶発性がない事)を立証する責任があるとも解釈が可能です。すなわち前述の権利変更規定(権利障害規定)と同様に考えるわけです。そこで改めて偶発性(悪意,重過失がないこと)の立証責任が誰なのかが問題になります。本件,車両 盗難保険 契約では,事故すなわち盗難の事実は保険金請求者である保険契約者が立証する必要がありますが,その他「偶発性」すなわち保険契約者の悪意,重過失で盗難が生じものでない事実まで立証する必要があるか,それとも,保険者(保険会社が)保険契約者の悪意による盗難すなわち偶発性がないという事実を立証しなければならないかという問題になります。

(5)(保険金請求者の立証事実・範囲・程度)
  この点,629条の「偶発性」の事実,「保険契約者の悪意によって生じた」という事実は保険金請求者(保険契約者)に立証責任はないと解釈すべきでしょう。保険契約者は「事故」,すなわち盗難の外形的事実のみを第三者からみて合理的に納得できる程度に立証すれはいいわけです。なぜなら,@条文上は確かにどちらにでも解釈できる事になりますから,挙証責任分配の原則の制度趣旨から考えなければいけません。すなわち,この制度の基本は当事者の公平であり偶発性の事実は一見立証が簡単なようにみえますが,保険契約者の悪意等,盗難行為に関与していない事の証明は「ないことの証明」につながり過度に立証責任を契約者に科すものであり不公平だからです。
  他方,保険者は,偶発性がないこととは実際,保険契約者の悪意,盗難行為に関与している事実なので「ないことの証明」にはならず結果的に立証か容易だからです。Aまた,保険契約は現在国家が指導,監督するように通常,保険者(保険会社)の方が経済力,情報力,組織力が強大であり保険契約者より圧倒的に強い立場にあり公平上も実質的責任を保険者側に負わせるのが妥当だからです。B以前は,実務においても,偶然性について保険金請求者に主張・立証する責任があるとしていました。ただ,前述のように「ない」ことを立証するのは非常に困難なもので,犯人がはっきりしている場合などを除いては,保険金請求者にとって非常に厳しいものとなってしまい妥当ではないからです。
  しかし,盗難の事実の立証をどの程度でよいのかというのはまた別問題です。安易に盗難の事実を認めてしまうと,過度な保険金請求により公的色彩の強い保険会社の経営も危うくなってしまいます。そこで一般論ですが,挙証責任の原則に従い,当事者の公平を考えるならば,,「自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと」,「第三者がその場所から自動車を持ち去ったこと」の両事実を単に「矛盾のない状況」を立証するだけではなく,盗難の外形的な事実を自然かつ合理的な疑いを超える程度にまで立証する必要があると考えるべきです。その間接事実等の具体的内容,方法は後述いたします。

(6)(判例の検討)
  以上のように,車両保険金の支払いを請求するについては,保険事故の存在を,保険金請求者側で主張・立証する必要があります。車両盗難の場合,この保険事故は,「被保険自動車の盗難」を指します。
  判例によれば,盗難とは一般的に,占有者の意思に反する第三者による財物の占有の移転であり,車両保険金の支払いを請求する者は,「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的事実を主張・立証する必要があります(最高裁平成19年4月17日第三小法廷判決民集61巻3号1026頁)。そして,この盗難の外形的事実は,「被保険者の占有に係る被保険自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと」及び「被保険者以外の者がその場所から被保険自動車を持ち去ったこと」という事実から構成され,保険金請求者はこれらの事実関係について主張・立証する必要があります(最高裁平成19年4月23日判時1970号106頁)。

  なお,この最高裁平成19年4月23日判決の原審は,「当該事故前後の状況や所有者・使用者の行動,とりわけ車両の管理使用状況に照らし,外形的客観的にみて第三者による持ち去りとみて矛盾のない状況が立証されれば,盗難事故であることが事実上推定される」としていましたが(原審大阪高裁平成17年6月2日判決金判1267号44頁),最高裁は,原審判決のこのような推定は,盗難の外形的事実を合理的な疑いを超える程度にまで立証しなくてもよいとする点で主張立証責任の分配に実質的に反するとしています。従って,最高裁判決の趣旨に従えば,盗難の事実の主張立証責任は請求者にあるとする原則に立つと,事実上の推定であれ盗難と直接関係のない事実(間接事実)から盗難の事実を推定して事実上挙証責任を転換することはできないことになります。

  以上,最高裁平成19年4月23日判決によって以下の点が明らかになりました。たとえば関係者供述が主たる証拠となってくるようなケースの場合,保険会社側が関係者供述の不自然さ・不合理性・矛盾点を指摘して推認を覆すという訴訟の進め方ではなく,「自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと」,「第三者がその場所から自動車を持ち去ったこと」の両事実を立証する関係者の自然かつ合理的な供述を,保険金請求者側が積極的に示していくという枠組みになったものと考えられます。
  なお,保険金請求者は,被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思(故意,重過失)に基づかないものであることまで主張・立証すべき責任までは負わないと判断しています(前掲最高裁平成19年4月17日判決)。

2.(盗難の外形的事実の有無を判断する際の考慮要素,間接事実)
  1項で述べたような外形的事実を推認させる事情(間接事実)としては,被害届提出の時期・経緯,盗難現場の状況,車両の性質・設備・使用管理状況,保険金請求者の事後の対応,盗難車両の発見場所や発見時の車両の状態,車両購入の時期・経緯,車両保険契約締結の時期・経緯,保険金請求者の属性,保険金請求者の動機などがあげられます。
  被害届については,盗難があったことを認識した時点から遅滞なく提出されることが通常であると考えられますので,被害届を警察に提出していることや,それが受理されていること,提出が盗難を認識した時点に近接してなされていること等が,まずは盗難を推認させる方向の1つの重要な間接事実となります。
  盗難現場の状況としては,盗難のあった時間帯,監視員等の有無,駐車場等の構造や現場の人通り,車両保管に使用される性質の場所かどうかなどが考慮されます。窃盗が人目につく程度,窃盗作業音,警報音等の感知可能性等を検討する際の事情で,そもそも窃盗行為が可能であったかどうかや,クレーン移動が可能であったどうかなどを検討する際の考慮要素になります。
  
  車両の性質・設備・使用管理状況としては,車種が盗難されやすいものかどうか,盗難防止装置(イモビライザー機能やアラーム機能など)の設置の有無,車両の使用頻度や整備状態,鍵やそのコピーの管理状況などが考慮されます。もっとも,盗難防止装置が設置されていたとしても,その作動条件や作動回避技術等についての事情を合理的に説明できれば,盗難の事実が認定されるケースはあります。
  保険金請求者の事後の対応としては,調査員への言動や,その後の自動車の使用必要性・使用状況,車両発見時の言動等が考慮要素として考えられるところでしょう。
  事後に車両が発見された場合,推察される窃盗目的と車両の現況との間に齟齬がないかどうかも考慮要素の1つとなります。たとえば,部品盗と考えられるにも関わらず,車両本体に傷がつかないような取り外し方がされているといった事情は,第三者による盗難を否定する方向の間接事実となります。車両発見場所が通常の盗難車両の遺棄場所として自然かどうか,あるいは発見時の車両の状態が盗難された車両の放置状態として自然かどうかなども,考慮要素の1つとなることもあるでしょう。
  
  車両購入の時期・経緯,車両保険契約締結の時期・経緯によっては,それが保険金受領目的であることを窺われるようなケースもあります。たとえば,車両購入後まもなく,あるいは車両保険契約締結後ほどなく盗難にあった場合や,車両購入と車両保険契約締結との間に時間差がある場合などは,その事実だけで直ちに盗難でないと推認されるわけではありませんが,他の事実と相まって,盗難の事実を否定する方向にはたらく間接事実となりうるところです。また,割賦代金や保険料の支払状況,保険契約更新手続の状況等が不自然であるとして,盗難を否定する方向の間接事実となったり,複数車両の購入が,場合によっては偽装の疑念を生じさせ,盗難を否定する方向の間接事実となったりすることもありえます。
  
