新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1022、2010/4/27 15:09

【民事・パチンコ(パチスロ)攻略法・消費者契約法違反・不法行為・立証責任は誰が負うか・刑事責任は問えるか・勤労の義務】

質問:パチンコの市場調査として,指定された台で遊技するだけで給料をもらえる仕事がある,とメールで勧誘されました。申し込んでみると,「業者指定の攻略法を指示通りに実践すれば,必ず大当たりし利益が出る」,「誰でも出来るのでこの攻略法を買わないか」,と誘われました。価格は数十万円です。信用してもいいでしょうか?

回答:
1.貴方の購入するパチンコ攻略法は具体的にいかなる内容かご質問から不明ですが,問題となったパチンコ(パチスロ)攻略法等の営業,販売については,名古屋地裁平成19年1月29日判決において虚偽の情報であり,不法行為(詐欺)にあたる,という判断が出ています。参考にしてください。類似の被害は今も多発していますので,注意が必要です。なお,刑事事件としては、詐欺罪に当たる可能性があります。但し、実際に逮捕立件される件数は多くない様です。これは刑事事件においてはより厳格な詐欺行為の立証(生命身体の自由等を拘束,剥奪する刑罰の性質から刑法の適用においては謙抑主義,厳格主義がとられています。)が必要なためと考えられますが,被害が大きくなれば警察も取り上げざるを得ないでしょう。
2.理論的にお話しいたしますと,判例上の「パチスロ攻略法」の営業,指示内容は,販売側により,理論的,科学的に必ず利益が生じるという法的証明(反証)ができない限り「疑罔行為」があったと推定され,特別の反証がない限り「詐欺的行為」により不法行為(民法709条)を構成するでしょう。又消費者契約法4条1項2号に反しますので購入しても取り消しが可能です。「購入者が,攻略法の通り,又は,具体的指示通りに操作しなかったから利益が出なかった。攻略法は正当なものである。」という業者の通常の抗弁は,必ず利益が出るという法的立証にはなりません。判例も,当該攻略法について理論的証明がないことを認めています。
3.判例上問題となったパチスロ攻略法なる営業は被害者の経済的利益を簡易,迅速に得たいという心理,射幸心(偶然の利益を得ようとすること)を巧みに利用するものであり,到底認められるものではありませんが,勤労の義務(憲法27条,自由主義体制をとる以上法律上の具体的義務ではなく本来あるべき道義的義務をいいます。)が国民の三大義務(他に30条納税の義務,26条2項教育の義務)として憲法上課せられているように,被害者も,社会生活における経済的豊かさは,自己の労働能力に従い日々の真面目で地道な労働に従事することにより得ることができるという憲法の趣旨を理解する必要があるでしょう。

