児童相談所による一時保護に関する司法審査について

行政|一時保護状請求|親権者|児童の利益と行政権・公共の福祉の利益対立|令和7年6月施行の児童福祉法改正

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

昨日,5歳の長男が児童相談所に一時保護されました。顔に痣ができていたということで幼稚園が通報したようです。顔の痣は,長男が転んだ際にできたものであり,私は虐待などしておりません。家族は夫の妹の4人家族です。児童相談所からは,一時保護に対する意見書を提出するように求められています。子どもを早期に家庭に復帰させるためには,どのように対応したら良いでしょうか。

回答:

1 児童相談所長は,児童虐待のおそれがあるときなど一定の場合には,児童を一時保護することが認められています(児童福祉法33条1項)。

この一時保護の目的は、虐待などの疑いのある子供の安全確保にあり、子供は児童相談所にある一時保護所あるいは児童養護施設に滞在することになります。期間は原則2か月となっています。

かつては,一時保護は児童相談所の専権で決められていましたが,令和7年6月に施行された改正法では,一時保護の要件について法律上の要件が明確化され,さらに児童相談所が一時保護をした場合,裁判所に対して一時保護状の発付を請求しなければならないという司法審査の手続きが新設されました。

2 そしてその司法審査を迅速に行うために,児童相談所は,できる限り保護者の意見を聴取した上で,裁判所の審査の判断資料として提出することが求められています。

今回,あなたが提出を求められている意見書も,一時保護状の審査のための資料となりますので,一時保護の法律上の要件を満たさないことにつき,詳細に意見を記載することが考えられます。具体的には,児童相談所や裁判所が虐待のリスク要因と考えられる事情を取り除いていく必要があります。

3 もっとも,過去の運用に鑑みると,一時保護状の請求が却下されるケースは多くはないと思われます。これは、一時保護時の司法審査を行う裁判官は、具体的な事案に係る児童相談所長等の一時保護の必要性の判断を尊重すべきものとされているからです。そのため保護者としては,ある程度一時保護が認められることを前提とした上での対応も検討する必要があるでしょう。

一時保護に対しては,実務上の手続き運用を見極めた上で迅速な対応を行うことが必要です。令和7年6月施行の改正法の運用も踏まえて,経験のある弁護士へ対応を依頼することをお勧めします。一時保護やその後の手続きについては,弊所事例集No.1624No.2014No.1887もご参照ください。

4 一時保護に関する関連事例集参照。

解説:

1 一時保護に関する法改正の趣旨について

児童相談所長は,「児童虐待のおそれがあるとき、少年法第六条の六第一項の規定により事件の送致を受けたときその他の内閣府令で定める場合であつて、必要があると認めるとき」は,児童を一時保護することが認められています(児童福祉法33条1項)。

なお令和4年の法改正前は,児童相談所の要件児童相談所長等が「必要があると認めるとき」に一時保護を行うことができるとしか規定されておらず,事実上,児童相談所所長の専権によりその実行が判断されており,一時保護が適正か否かは,親権者が自ら一時保護の処分について不服を申立てない限りは,第三者による監督がなされていませんで。

しかし,一時保護は、暫定的・一時的とはいえ、行政の判断によって親子を分離し、児童の行動の自由等を制限する強力な処分であることに鑑みて,令和4年の法改正により,一時保護について,児童相談所の所長の判断のみに委ねるのではなく,裁判所による司法審査を導入することになりました。右改正法は,令和7年6月から施行されています。

その司法審査の導入に合わせて,法令上も,上記の内閣府令により要件が明確にされることとなりました。

もっとも,子ども家庭庁などの説明によれば,改正前後においても、児童相談所長等が一時保護を行うことができる場合についての考え方が変わるものではなく、法改正は,あくまで従前の判断要素につき要件が具体化されたものであるとされています。そのため,一時保護状の請求が認められるかの見通しは,ある程度,従前の実務的な運用に鑑みて判断することになるでしょう。