  保険金請求者の属性としては.同種事故の経験や,交友関係などが考慮されます。同種事故の経験については,過去の盗難事故と時間的近接性があったり,数回に渡る盗難事故の遭遇経験があったり,同様の手口であったりすることが,偽装であることを推認させる事情となる場合や,過去の盗難経験をふまえた防犯対策がなされていたかどうかという視点から考慮される場合などがあります。また,たとえば車両保険金詐取犯や車両窃盗犯との交友関係がある場合などは,その者が関係する車両盗難偽装が窺われるなどすれば,盗難の事実を否定する方向の間接事実となります。
  保険金請求者の動機としては,保険金請求者の経済状況や,車両運転への意欲・執着の有無,保険金受領による実質的利得があるかどうかなどが考慮されます。

3.(立証方法)
  訴訟となった場合,以上の事実を立証するために,これらの事実を裏付ける証拠を収集する必要があります。以下では,1項で述べたとおり主張立証の枠組みが新たに判示された,最高裁平成19年両判決以降の裁判例を適宜参照しながら,立証方法についての検討をします。
  これまでの説明のように防犯カメラの映像や目撃者の供述等,第三者による所在場所からの車両持ち去りの事実を直接的に示すいわゆる直接証拠があれば,それほど問題なく立証が可能です。前掲最高裁平成19年4月17日判決民集61巻3号1026頁,東京地裁平成21年5月28日判決などは,防犯カメラの映像によって盗難の事実が認定された例です。ただ,他から見られることを極力避けて行うという盗難行為の性質上,そのような直接証拠はないのが通常でしょう。また,盗難の事実自体ではないが間接的に盗難の事実を推認させる,いわゆる間接事実についても,客観的な証拠がないことも多々あります。

  このような場合,すなわち間接事実を裏付ける証拠が供述のみである場合でも,盗難の外形的事実の認定はされうるところです。ただし,その供述は自然・合理的である必要がありますし,供述が自然,合理的で,一貫していれば,供述自体の信用性も認められることとなります。たとえば東京地裁平成20年12月16日判決では,関係者の供述を証拠として,盗難の外形的事実を認定しています。なお,この事例は関係者2人の供述があったケースで,両者の供述内容が一致していることに加え,供述内容に不自然な点や矛盾点がないことをもって,供述が信用できるものと判断しています。
  他方で,供述が不自然・不合理・変遷・矛盾等で信用性がないとされ,盗難の事実が認定されなかった例もあります。たとえば東京地裁平成22年7月26日判決は,盗難の事実に関する証拠が保険金請求者(原告)の供述のみであったケースですが,事故当日の車両の使用状況に関する説明が大きく変遷していったことや,他の証拠から認められる事実と相いれないこと,不可解・不合理な部分があることなどから,原告の供述の信用性には多大な疑問を抱かざるを得ないとし,事故直前の盗難現場の状況,発見時の車両の状態等も考えあわせて,盗難の事実は認められないと判断しています。また,東京地裁平成20年6月13日判決では,2人の供述につき,車両購入・車両保険契約締結や,車両使用管理状況,調査員への説明などについて,不自然な点や客観的裏付けのない点があって信用性に乏しいとし,盗難の事実は認定できないとしています。さらに,東京高裁平成19年9月27日判決では,車両の所在場所,車両保管状況,事後対応等が不自然・不合理で,暴力団との交友や盗難偽装の別件事件への関与が窺われることなどから,車両の第三者による持ち去りの事実を認定することはできないと判断しています。

4.(最後に)
  本件においては盗難の事実の有無が主たる争点であり,その点についての検討を加えましたが,保険金請求者の故意による盗難招致の有無,免責条項該当性など,他の要素が問題となり,検討の必要が出てくる場合もあります。今後の見通しや.保険会社との交渉,保険金請求等に際してご心配な点があるようでしたら,一度弁護士に相談されることが望ましいでしょう。

≪参考判例≫

保険金請求事件
最高裁判所第三小法廷平成18年(受)第1026号
平成19年4月17日判決
「3 原審は,次のとおり判示して,上告人の請求を棄却すべきものとした。
 本件保険契約に基づき保険金を請求する者は,被保険自動車の盗難その他偶然な事故の発生を主張,立証すべき責任を負担するものと解される。本件の具体的事情を総合すれば,本件車両を持ち去った人物が被保険者である上告人と全く無関係の第三者としてこれを窃取したものではなく,上告人と意を通じていたのではないかとの疑念を払拭することができない。したがって,上告人は,本件車両持ち去りが盗難その他偶然な事故によるものであることを証明するに至っていない。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)商法629条が損害保険契約の保険事故を「偶然ナル一定ノ事故」と規定したのは,損害保険契約は保険契約成立時においては発生するかどうか不確定な事故によって損害が生じた場合にその損害をてん補することを約束するものであり,保険契約成立時において保険事故が発生すること又は発生しないことが確定している場合には,保険契約が成立しないということを明らかにしたものと解すべきである。同法641条は,保険契約者又は被保険者の悪意又は重過失によって生じた損害については,保険者はこれをてん補する責任を有しない旨規定しているが,これは,保険事故の偶然性について規定したものではなく,保険契約者又は被保険者が故意又は重過失によって保険事故を発生させたことを保険金請求権の発生を妨げる免責事由として規定したものと解される。
 本件条項1は,「衝突,接触,墜落,転覆,物の飛来,物の落下,火災,爆発,台風,こう水,高潮その他偶然な事故」及び「被保険自動車の盗難」を保険事故として規定しているが,これは,保険契約成立時に発生するかどうかが不確定な事故を「被保険自動車の盗難」も含めてすべて保険事故とすることを明らかにしたもので,商法629条にいう「偶然ナル一定ノ事故」を本件保険契約に即して規定したものというべきである。そして,本件条項2は,保険契約者,被保険者等が故意によって保険事故を発生させたことを,同法641条と同様に免責事由として規定したものというべきである(最高裁平成17年(受)第1206号同18年6月1日第一小法廷判決・民集60巻5号1887頁,最高裁平成17年(受)第2058号同18年6月6日第三小法廷判決・裁判集民事220号391頁参照)。本件条項1では「被保険自動車の盗難」が他の保険事故と区別して記載されているが,「被保険自動車の盗難」についても他の保険事故と同じく本件条項2が適用されるのであるから,「被保険自動車の盗難」が他の保険事故と区別して記載されているのは,本件約款が保険事故として「被保険自動車の盗難」を含むものであることを保険契約者や被保険者に対して明確にするためのものと解すべきであり,少なくとも保険事故の発生や免責事由について他の保険事故と異なる主張立証責任を定めたものと解することはできない。
 そして,一般に盗難とは,占有者の意に反する第三者による財物の占有の移転であると解することができるが,上記のとおり,被保険自動車の盗難という保険事故が保険契約者,被保険者等の意思に基づいて発生したことは,本件条項2により保険者において免責事由として主張,立証すべき事項であるから,被保険自動車の盗難という保険事故が発生したとして本件条項1に基づいて車両保険金の支払を請求する者は,「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的な事実を主張,立証すれば足り,被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることを主張,立証すべき責任を負わないというべきである。
(2)原審は,本件条項1に基づいて車両保険金の支払を請求する者は被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることにつき主張立証責任を負うと解した上,本件においてはその証明がないとして,上告人の被上告人に対する請求を棄却したものである。しかし,前記事実関係によれば,被保険者である上告人以外の者が本件車両をその所在場所から持ち去ったことは明らかになっているというべきであるから,保険事故の発生が立証されていないとして上告人の請求を棄却することはできない。」