解説:
(いわゆる攻略法の本質的問題点と立証責任)
 パチンコ(パチスロ)攻略法は,一般的に攻略法の指示通りに操作すれば必ず,大当たりして,利益が出ると説明しているのが通常です。業者にも営業の自由(憲法22条)がありますので,指示通りに操作した場合に必ず利益が出るかどうかを理論的,科学的に検証し立証する必要があります。仮に,指示通りに操作しても大当たりして必ず利益が出なければ,購入者を騙し,疑罔する行為と推定され,詐欺行為となり仮に契約しても取り消し(民法93条),不法行為(民法709条)により購入代金の返還,及び支払い拒絶が可能です。ところで,この立証は誰が行い責任を持つかという点が問題です(挙証責任の問題。事例集704番参照。)
 その答えは,「攻略法」の販売業者です。立証責任の原則から言えば,攻略法が詐欺であるという理由で,損害賠償等を請求する利益を有する購入者側が疑罔行為の内容を立証しなければならないはずです。しかし,購入者が立証しなければならない疑罔行為の内容とは,「攻略法の内容が理論的,科学的に利益を生じるものでない」という具体的証明ではなく,攻略法の内容が,賭博,ギャンブルの本質である「勝敗が当事者の任意に左右することができない偶然の事情により決定される」ということと相反し,経験則上ありえないという一般的主張,立証で足りるものと考えられます。
 従って,攻略法の内容が,理論的,科学的に必ず利益が出るという反証を行う責任を実質的に負う者は攻略法販売業者ということになり,その反証を行わない限り記罔行為と推定,認定されることになります。その理由ですが,いわゆる,パチンコ,パチスロは,法で例外的に公認されたギャンブル,賭博行為(刑法185条)に類するものであり,「ギャンブル」「賭博」とは,勝敗が当事者の任意に左右することができない偶然の事情により決定されることを言います。賭博行為は,日々の勤労なくして偶然に大きな利益を得ることができることから,人間の射幸心をあおり,勤労の意欲を次第に失わせるものであり,国家社会全体の倫理秩序を揺るがしかねないもので,基本的に法律上禁じられています(憲法27条)。
 しかし,業者が販売する攻略法は,誰でもできると説明しているように当事者の比較的単純な操作方法により(仮に操作が複雑,難解であれば一般人が理解,利用できませんから,利益が出ると断言すること自体が疑罔にならざるを得ません。),必ず利益が出るというもので,公認許可され営業として行われているパチンコ,パチスロの賭博性,ギャンブル性を否定しています。業者の主張はパチンコ,パチスロの本質を否定する内容を含むものであり,そもそもそれ自体自己矛盾的主張です。攻略法の説明のように,仮に当事者の操作が理論的に可能であれば,パチンコ,パチスロ自体娯楽として例外的に,公的ギャンブル,賭博行為として認められている営業自体が問題になるでしょう(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法),都道府県条例で規制。)。
 さらに一般に市販されている攻略法が正しければ,パチンコ,パチスロの営業自体も行き詰まり,攻略法を使用することも最終的には不可能になるはずです。すなわち攻略法は,そもそもギャンブルの本質を否定し,パチンコ等営業を行う者の経営的破綻を意味し,経験則上ありえないことを内容とするものであり,購入者側の主張,立証は攻略法の内容は,一般社会常識に反し,経験則上ありえないという立証でその責任を果たしたことになります。なぜなら,法的立証とは攻略法が疑罔行為であるという一般社会常識上裁判官が納得できるものであれば足りるからです。
 以上のような常識,一般的経験則に反し,必ず利益が出るという主張を攻略法販売業者があえてするのであれば,攻略法販売業者がパチンコ等の機械構造を自ら解明し,攻略法の内容により必ず利益が出るという理論的,科学的反証を行い,立証しなければ,この推定を覆すことができません。元々挙証責任は当事者の公平上認められた法的制度であり,一般的に賭博類似行為の本質を否定する攻略法の販売業者は,社会常識上ありえないと思われる理屈をもって販売により利益を得ている以上責任を持って,理論的,科学的に,実証的に誰でも説明,指示通りに操作すれば利益を出ることを立証する責任義務が科せられることになります(法的挙証責任分配の原則)。
 攻略法販売業者が考案し指示する,操作方法の例示は全てに該当する機械のメカニズムを論理的に解明したものではありませんから,何ら科学的,理論的立証を果たしたことにはなりません。又,購入者が指示通りに操作しないという反論も自らの理論的立証義務を果たしたという根拠にはなりません。さらに,パチンコ製造業等の関係者から特別な情報を得ているという簡易な説明も理論的証明を裏付けるものではありません。
 以上より,攻略法販売業者は,元々理論的,常識的にありえないことを主張,立証するものであり検証,鑑定等により特別な立証がない限り全て虚偽(疑罔行為)の内容,説明と推定判断されることになります。万が一,攻略法が理論的に立証されるのであれば,当該パチンコ,パチスロ自体がギャンブル性を失い,娯楽としての公的ギャンブルとして営業が不可能となりますので,いずれにしろ最終的に攻略法の使い道はないと言わざるを得ませんから公序良俗(民法90条)に反する販売とならざるを得ないでしょう。

@以上のようにパチンコ,パチスロなどは,大当たりするかどうかが偶然の要素にかかっているいわゆるギャンブルであり,理論上必ず勝てる方法というのは基本的に存在しませんからいわゆる攻略法というものは存在しないといえます。
 この点,攻略法を教えると言って,金銭を騙し取る業者が多発してるようです。このような業者の大半は,ダミーの登記,ダミーの事務所,ダミーの社員など,あらゆる手段を講じて,自分達の足跡を捕まれないようにしていますので,そもそも業者の実態をつかむこと自体が非常に困難でしょう。

Aそのようななか,平成19年名古屋地裁で,パチンコ攻略業者に対する裁判の判決がありました。裁判所が,パチンコ攻略法などというものは存在しない,不法行為である,と認定しています。
 この判例では,不法行為にあたるかどうかの他に,消費者契約法の適用があるかについても争いになっていますが,裁判所は,被告の主張はいずれも稚拙なものとして一切採用していません。立証責任から当然のことです。
 今回参考にしていただきたい点は,判例において詳細に明らかになった,業者の営業方法と,それが違法であると認定されている事実です。現在でも法律相談において,ほとんど同じ様な事例が見受けられます。裁判で違法であることが認定されたからといって,確実にお金が返ってくる保障はありません。このような営業に惑わされないことが重要です。

