新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1685、2016/05/16 12:00 https://www.shinginza.com/qa-roudou.htm

【労働事件、団体交渉申し入れと具体的対応、配置転換の適法性とその具体的条件、東亜ペイント事件(最二小判昭和61年7月14日判決)東京地方裁判所平成27年7月9日判決】

団体交渉申し入れ書が届いたときの対応


質問:
 当社は,精密機器の製造メーカーです。当社の行っている一部の業務について,業績が大きく減少したため,いくつかの部署を閉鎖し,一つの部署に再編成することとなりました。再編時期と重なった病気休職明けの従業員がいたのですが,その人物が適切な人材と考えたため,その従業員に新規開設部署の担当になるように,配置転換命令を出しました。そうしたところ,その従業員が依頼した労働組合から,団体交渉申入書が突然届き,配置転換命令の撤回を求めるともに,協議をしたいという申入れがありました。これについて,どのように対応したらよいでしょうか。



回答:

1 労働組合からの団体交渉申入れを拒否した場合,不当労働行為として,従業員が受ける損害の賠償といった民事上の責任,刑事罰,行政上の責任(労働委員会からの断行応諾命令)といった制裁を受ける可能性があります。
 正当な理由があれば団体交渉を拒否することもできますが,ほとんど認められることはないため,会社としては団体交渉に対して適切な対応をすることが必要です。

2 配置転換命令は,会社の権限で行うことができるのが原則ですが,当該従業員の雇用契約において勤務地・職種を限定している場合は、限定を超える配置転換命令はこれを行うことができません。事前に,雇用契約書や雇用条件を詳細に確認しておく必要があります。
 また,このような限定契約がなくても,配置転換に業務上の必要性がない場合,不当な動機・目的による場合,労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を受ける場合には,配置転換命令は違法となり効力が認められません。したがって,新規開設部署を設ける必要性(会社業績の悪化などの客観的状況),その従業員をその部署に配置することが適切であること,その労働者の受ける不利益が大きくないこと(労働者の個別的状況を把握する必要があります)を説明できるよう事前に十分に準備しておく必要があるでしょう。

3 上記の適法性の検討の結果,従業員の要望を受け入れる場合には,その旨の回答書を労働組合に送付し,団体交渉請求の取下げを目指すことになります。配置転換が適法であるとして争う場合には,申入書に対する回答書を送付し,団体交渉の日時・場所等を決定の上,労働者と個別に交渉する必要があります。この場合も,労働者を説得するだけの綿密な準備が必要です。労働者と条件がまとまった場合には,合意書(労働協約)を交わすことになります。交渉がまとまらない場合には,従業員から別途訴訟などの法的手続が取られることになるかと推測されますが,こちらの主張の正当性を裁判所などの第三者機関に示せるように準備しておくす必要があるでしょう。
 労働組合もこのような交渉については専門的経験を有していますので,こちらも使用者(会社)側の労務問題に詳しい弁護士(顧問弁護士)を選任・相談の上,対応することが必須と思われます。

4 配置転換に関する事例集として1451番1141番1045番828番5番等を御参照下さい。


解説:

第1 団体交渉権の性質,団体交渉申入れを拒否できるか

 1 労働基本権の憲法上の保障

   本件で,貴社は従業員の依頼した労働組合から,配置転換命令の撤回を求める団体交渉の申入れを受けたということですので,まず,その団体交渉権の内容について検討していきます。

   団体交渉権とは,労働者の団体がその代表を通じて,労働条件について使用者と交渉をする権利のことをいいます。個別の労働者が,労働組合に依頼して,使用者と労働条件について交渉することも保護の対象になります。団体交渉権は,団結権,団体行動権と共に憲法上労働者に認められた労働基本権の一つです。

   この労働基本権は,使用者(主に会社など)と対等の立場に立てない労働者に,団結して使用者と交渉し,時には集団として行動をする権利を保障することによって,使用者との実質的な対等を実現することを目的とするものです。

