更新日:2026年10月13日
「投資したお金を出金できない」「仕事を始めるために高額な費用を請求された」「借金を返したのに担保を外してもらえない」。詐欺や悪質な取引が疑われるときは、追加の支払を急がず、契約内容と送金の経緯を確認することが大切です。このページでは、被害を防ぐための確認事項と、被害に気付いた後の返金・相談の方法を説明します。
すでに送金した方へ
まず、振込先の金融機関と警察に速やかに連絡してください。振込みを依頼した金融機関にも連絡し、組戻し等が可能か確認します。資料が全部そろうまで連絡を待つ必要はありません。「返金に税金・保証金が必要」と言われても、さらに送金せず、やり取りを保存してください。身の危険や犯行進行中の緊急時は110番、緊急でない警察相談は#9110、消費生活相談は188です。
1.詐欺と契約トラブルの違い
(1)刑事上の詐欺罪
刑法246条の詐欺罪は、人をだまして財物を交付させたり、財産上の不法な利益を得たりする犯罪です。典型的には、重要な事実についての虚偽の説明などによって相手を誤信させ、その結果として送金等をさせたかが問題になります。返済や商品の引渡しが遅れたことだけで、当然に詐欺罪になるわけではありません。契約時の説明、実際の資金使途、事業の実態、当初から履行する意思があったか等を調べます。
現行の法定刑は10年以下の拘禁刑です。拘禁刑は2025年6月1日に施行されました。施行前の行為には経過措置があるため、過去の判例や事例集の「懲役」という表記は、行為時の法律との関係で読む必要があります。組織的な犯行などでは、別の法律による処罰も問題になります。
(2)民事上の取消し・返還請求は別に検討できます
刑事事件としての立証が難しい場合でも、民法96条の詐欺取消し、消費者契約法4条の取消し、契約違反による解除・損害賠償等が認められる可能性があります。反対に、逮捕や有罪判決だけで被害金が自動的に返ってくるわけではありません。刑事責任の追及と、現実のお金の回収を並行して考えることが必要です。
相手に「契約書に署名したから取消せない」「自己責任だから一切返金しない」と言われても、それだけで結論は決まりません。契約書の文言に加え、契約に至るまでの説明・勧誘方法を確認しましょう。
2.被害に気付いた直後にすること
- 追加送金を止める。出金手数料、税金、認証料、違約金、凍結解除費用などと名目を変えて支払を求められても、その場で応じないでください。正当な債務の有無は別途確認します。
- 金融機関・決済事業者へ連絡する。振込日時、金額、銀行・支店・口座番号・名義を伝え、詐欺の疑いがあることを説明します。カード払いならカード会社、電子マネーなら発行会社、暗号資産なら利用した交換業者に被害を申告します。決済方法によって対応は異なり、取消しや補償が必ず認められるわけではありません。
- 証拠を保存する。広告、URL、SNSのアカウントID、会話全体、契約書、送金明細、出金拒否の画面、相手の連絡先を保存します。画面の一部だけでなく、日時や前後関係が分かる形が有用です。暗号資産では送付先アドレスと取引IDも控えます。
- 警察と弁護士へ相談する。「いつ・誰から・何と言われ・何を信じ・いくら支払ったか」を時系列に整理します。単なる未払いと扱われた場合にも、虚偽の説明と送金とのつながりを資料で具体的に示すことが重要です。
- アカウント等の安全を確保する。パスワードや本人確認資料を渡した場合、金融機関等へ知らせ、パスワード変更や利用停止を相談します。遠隔操作アプリを使わせられた場合は接続を切り、信頼できる端末から対応してください。
相手とのやり取りを削除したり、返金を受けるために新しい借入れをしたりすることは避けましょう。「被害金を必ず取り戻す」と近づく業者に調査料等を払わせる二次被害にも注意が必要です。
3.SNS・投資・暗号資産の詐欺
SNSの広告や投資グループ、マッチングアプリで知り合った相手から、株式・FX・暗号資産への投資を勧められる被害があります。著名人、金融機関の職員、投資の専門家などを名乗っていても、本人であるとは限りません。恋愛感情や信頼関係を利用するロマンス詐欺でも、最終的に投資や送金へ誘導されることがあります。
| 相手の説明・行動 | 確認すること |
|---|---|
| 「元本保証」「必ず利益が出る」「今日だけの特別枠」 | 利益の仕組みと損失リスクが説明されているか。焦らせる勧誘にその場で応じない。 |