B以下,裁判所が認定した事例をみていきましょう。

平成19年1月29日,名古屋地裁判決
認定事実
 被告は,いわゆるパチスロ(回胴式遊技機又はパチンコ型スロットマシーン。以下「パチスロ」という。)を攻略する有力な情報があると称して,「情報」を販売している会社である。
 原告は,雑誌に掲載されていた被告の広告を見て,被告に電話をした。
その結果,原告は,平成●年●月,名古屋で,被告従業員●●と会った。原告は,被告の情報提供についてのパンフレット,会員登録についてのパンフレット(甲13)を渡された上,被告の会員になれば,被告からパチスロ攻略情報の提供を受けることができる旨の説明を受けた。この際,被告は,人件費を惜しまず人を使ってパチスロの攻略情報を収集していること,パチスロ製造メーカーの人間とパイプがありパチスロの攻略情報を取得している旨を説明した。
 原告は,以上のような●●の巧みな説明を聞き,確実に勝利することができるパチスロの攻略情報があると信じ込んだ。そして,被告の会員になれば,必ず勝つことができるパチスロの攻略情報を購入することができるので,会員になりたいと思い,●●に対し,入会したい旨の回答をした。

(判決の解説)
 判決文を見ると,本件攻略会社は,雑誌に広告を出しています。有名な雑誌に出しているから大丈夫だろうと思っても,雑誌社は広告の内容にまで法的責任を持ちませんし,信用できるというわけではありません。また,最初は「モニター」「会員登録」「登録料」などといい,攻略法そのものの販売ではないような説明をし,1〜2万円の比較的低額な費用(負担はこれだけ)という説明をするようです。引き続いて判決文を紹介します。

認定事実
 原告は,●●に実演指導もしてもらい指導してほしかったことから「マスターグレード会員」になることとし,会員登録を申し込み,会員登録料52万5000円とパチスロ「●●」攻略情報料63万5000円の合計116万円を,同日現金で支払い,即時,●●から,パチスロ「●●」の攻略情報を渡された。
 原告は,契約を締結した後,●●と2人で一緒にパチンコホールに行き,パチスロを行い,攻略情報を試した。●●は,しばらく遊技した後,「用事があるから帰ります。私の遊んだ台を使ってください」と言って帰っていった。●●は「当たり」が一応あったものの,収支はマイナスであった。原告は,遊技し続けたが,まったく「当たり」がこなかった。原告は,●●に電話し,まったく当たらない旨を伝えると,「おかしいですね。やり方が下手なのかもしれませんので,そのまま続けてください。」と返答されるのみであった。

(判決の解説)
 判旨によれば確実な攻略法など存在しませんので,必ず「あたり」がくるということも無い訳ですが,これを問い合わせると,「あなたのやり方が悪い」「もっと簡単な方法がある」「そのためにはさらに料金が必要」という誘導が行われるようです。

認定事実
 同日以降,原告は,被告から教えてもらったとおりの攻略情報を利用し,2回から3回パチスロで遊んだが,まったく「当たり」が来なかった。そのため,原告が被告に電話すると,応対した被告従業員は「おかしいですね,やり方が間違っているのではないですか。」と返答するのみであった。さらに,原告が,被告から教えてもらったとおりの攻略情報を利用し,パチスロ「●●」で遊んでも,まったく「当たり」はこないので,被告に何度か「当たりがこない」と架電すると,応対した被告従業員は,「もっと上のクラスの会員になれば,やり方が簡単な攻略情報をお教えします」と回答するに至った。
 原告は,被告従業員の応対から,上のクラスの会員になったほうがいいのかと考えるようになり,同年 月 日,名古屋で,被告従業員の●●と会った。
 ●●は,言葉巧みに「会員のグレードを上げれば大丈夫。VIP会員になれば,簡単でしかも確実に当たる攻略情報をお教えします。」と説明し,原告は,簡単でしかも確実に当たる攻略情報を教えてくれるのであればVIP会員になりたいと思ったが,85万円しか所持していなかった。
 原告は,●●から「本来,VIP会員として登録するには105万円の登録料が必要ですが,今,85万円しかないのであれば,足りない分は私が何とかします。」と言われ,同人に現金で85万円を支払い,即時,●●から,パチスロ「●●」の新しい攻略情報の記載されたメモを手渡された。

