使用貸借と特別受益の関係|使用貸借権が特別受益に当たらない場合とは

家事・相続|土地の使用貸借と特別受益の関係、使用貸借が特別受益とならない場合|使用貸借契約の賃料相当額は特別受益に当たるか|使用貸借契約の終了時期の認定|使用貸借権の相続評価額の相場

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照条文

質問

私は、父名義の土地の上に自分で家を建てて、父と生活していました。母は既に亡くなっており、父の面倒は私と私の妻が見ていました。特に父に土地代等は払っていません。

先月、父が亡くなり、兄弟との間で相続の話になりました。兄弟の一人から、「ただで住んでたんだからその分遺産の取り分は少ないはず」と言われましたが本当でしょうか。また、私たち家族は家から出ていかなければならないでしょうか。

回答

1 本件のように、土地を無償で使用していた場合、土地所有者であるお父様と建物所有者であるあなたとの間で、使用貸借契約が締結されていると考えられます。この使用貸借契約は、貸主であるお父様が亡くなっても直ちに終了するわけではありませんが、各事情から判断される使用貸借契約の目的によっては、契約が終了してしまうこともあり得るため注意が必要です。また、その場合は、通常の賃貸借契約の終了と異なり建物買取を求めることはできないため、自らの負担で更地にする必要が出てきます。

2 これを避けるためには、遺産分割協議において、自ら土地を取得することですが、その際問題になるのは使用貸借権の負担付土地の評価です。下記のとおり、更地の1割から3割程度が使用貸借権の価値と考えられており、これを控除した評価額が土地の評価額ということになりますが、具体的な事情によって変わってきます。また、兄弟が主張している特別受益ですが、裁判例からすると、使用貸借権の設定を受けたことは特別受益に該当し、他方で無償利用していたことによる賃料相当額は特別受益には該当しない、と考えられます。

3 もっとも、使用貸借権の設定については、本件のように、土地上の建物で被相続人と同居し、その身の回りの世話をしていた(扶養していた)場合には、特別受益がない、あるいは黙示の持ち戻し免除があったとする裁判例もあります。いずれにしても、かなり法的な検討が必要になりますから、お近くの弁護士にご相談ください。

4 債権法および相続法改正後は、条文の変更はありますが、基本的な考え方は変わっておりません。

5 関連する事例集はこちらをご覧ください。

解説

第1 貸主の死亡と使用貸借契約の終了

1 使用貸借契約の終了時期

本件において、あなたは、無償でお父様名義の土地を借りていたことになります。この事情からすると、あなたとお父様との間では、民法上の使用貸借契約(民法593条)が成立しているものと思われます。

この使用貸借権は、借主の死亡によって終了します(民法599条)が、貸主に当たるお父様の死亡によって終了するわけではありません。相続開始後も使用貸借契約が存続し、あなたの使用貸借権が残る可能性もあります。

他方で、終了する期限を定めていない場合には、契約の目的に従った使用・収益を終わった時(民法597条2項本文)、あるいは使用及び収益をするのに足りる期間を経過したとき(旧同項ただし書、新598条1項)に、終了します。

そして、使用貸借権には建物買取請求権(借地借家法13条)がないため、他の相続人が遺産分割により土地を取得し、土地所有者として建物を収去して更地で返還するように求められた場合、(使用貸借契約が終了しているのであれば)基本的に更地にして出ていかなければならない可能性が出てきます(例外もあり得るのですが、この点については後述します)。

そのため、①「契約の目的に従った使用・収益」とは何を指すか、②「その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したとき」(これを相当期間といいます)とは何を指すか、本件における使用貸借契約の終了時期が問題になります。具体的な契約内容が契約書として残されていれば分かりやすいのですが、使用貸借は親族間の無償の貸し借りという事情が多いため、むしろ契約書が残されていない事の方が多いのが実情です。

2 契約の目的に従った使用・収益

まず、①「契約の目的に従った使用・収益」について、本件のように特段契約時点で目的を定めていない場合には、使用貸借契約を締結することになった事情(人的関係)も重要です。

過去の裁判例では、自活できるようになるまで、親の介護、内縁関係の継続、(建物使用目的で)建物が朽廃するまでの間、といった「契約の目的」が認定されています。この「建物が朽廃するまでの間」というのは、新築の建物を建てさせる許可を与えておきながら、例えば数年しか経過していないのに、まだまだ使えるはずの建物を取り壊して更地にして土地を返却させるというのは、当事者の合理的な意思に反すると考えることができます。