保険金請求事件
最高裁判所第一小法廷平成17年(受)第1841号
平成19年4月23日判決
「3 原審は,次のとおり判示して,被上告人の請求を認容した。
(1)本件約款によれば,被保険自動車の盗難は保険金請求権の成立要件であり,したがって,保険金請求者において,被保険自動車に盗難事故が発生したことを主張,立証すべき責任がある。しかし,車両の盗難は,通例,所有者の不知の間に秘密裡に行われ,多くの場合,その痕跡を残さないものであるから,その立証の程度については,当該事故前後の状況や所有者,使用者の行動,とりわけ車両の管理使用状況等に照らし,外形的・客観的にみて第三者による持ち去りとみて矛盾のない状況が立証されれば,盗難事故であることが事実上推定されるというべきであり,これに対し,その推定を覆すには,保険者の側で,その事故が保険金請求者の意思に基づき発生したと疑うべき事情を立証しなければならない。
(2)本件において,本件事故前後の状況や被上告人の行動,とりわけ本件車両の駐車状況に照らし,外形的・客観的にみて第三者による本件車両の持ち去りとみて矛盾のない状況が立証されているということができる一方,本件事故が被上告人の意思に基づき発生したと疑うべき事情は立証されていないから,本件事故は,盗難に該当する。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)商法629条が損害保険契約の保険事故として規定する「偶然ナル一定ノ事故」とは,保険契約成立時において発生するかどうかが不確定な事故をいうものと解される。また,同法641条が,保険契約者又は被保険者の悪意又は重過失によって生じた損害について保険者はてん補責任を負わない旨規定しているのは,保険契約者又は被保険者が故意又は重過失によって保険事故を発生させたことを保険金請求権の発生を妨げる免責事由として規定したものと解される。
 本件条項は,「衝突,接触,墜落,転覆,物の飛来,物の落下,火災,爆発,台風,こう水,高潮その他偶然な事故」及び「被保険自動車の盗難」を保険事故として規定しているが,これは,保険契約成立時に発生するかどうかが不確定な事故を「被保険自動車の盗難」も含めてすべて保険事故とすることを明らかにしたもので,商法629条にいう「偶然ナル一定ノ事故」を本件保険契約に即して規定したものというべきである。本件条項にいう保険事故を,商法の上記規定にいう「偶然ナル」事故とは異なり,保険事故の発生時において被保険者の意思に基づかない事故であること(保険事故の偶発性)をいうものと解することはできない(最高裁平成17年(受)第1206号同18年6月1日第一小法廷判決・民集60巻5号1887頁,最高裁平成17年(受)第2058号同18年6月6日第三小法廷判決・裁判集民事220号391頁参照)。もっとも,本件条項では「被保険自動車の盗難」が他の保険事故と区別して記載されているが,これは,本件約款が保険事故として「被保険自動車の盗難」を含むものであることを保険契約者や被保険者に対して明確にするためのものと解すべきであり,少なくとも保険事故の発生や免責事由について他の保険事故の場合と異なる主張立証責任を定めたものと解することはできない。
 ところで,一般に盗難とは,占有者の意に反する第三者による財物の占有の移転をいうものと解することができるが,商法の上記各規定が適用されると解される本件保険契約においては,被保険自動車の盗難という保険事故が保険契約者又は被保険者の意思に基づいて発生したことは,保険者が免責事由として主張,立証すべき事項であるから,被保険自動車の盗難という保険事故が発生したとして本件条項に基づいて車両保険金の支払を請求する者は,被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることを主張,立証すべき責任を負うものではない。しかしながら,上記主張立証責任の分配によっても,上記保険金請求者は,「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という盗難の外形的な事実を主張,立証する責任を免れるものではない。そして,その外形的な事実は,「被保険者の占有に係る被保険自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと」及び「被保険者以外の者がその場所から被保険自動車を持ち去ったこと」という事実から構成されるものというべきである。
(2)原審は,本件保険契約に基づいて車両損害保険金を請求する者は保険事故の偶発性を含めて盗難が発生した事実を主張,立証すべき責任を負うとする一方,「外形的・客観的にみて第三者による持ち去りとみて矛盾のない状況」が立証されれば,盗難の事実が事実上推定されるとした上,本件では,上記「矛盾のない状況」が立証されているので,盗難の事実が推定されるとしている。しかしながら,上記保険金請求者は,盗難という保険事故の発生としてその外形的な事実を立証しなければならないところ,単に上記「矛盾のない状況」を立証するだけでは,盗難の外形的な事実を合理的な疑いを超える程度にまで立証したことにならないことは明らかである。したがって,上記「矛盾のない状況」が立証されているので盗難の事実が推定されるとした原審の判断は,上記(1)の主張立証責任の分配に実質的に反するものというべきである。」

裁判年月日 平成21年 5月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平20(ワ)6523号
事件名 保険金請求事件
「第2 事案の概要
 1 前提事実
  (4) 本件車両乗り逃げについて
   ア 原告は,平成17年2月26日午前1時10分ころ,勤務先から本件車両で帰宅する途中,東京都東大和市〈以下省略〉所在のaコンビニ店(以下「本件店舗」という。)に立ち寄った。
   イ その際,原告は,本件店舗南東側に位置する駐車場入口から本件店舗の駐車場に入り,本件車両を本件店舗入口付近に駐車させた。原告は,本件車両のエンジンを切ることなく,そのまま本件店舗に入り,商品を見回っていたところ,原告以外の第三者が本件車両に乗って走り去った(以下「本件車両乗り逃げ」という。)。本件車両乗り逃げの状況は,本件店舗に設置された防犯ビデオにより撮影されていた。
   ウ 本件車両乗り逃げと同時に,本件店舗の駐車場に駐車してあったトヨタ自動車株式会社製のアリスト(以下「アリスト」という。)も駐車場から走り去った。上記第三者は,アリストに乗って本件店舗に来店していた男性二人及び女性一人のグループの中の男性であった(以下,本件車両乗り逃げを行った第三者を「アリストの男」という。)。
 (甲14,乙8,11)
   :
第3 当裁判所の判断
 2 争点2(本件車両についての盗難の外形的事実の有無)について
 被保険自動車の盗難という保険事故が保険契約者,被保険者等の意思に基づいて発生したことは,本件条項2により保険者において免責事由として主張,立証すべき事項であるから,被保険自動車の盗難という保険事故が発生したとして本件条項1に基づいて車両保険金の支払を請求する者は,「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的な事実を主張,立証すれば足り,被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることを主張,立証すべき責任を負わないというべきである(最高裁平成18年(受)第1026号同19年4月17日第三小法廷判決・民集61巻3号1026頁参照)。
 そして,前記第2の1(4)に認定の事実関係によれば,被保険者である原告以外の者が原告の占有に係る本件車両をその所在場所である本件店舗の駐車場から持ち去ったことという盗難の外形的な事実は明らかになっているというべきであるから,本件車両乗り逃げが原告の意思に基づいて発生したことは,被告において免責事由として主張,立証すべきである。
 これに対し,被告は,「被保険者以外の者」とは「被保険者及びその意を受けた者以外の者」として捉えるべきであり,盗難の外形的事実は未だ立証されていないというべきであると主張する。しかしながら,本件車両を持ち去った第三者が原告の意を受けた者であることは,本件車両乗り逃げが原告の意思に基づいて発生したという事実として,被告において免責事由として主張,立証すべきであり,原告に対し,当該第三者が原告の意を受けた者でないことの立証を求めることは,「被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであること」の主張,立証を求めるに等しいから,被告の主張は採用することができない。