   会社としては,このような団体交渉が憲法上認められた権利であることを十分に認識して,対応に当たる必要があります。

 2 団体交渉権の権利としての効果

   この団体交渉権が,憲法上の権利として保障されたことの効果として,法律上は,刑事免責と民事免責,行政的救済を受けることができるという効果があります。

   刑事免責とは,労働者が正当な争議行為を行った場合,労働組合や労働者に国家が刑事罰を課してはならないというものです。また,民事免責とは,正当な労働行為を理由として,従業員らに対して民事上の責任(金銭的な損害賠償請求)を追及することはできないことをいいます。また,労働委員会による行政的救済も保障されています。

 3 不当労働行為の禁止(団体交渉の拒否の禁止)

   上記のように,団体交渉権が法律上保障されたものである結果,会社には団体交渉に応じる必要が出てきます。

   使用者(会社)は,「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」は禁止されています(労働組合法7条2号)。上記のとおり,団体交渉権は,労働者が団体を結成し,または既存の労働組合に依頼することによって,集団として使用者である会社と対等に交渉することによって,実質的な平等を実現する手続ですので,団体交渉を拒否されたのであれば,労働基本権を保障した意味が無くなってしまいます。したがって,法律上,使用者である会社が正当な理由なく団体交渉を拒否することは禁じられています。

   上記条文を読むと,「正当な理由」がある場合には団体交渉を拒否できるようにも読めますが,実際上は正当な理由が認められることはほとんどなく,会社の都合による団体交渉の拒否は労働組合法に反する可能性が高いでしょう。特に,初回の団体交渉であり,それなりに法律上の理由があるような団体交渉申入れの場合には,少なくとも,一度は話合いに応じなければなりません。

   仮に正当な理由のない団体交渉申入れの拒否の場合,不当労働行為として,各都道府県に設置された都道府県労働委員会に不当労働行為救済の申し立てを行うことによって,労働組合から会社に対して,行政上の責任を追及することが可能となっています。不当労働行為を行った場合には,企業イメージが十分に損なわれる場合もありますので,会社としては,団体交渉の申入れ自体は受入れ,その中で適切な対応を取っていくことが必要になります。

第2 配置転換命令の適法性

 1 配置転換命令の意義

   以上,会社としては団体交渉申し入れに対しては少なくとも対応の必要性があることになりました。

   それでは次に,労働組合側の主張である,「配置転換命令の撤回」の適否について検討していきます。

   配置転換とは,従業員の配置の変更であって,職務内容はまたは勤務時間が相当の長期間にわたり変更されるものをいいます。このうち,同一の勤務地内の勤務箇所(所属部署)の変更を配置転換といい,勤務地の変更が転勤といわれています。使用者は労働契約上の権利として、従業員に対する指揮命令権を有しており、配置転換、転勤命令は使用者の指揮命令権の行使として認められることになっています。

 2 配置転換命令の適法性の判断

   次に,配置転換はどのような場合に適法で,どのような場合に違法となるのでしょうか。この点については,労働契約上、使用者に認められる指揮命令権の正当な行使になるかが問題となりますが、ある程度確立した裁判例がありますので,それに即して破断していきます。ポイントは2点あります。

 (1)職種・勤務地限定契約の有無

   当該従業員との間においては,必ず雇用条件を記載した雇用契約書などの書面を作っていると思われます。当該雇用契約において,労働者(従業員)の職務や勤務地が限定されている場合には,会社側で一方的に従業員の職種や勤務地を変更することはできません。

   したがって,まずは当該従業員の雇用契約書,内定時の資料,雇用条件変更時には条件変更の書面を遡って検討する必要があります。特に「職種●●」,「勤務地●●」と明記されているような場合には,配置転換を法律上命じることができない可能性が高いでしょう。

(2)配置転換命令の適法性(裁判例による判断)

  仮にこれらの限定契約がない場合であれば、原則として使用者の判断で配置転換命令をすることができることになるはずですがにも,裁判例上,配置転換命令には一定の制限が課されています。

  東亜ペイント事件(最二小判昭和61年7月14日判決)などの確立した裁判例によれば,使用者である会社は,業務上の必要に応じ,その裁量により労働者である原告の勤務場所を決定することができるものとされており,配置転換命令は会社の権利として行うことができるのが原則になっています。

  しかしながら,判例上,無限定に配置転換命令を行うことはできません。東亜ペイント事件を元にした東京地方裁判所平成27年7月9日判決は,配置転換命令が違法になる場合として,以下のように述べています。

