新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1857、2019/03/12 10:28 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

【民事、インターネットトラブル、刑事事件の可能性、昭和23年3月16日最高裁判所第三小法廷判決】

ネットオークション落札者からの法外な金銭要求



質問:
大学生です。外国旅行をしてきた友人からブランドバッグをプレゼントして貰いましたが、気に入らなかったのでネットオークションで販売したところ、落札者から「これは偽物であり、詐欺罪・商標法違反・不正競争防止法違反にあたるから刑事告訴する。告訴されたくなかったら商品代金返却と、迷惑料として和解金50万円を払え」という要求が来ました。私は、その商品が偽物とは告げられておらず、偽物とは知りませんでしたが、それでも刑事事件になってしまうのでしょうか。落札者に対してどのように対応すべきでしょうか。



回答:
1、 偽ブランド品を本物と偽って故意に売却し、不当な利益を取得する行為は、刑法246条1項の詐欺罪にあたる可能性があります。
2、 また、他人の登録商標に関して何の権限も無いのに、商標が使用された偽ブランド品を故意に売却し譲渡する行為は、商標法37条違反、同78条の2違反として、刑事処分されるおそれがあります。
3、 他人の商品に関し何の権限も無いのに、他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用した商品を譲渡する行為は、不正競争防止法2条1項1号、同21条2項1号違反として刑事処分の対象となってしまうおそれがあります。
4、 いずれの罰則規定も、あなたが当該ブランド品が偽物であることについて、認識していることが要件となりますが、どの程度の認識があるかによって、立件されるかどうかが決まります。一般的な「確定的故意」の他、「認識ある過失」や、「未必の故意」というものもありますので、単に偽物と知らなかったというだけで犯罪とならないとは言えませんので注意が必要です。
5、 正式に刑事告訴・告発がなされると、あなたに対する取り調べが始まってしまいますし、当然、ブランド品を譲ってくれた友人にも事情聴取の要請が来ることになります。しかし和解金50万円を支払えというのも不当な請求ですから応じる必要はないでしょう。とはいえ慎重な対応が必要ですから、放置せずにお近くの弁護士事務所に御相談なさると良いでしょう。

解説:

1、 詐欺罪の可能性

 今回の偽ブランド品の売却行為は、刑法246条詐欺罪が成立してしまうおそれがあります。

刑法第246条(詐欺)人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

詐欺罪の構成要件は、「欺罔行為」「相手方の錯誤」「財物の処分行為」「財物の移転」によって構成されます。欺罔行為とは、人を騙して財物を交付させるような行為であり、偽ブランド品の売買であれば、「これは本物のブランド品だから、中古品であっても○○万円の価値がある」と売買を持ちかけるような行為です。

ネットオークションであれば、写真や説明文を添付して商品を本物として出品する「欺罔行為」、相手方がこれを本物のブランド品であると誤信する「相手方の錯誤」があり、この錯誤に基づいて、売買代金の支払い行為「財物の処分行為」があり、あなたがこれを受領「財物の移転」することにより、犯罪が成立します。

問題は、あなたが、当該ブランド品が偽物であることを知らなかったということです。この点については、後ほど「故意」の成否について説明致します。


2、商標法違反の可能性

 今回の偽ブランド品の売却行為は、商標法37条違反、同78条の2違反として刑事処分の対象となってしまうおそれがあります。

※条文抜粋
商標法第37条(侵害とみなす行為)次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
第二号  指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
第78条の2  第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 商標法違反は、5年以下の懲役ですから、実刑判決となる可能性もあり、非常に重い刑罰法規になっています。企業が商標を考案し登録し、商品を育てて販売していく企業活動が保護法益として保護されています。商標の保護が不十分となり、コピー品や粗悪品があふれてしまうと、結局は国民全体の不利益が大きくなってしまうためです。

 商標法37条、同78条の2違反の構成要件は、「商標使用権限が無いのに」、「商標またはこれに類似する商標を付した商品」を、第三者に交付若しくは到達させて「販売譲渡」する行為です。

 あなたが、ネットネットオークションで、「商標使用権限が無いのに」、写真や説明文を添付して商品を本物として「商標またはこれに類似する商標を付した商品」出品し、落札者にこれを送付到達させて「販売譲渡」すれば、商標法37条及び78条の2違反の行為と法的に評価されるおそれがあります。この場合の被害者は、オークションの落札者ではなく、商標登録者ということになります。落札者は被害者ではありませんので、刑事告訴(刑訴法230条)ではなく、刑事告発(刑訴法239条1項)をすることになります。