裁判年月日 平成20年12月16日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平19(ワ)11033号
事件名 保険金等請求事件
「第3 当裁判所の判断
 1 前記「争いのない事実等」,証拠(甲9,12,証人D,証人F,証人C,後記の各証拠)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
  (1) 本件車両購入の経緯
   ア 本件車両は,平成15年1月24日,所有者Gとして新規登録され,Fが使用していたが,その後,車両販売業者に下取りに出され,平成17年5月ころ,原告の従業員であるEが上記販売業者から購入することになった(乙11)。
   イ Cは,Eが売買代金を払えなかったため,平成17年5月ころ,同人に代わって,頭金50万円を上記販売業者に支払い,残代金200万円についてはローンを組み,同年8月9日,所有者を株式会社オリエントコーポレーション,使用者をCとして本件車両の登録を移転した(乙11,25)。
 Cは,その際,別途約20万円を支払って本件車両にカーナビを装着した(乙30)。
   ウ Cは,月々のローン返済を続けていたが,Eは,本件車両を使用するものの,Cに対して肩代わりしてもらったローン代金をほとんど支払わなかった。
 そこで,Cは,平成17年末ころ,Eから本件車両を返してもらった。その後も,Cはローン返済を続けている。
  (2) 本件保険契約締結の経緯
   ア 平成17年11月ないし12月ころ,原告が本件車両とは別に所有していた自動車(メルセデスベンツE320,以下「旧車両」という。)が盗難に遭った。
 原告は,旧車両については車両保険に加入していなかったため,保険で損害をてん補できなかったことから,Cは,本件車両については車両保険に加入した方がよいと考えた。
   イ 原告は,平成18年2月21日,被告との間で,本件車両について,保険期間を同日から同年6月21日午後4時までとして本件保険契約を締結し,上記保険期間の保険料として7万3600円を支払った(乙27)。
 なお,本件車両については,原告・被告間で,保険期間を平成17年6月21日午後4時から平成18年6月21日午後4時までとし,保険料を月額9870円とする他の種類の保険契約が締結されていたところ,これに付加して本件保険契約は締結されたものである(甲1,乙27)。
   ウ 本件保険契約の審査を行った被告担当者は,本件車両の型式と登録年度を基にした車価表により,Cに対し,付保可能な保険金額は230万円から340万円であることを伝え,保険金額の設定を任せたところ,Cは上限である340万円に設定した(乙9,10)。
 また,被告担当者は,本件保険契約の締結に際して,本件車両の現物及び自動車検査証を確認している(乙9)。
  (3) 本件車両の車検更新手続
   ア 本件車両の車検の有効期限は平成18年1月23日であったところ,Cは,その有効期限が過ぎた同年2月18日,車検更新の手続のために本件車両を整備工場に預けた(乙11,31)。
 その時点での本件車両の走行距離は,約13万キロメートルであった(乙31)。
   イ 本件車両は,平成18年2月18日午後10時ころから翌19日午前8時45分ころまでの間に,車検のため預けられた整備工場の駐車場にとめていたところ,何者かにコイン様の物で傷を付けられたため,その塗装修理のため少なくとも同年3月10日までは上記工場に預けられていた(乙31)。
   ウ 本件車両については,元の所有者が自動車税を滞納していたため,車検更新の手続に時間がかかるとの理由で,車検更新ができないまま上記工場からいったん原告に返却された。
  (4) 本件盗難前後の状況
   ア Cは,平成18年5月8日の数日前から,本件車両を原告従業員の寮である埼玉県吉川市〈以下省略〉所在のアパート「ドムールセゾン」の駐車場である本件駐車場にとめていた(乙28)。
   イ 本件駐車場は,幅員約6メートルの道路に面し,@道路に面する幅約17.6メートル,奥行き約14メートルの長方形部分と,A@の奥の幅約8.2メートルの長方形部分からなるL字の形をしている。
 本件駐車場の出入口は約7.1メートルであり,本件車両は,上記@の部分の出入口に近い方にとめられていた。
 本件駐車場が面している道路を挟んで,本件駐車場の向かいは別の駐車場と空き地になっている。本件駐車場の周辺には,民家や田んぼがある(甲6ないし8,乙29)。
   ウ Cは,平成18年5月8日午前5時40分ころ,原告の従業員であるD及びHと本件駐車場で集合し,仕事のため建築工事現場である江北駅へ向かった。
   エ Cは,Dらとともに江北駅での仕事を終えた後,平成18年5月8日午後4時ころ,本件駐車場に戻ってきた。本件駐車場から現場である江北駅まで自動車で移動するには,片道1時間ないし1時間半ほどかかる。
   オ Cは,平成18年5月8日午後4時5分ころ,埼玉県吉川警察署に対し,本件車両が盗難された旨を届け出たが,その届出の内容は,以下のとおりであった(埼玉県吉川警察署に対する調査嘱託の結果)。
 (ア) 被害日時 平成18年5月7日午後7時ころから翌8日午後4時ころまでの間
 (イ) 被害場所 本件駐車場
 (ウ) 被害発見者 C
 (エ) 被害発見日時 平成18年5月8日午後4時
 (オ) 被害発見の経緯 本件駐車場に鍵をかけて駐車していたが被害に気付いた。
 (カ) 被害車両の時価 150万円相当
 (キ) 積載物件 なし
   カ 警察は,Cからの被害申告を受けてすぐに本件駐車場に到着し,実況見分を行った。
   キ また,Cは,被告に対し,本件盗難被害の発生を申告した(乙30)。その際,Cは,本件車両のドアはロックし,窓も全部閉めていた旨申告している。
  (5) 本件車両の性質,使用状況等
   ア 本件車両は,平成11年3月ころに製造された並行輸入車である。
 本件車両には,盗難防止に関する装置として,電子データ(コード)の照合による不正なエンジン始動を防ぐいわゆるイモビライザーシステムが装着されていた。本件車両のイモビライザーシステムを制御するコンピューターの数は2つであり,計器盤裏側とエンジンルーム右側に設置されていた。
 本件車両には,一般的盗難防止装置と呼ばれる警報装置は装着されていなかった(メルセデス・ベンツ日本株式会社に対する調査嘱託の結果)。
   イ 本件車両の鍵はもともと2本あったが,元の使用者であるFはそのうち1本を紛失し,Cには残りの1本しか渡っていなかった。
 なお,Cは,Fから鍵を2本受け取り,スペアキー1本を原告事務所の机の引き出しに保管していたと認識していたものの,紛失していて見付からない旨供述するが,Fの供述に照らし採用することができない。
 本件車両には,鍵の複製歴はない(メルセデス・ベンツ日本株式会社に対する調査嘱託の結果)。
   ウ 原告では,旧車両のほか仕事用の車としてステップワゴン,マーチ及びカローラを所有していた。
 Cは,平成17年11月ないし12月ころに旧車両が盗難に遭い,同月末ころにEから本件車両の返却を受けた後は,上記仕事用の車とともに本件車両も使用するようになった。
   エ Cは,平成18年1月23日に車検期間が満了した後,その更新ができない間にも,時々は本件車両を使用し,また,盗難防止のために本件駐車場や原告事務所の駐車場等の間を何度か移動させていた。
   オ Cは,平成18年7月21日には免許停止中であり,同年10月25日,同日から2年間の免許取消し処分を受けた。
  (6) 原告及びCの経済状況
   ア Cは,平成18年4月28日,貸金業者から50万円を借り入れたことがあったが,同年5月11日にはこれを返済している(甲15)。
 また,Cにはクレジット会社との取引履歴があるが,いずれの取引においても長期にわたる支払遅延はない(甲16,17の1,2,乙25)。
   イ 原告は,平成18年3月分の被告に対する保険料の支払を遅滞したが,同年4月には同月分とともに支払っている(乙14,35)。
  (7) 原告による保険金請求及び被告による支払拒絶
   ア 原告は,被告に対して保険金の請求をしたところ,被告の代理人弁護士からCあてに,平成18年6月16日付けで,保険金支払の可否を判断するために本件車両の盗難についての調査が必要であるとして調査の協力を依頼する旨の文書が送付された(甲3)。
   イ 原告は,被告に対して必要な資料を提出して調査に協力したが,被告の代理人弁護士からCあてに,平成18年7月6日付けで,本件車両の盗難には不自然な点が多々あり,第三者によって偶然に引き起こされたという点に関する疑問を払しょくできないとして,保険金の支払を拒絶する旨の通知書が送付された(甲4)。