  「当該配転命令権を無制約に行使することはできず,これを濫用することの許されないことはいうまでもないところ,当該配転命令につき業務上の 必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても,当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対 し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなど,特段の事情の存する場合でない限りは,当該転勤命令は権利の濫用になるものでは ないというべきである」

  したがって,会社には配置転換命令の権限があるものの,(ア)配置転換命令に業務上の必要性が存在しない場合,(イ)配置転換命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものである場合,(3)労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合など,特段の事情がある場合には,権利の濫用として当該配置転換命令は違法無効になるとされています。

   ここにいう,業務上の必要性とは極めて高度な必要性ではないものとされ,会社の判断が一定程度は尊重されることになりますが,それなりの合理的な理由を説明できる必要があります。例えば,会社の業績悪化を原因とするのであれば業績について客観的な数字を示す必要がありますし,旧部署を閉鎖する理由や新部署設立の必要性や合理性について,根拠に基づいて労働組合に説明する必要があるでしょう。

   また,不当な動機・目的でないというためには,当該配置転換命令が,その従業員を狙い撃ちにしたものではないということ説明しなければなりません。この点は,上記の業務の必要性が高ければより目的の正当性を説明しやすいですし,その従業員の能力的に新部署における業務に適しているなどの事情があれば,正当な配置転換命令と判断されやすいものと考えられます。

   そして,労働者の受ける不利益の内容ですが,新部署での労働条件が前の部署と大きく変動がない(給与などの待遇面に変動がない,勤務地が大きく変更していない)ような場合には,著しい不利益にはならないと思われます。この点については,労働者の個別的な事情によって大きく異なってきますので,団体交渉の際に労働者から詳しい事情聴取を行う必要があるでしょう。

   以上,検討してきたとおり,配置転換命令の適法性を判断するにおいて最も重要なのは業務上の必要性となりますので,労働組合との団体交渉時にはこの点の合理的な説明を十分できるように準備しておく必要があります。

第3 団体交渉申入れに対する具体的対応

 1 団体交渉申入書の確認

 上記述べてきたとおり,団体交渉申入れについては,応じなければ様々な重大な不利益を被る可能性が高いですので,綿密な準備の上でこれに応じる必要があります。以下,具体的な対応について検討していきます。
   通常,労働組合からの団体交渉の申入れは,「団体交渉申入書」,「要求書」といった書面にて申し入れられるのが通例です。まずは,その内容を詳細に検討する必要があるでしょう。

(1)団体交渉申入書を受け取った場合,当該労働組合の名称,担当者を確認します。労働組合の情報については,事前に調査しておく必要があるでしょう。

   各労働組合に応じて,その活動方針は大きく異なるようです(金銭的解決を主とする団体,使用者の反省を強く求める団体など)ので,組合に応じて対応を検討する必要があります。また,当該労働組合に上部団体がいるような場合には,そちらもチェックする必要があります。

(2)団体交渉の議題を確認する必要があります。本件では,配置転換命令の撤回が議題になっていますので,上記のとおり,配置転換命令の適法性について会社内で十分な検討を行っておく必要があります。

(3)団体交渉申入書に,団体交渉を行う場所,日時があれば,その時間帯で対応ができるかを検討する必要があります。ただ,日時の指定は労働組合側で一方的に行ったものですので変更が全くできないわけではありません。組合の指定する日程では、準備ができないあるいは、何らかの事情で対応が困難ということであれば組合側と協議して適切な日時,場所での交渉を決定していくことが可能です。

 2 団体交渉申入れに対する回答書の作成

   次に,団体交渉申入書の内容をよく検討した上で,回答書を作成する必要があります。ただ,回答書においては,詳細な反論を行う義務まではありません。実際の交渉日時・場所についての連絡でもやむを得ないと思われます。回答については,書面で行うことが望ましいと思われます。

   日時・場所の指定の他には,どのような人物(役員,代理人弁護士など)を出席させるかも連絡する必要があります。

   また,検討の結果,配置転換命令を撤回するなど,従業員の要望を受け入れるという結論も十分にあり得るところです。その場合には,配置転換命令の撤回の回答を行う旨の回答を行います。そうした場合,労働組合も団体交渉請求自体を取り下げる可能性が相当程度あります。ただ,復帰後の扱いについては従業員と協議する必要があるでしょう。