問題は、あなたが、当該ブランド品が偽物であることを知らなかったということです。この点については、後ほど「故意」の成否について説明致します。


3、 不正競争防止法違反の可能性

 今回の偽ブランド品の売却行為は、不正競争防止法2条1項1号、同21条2項1号違反として刑事処分の対象となってしまうおそれがあります。

※条文抜粋
不正競争防止法第2条(定義)
第1項 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一  他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
同第21条(罰則)
第2項 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  不正の目的をもって第二条第一項第一号又は第十四号に掲げる不正競争を行った者

 商標法違反とは異なり、不正競争防止法違反の場合は、商品に登録商標が使われていなくても法律違反となる可能性があります。

不正競争防止法2条1項1号、同21条2項1号違反の構成要件は、「他人の商品等表示に関して何ら権限が無いのに」、「需要者の間に広く認識されている商品表示と同一または類似の商品等表示を使用した商品を譲渡し」、「他人の商品と混同を生じさせる」行為です。

 あなたが、ネットネットオークションで、「権利者の了解無く」、写真や説明文を添付して商品を本物として「需要者の間に広く認識されている商品表示と同一または類似の商品等表示を使用した商品」を出品し、落札者にこれを送付到達させて「譲渡」し、「他人の商品と混同を生じさせ」れば、不正競争防止法2条1項1号、同21条2項1号違反の行為と法的に評価されるおそれがあります。この場合の被害者は、オークションの落札者ではなく、正規の商品販売者ということになります。落札者は被害者ではありませんので、刑事告訴(刑訴法230条)ではなく、刑事告発(刑訴法239条1項)をすることになります。

問題は、あなたが、当該ブランド品が偽物であることを知らなかったということです。この点については、次項で「故意」の成否について説明致します。


4、 故意の成立について

 本邦の刑法典は「責任主義」を採用しており、刑罰法規違反の結果を生ぜしめる行為があったとしても、「故意」または「過失」が無ければ責任がなく罰せられないこととされています(刑法38条1項)。例えば、寝ているときに、無意識で寝返りを打って、足が隣に寝ている人の頭にぶつかって、相手が怪我をしてしまったとしても、意識が無い行為なので罰せられないということになります。刑法38条1項但し書きで、特別規定がある場合は、故意犯の他、過失犯も処罰されると規定されています。

刑法38条(故意)
第1項 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
第2項 重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
第3項 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

 刑法38条1項では「故意」のことを、「罪を犯す意思」と規定されていますが、故意には、「確定的故意」の他、「未必の故意」も含むと解釈されています。

「確定的故意」とは、刑罰法規違反の犯罪事実の確定的実現を表象しつつ、これを認容することを意味すると解釈されています。個別の刑罰法規についての認識は必要ありませんが、刑罰法規の規範に直面しつつ、つまり「悪いことだとは分かっていながら」行為をすることとされています。例えば、人を殴ったら怪我をしてしまうだろうなという認識が傷害罪の故意であり、人の心臓付近をナイフで刺したら死んでしまうだろうなという認識が殺人罪の故意ということになります。

 これに対し「未必の故意」は、犯罪事実が必ず実現すると表象しているわけではないが、それでも構わない、犯罪事実が実現しても構わないと認容することを意味すると解釈されています(大審院昭和2年11月15日判決、最高裁昭和23年3月16日判決など)。裁判所は、そのような認識状態が故意と同様に法的非難に値すると法解釈をしているのです。

昭和23年3月16日最高裁判所第三小法廷判決
『しかし賍物故買罪は賍物であることを知りなからこれを買受けることによつて成立するものであるが、その故意が成立する為めには必すしも買受くべき物が賍物であることを確定的に知つて居ることを必要としない或は賍物であるかも知れないと思いながらしかも敢てこれを買受ける意思(いわゆる未必の故意)があれば足りるものと解すべきである故にたとえ買受人が売渡人から賍物であることを明に告けられた事実が無くても苛くも買受物品の性質、数量、売渡人の属性態度等諸般の事情から「或は賍物ではないか」との疑を持ちながらこれを買受けた事実が認められれば賍物故買罪が成立するものと見て差支ない(大審院昭和二年(れ)第一〇〇七号昭和二年十一月十五日言渡判決参照)』

 比較のために、故意には含まれない「認識ある過失」についても説明します。「認識ある過失」とは、犯罪事実の実現可能性のある事実を認識しながらも、犯罪事実の実現については表象せず、従って、犯罪事実の実現を認容していない精神状態を意味します。例えば、向かい合った人物に対して殴るそぶりを見せたが、向かい合った距離が離れているのでぶつからないと考えていた場合に、殴る動作をしたときに拳が相手に接触し相手が怪我をしてしまったような場合は、認識ある過失と評価されうることになります。