2 一時保護を行うことができる場合の要件

児童福祉法33条第1項項及び第2項所定の一時保護の要件は、①「内閣府令で定める場合」(府令該当性)及び②「必要があると認めるとき」(一時保護の必要性)です。

⑴ 一時保護の必要性

このうち,②一時保護の必要性については、児童の福祉に関する専門的な判断の重要性から、その知見等を有する児童相談所長等の合理的な裁量に委ねられています。そのため,一時保護時の司法審査を行う裁判官は、具体的な事案に係る児童相談所長等の一時保護の必要性の判断を尊重すべきものとし、府令該当性の要件が満たされていれば、明らかに一時保護の必要がないと認めるときを除き、一時保護状を発付することとされています(本条第4項ただし書)。

⑵ 内閣府令該当性

そのため,一時保護が適正であるか否かの審査は,主に①の内閣府令該当性について判断されることになります。具体的には,児童福祉法施行規則35条の3第1項で定められた以下の場合が要件となります。

〇児童福祉法施行規則

第三十五条の三 法第三十三条第一項に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる場合とする。(一部省略)

一 児童虐待防止法第二条に規定する児童虐待を受けた場合若しくはそのおそれがある場合又は児童虐待を受けるおそれがある場合(児童虐待防止法第十二条の二第一項に定めるときを含む。)

二 少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第六条の六第一項の規定による送致を受けた場合又は警察官から法第二十五条第一項若しくは児童虐待防止法第六条第一項の規定による通告を受けた場合

三 児童の行動が自己若しくは他人の生命、心身若しくは財産に危害を生じさせた場合若しくはそのおそれがある場合又は危害を生じさせるおそれがある場合

四 児童が自らの保護を求め、又はこれに相当する意見若しくは意向を表明した場合

五 児童の保護者が死亡、行方不明、拘禁、疾病による病院への入院等の状態となつたこと、児童が家出人であることその他の事由により、次のいずれかに該当する場合

イ 児童に保護者若しくは住居がない又はそのおそれがある場合

ロ 児童の住居が不明である又は不明となるおそれがある場合

六 児童の保護者がその監護する児童の保護を求め、又はこれに相当する意見を表明した場合

七 前各号に掲げるもののほか、一時保護を行わなければ児童の生命又は心身に重大な危害が生じるおそれがある場合

このうち,もっとも多いと考えられるのが,同条第1項第1号に定められている「児童虐待防止法第二条に規定する児童虐待を受けた場合若しくはそのおそれがある場合又は児童虐待を受けるおそれがある場合」であると考えられます。本件の相談事例も,おそらくは同号を理由に一時保護が実施されているものと推測されます。

児童虐待防止法における虐待とは,以下の場合をさします。

〇児童虐待防止法

(児童虐待の定義)

第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。

一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。

三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。

四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

上記の各類型に該当する行為については,子ども家庭庁が作成した「子ども虐待対応の手引き」にて具体的な事例があげられています。例えば,上記第2条1項1号の身体的虐待の具体例としては,打撲傷やあざ(内出血)が挙げられています。また第4号の心理的虐待には,児童の前で配偶者に対する暴言も例示されています。

そして,上記児童福祉法施行規則に記載さているとおり,一時保護を行う要件には,児童虐待を受けた「おそれ」があることで足りると規定されています。すなわち,児童に保護者の監護下で生じたと考えられる外傷があるが、その受傷原因が不明な場合や,児童は直接的な暴力にさらされていないとしても、住居内の散乱状況や保護者の様子等によれば、同居する保護者やその他の家族等への暴力を目撃するなどして、児童に何らかの心理的外傷が生じている可能性があると考えられる場合(いわゆる「面前DV」による心理的虐待を受けたおそれ)なども含まれます。

本件でも,お子様にあざが存在したことから,児童虐待を受けたおそれがあると判断された可能性が高そうです。

3 一時保護状の請求手続きと保護者の関与について

令和4年法改正により,一時保護を実施する場合,児童相談所所長は,裁判所に対して,事前又は事後に一時保護状を請求しなければならないとされました。ただし,一時保護を行うことについて親権者等の同意がある場合などには,一時保護状を請求が不要となります(改正後法第33条第3項)。