3 相当期間の経過

続いて、②「その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したとき」ですが、最判昭和45年10月16日集民101号77頁は、「その期間の経過が相当であるか否かは、単に経過した年月のみにとらわれて判断することなく、これと合わせて、本件土地が無償で貸借されるに至つた特殊な事情、その後の当事者間の人的つながり、上告人教会の本件土地使用の目的、方法、程度、被上告人の本件土地の使用を必要とする緊要度など双方の諸事情をも比較衡量して判断すべきもの」と判示しています。

最判平成11年2月25日 (判例タイムズ998号113頁)は、この最判の規範を踏襲したうえで次のように判示しています。

本件使用貸借の目的は本件建物の所有にあるが、被上告人が昭和三三年一二月ころ本件使用貸借に基づいて本件土地の使用を始めてから原審口頭弁論終結の日である平成九年九月一二日までに約三八年八箇月の長年月を経過し、この間に、本件建物で被上告人と同居していたKは死亡し、その後、上告人の経営をめぐってRと被上告人の利害が対立し、被上告人は、上告人の取締役の地位を失い、本件使用貸借成立時と比べて貸主である上告人と借主である被上告人の間の人的つながりの状況は著しく変化しており、これらは、使用収益をするのに足りるべき期間の経過を肯定するのに役立つ事情というべきである。

他方、原判決が挙げる事情のうち、本件建物がいまだ朽廃していないことは考慮すべき事情であるとはいえない。そして、前記長年月の経過等の事情が認められる本件においては、被上告人には本件建物以外に居住するところがなく、また、上告人には本件土地を使用する必要等特別の事情が生じていないというだけでは使用収益をするのに足りるべき期間の経過を否定する事情としては不十分であるといわざるを得ない。

本件においては、契約年数やその他の事情が不明であるため、判断が難しいところではありますが、仮に「父親の介護」が目的である、という認定になった場合は、お父様の死亡によって使用貸借の目的を終えた、という判断も出てしまう可能性が高いと言えます。

いずれにしても、仮に使用貸借契約の終了の有無について争いが生じた場合には、事情によっては建物を収去して出ていかなければならなくなる可能性が生じることになります。

この使用貸借契約の終了の問題を生じさせないためには、裁判所の手続に進む前に、今後の遺産分割協議において、本件の土地をあなたが取得する形で分割をおこなうことが必要です(この点は後述します)。

第2 使用賃借権と相続

1 遺産分割における使用賃借権の取り扱い

以上、貸主が亡くなった場合、死亡によってただちに終了するわけではないものの、契約の目的等によっては使用貸借契約が終了する可能性があり、これ(に伴う建物収去明渡請求)を避けるためには、自らが土地を取得することが確実である、と説明致しました。

その場合、使用貸借権(使用貸借権の負担のある土地の評価時に更地価格から控除すべき価額)をどのように評価するか、を検討する必要があります。

また、本件においては、ご兄弟が「ただで住んでいたんだからその分遺産の取り分は少なくなる」旨主張しているようですが、これは被相続人の土地を無償で住んでいたことが、特別受益(民法903条)として遺産分割の際に考慮されるべきではないか、という主張を意味します。

そこで、以下では、使用貸借権は、遺産分割の際にどのように評価されるか、また使用貸借によって得た利益をどのように遺産分割に反映させるかを説明します。

2 使用賃借権の相続における評価

まず、相続において使用貸借権をどのように評価するか、という問題です。仮に、遺産分割協議において、あなたが本件土地を取得するのであれば、その土地の評価額は、低ければ低いほど有利に働くことになります(他方、本件土地の取得が難しい(他の相続人が取得する)のであれば、評価額を下げることは御自身に不利に働きます)。