(判決の解説)
 これもよくある勧誘方法のようです。「本来なら100万円必要だが,今なら,お客様だけ,80万円で提供する」といわれます。すぐに買わないと高くなりますよ,とあたかも有利な情報を提示され,さらに購入を勧誘します。

認定事実
 原告は,●●と2人で,パチンコホールに行きパチスロ「●●」で遊んだが,まったく「当たり」はこなかった。その後も,原告は,同攻略情報を使ってパチスロ「●●」で遊んでも,まったく「当たり」はこなかったので,被告に当たらないと何度も架電した。
 原告は,同月25日,名古屋にて,被告従業員の●●と会った。原告は,●●から「会員のグレードをもっとあげてシルバー会員になれば,もっと有益な情報が手に入り,確実に当たります。」と言葉巧みに説明され,確実に当たるのであれば,シルバー会員になってもいいと思ったが,シルバー会員の登録料200万円を所持していなかった。
 原告が,●●に対し,所持金がないので登録することができない旨伝えると,同人は「お金がないならサラ金から借りて払えばいい。パチスロで幾らでも稼ぐことができるのですぐに返すことができる。今回は特別に125万でいい。」などと言って,原告に対し,サラ金から金を借りるように執拗に勧めた。
 原告は,同日,「もし,当たらなかったら,利子は会社で払ってください。」といってサラ金から30万円を借りて,同額をシルバー会員の登録料の一部として支払った。
原告は,さらにサラ金から借入をして,同年 月 日,名古屋にて,被告従業員の●●に対し,シルバー会員の登録料の残額95万円のうち94万円を支払った。●●は,残額1万円を免除した。
 原告は,●●から,パチスロ「●●」の攻略情報を渡された。
 原告は,●●と2人でパチンコホールに行き,攻略情報を使っても遊んだが,2人とも負けた。原告が●●に文句を言うと,「打ち方が悪い」と逆に怒り始める始末であった。 その後,原告は,被告から教えてもらったとおりの攻略情報を何度も使ってパチスロで遊んでみたが,全く当たらなかった。
原告は,あまりに当たらないので, 月 日,直接,被告の本店に行き,当たらないので,お金を返してほしいと言った。
 原告に応対した被告従業員の●●は,「もう一つ上に会員になってみませんか。そうすれば大丈夫です。当たります。」と言葉巧みに原告を誘った。
●●●は,登録を渋る原告に対し,「借金して払っても,パチスロで儲かるのですからすぐに返せますよ。」,「本当は登録料が1000万円だが,特別に今までに払った分が1000万円になればいいとします。サラ金から今借りられるだけ借りて払ってください。それでも足りない場合はパチスロで当たったときに払ってくれればいいですよ。」と勧誘した。
 原告は確実に当たる情報が手に入るのであればと思い,サラ金から163万2000円を借りて●●に支払い,即時,そして,●●からパチスロ「●●」の攻略情報が書かれた紙を渡された。
 原告が,同攻略方法に基づきパチスロで遊んでも勝つことができず,さらに,被告が設置しているパチスロのトレーニングルームで打ち方の練習をしても,勝つことはできなかった。

(判決の解説)
 人間は,失った分を取り返さなければ,という心理状態,さらに,自分が間違っていた,と認めたくない心理状態が働き,後戻りが難しくなるようです。なぜ気づかなかったのか,と感じますが,止むを得ないのかもしれません。

C裁判所は,以上の事実関係から,パチンコ,パチスロに,攻略法というものは存在しないこと(メーカーが明確に否定している。攻略法などというものはないのにあたかも攻略法があるかのごとく虚偽の事実を告げていること),被告が,組織ぐるみで攻略法を販売している業者であり,手の込んだ勧誘をしていることから,情報が虚偽であることについて,故意または過失が認められることを認定しています。
 巷には,同様の方法で今も被害に遭っている方が多数いらっしゃるようです。一方,このような事件では,加害者は素性を隠し,逃亡を図ろうとしますので,紹介した判例のように,裁判になる(きちんと反論をしてくる)ケース自体が非常に珍しいようです。騙されても裁判で取り返せる,と考えることは安易と思われます。事件が起こらなければそれに越したことはありません。また,被害に遭遇するかもしれないと感じたら,一刻も早くお近くの弁護士にご相談ください。判決の結論を最後に紹介します。