| 振込先が個人名義、無関係な会社、毎回別の口座 | 契約相手と送金先が一致するか。相手が送ってきた連絡先だけで確認しない。 |
| 画面には利益が出ているが、出金できない | 画面上の残高が実在する資産を示すとは限らない。少額の出金成功だけで信用しない。 |
| 「出金するには税金・保証金の先払いが必要」 | 追加被害の典型的なきっかけ。振込前に金融機関・警察・弁護士へ相談する。 |
金融商品取引業等には、業務の種類に応じた登録が必要です。金融庁の公式情報で会社名・登録番号を調べ、登録業者の名称を盗用していないか、公式の所在地や電話番号も照合してください。登録があること自体は、利益や元本の保証ではありません。無登録であることと、個別の取引が詐欺であることも、法律上は区別して検討します。
4.株式担保ローン・証券担保ローンと無断売買
株式等を担保に融資を受ける仕組み自体が詐欺というわけではありません。しかし、「少額の自己資金で大きく儲けられる」と借入れを勧め、十分な説明をせずに取引を繰り返す、注文していない売買をする、株式自体が存在しないといった場合は問題です。
担保価格の下落により、追加担保の差入れや返済、担保処分が必要になる契約もあります。まず、金銭消費貸借契約、担保契約、売買委託契約、注文・約定履歴、手数料、利息、担保評価の資料を区別して確認します。取引を終了することと、借入債務がなくなることは同じではありません。
弁護士は、無断売買、説明義務違反、顧客の知識・経験・資産状況等に照らした不適切な勧誘、詐欺取消し、不法行為などの成立を検討します。現在の規制法は金融商品取引法であり、旧称「証券取引法」の説明をそのまま当てはめないよう注意が必要です。解除通知を送れば必ず証拠金が戻る、売却益を得られる、借金を払わずに済む、というものではありません。
5.不動産担保融資と転抵当――誰に返済すればよいか
転抵当とは、抵当権者が、その抵当権をさらに自己の債務等の担保として利用する仕組みです(民法376条)。たとえば、所有者が金融業者Aから借りて不動産に抵当権を設定し、Aがその抵当権を金融業者Bのための担保にする場合です。転抵当の設定自体は法律が認める制度であり、それだけで詐欺とはいえません。
重要なのは、転抵当について主たる債務者への通知・承諾があるか、返済に転抵当権者の承諾があるかです。民法377条2項により、所定の通知を受け、又は承諾した主たる債務者が、転抵当権者の承諾を得ずに弁済した場合、その弁済を転抵当権者に対抗できないことがあります。その結果、返済済みでも転抵当権を消せず、担保実行の危険が残る場合があります。
したがって、「転抵当があれば必ず同額を二重に支払う」という説明は正確ではありません。登記事項証明書、融資・担保契約書、通知書・承諾書、返済履歴を確認し、関係者の間で、支払先・金額・債務の消滅と、抵当権・転抵当権の抹消書類の交付を一体として調整します。独断で返済を停止したり、転抵当権者だけに支払ったりせず、期限前に弁護士へ相談してください。
根拠:民法376条・377条
6.ねずみ講とマルチ商法は区別して確認します
後から加入した人の出した金銭等を先に加入した人へ配当する、一定の仕組みを備えた「無限連鎖講(ねずみ講)」は、無限連鎖講の防止に関する法律で禁止されています。商品を扱うように見せていても、実質が金銭配当組織である場合があります。
これに対し、商品・サービスの販売組織を広げる「連鎖販売取引」は、特定商取引法による規制の対象です。すべてが直ちに違法になるわけではありませんが、虚偽の説明や不適切な勧誘は許されません。「友人を紹介すれば報酬が入る」「加入には商品購入や登録料が必要」と言われたら、売上げと紹介報酬の仕組み、継続費用、解約条件を確認しましょう。
法律の適用対象となる連鎖販売取引では、原則として法定の契約書面を受け取った日から20日間のクーリング・オフができます。商品の引渡しが後になる場合などは起算日の確認が必要です。期間後も中途解約・返品や取消しを検討できる場合があります。自分の損失を取り戻すために人を勧誘すると、他の被害者への責任を負うこともあります。
7.求人・有料研修・副業のトラブル
「採用には高額な研修が必要」「動画を見るだけで稼げる」「仕事を紹介するので先に教材を買ってほしい」など、収入を得るつもりが支払を求められる例があります。東京都も2026年9月30日、「商品をPRするだけ」という副業の勧誘から高額なサポート契約や借金につながるトラブルについて注意を呼びかけています。