 それでは、今回の偽ブランド品の譲渡行為について、故意の成否はどのように考えるべきでしょうか。友人から品物を譲り受けたときに「偽ブランド品だよ」とは告げられていないのですから、偽ブランド品であることを確定的に認識していないともいえますが、未必の故意つまり、「偽ブランド品かもしれないが、それでも人に譲ってしまおう」という認識があるかどうかは、注意を要します。

 未必の故意の有無は、友人とあなたの詳細な供述や、友人が品物を購入したときの購入場所や購入価格や、友人からあなたに商品が渡されたときの言動、あなたがオークションに出品したときの入札代金、説明状況など、様々な事情を総合的に判断して、最終的に裁判所が事実認定することになりますが、未必の故意が成立しないかもしれないと検察官が判断した場合は、嫌疑不十分により不起訴処分とされることになります(刑事訴訟法248条)。


5、 対応方法

 このように見てくると、本件における刑罰法規違反の立件可能性は必ずしも明確であるとは言えないことになります。オークションの取引相手の主張には一応の法的根拠が有ると言えます。

 このような事案では、刑事事件化される前に、相手方(オークション落札者)との間で、二度と事件を蒸し返さないという趣旨の「清算条項付き」和解合意書・示談書を作成し、刑事事件の可能性も含めて問題を全て解決してしまうことが良いでしょう。

 その際の和解金は、当該商品の返却と落札代金の返還に加えて、偽ブランド品であることの確認(鑑定)に要した作業時間・日当・費用や、返却のために連絡に要した作業時間・日当など、迷惑料を加算することは一般的なことですが、これが数十万円以上になってしまうことは不当な要求であると言わざるを得ないでしょう。冷静な第三者である代理人弁護士を通じて穏便に和解成立できるよう交渉することをお勧め致します。

 万一相手方が高額の迷惑料に固執する場合は、そのような不当要求は恐喝罪の恐れがあると通告することも一つの交渉方法になってくるでしょう。但し、このようなことは当事者同士で連絡すると相手方が激昂してしまい、却って事態を悪化させてしまいかねませんので注意が必要です。お近くの弁護士事務所に御相談なさるのが賢明でしょう。


<参考条文>

刑事訴訟法第230条 犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。
第239条第1項 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
第2項 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
第248条  犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

商標法第37条(侵害とみなす行為)次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一  指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
二  指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
三  指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
四  指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
五  指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
六  指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為
七  指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
八  登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為
(損害の額の推定等)
第38条  商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した商品を譲渡したときは、その譲渡した商品の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、商標権者又は専用使用権者がその侵害の行為がなければ販売することができた商品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、商標権者又は専用使用権者の使用の能力に応じた額を超えない限度において、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を商標権者又は専用使用権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
2  商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額と推定する。
3  商標権者又は専用使用権者は、故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対し、その登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
4  前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、商標権又は専用使用権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

第78条(侵害の罪)商標権又は専用使用権を侵害した者(第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第78条の2  第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。


不正競争防止法

第1条(目的)この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
第2条(定義)
第1項 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一  他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
二  自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為
三  他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
四  窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「不正取得行為」という。)又は不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。以下同じ。)
五  その営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為
六  その取得した後にその営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為
七  営業秘密を保有する事業者(以下「保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為
八  その営業秘密について不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為
九  その取得した後にその営業秘密について不正開示行為があったこと若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為
十  第四号から前号までに掲げる行為(技術上の秘密(営業秘密のうち、技術上の情報であるものをいう。以下同じ。)を使用する行為に限る。以下この号において「不正使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為(当該物を譲り受けた者(その譲り受けた時に当該物が不正使用行為により生じた物であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)が当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為を除く。)
十一  営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)
十二  他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)
十三  不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為
十四  商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為
十五  競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為
十六  パリ条約(商標法 (昭和三十四年法律第百二十七号)第四条第一項第二号 に規定するパリ条約をいう。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法 条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。以下この号において単に「権利」という。)を有する者の代理人若しくは代表者又はその行為の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者が、正当な理由がないのに、その権利を有する者の承諾を得ないでその権利に係る商標と同一若しくは類似の商標をその権利に係る商品若しくは役務と同一若しくは類似の商品若しくは役務に使用し、又は当該商標を使用したその権利に係る商品と同一若しくは類似の商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは当該商標を使用してその権利に係る役務と同一若しくは類似の役務を提供する行為
第2項 この法律において「商標」とは、商標法第二条第一項 に規定する商標をいう。
第3項 この法律において「標章」とは、商標法第二条第一項 に規定する標章をいう。
第4項 この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。
第5項 この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。
第6項 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。
第7項 この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録のために用いられる機器をいう。以下同じ。)が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
第8項 この法律において「プログラム」とは、電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。
第9項 この法律において「ドメイン名」とは、インターネットにおいて、個々の電子計算機を識別するために割り当てられる番号、記号又は文字の組合せに対応する文字、番号、記号その他の符号又はこれらの結合をいう。
第10項 この法律にいう「物」には、プログラムを含むものとする。