判例の続き・・すなわち,パチスロは,射倖性の高い遊戯機であり,パチスロ遊技において,投入した以上のメダルを獲得することができるか,すなわち,利益を上げることができるか否かは不確実な事項である。にもかかわらず,被告は,原告に対し,被告が提供するパチスロの攻略情報に従って遊技することによって,確実に利益を上げることができるとの断定的判断を提供し,原告は,同断定的判断の内容が真実であると誤認している。したがって,原告は,消費者契約法4条1項2号に基づき,本件各契約を取り消すことができる。
 被告は,将来における変動が不確実な事項について,これが確実である旨の断定的判断を提供したものであり,上記第2の1ないし3のとおり,原告に対し,不当利得返還債務を負担するものであるが,以下の理由により,被告の上記行為は,誤認を通じて消費者の意思表示に瑕疵をもたらしうる不適切な勧誘行為として本件各契約を取消し得べきというにとどまらず,社会通念上,違法なものとして,不法行為にも該当するから,被告は,原告に発生した損害を賠償する責任を負うと解する。
 被告が原告に提供した攻略情報は,いずれも,メダルの投入枚数を調整したり,ストップボタンの押し順を変化させたり,MAXベットボタンを押す方法によってコインのクレジット枚数を調整したり,レバーを押す方向を変化させるなどの方法により,当該パチスロ機械の大当たりや小役の当選の確率を変化させるという内容を含んでいるところ,パチスロ「●●」の製造メーカーである●●株式会社及びパチスロ「●●」の製造メーカーである株式会社●●は,いずれもかかる攻略方法の存在を否定していること,上記各攻略方法の教示を受けた原告はもとより,被告従業員においても,上記各攻略方法を実践しても勝利することができなかったことに照らし,被告が原告に対して提供した攻略情報は全く虚偽であったと推認することができる。
 被告は,総務部広報担当1名を置き,他に,少なくとも3名のテレホンオペレーター,少なくとも16名の出張実演担当者(被告作成のパンフレットにAGENTとして記載されている14名のほか,原告と応対した●●,●●の2名)を雇用し,組織的に攻略情報を調査検証している会社であるから,被告が原告に対して提供した攻略情報が虚偽であることを知っていたと推認すべきである。このことは,被告が,最初にマスターグレード会員として登録した原告に対し,その後,原告から「当たりが来ない」などとクレームを受ける都度,最初の登録を担当した従業員とは別の従業員を派遣するなどし,「会員のグレードを上げれば,簡単でしかも確実に当たる攻略情報を教える。」などと告げ,順次,VIP会員,シルバー会員,さらにプラチナ会員として登録させ,その都度,会員登録料ないし情報料として多額の金員を受領するという組織的に欺瞞的商法を行う場合の典型的手口を用いてることからも推認できる。付言するに,被告のパンフレットでは,VIP会員の上には,裏VIP会員しか記載されていないが,被告は原告をVIP会員に登録させた後も,さらに,シルバー会員,プラチナ会員として登録をさせている。
 仮に,被告が,原告に対して提供した攻略情報が虚偽であることを知らなかったとしても,登録料ないし情報料として高額の対価を取得する以上,同情報を原告に提供する際,同情報の確実性については慎重に調査すべき注意義務があるから(被告自身,パンフレットの6丁目裏面において,かかる調査を行っていることを強調している。),知らないことにつき過失があるというべきである。にもかかわらず,被告は,原告との間で,いずれの攻略情報も確実であるとして,本件各契約を締結したのであるから,本件各契約の締結は,全体として1個の不法行為(以下「本件不法行為」という。)を構成するというべきである(抜粋)。

≪条文参照≫

第二十六条  すべて国民は,法律の定めるところにより,その能力に応じて,ひとしく教育を受ける権利を有する。
○2  すべて国民は,法律の定めるところにより,その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は,これを無償とする。

第二十七条  すべて国民は,勤労の権利を有し,義務を負ふ。
第三十条  国民は,法律の定めるところにより,納税の義務を負ふ。

消費者契約法
第四条  消費者は,事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし,それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは,これを取り消すことができる。
一  重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二  物品,権利,役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し,将来におけるその価額,将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は,善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し,及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため,風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について,営業時間,営業区域等を制限し,及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに,風俗営業の健全化に資するため,その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。
(用語の意義)
第二条  この法律において「風俗営業」とは,次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一  キヤバレーその他設備を設けて客にダンスをさせ,かつ,客の接待をして客に飲食をさせる営業
二  待合,料理店,カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)
七  まあじやん屋,ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
八  スロットマシン,テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し,又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)
   第二章 風俗営業の許可等
(営業の許可)
第三条  風俗営業を営もうとする者は,風俗営業の種別(前条第一項各号に規定する風俗営業の種別をいう。以下同じ。)に応じて,営業所ごとに,当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。

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