雇用契約では使用者が労働の対価として賃金を支払います。ただし、資格取得講座などの別契約もあるため、労働者側が費用を払う場面は一切ない、支払を求められたら必ず詐欺、とは断定できません。採用の実態、研修の必要性・金額、会社の指示による参加か、費用負担の合意、返金条件などを確認する必要があります。
仕事の提供と引換えに費用を負担させる場合
仕事を提供・あっせんして収入が得られると勧誘し、その仕事のための商品購入や有料サービス等の負担をさせる取引は、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」に当たることがあります。該当すれば、法定の契約書面を受け取った日から数えて20日以内は、書面又は電子メール等の電磁的記録でクーリング・オフができます。
法定書面が交付されていない、不備がある、虚偽説明や威迫によってクーリング・オフを妨げられた場合には、20日を過ぎても行使できることがあります。単に副業という名称だけで適用が決まるわけではなく、電話勧誘販売等に当たる場合もあります。「事業者として契約した」と書かれていても、実態を確認しましょう。消費者金融から借りて支払った場合、販売契約の解約だけで借入債務まで当然に消えるわけではありません。
8.被害金を取り戻すための手続
(1)振り込め詐欺救済法の利用
預金口座等への振込みを利用した詐欺被害では、犯罪に利用された口座に残る資金から「被害回復分配金」を受け取れることがあります。SNS型投資・ロマンス詐欺も、振込みによる被害であれば対象になり得ます。銀行への被害申告だけで返金が確定するものではなく、所定の期間内の申請が必要です。
基本的な流れは、金融機関への被害申告・取引停止等の措置、預金等の債権消滅手続、支払手続の公告、被害者の申請、分配金の支払です。申請期間は公告で確認し、振込先金融機関へ提出書類を問い合わせてください。金融庁は、支払まで少なくとも半年以上かかるのが一般的と案内しています。
これらの手続は、弁護士に依頼して代行してもらうことも可能です。弁護士は、被害者の代理人として、金融機関への被害申告・口座凍結の要請、必要資料の整理、被害回復分配金支払申請書の作成・提出、金融機関との連絡・調整などを行うことができます。依頼する手続の範囲と費用は、事前にご確認ください。
引き出されて対象資金が残っていなければ、この制度からの回収はできません。複数の被害者がいれば被害額等に応じた分配となり、全額を回収できないこともあります。現金の手渡しや暗号資産の直接送付は、そのことだけでこの振込救済制度の対象にはなりません。別の民事・刑事上の回復手段を検討します。

(2)取消し・返還請求・損害賠償
だまされて契約した場合は、民法96条に基づいて意思表示を取り消し、原状回復として返還を求めることが考えられます。消費者と事業者の契約では、不実告知、断定的判断の提供等について消費者契約法4条が適用される場合もあります。詐欺行為による損害は、民法709条の不法行為として請求を検討します。
ただし、第三者がだました場合の契約相手の認識や、善意・無過失の第三者の保護など、取消しには制限もあります。口座名義人、紹介者、決済事業者が、関係したというだけで当然に全額の賠償義務を負うわけでもありません。それぞれの関与、故意・過失、受領した利益等を確認します。
(3)交渉・仮差押え・訴訟・強制執行
相手と財産が分かる場合は返金交渉を行い、財産が処分されるおそれがあれば仮差押えを検討します。仮差押えには請求権と保全の必要性の疎明、通常は担保の準備が必要です。判決等を得ても相手に差押え可能な財産がなければ回収できないため、調査・費用・見込みを先に検討します。
示談書には金額、支払期限、分割の場合の条件、清算条項の範囲などを明記します。全額入金前に「今後一切請求しない」などの条項へ同意すると、請求権の一部を失う場合があります。刑事手続で犯罪被害財産が回復される制度もありますが、適用対象と進行状況の確認が必要です。
9.判例・期限と弁護士による対応
(1)架空の配当金を受け取っていた場合の最高裁判例