第3条(差止請求権)
第1項 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
第2項 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第五条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

第4条(損害賠償)故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、第十五条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密を使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。


第21条(罰則)
第1項 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為(人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいう。以下この条において同じ。)又は管理侵害行為(財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律 (平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項 に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の保有者の管理を害する行為をいう。以下この条において同じ。)により、営業秘密を取得した者
二  詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、使用し、又は開示した者
三  営業秘密を保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得した者
イ 営業秘密記録媒体等(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体をいう。以下この号において同じ。)又は営業秘密が化体された物件を横領すること。
ロ 営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成すること。
ハ 営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装すること。
四  営業秘密を保有者から示された者であって、その営業秘密の管理に係る任務に背いて前号イからハまでに掲げる方法により領得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用し、又は開示した者
五  営業秘密を保有者から示されたその役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。次号において同じ。)又は従業者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、その営業秘密を使用し、又は開示した者(前号に掲げる者を除く。)
六  営業秘密を保有者から示されたその役員又は従業者であった者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その在職中に、その営業秘密の管理に係る任務に背いてその営業秘密の開示の申込みをし、又はその営業秘密の使用若しくは開示について請託を受けて、その営業秘密をその職を退いた後に使用し、又は開示した者(第四号に掲げる者を除く。)
七  不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、第二号若しくは前三号の罪又は第三項第二号の罪(第二号及び前三号の罪に当たる開示に係る部分に限る。)に当たる開示によって営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者
八  不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、第二号若しくは第四号から前号までの罪又は第三項第二号の罪(第二号及び第四号から前号までの罪に当たる開示に係る部分に限る。)に当たる開示が介在したことを知って営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者
九  不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、自己又は他人の第二号若しくは第四号から前号まで又は第三項第三号の罪に当たる行為(技術上の秘密を使用する行為に限る。以下この号及び次条第一項第二号において「違法使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者(当該物が違法使用行為により生じた物であることの情を知らないで譲り受け、当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者を除く。)
第2項 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  不正の目的をもって第二条第一項第一号又は第十四号に掲げる不正競争を行った者
二  他人の著名な商品等表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又は当該信用若しくは名声を害する目的で第二条第一項第二号に掲げる不正競争を行った者
三  不正の利益を得る目的で第二条第一項第三号に掲げる不正競争を行った者
四  不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第二条第一項第十一号又は第十二号に掲げる不正競争を行った者
五  商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をした者(第一号に掲げる者を除く。)
六  秘密保持命令に違反した者
七  第十六条、第十七条又は第十八条第一項の規定に違反した者
第3項 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  日本国外において使用する目的で、第一項第一号又は第三号の罪を犯した者
二  相手方に日本国外において第一項第二号又は第四号から第八号までの罪に当たる使用をする目的があることの情を知って、これらの罪に当たる開示をした者
三  日本国内において事業を行う保有者の営業秘密について、日本国外において第一項第二号又は第四号から第八号までの罪に当たる使用をした者
第4項 第一項(第三号を除く。)並びに前項第一号(第一項第三号に係る部分を除く。)、第二号及び第三号の罪の未遂は、罰する。
第5項 第二項第六号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第6項 第一項各号(第九号を除く。)、第三項第一号若しくは第二号又は第四項(第一項第九号に係る部分を除く。)の罪は、日本国内において事業を行う保有者の営業秘密について、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。
第7項 第二項第六号の罪は、日本国外において同号の罪を犯した者にも適用する。
第8項 第二項第七号(第十八条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三条 の例に従う。
第9項 第一項から第四項までの規定は、刑法 その他の罰則の適用を妨げない。
第10項 次に掲げる財産は、これを没収することができる。
一  第一項、第三項及び第四項の罪の犯罪行為により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
二  前号に掲げる財産の果実として得た財産、同号に掲げる財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他同号に掲げる財産の保有又は処分に基づき得た財産
第11項 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律 (平成十一年法律第百三十六号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)第十四条 及び第十五条 の規定は、前項の規定による没収について準用する。この場合において、組織的犯罪処罰法第十四条 中「前条第一項各号又は第四項各号」とあるのは、「不正競争防止法第二十一条第十項各号」と読み替えるものとする。
第12項 第十項各号に掲げる財産を没収することができないとき、又は当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、その価額を犯人から追徴することができる。


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