 2 争点(1)(保険事故発生の有無)及び(2)(原告の故意による本件盗難招致の有無)の立証責任について
 本件保険契約においては,被保険自動車の盗難が保険事故として規定されているところ,被保険自動車の盗難という保険事故が発生したとして本件保険契約に基づいて車両保険金の支払を請求する者は,「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的な事実を主張,立証すれば足り,被保険自動車の持ち去りが被保険者等の意思に基づかないものであることを主張,立証すべき責任を負わないというべきであって,被保険自動車の持ち去りが被保険者等の意思に基づくものであることは保険者の側が免責事由として主張,立証すべき責任を負うというべきである(最高裁平成17年(受)第1206号同18年6月1日第1小法廷判決・民集60巻5号1887頁,最高裁平成17年(受)第2058号同18年6月6日第3小法廷判決・裁判集民事220号391頁,最高裁平成18年(受)第1026号同19年4月17日第3小法廷判決・民集61巻3号1026頁,最高裁平成17年(受)第1841号同19年4月23日第1小法廷判決・裁判所時報1434号145頁参照)。
 よって,争点(1)に関する事実,すなわち保険事故の発生については,保険金請求者である原告が,争点(2)に関する事実,すなわち原告の故意によって本件盗難が招致されたことについては,保険者である被告が立証責任を負うと解するべきである。
 3 争点(1)(保険事故発生の有無)について
  (1) 保険金請求者である原告が立証すべき「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的な事実は,「被保険者の占有に係る被保険自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと」(以下「事実@」という。)及び「被保険者以外の者がその場所から被保険自動車を持ち去ったこと」(以下「事実A」という。)から構成されるものというべきである(前掲最高裁平成19年4月23日第1小法廷判決参照)。
  (2) 本件においては,事実@を直接認定し得る証拠として,平成18年5月8日午前5時40分ころ,本件駐車場に本件車両がとめてあったのを確認した旨のC及びDの陳述・供述がある。
 そこで,その信用性について判断するに,両者の陳述・供述内容は一致しており,本件車両を確認した経緯等を含めて内容に不自然な点はない。
 もっとも,上記1(4)オによれば,Cは,警察に対して,本件盗難の被害日時は平成18年5月7日午後7時以降である旨届け出ていることが認められ,それ以降は本件車両を確認していないという趣旨であるとすれば,本件車両を同月8日午前5時40分ころに確認したとのCの供述と矛盾するのではないかとの疑問も生じ得る。
 しかし,他方で,乙28ないし30によれば,Cは,被告からの調査に対しては,平成18年5月8日午前5時半ないし6時ころに本件車両を確認している旨の,上記供述と一致する内容を答えていることからすれば,警察に対する上記届出内容は,必ずしも前日午後7時以降に本件車両を確認していないという趣旨のものとは認められず,直ちにCの供述が信用できないということはできない。
 よって,C及びDの陳述・供述は信用できるから,平成18年5月8日午前5時40分ころ,原告の占有する本件車両が本件駐車場に置かれていたことが認められ,事実@が認められる。
  (3) 次に,事実Aについてはこれを直接認定し得る証拠は存在しないが,平成18年5月8日午前5時40分ころ,本件駐車場に本件車両がとめてあったのを確認した旨のC及びDの陳述・供述があり,また,同日午後4時ころに本件駐車場に戻ってきたところ,本件車両がとまっていなかった旨のC及びDの陳述・供述があることから,上記各陳述・供述が信用できるとすれば,同日午前5時40分ころ本件駐車場にとまっていた本件車両が,同日午後4時ころにはなくなっていた事実が認定でき,これと,上記1(4)ウ,エにより,本件盗難発生当時,Cは,本件駐車場から車で片道1時間ないし1時間半ほどかかる現場で仕事をしていたと認められることを合わせれば,事実Aを推認することができる。
 そこで,上記各陳述・供述の信用性について判断するに,平成18年5月8日午前5時40分ころに本件車両を確認した旨の陳述・供述は上記(2)のとおり信用することができるし,また,同日午後4時には本件車両がなかった旨の陳述・供述は,C及びDの陳述・供述内容が一致しており,内容に不自然な点や矛盾点はないことからすれば,やはり信用できるといえる。
 よって,上記各陳述・供述により,平成18年5月8日午前5時40分ころ本件駐車場にとまっていた本件車両が,同日午後4時ころにはなくなっていた事実が認められ,本件盗難発生当時,Cは,本件駐車場から車で片道1時間ないし1時間半ほどかかる現場で仕事をしていたとの事実を合わせれば,事実Aが推認されるというべきである。
  (4) さらに,上記推認を覆すような事情があるかについて,以下判断する。
   ア 被告は,本件盗難には実現可能性がない旨主張する。
 上記1(5)アによれば,本件車両にはイモビライザーシステムが装着されていたこと,同(4)オ,キによれば,Cは,本件車両のドアをロックし,窓を全部閉めていたこと,同(5)イによれば,CはそもそもFから鍵を1本しか受け取っておらず,Cの下での鍵の紛失・盗難はなかったこと,鍵の複製はされていないことが認められる。
 そうすると,イモビライザーシステムが装着され,ドア及び窓が閉まっていた本件車両を,鍵なしに盗難することが可能かが問題となる。
 乙4,5,21の1によれば,本件車両の盗取方法としては,@イモビライザーシステムそのものを破壊又は無効化して車両を自走させる方法,A車両を自走させることなく運搬する方法が考えられるが,コンピュータの解析作業を行うことによってイモビライザーシステムを無効化することは不可能ではないと認められる。また,上記(5)アによれば,本件車両には警報装置が装着されていなかったことが認められるから,本件車両を運搬することは可能である。よって,@及びAのいずれの方法によることも可能であったと認められる。
 そこで,本件の具体的状況下で本件盗難の実現可能性があるかについて,さらに判断する。
 この点,本件盗難の行われたとされる時間帯は早朝から午後にかけてであり,上記盗取方法には一定程度時間がかかることからすれば,本件盗難を実行するのは人目に付きやすいとも思われる。
 しかし,上記1(4)イによれば,本件駐車場があるのは,周辺に民家や田んぼがある地域であり,道路を挟んで向かいは駐車場や空き地となっていること,本件駐車場が面している道路は幅員約6メートルであることが認められ,これらの事実からすれば本件駐車場周辺はそれほど人通りが多い場所とはいえない。
 また,上記1(4)イによれば,本件車両がとまっていた本件駐車場の状況からは,本件車両を積載・牽引して運搬することは物理的に可能であることが認められる。
 さらに,上記1(5)エによれば,Cは,本件盗難の数日前に本件車両を本件駐車場に移動させたが,それ以前にも本件車両を本件駐車場にとめていたことがあったことが認められるから,たまたま一時的に駐車していた場合とは違って,本件車両が狙われて盗取された可能性も否定できない。
 よって,本件盗難の実行可能性は否定できず,この点から上記推認を覆すような事情があるとは認められない。
   イ 次に,被告は,プロによる犯行だとすれば,価値の低い本件車両はねらわないはずである旨主張する。
 しかし,上記1(1)イによれば,原告による本件車両の購入金額は合計約270万円であったことが認められ,また,乙2,29によれば,盗難当時の本件車両の市場価格は,189万円から249万円程度であったことが認められ,本件車両には上記購入金額又は市場価格程度の価値があったものといえるから,本件車両が窃取対象とはされないとは一概には認められない。
 よって,この点からも上記推認を覆すような事情があるとは認められない。
   ウ そして,上記ア,イで検討したほか,本件において上記推認を覆すと認めるに足りる事情は認められない。
  (5) 以上より,本件においては事実@及びAが認められ,「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的な事実が認められることから,本件盗難という保険事故が発生したものと認めることができる。」