   回答書の作成においては,労働事件に詳しい(顧問)弁護士に相談しながら進めていくことをお勧めします。

3 団体交渉における対応

  日時等の条件が詰まったら,実際に団体交渉に応じることとなります。団体交渉においては,使用者は誠実に交渉を行う義務(誠実交渉義務)があり,不誠実な交渉態度の場合,それは団体交渉の拒否と異ならないこととなります。

  団体交渉においては,労働組合から団体交渉の議題(配置転換命令の撤回)について,要求事項の説明がなされた後,使用者(会社)からそれに対する回答,必要に応じて資料の提示,それに対する労働組合からの回答,と言った順番で協議がなされることになります。

  従業員側の主張に対し,会社としては配置転換に関する業務上の必要性,違法・不当な動機がないこと,従業員の不利益は大きいものではないこと,といった裁判例上の基準に従い,詳細に会社の正当性について主張をしていくことになります。

  1回で双方折り合いがつかない場合には,何度か交渉の日程を設けることになることになります。団体交渉において協議された内容については,出席者,日時,交渉事項,交渉の要旨などを記載した議事録の作成が望ましいでしょう。

  交渉を繰り返すことによって,双方が合意できるか否か,妥協点を探っていくことになります。仮に,従業員と会社の間において,条件が決まった場合,労働組合と会社(使用者)との間において,合意書を作成する必要があります。これは「労働協約」と呼ばれるもので,就業規則よりも強い効力を有します。この合意書に,会社も労働者も拘束されることになります。合意書はこのように極めて強い法的効力を持ちますので,内容作成に当たってはやはり弁護士の確認を取る必要性が高いといえます。

  一方で,誠実に交渉を行ったとしてもどうしても会社として条件を受け入れられない場合もあります。会社は誠実交渉義務を負っているものの,労働組合の主張を全て受け入れる義務まではありません。ただ,会社としては,何度か交渉自体は行った上で,労働組合の提示する条件が受け入れられない合理的な理由,配置転換命令を維持することの正当な理由があることを十分に説明しておく必要があるでしょう。

  交渉打ち切りとなった場合,労働委員会によるあっせん手続や,労働審判や裁判などの法的手続に移行することとなります。

4 終わりに

  労働組合は,団体交渉を専門的に行っているところもあり,組合担当者は、非常に豊富な経験を有していることが多いです。そのため,交渉においては会社が不利になることも多いでしょう。したがって,組合側が提示する議題については,詳細な法律的見地からの検討,会社の行った処分の合理性を示す資料と言った検討・対応が必要不可欠といえます。

  突然労働組合から団体交渉申入れがあって対応に困っている場合には,弁護士に相談されることを強くお勧めします。


<参照条文>
日本国憲法
第二十八条  勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

労働組合法
(労働組合)
第二条  この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。
一  役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
二  団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの。但し、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、且つ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
三  共済事業その他福利事業のみを目的とするもの
四  主として政治運動又は社会運動を目的とするもの

(労働者)
第三条  この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。

   第二章 労働組合

(労働組合として設立されたものの取扱)
第五条  労働組合は、労働委員会に証拠を提出して第二条及び第二項の規定に適合することを立証しなければ、この法律に規定する手続に参与する資格を有せず、且つ、この法律に規定する救済を与えられない。但し、第七条第一号の規定に基く個々の労働者に対する保護を否定する趣旨に解釈されるべきではない。
2  労働組合の規約には、左の各号に掲げる規定を含まなければならない。
一  名称
二  主たる事務所の所在地
三  連合団体である労働組合以外の労働組合(以下「単位労働組合」という。)の組合員は、その労働組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取扱を受ける権利を有すること。
四  何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によつて組合員たる資格を奪われないこと。
五  単位労働組合にあつては、その役員は、組合員の直接無記名投票により選挙されること、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあつては、その役員は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により選挙されること。
六  総会は、少くとも毎年一回開催すること。
七  すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によつて委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少くとも毎年一回組合員に公表されること。
八  同盟罷業は、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しないこと。
九  単位労働組合にあつては、その規約は、組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあつては、その規約は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと。