実務上、使用貸借権の評価額は、更地の1割~3割程度とされることが多いようです。

例えば、東京地判平成30年10月1日は、更地の価格を各査定価格の平均値(中間値)である3470万円とした上で、「本件建物に係る使用貸借関係は、一般に親族間に見られる使用貸借関係と大きく異なるところはないものと認められ、本件建物が非堅固建物であることからすれば、本件建物の土地利用権価格については、場所的利益として本件土地の評価額の1割とすることも考えられるところである。しかし、被相続人は、本件施設に入居する前は自身も本件建物に居住していたのであり、最終的に本件遺言により本件土地を被告に遺贈した経緯からすれば、仮に法律上はいつでも使用貸借契約を解除し得るとしても、現実的に被告の夫に対し本件建物の収去及び本件土地の明渡しを求めることとなる事態はおよそ想定していなかったものと認められる。このような点を考慮すると、上記使用貸借関係により本件建物について生じていた場所的利益は、一般的な使用貸借の中でも比較的強固なものであったというべきであり、相続開始時における客観的価格としては、本件土地の評価額の2割をもって土地利用権価格と評価するのが相当である。」として、「本件土地の土地利用権価格減価後の評価額は、2776万円となる」と判示しました。

以上のとおり、土地の評価額=更地の価格-使用貸借権の価格になるため、使用貸借権の価格を上げる事情を主張することを考えるべき、ということになります。具体的には、建築を許可した建物が堅固で長期に存続できることを示す資料や、使用貸借権設定時に当事者間で使用貸借権の存続期間が相当程度長期にわたることを想定していたことを示す資料などを提出することが考えられます。

3 使用賃借権付きの建物の利用と特別受益

(1) 使用賃借権の特別受益該当性

続いて問題になるのは、「被相続人の生前に、無償で土地を利用していたこと」が、特別受益(民法903条)に当たらないか、という問題です。

仮に、生前贈与等が特別受益にあたる場合には、その贈与等の額を実際の遺産総額に加えた金額を遺産の総額であるとみなして各人の相続分を計算したうえで、生前贈与を受け取っていた相続人の相続分から既に受け取っている生前贈与の額を差し引くという処理(これを「持ち戻し」といいます)がなされます。持ち戻し計算の結果、被相続人死亡後の遺産分割で相続分を受け取ることが出来なくなる(相続分無しとなる)場合もあります。

この点について、実務上は、被相続人がその生前に、相続人の一人に対して自らの土地に使用貸借権を設定した行為は、「遺産の前渡し」として原則として特別受益に当たる、と考えられています。使用貸借権の評価額に相当する生前贈与があったという考え方です。

この考え方の帰結として、使用貸借権の設定を受けた相続人が、当該土地を取得する場合には、①取得する土地は使用貸借権の負担付土地として更地よりも減額されて評価されるが、②生前に設定された使用貸借権は特別受益になるため、その評価額相当額が上記のとおり持ち戻されるため、③結局更地の評価額として算定される、ということになります。

ただし、後述のとおり特別受益にならない例外が存在するため、必ずしも持ち戻しの対象になるわけではありません。

(2) 賃料の特別受益該当性

なお、特別受益に関してもう一つ問題になるのが、「生前支払いを免れていた賃料について使用貸借権の設定(贈与)とは別の特別受益にならないか」という点です。

確かに、支払うべき土地代を支払っていないため、その分の(生前)贈与を受けているともいえそうです。しかし、東京地判平成15年11月17日(判例タイムズ1152号241頁、控訴審でも原判決の結論を維持)は、「本件土地の使用貸借権の価値をどのように評価するのが相当であるかということが問題となる。この点について、被告は、使用期間中の賃料相当額及び使用貸借権価格をもって本件土地の使用貸借権の価値と評価すべきであると主張する。しかし、使用期間中の使用による利益は、使用貸借権から派生するものといえ、使用貸借権の価格の中に織り込まれていると見るのが相当であり、使用貸借権のほかに更に使用料まで加算することには疑問があり、採用することができない。したがって、原告が太郎から受けた利益は本件土地の使用貸借権の価値と解するのが相当である。そして、鑑定の結果によれば、不動産鑑定士若林眞は、取引事例比較法に基づく比準価格及び収益還元法に基づく収益価格を関連付け、更に基準値価格を規準として求めた価格(規準価格)との均衡に留意の上、平成5年1月9日時点の本件土地の更地価格を算出し、これに15%を乗じた価格、すなわち1935万円をもって本件土地の使用貸借権価格としているが、その算出経過には不自然、不合理な点は認められない。」と判示し、これを否定しました。

特別受益は、遺産の前渡しがあった場合、分けるべき遺産が減少するため、これを是正するための制度であるから、使用貸借権の設定は特別受益に当たるのであるから、遺産の減少に直接関連しない地代相当額については特別受益に当たらない、という考え方のようです。