裁判年月日 平成22年 7月26日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平21(ワ)11935号
事件名 保険金等請求事件
「第3 当裁判所の判断
 2 以上の立証責任の分配を前提として,保険金請求者である原告が立証すべき「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的な事実が認められるか(争点1)について検討する。
 本件においては,本件事故当日の午後7時ころから7時20分ころにかけて本件駐車場所に本件車両が駐車していたこと及びその後7時30分ころまでの間に原告以外の者が本件駐車場所から本件車両を持ち去ったことを裏付けるに足りる第三者の目撃証言や客観的証拠は全くなく,盗難の事実に関する原告の主張は,専ら,原告の供述に依拠するものである。
  (1)ア そこで,まず,本件事故当日の本件車両の使用状況について検討するに,この点に関する原告の主張は,上記第2,3,(1)アに記載のとおりであり,原告は,本人尋問において,要旨次のとおり供述し,同旨の陳述書(甲30)を提出する。
 @ 午前中,銀行へ入金するための現金と通帳を取りに,本件車両を運転して,新宿区西落合1丁目にある自宅から駒込にある原告の経営する店舗に行き,昼ころ自宅に戻った。
 A 午後3時ころ,商品の仕入れのため,本件車両を運転して,中野区上高田5丁目所在の三友商事に行ったが,仕入れたかった商品が売り切れていたため商品の仕入れができなかった。
 B 午後4時ないし5時ころ,JR新宿駅西口前にある中央三井信託銀行新宿西口支店に赴き,本件車両を京王百貨店前路上に停車させて,同支店のATMで自宅のローン代金を入金した。
 C トイレを使用するため,JR新宿駅南口前にあるマクドナルド南新宿店前路上に本件車両を停車して,同店のトイレで用を足した。
 D 午後6時ころ,バイクのタイヤを購入するため,新宿区上落合2丁目所在のYSP店に行き,同店前に駐車して,タイヤを注文した。
 E その後,修理を依頼していた財布を引き取るため,新宿区新宿3丁目所在の伊勢丹新宿店内に出店しているシャネルショップに向かおうとして大久保通りを新大久保方面から神楽坂方面に向かい走行中,吐き気と便意を催したので,トイレを探したが,大久保通り沿いに本件公衆便所があったことを思い出したため,明治通りを越えて直進して,本件公衆便所に向かった。
 F 本件公衆便所付近路上には駐車車両が多数あったため,やむなく本件公衆便所から約30メートル通過した本件駐車場所に,本件車両を駐車した。
   イ しかしながら,証拠(乙1,8)によれば,原告は,平成19年11月29日,被告会社の依頼を受けて,本件盗難について調査を行った株式会社アチーブメント(以下「アチーブメント」という。)のC調査員(以下「C調査員」という)に対し,本件事故当日の本件車両の使用状況を次のとおり説明した事実が認められる。
 @ 午前11時ころ,自宅を出て,本件車両を運転して,駒込にある原告の経営する店舗に行き,店舗内で仕事をしていた。
 A ローンの支払を思い出し,現金と通帳を取るため,本件車両を運転して,午後3時30分ころ,自宅に戻り,現金と通帳をもって,中央三井信託銀行に入金に行った。
 B 午後4時ころ,仕入状況の確認のため,三友商事に行き,午後6時ころまでいた。
 C その後,修理を依頼していた財布を引き取るため,伊勢丹新宿店に行くことにしたが,途中,高田馬場付近にあるマクドナルドかファミリーレストランで食事をした。
 D 食事後,伊勢丹新宿店に向かったが,トイレに行きたくなったため,記憶にあった本件公衆便所に向かい,本件駐車場所に,本件車両を駐車した。
   ウ また,証拠(乙2,3,9)によれば,原告は,平成20年2月11日,被告会社の依頼を受けて,本件盗難について調査を行ったアチーブメントのD調査員(以下「D調査員」という)に対し,本件事故当日の本件車両の使用状況を次のとおり説明した事実が認められる。
 @ 本件事故当日の午前中は,本件車両を運転して,駒込にある原告の経営する店舗に行き,店舗内で仕事をしていた。
 A 本件車両を運転して,午後3時30分ころ,自宅に戻った。
 B 午後4時ころ,仕入状況の確認のため,三友商事に行き,午後5時ころまでいた。
 C 住宅ローン等の支払のため,JR新宿駅西口前にある中央三井信託銀行新宿西口支店に赴き,本件車両を京王百貨店前路上に停車させて,午後6時前には,同支店のATMで自宅のローン代金を入金した。
 D 入金後,修理を依頼していた財布を引き取るため,伊勢丹新宿店に行くことにしたが,途中,トイレに行きたくなったので,JR新宿駅南口前にあるマクドナルド南新宿店前路上に本件車両を停車して,同店のトイレで用を足し,ハンバーガーのセット等を店内で食べた。
 E その後,バイクのタイヤを交換しなければならないことを思い出し,YSP店に向かい,午後6時から6時30分ころ,YSP店に着いた。
 F YSP店ではバイクのタイヤを注文して,2,3分ほどで出て,伊勢丹新宿店に向かったが,トイレに行きたくなったため,記憶にあった本件公衆便所に向かい,午後7時20分ころ,本件駐車場所に,本件車両を駐車した。
   エ 原告は,上記イ,ウの認定に関して,本件事故当日の本件車両の使用状況が記載され,末尾に原告の署名押印のある平成19年11月29日付け覚書(乙1)及び平成20年2月21日付け覚書(乙2)につき,変造文書であると主張し,前者については,C調査員が原告が説明していない内容を記載した部分があり,それを見落として署名押印した,後者については,白紙の紙に署名押印させられたが,乙2号証のようなワープロ打ちされた書面に署名押印した記憶はないとの記載がある陳述書(甲43)を提出し,本人尋問においても,同旨の供述をする。
 しかし,乙1,2号証の原本には署名押印部分を加工した形跡は全くうかがわれないし,乙2号証の本文中には,原告が自己の印章によるものであることを自認する末尾に押印された印影と酷似する印影の訂正印が押印されていることなど,乙1,2号証の体裁から,変造文書とは到底認められず,原告の上記供述内容は信用できない。そして,他に上記イ,ウの認定を左右するに足りる証拠はない。
   オ 上記アないしウのとおり,原告の供述する本件事故当日の本件車両の使用状況は大きな変遷が認められる。
 とりわけ,本件事故当日の約3週間後であり最も記憶が新鮮であるはずの平成19年11月29日の調査(上記イ)の際の供述と,その後の供述(上記ア,ウ)では,(ア)中野区上高田5丁目所在の三友商事と新宿駅西口前にある中央三井信託銀行新宿西口支店に行った時間的先後,(イ)トイレを使用するために新宿駅南口前のマクドナルドに立ち寄ったのか,高田馬場付近にあるマクドナルドかファミリーレストランで食事をしたのかという点,(ウ)新宿区上落合2丁目所在のYSP店に行ったか否かという点で食い違っており,これらの相違は,およそ記憶違いや勘違いで説明することのできない相違といわざるを得ない。この点,原告は,平成19年11月29日の調査が長時間に及んだので疲れてしまい誤りに気が付かなかったなどと弁解するが(甲38),採用の余地はない。
 そして,原告が本人尋問において供述する本件事故当日の本件車両の使用状況(上記ア)についても,原告は,裏付ける証拠として甲24ないし28(枝番号を含む。)を提出するが,これらの証拠によっても,本件事故当日,中央三井信託銀行新宿西口支店のATMで入金があった事実は裏付けられるものの,その余の供述内容を裏付けるに足りるものではない。他方,証拠(乙9,原告本人)によれば,駒込にある店舗を原告が代表者を務める有限会社オフィスドリームが賃借していたのは平成19年10月10日までであったと認められるのであって,本件事故当日の午前中に,駒込にある原告の経営する店舗に立ち寄ったという原告の供述内容自体,その信用性に疑問を抱かざるを得ないし,午後5時ころにJR新宿駅西口前におり,新宿3丁目所在の伊勢丹新宿店に行く用事があったにもかかわらず,一旦,タイヤの注文を告げにYSP店に行くため,新宿から上落合2丁目まで往復しようとしたというのは,不可解・不合理な行動といわざるを得ないといえる。
   カ 確かに,ある日に,ある場所に自動車を駐車したという事実について,それを裏付けるに足りる客観的証拠を収集することが困難であることは否定できず,専ら,駐車した本人の供述に依拠することもやむを得ないものとはいえる。しかしながら,上記説示のとおり,原告の供述自体およそ記憶違いや勘違いで説明することのできない変遷をみせ,本人尋問における供述内容自体も,他の証拠から認められる事実と相容れなかったり,不可解・不合理な行動といわざるを得ない部分を含むものである。
 そして,原告は,本件訴訟提起の約2か月前の平成21年2月13日には,代理人弁護士を通じて,調査に関する同意を撤回する意思を表明し(甲15の1・2),本件事故当日における中央三井信託銀行新宿西口支店のATMからの入金時刻についても,被告会社代理人弁護士が行った弁護士法23条の2に基づく照会に対し,原告の了解が得られないことを理由に上記銀行が拒んだこと(乙7)によれば,原告からの照会ないし同意があれば容易に入金時刻が判明することが明らかであるのに,原告は照会に同意せず自ら照会もせず,原告の供述を裏付け得る入金時刻に関する証拠を提出しようとしないのである。
   キ 以上説示したところによれば,本件事故当日の午後7時ころから7時20分ころにかけて本件駐車場所に本件車両が駐車していたという原告主張事実が依拠する原告の供述自体,その信用性に多大な疑問を抱かざるを得ない。
  (2)ア また,原告は,原告が本件車両を駐車していた15分ないし20分程度の間に,第三者が本件車両を持ち去ったと主張し,その本人尋問において,本件車両の施錠の有無等につき,要旨次のとおり供述し,同旨の陳述書(甲30)を提出する。
 (ア) 本件車両を停車した後,エンジンを停止させ,鍵を抜き,ルイ・ヴィトンのバックから手荷物用の小さなバックを取りだし,ルイ・ヴィトンのバックは,人目に付かぬよう助手席の足下に隠した。
 (イ) 本件車両の鍵を置いた場所は覚えていない。
 (ウ) 本件車両から降りて,本件公衆便所に入り,用を足した。本件公衆便所に入っていた時間は数分程度である。本件公衆便所から出た後,本件公衆便所の先に本件スーパーがあることに気づき,牛乳などの食料品の買物をするため,本件スーパーに立ち寄り,15分ないし20分程度かけて1490円分の買物をし,本件駐車場所に戻ったところ,本件車両がなくなっていた。
   イ しかしながら,原告が本件車両を停車させた後ルイ・ヴィトンのバックから手荷物用の小さなバックを取りだし,ルイ・ヴィトンを人目に付かぬよう助手席の足下に隠す余裕がありながら,抜いた鍵を手荷物用のバックに入れなかったというのは不自然であるし,本件公衆便所を使用するために路上駐車をしながら,本件公衆便所で用を足した後に,突如,日用品の買物のために本件スーパーに立ち寄ったという行動自体,車の鍵を持っており施錠したものと誤信していたとしても,不自然といわざるを得ないのであり,原告の上記供述自体の信用性に疑問を抱かざるを得ない。
   ウ 一方,各項末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨によると,(ア) 本件車両には,盗難防止装置の一種であるイモビライザーが搭載されており,電子チップの搭載された専用鍵でなければ,エンジンは始動できない仕組みとなっていたこと(乙5),(イ) 本件車両の鍵は2本あり,1本は本件事故当日の運転に使用したものであり,もう1本は原告が自宅で保管していたこと(乙8),(ウ) 本件駐車場所は大久保通りの路肩の路上であり,通り沿いの街灯で夜間でも明るさは確保されていたこと(乙4,8,9),(エ) 本件駐車場所付近には大きなスーパーマーケットが2軒,戸山公園,飲食店,都営地下鉄東新宿駅の入口などがあり,午後7時ころでも恒常的な人の往来があり,大久保通りの交通量も少なくなく,上記店舗や本件公衆便所を使用する目的等による路上駐車車両も多くあったこと(乙4,8,9),(オ) 本件車両が松戸市内の空き地で発見されたときには,車室内はゴミが散乱した状態で原告のルイ・ヴィトンのバックは見当たらず,ルーフ・パネルや低い位置も含めた全パネルにわたる多数の線状痕が付けられていたこと(甲6,7,13,乙8,9)の各事実が認められるのであって,上記イ(ア),(イ)の各事実によれば,盗難があったとすれば,犯人は,原告が本件車両内に放置した鍵を利用して,本件駐車場所から自走して本件車両を盗んだものと考えざるを得ないが,明るさが確保されており,交通量や人通りも少なくなく,また,路上駐車でいつ運転者が戻ってくるのか予想し得ない状況の下で,車両盗ないし車上荒らしが敢行され,自動車に施錠がされず,かつ,その鍵が自動車内に放置されているという状況に遭遇して,自走して本件車両を盗むのに成功としたというのは,全くあり得ないとまでは断ずることはできないものの,あまりにも偶然が重なりすぎているとの疑問を抱かざるを得ない。
 そして,本件車両の発見後の状態も,ルーフ・パネルや低い位置も含めた全パネルにわたる多数の線状痕が付けられていたというのであって,本件駐車場所から自走によって本件車両の盗難に成功した第三者が,本件車両を放置する際,あたかも全損とすることを目的とするかのような多数の傷を全パネルにわたって付ける動機は考え難いのである。
  (3) 以上説示したところを総合すると,本件においては,事実A(本件車両が原告の主張する所在場所に置かれていた事実,争点1ア)及び事実B(原告以外の者がその場所から本件車両を持ち去った事実の有無,争点1イ)のいずれの事実についても,通常人が疑いを差し挟まない程度に確信ができる程度まで立証されたものとはいえず,結局のところ,「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的な事実が認めるに足りないというべきであり,本件盗難という保険事故が発生したものと認めることができないことに帰する。
 原告が,これまで同種の保険金請求をしたことがなく(原告本人),虚偽の事実を述べて保険金を請求するだけの確たる動機をうかがうに足りないことも,上記認定判断を左右するものではない。
 したがって,その余の点を判断するまでもなく,被告会社に対して,本件契約に基づく保険金の支払を求める原告の請求は理由がない。
  (4) なお,本件においては,第1回口頭弁論期日から5回の口頭弁論期日を重ね,3回の弁論準備期日を経て,証人尋問及び原告本人尋問を行ったが,最終準備書面の提出が予定されていた第7回口頭弁論期日の前になって,原告代理人から,警察に対する送付嘱託,調査嘱託及び警察官の証人尋問の申出があったものである。当裁判所が,捜査記録全般に関する送付嘱託については採用し,警察から送付に応じられないとの回答を受けた後,原告代理人に対して,調査嘱託等の理由について改めて確認したところ,原告代理人は,本件車両が発見された場所において,その発見者が,本件車両の様子をうかがっていた2名の不審者を目撃したという事実が捜査記録に顕れていることが最近になって判明したから,その発見者を証人尋問する前提として発見者の住所氏名を明らかにしたいと,その申出の理由を説明した。しかし,仮に,本件車両の発見者がそのような2名の不審者を目撃した事実があったとしても,上記(1)ないし(3)で認定説示した事実と総合すれば,「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的な事実を認めるに足りる事情とは到底いえないのであって,調査嘱託等の必要性は認められない。」