最高裁平成20年6月24日第三小法廷判決は、米国債への投資を装った詐欺で、実際には投資せずに支払われていた仮装配当金の扱いを判断しました。詐欺を実行し、その発覚を防ぐ手段として交付された仮装配当金について、不法原因給付による利益として、被害者の損害額から損益相殺等によって控除することを認めませんでした。
この判例からは、途中で「配当」を受け取ったからといって、機械的に差引額だけが請求額になるとは限らないことが分かります。ただし、実際の被害弁償や元本返還まで一律に無視できるという意味ではありません。受け取った金銭の目的と実態を確認します。請求できる法律上の金額と、相手の資力により現実に回収できる金額も区別が必要です。
原文:最高裁平成20年6月24日判決(裁判所PDF)/関連:QA事例1070番
(2)取消し・請求の期限
| 手続 | 原則的な期間 |
|---|---|
| 民法上の詐欺取消し | 追認できる時から5年、行為の時から20年(126条)。 |
| 消費者契約法上の取消し | 原則として追認できる時から1年、契約締結から5年(7条)。霊感等による告知を用いた勧誘などには特例があります。 |
| 財産被害の不法行為による損害賠償 | 原則として損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年(民法724条)。 |
| 連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引のクーリング・オフ | 原則20日。法定書面、商品の引渡し、妨害の有無等によって起算点を確認します。 |
「追認できる時」は、単に契約日という意味ではありません。だまされていたことを知った時期などを具体的に確認します。警察に相談しただけで民事の期限が止まるわけではありません。古い契約では改正前の規定・経過措置も確認が必要です。
(3)弁護士が行うこと
弁護士は、契約・広告・会話履歴等を検討し、取消しや損害賠償の根拠、相手方の特定、口座凍結の要請、返金交渉、仮差押え・訴訟等を検討します。刑事面では、虚偽説明と被害の関係を整理し、被害届や告訴についての助言、必要に応じた警察への同行等を行います。依頼できる範囲は事件の内容によって異なります。
詐欺かどうか確信が持てない段階でも、契約や送金の前に相談することには意味があります。資料が不十分なまま相手を詐欺師と公表したり、報復を予告したりせず、証拠に基づく対応を進めましょう。
10.新銀座法律事務所への無料相談
「まだ支払っていないが不安」「返金を求めたい」「警察に何を説明すればよいか分からない」――まず概要をお知らせください。
新銀座法律事務所では、詐欺が疑われる取引について無料相談をご案内しています。無料の電話相談は、概要を伺い、5分程度を目安に一般的な見解をご案内するものです。詳しい資料検討や交渉・裁判等の依頼は、無料相談とは別に、対応の可否、範囲、費用を確認します。
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11.関連QA事例集・検索
過去の事例集には、当時の法令や制度の説明が含まれます。行為・契約の時期に応じて、現在の条文と併せてご参照ください。
関連解説:ねずみ講/詐欺事案の法律相談/法律相談事例集の総合案内/QA事例集一覧
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- 民法:96条、121条の2、126条、376・377条、709条、724条等。
- 刑法:246条(詐欺)等。
- 消費者契約法:4条、7条等。消費者庁・第7条逐条解説(PDF)。
- 特定商取引に関する法律/消費者庁・取引類型と制度の解説。
- 無限連鎖講の防止に関する法律。
- 金融商品取引法:金融商品取引業の登録・勧誘規制等。
- 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律。
- 金融庁・振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ(制度説明・申請書・説明図)。
- 金融庁・投資詐欺等に関する相談事例。
- 東京都・SNSがきっかけの副業トラブル(2026年9月30日)。
- 最高裁平成20年6月24日第三小法廷判決(PDF):仮装配当金の控除。
- 法務省・拘禁刑時代に向けた取組。
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