以上から、特別受益になり得るのは使用貸借権相当額(土地評価額の1割から3割程度)ということになります。

4 使用賃借権が特別受益に当たらない場合|扶養等の負担

もっとも、事案によっては、この使用貸借権の設定も特別受益にならないことがあります。

例えば、東京地判平成31年2月28日は次のように判示しました。

(ア)原告及び被告が幼少時から暮らしてきた旧家屋を本件一棟建物に建て替えるに際して、被相続人らは、3階建ての建物を建築して、原告家族、被告家族及びEが各階に居住することを予定していた。被告及びEは本件一棟建物及び本件建物3の建築資金として、900万円ずつ住宅ローンを組んで、2階と3階の区分所有権を取得したが、原告は建築資金を準備することができず、被相続人が900万円を負担し、本件建物1の区分所有権を取得した。

(イ)被相続人は、本件一棟建物を建てた後も本件建物2(離れ)で寝起きしており、本件建物1には原告が妻子と共に居住していた。なお、本件建物1と本件建物2(離れ)との距離は60cm程度であった。現状では、本件建物1の勝手口と本件建物2の入口との間に踏み台が設置されている。

(ウ)平成13ないし16年当時の被相続人名義の郵便貯金総合通帳(乙10)によれば、被相続人名義の不動産に係る固定資産税については、被相続人の上記口座から支払われている。

(エ)被相続人は、平成18年頃から認知症を発症したため、被相続人の食事やデイ・サービスの身支度、風呂などの世話については、原告、被告及びEが当番表を作成して分担して行い、財産管理については、平成18年10月から平成23年4月までは被告が、平成23年5月以降はEが行っていた。

これらの事情から、本件一棟建物を建築した経緯に照らせば、原告を含む兄弟3人が本件一棟建物に居住することが被相続人の意思に沿うものであったこと、被相続人は被告及びEに対しても、両名が区分所有している本件一棟建物の2階及び3階の敷地として本件各土地部分を無償使用させていること(争いがない)、原告も被告やEと共に、認知症を発症した被相続人の身の回りの世話を分担して行っていること、そもそも建物の使用借権は、土地の使用借権に比べて経済的価値も乏しいこと、以上の事実が認められる。

したがって、被相続人が原告に本件建物1を無償で使用させていたことを遺産の前渡しと評価することはできず、原告が生計の資本として贈与を受けたものということはできない。

かかる裁判例に照らせば、本件のように、土地上の建物において、被相続人と同居し、その身の回りの世話をしてきたような場合には、その扶養(療養看護)が土地の利用の対価になり得るため、特別受益はない(あるいは持ち戻し免除の黙示の意思表示(民法903条3項)があった)、とも考えられるところです。

第3 本件における具体的な対応

以上を踏まえて、本件における具体的な対応を考えてみます。

まず、お父様の遺産の全体を把握して遺産目録を作成し、遺産分割による本件土地の取得の可能性を検討する必要があります。

それを踏まえて遺産分割協議を行うことになりますが、使用貸借権の評価をどのように考えるか(そもそも評価額を上げた方があなたにとって有利になるのか)や特別受益の該当性の有無については、上記の裁判例等の考え方を踏まえて具体的な事情を元に主張していくことになります。また、使用貸借権の評価額については、正確に知るためには不動産鑑定士に鑑定書作成を依頼することも検討して下さい。

当該土地の他に遺産がないという場合は、本件土地を相続する代わりに代償金として他の相続人に対して金員を支払うことになります。仮に兄弟間での協議による分割が困難であれば、家庭裁判所の遺産分割調停の中での協議になりますが、実務上は代理人弁護士がついた段階での遺産分割協議により双方譲歩して協議成立する場合もあります。いずれにしても複数の法的検討が必要になりますから、早めに見通しを立てるためにも弁護士への相談をお勧めします。

以上

関連事例集

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参照条文
民法

第593条(使用貸借)使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

第594条(借主による使用及び収益)
第1項 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
第2項 借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
第3項 借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。

第595条(借用物の費用の負担)
第1項 借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
第2項 第583条第2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。

第596条(貸主の担保責任)第551条の規定は、使用貸借について準用する。

第597条(借用物の返還の時期)
第1項 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
第2項 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
第3項 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。

(借主による収去)
第598条 借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。

(借主の死亡による使用貸借の終了)
第599条 使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。

(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
第600条 契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。

(特別受益者の相続分)
第903条
第1項 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
第2項 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
第3項 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
第4項 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

第904条 前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。