裁判年月日 平成20年 6月13日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平18(ワ)29920号
事件名 保険金請求事件
「第3 争点に対する判断
 1 争点(1)(原告以外の者が原告の占有に係る本件被保険車をその所在場所から持ち去ったか。)について
  (1) 争点(1)についての原告主張に沿う証拠としては,証人Bの証言及び原告本人尋問の結果があるのみである。
 しかし,証人B及び原告本人の供述には,不自然な点や客観的な裏付けのない点があり,信用性に乏しい。
 すなわち,証人B及び原告は,原告が,大型の外車に乗ってみたいとの気持ちから,Bの勧めに従って本件被保険車を購入したと供述する一方,原告は,その購入手続や保険加入手続を全てBに任せ,原告自身はこれを行っていないことを認めているところ,上記のような動機から本件被保険車を購入しようとした原告が,購入する自動車の選定の段階からすべての手続をBに任せ切りにしたというのは,不自然である。
 また,Bと原告は,原告が本件被保険車の代金1600万円余りを現金で支払ったと供述しているが,そのような供述は,原告が本件被保険車の盗難の有無について被告から依頼を受けた調査会社の調査員に対してした供述(郵便貯金から350万円を払い戻して支払に充てたなどとするもの。乙13)から変遷しているばかりか,そのように多額の代金の支払をしたにもかかわらず,領収書は受け取っていないとか,その現金を調達した方法について,原告の自宅にいわゆる箪笥預金として保管していたものを充てたとするなど,通常の取引観念からすると,不自然,不合理なものといわざるを得ないところ,そのような多額の現金が原告の自宅に保管されていたことやそれが上記代金の支払に充てられたことの裏付けとなる客観的な証拠は,存在しない。
 しかも,Bと原告は,本件被保険車が原告名義で登録された平成17年3月からそれが盗難に遭ったとされる同年12月までの間において,原告が本件被保険車に乗ったのは,せいぜい4,5回であり,本件被保険車のエンジンキー等の鍵は,予備のものも含めて,すべてBが保管していたと供述しており,原告のこのような本件被保険車の利用,保管の態様は,原告が前記のような動機から本件被保険車を購入したことが事実であるとすると,不可解というほかない。
 加えて,原告本人尋問の結果によれば,本件被保険車のシフトレバーの位置等,本件被保険車の構造や操作の仕方について,曖昧な知識,記憶しか有していないことがうかがわれ,また,Bも,その証人尋問において,同人は,当時本件被保険車以外にも高級外車といわれる自動車を保有しており,本件被保険車については,1週間に1回程度利用することがある程度であり,本件被保険車購入後も平成17年8月21日の本件保険契約締結までは,本件被保険車を被保険自動車とする任意保険に加入していなかったことを認める趣旨の供述をしていることからすると,原告において,真実,本件被保険車を自分で使用し,又は,Bに使用させるために,これを購入する意思があったといえるのか極めて疑わしいといわざるを得ない。
 そして,証拠(乙7,証人C)によれば,Bと原告は,調査会社の調査員に対し,本件被保険車が本件駐車場から持ち去られたのを発見したのが誰か,それを発見したのがいつか等の重要な点について,相互に異なる説明をしていたことが認められ,本件訴訟において,この点を被告から指摘されると,原告は,その本人尋問において,上記調査段階の説明と異なる供述をするに至っている。
 以上のとおり,原告が本件被保険車を原告やBが供述するとおりの正常な売買に基づいて購入したとするには,不自然,不可解な点が少なくなく,また,Bと原告の上記調査の際の供述と本件訴訟での尋問における供述との間には,相互の矛盾や変遷がみられることからすると,それらの供述を直ちに信用することはできず,それらの供述に基づいて本件被保険車が本件駐車場に駐車されていたとの事実やそれが第三者によって持ち去られたとの事実を認定することはできない。
  (2)ア 他方,証拠(甲7,11ないし15,乙2,7,8,13)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
 (ア) 本件被保険車(長さ539cm,幅193cm,高さ151cm,車両総重量2625kg)は,イモビライザー機能(エンジンキーに埋め込まれた電子通信チップが発信するIDコードと車両本体のエレクトリック・コントロール・ユニット(ECU)にあらかじめ記録されているIDコードを電子的に照合し,一致した場合にエンジンを始動させる装置)及びアラーム機能(純正のリモコンキーを使用する方法以外の方法でドアを開錠しようとする場合,車体に対して振動・傾斜が加わった場合などに大音量の警報音を発する装置)を装備している。純正のエンジンキーによらずに本件被保険車のエンジンを始動させるためには,ダッシュボードを取り外して,その内部に取り付けられているECUを取り外し,解析・交換した上,再びダッシュボードを取り付ける必要があり,その作業は,長時間を要し,技術的にも困難であるばかりでなく,そのような作業を行う前提として車内に侵入する際に,アラーム機能が作動して警報音が鳴り出す可能性が高い。また,本件被保険車を,エンジンを始動させて自走させる以外の方法,例えばレッカー車等に積載,連結する等の方法で移動させようとして,これに振動や傾斜を加えると,やはり,アラーム機能が作動して,警報音が鳴り出す可能性が高い。
 (イ) 本件駐車場は,早稲田通りと交差し,南北に走る2本の通路(側溝部分を含めた幅員は,それぞれ3,14mと3.33m)に挟まれた土地に設けられた露天の月極駐車場(駐車区画14台分)であり,住宅街の中に位置し,周囲は民家やアパートに取り囲まれていて,それらの民家やアパートの窓やベランダからは,本件駐車場の状況を容易に見通すことができる。上記通路の両側には,建物の壁や塀,電信柱等が迫っているため,上記のような大きさと重量を持つ本件被保険車をレッカー車等に積載,連結して上記通路を通行することは,それらの壁等に接触する危険性があるため,不可能とまではいえないにしても,容易ではない。
 (ウ) 原告が本件被保険車が盗難に遭ったとする平成17年12月5日午前零時ころから同月7日午後7時ころまでの間において,本件被保険車が本件駐車場に駐車されている状況や本件被保険車が本件駐車場から持ち去られる状況を目撃したり,本件被保険車の警報音が鳴っているのを聞いたりした近隣住民や本件駐車場の利用者がいたことは,うかがわれない。
   イ 上記認定のとおり,本件駐車場が人目に付きやすい住宅街の中にあること,本件被保険車にはイモビライザー機能やアラーム機能が装備されており,純正のエンジンキーを用いて本件被保険車のエンジンを始動させるのであれば格別,それ以外の方法でアラーム機能を作動させることなく本件被保険車を本件駐車場から持ち去ることは,容易でないこと,原告が本件被保険車が盗難に遭ったとする当時に本件駐車場に駐車中の本件被保険車やその持ち去りを目撃したり本件被保険車の警報音を聞いたりした者がいる形跡がないことが認められるのであり,これらの事実に,上記のような場所に駐車されている上記のような機能を備えた本件被保険車を純正のエンジンキーを用いる以外の方法で窃取しようとすれば犯行が目撃される可能性が高いということに容易に想到し得ることも併せ考えれば,上記当時に本件被保険車が本件駐車場に駐車されていたとは容易に認められないし,仮にその事実は認められるとしても,本件被保険車が原告以外の者によって上記のような方法で持ち去られたとの事実を認定することは困難である。
 もっとも,証人Bは,本件被保険車が盗難に遭ったとする時期より前に本件被保険車のリモコンキー1本を紛失していた旨証言しているが,第三者が原告やBと意を通じないでそのリモコンキーを入手し,これを用いて本件駐車場に駐車中の本件被保険車を持ち去ったことを認めるに足りる証拠はない。
 なお,原告は,ゴージャッキと称する器具を使用して本件被保険車が窃取された可能性があるとして,甲第31号証を援用するが,推測の域を出るものではなく,そのような証拠によっても,本件被保険車が本件駐車場に駐車されていたことが証明されるものではないし,そのような方法で本件被保険車を移動させることができる範囲には,自ずから限度があり,その範囲を超えて本件被保険車を持ち去ることには,前記認定のような困難があることに変わりはないから,上記証拠を考慮に入れても,前記の認定判断が左右されるものとはいえない。
  (3) 以上のとおり,原告が本件被保険車を窃取されたとする当時において,本件被保険車が本件駐車場に駐車されていたこと,及びこれを原告以外の第三者が持ち去ったことを認めることはできないから,争点(1)についての原告の主張は,理由がない。」