(交渉権限)
第六条  労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。

(不当労働行為)
第七条  使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一  労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
二  使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
三  労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
四  労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第二十七条の十二第一項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法 (昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

<参考判例>
東京地方裁判所平成27年7月9日判決

『2 争点(2)(本件配転命令の違法・無効性)について
(1)本件労働契約において,使用者である被告会社は,業務上の必要に応じ,その裁量により労働者である原告の勤務場所を決定することができるものという べきであるが,当該配転命令権を無制約に行使することはできず,これを濫用することの許されないことはいうまでもないところ,当該配転命令につき業務上の 必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても,当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対 し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなど,特段の事情の存する場合でない限りは,当該転勤命令は権利の濫用になるものでは ないというべきである(最高裁昭和61年7月14日裁判集民事148号281頁参照)。
(2)そこで,本件配転命令につき,業務上の必要性,不当な動機・目的の有無,原告に対する通常甘受すべき程度を著しく超える不利益の有無等の観点から,権利濫用となるべき前記特段の事情の存否を検討する。
 前提事実(3)に加え,関係証拠(甲5から7まで,13から18まで,24,25,29から32まで,乙8,9,12,13,証人f,原告本)及び弁論 の全趣旨によれば,本件配転命令の配転先部署である品質教育チームが,被告会社のコンプライアンス体制強化という正当な目的に基づいて,従前,被告会社及 び関連子会社内の各部署において統一的方針等もなく個別に実施されてきた品質教育全般を統括し,これらの仕分け・整理等を行って,被告会社及び関連子会社 全体として社内の品質教育を統一的に推進する元締めの部署として新設されたものであり,品質教育チームへのチームメンバー2名の配置についても当初から予 定され,新設日(平成24年12月1日)の1か月以上前である平成24年10月23日には,被告会社のコーポレートセンター人事部人事グループにおいて社 内の人選手続に着手していたものの,当該人選に同年11月中・下旬頃までを要したことから,本件配転命令の内示・発令時期が,品質教育チームの新設後と なったものにすぎないことが認められるのであり,本件配転命令は,業務上の十分な必要性に基づいて新設された部署に対する当初から予定された人員配置としてなされたものと認めるのが相当である。
 この点,品質教育チーム独自の担当業務内容の不明性や,品質環境教育グループの職務分掌の変更が品質教育チームの無用性を基礎付ける旨の原告の主張については,品質教育チームの新設当初からの上記目的や,品質教育チームの業務遂行の実態に従って,当初の職務分掌と現実の職務内容との間にずれが生じ,これ を現実に合わせる形で訂正した旨の経緯を正解しない失当なものと認めるのが相当であり,品質教育チームが,現に,全社的に欠落している教育プログラムの導 入を優先課題として取り組むとともに,各部署で実施されている品質教育の仕分け・整理等の作業を進め,一定の業績を上げている事実とも整合せず,これを採用することはできない。
 また,原告は,従前の所属部署であった開発4部において,今後の成長・活躍が望めない状況であることを理由に本件退職勧奨を受けた者であったところ,従前,品質関係の業務に従事した経験こそないものの,入社以来,被告会社の主要な事業領域のほとんどの製品開発に従事した経験があり,技術的な側面から被告 会社及び関連子会社の製品の品質に関する知識を会得していたものと認められることから(前提事実(1)イ,甲24,29,原告本人,弁論の全趣旨),製品 の品質に関する教育・訓練システムの構築・実施を担当する品質教育チームにおける適性を有するものと認められるし,本件配転命令による異動時期が,たまた ま開発4部の繁忙時期の直前と重なった旨の事情があるとしても,品質教育チームの立ち上げにふさわしい人材として原告が選定された以上,上記事情の存在に よって業務上の必要性が否定されるものではない。加えて,本件配転命令による給与その他の待遇に特段の変化がある旨の事情についても主張立証はなく,本件配転命令が,原告に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとも認められない。別件訴訟対策という不当な動機・目的の存在をいう原告の主張についても,これを十分に裏付けるまでの証拠は見いだせない。
 以上によれば,本件配転命令は,本件労働契約上,被告会社に認められた裁量の範囲内のものとして有効・適法なものと認めるのが相当である。』



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