裁判年月日 平成19年 9月27日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平19(ネ)1062号
事件名 車両保険金等請求控訴事件
「第3 当裁判所の判断
 1 争点@(本件第1事故発生の有無)について
 (3) オ 上記アないしエに検討したところによれば,@本件センチュリー及び本件ベンツSが本件工場内に夜間駐車されていることを三井を含む控訴人らの関係者以外の第三者が知って車両窃盗を行う可能性は極めて低いこと,A控訴人一色及び控訴会社代表者二宮が本件センチュリー及び本件ベンツSの鍵を自宅に持ち帰らないで本件工場内の目につきやすい場所等に鍵も掛けないで保管していたということは,車両盗難等も経験している自動車販売・修理業者の行為として考えられないこと,B本件第1事故が発生したとされた後の三井の行動等は,高級車を盗難された車両所有者・使用者の対応とは考え難いこと,C三井は,暴力団組織との交遊がうかがわれること,D控訴人らは,保険金請求に係る盗難事故を偽装した別件事件にも関与していることがうかがわれること,E控訴人一色が三井に対し保険金相当額の支払をした旨の領収証の作成,盗難事故が発生したとされた直後の車載品の遺棄状況,ETCカードの利用等,一見すると,車両盗難事故が発生したことをうかがわせる徴表が作出されているが,これらがいずれも作為的で,不自然であることが認められる。
 以上の検討結果を総合すると,本件第1事故の内容とされる本件センチュリー及び本件ベンツSの本件工場からの持ち去りが三井及び控訴人らの関与することなしに発生したものと考えることには余りにも多くの疑問があり,したがって,本件において,被保険者以外の者が本件工場から被保険自動車である本件センチュリー及び本件ベンツSを持ち去ったことを認めることはできない。
  (4) 以上のとおりで,本件センチュリー及び本件ベンツSの盗難による車両保険金請求の要件である控訴人ら主張の本件第1事故発生の事実を認めることはできない。」

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