また、一時保護状の請求に当たっては、令和4年児童福祉法等改正法の附帯決議を踏まえ、親権者等の意見を裁判官への提供資料に可能な限り盛り込むこととされました。

そのため、児童相談所は、親権者等が、同意の法的効果(7日以内に同意を得られれば一時保護状の請求が不要となること)のほか、一時保護状の請求をする場合にはその意見を裁判官に伝達し得ることなどを理解した上で、同意をするかどうかについて適切に判断し意見を述べることができるよう、十分に説明を行うこととされています。

具体的には、親権者等に対し、一時保護の理由(一時保護の要件である府令該当性及び一時保護の必要性)、目的、一時保護についての今後の見通し、一時保護中の生活、児童との面会通信、一時保護中の児童相談所長の権限、2か月を超えて引き続き一時保護を行う場合の手続、不服がある場合の手続等のほか、一時保護時の司法審査手続の概要、親権者等が裁判官に意見を伝達し得ること及びその方法等について、できる限り丁寧に説明する(子ども家庭庁によるマニュアル)。

相談事例において求められた意見書も,上記のような対応方針によって説明されたものです。一時保護に反対する意見書を提出した場合には,原則として右意見書が裁判所にも提出され,一時保護の司法審査の判断材料に供されることになります。

次項では,意見書の内容を含む一時保護への対応の方法について検討します。

4 早期の保護解除に向けた対応

⑴ 意見書で反論すべき内容

上記のような法律上の規定を踏まえて,保護者としては,早期の過程復帰のために,どのような対応をすべきでしょうか。

まず,ご質問の意見書については,裁判所の法律上の司法審査の資料となるものです。そのため,法律上の一時保護の要件を満たさないことについて,具体的に記載する必要があります。

一方,本件のように,実際にお子様に外傷が生じている場合には,一時保護の要件である「虐待のおそれ」につき完全に否定することは困難です。そのため,万が一虐待のおそれが認められるとしても,本件の事情からすれば,一時保護の必要性が認められない,との趣旨も必要となります。例えば,虐待のおそれがあるとの理由で一時保護が請求されている場合には,虐待のおそれの根拠(リスク要因)が存在しないとの意見を記載することが必要です。子ども家庭庁のマニュアルでは,虐待のリスク要因として以下のような事情を上げているため,これらに対する反駁の準備が必要です。

ア 保護者側のリスク要因

保護者のパーソナリティの障がい,性格の攻撃性・衝動性,体罰容認などの暴力への親和性,育児に対する不安などが挙げられています。

性格の攻撃性,衝動性について,一時保護を受けた直後の保護者は,同様から児童相談所の職員に対しても攻撃的な言動をとってしまうケースは多いです。また体罰容認などの育児感覚についても,保護者だけでは視野が狭くなってしまっている場合があります。第三者の客観的な視点を得て適切に対応しましょう。

イ 子ども側のリスク要因

乳児期の子供や,障害児など,保護者にとって育てにくさを持っている子どもは,リスク要因とされます。該当する場合には,これまでに講じてきた具体的な対応策について説明する必要があります。

ウ 養育環境のリスク要因

経済的不安定,親族や地域社会からの孤立,ひとり親家庭,内縁者や同居人がいる家庭,転居を繰り返す過程,夫婦間不和,などがあげられます。

これらの要因が存在する場合には,その解消策,例えば祖父母などの親族の協力を得て養育環境を改善するなどの対応を検討した方が良いでしょう。

エ その他の要因

その他の要因として,乳幼児健康診査未受診,きょうだいへの虐待歴,関係機関からの支援の拒否等も挙げられています。過去の養育歴については変えることができませんが,関係機関からの支援については,今後積極的に受け入れることを表明する必要があります。任意に利用できる機関があれば,自ら調査した上で児相に提案することも考えられます。

⑵ 一時保護状が認められた場合の対応について

裁判所が児童相談所の請求を認め,一時保護状を認めた場合,保護者としては,行政上の不服申し立てをすることができます。

具体的には,一時保護の行政処分に対して,審査請求や裁判所への取消訴訟を提起することが考えられます。

しかし現実的には,これらの不服申し立てにより一時保護の処分が取り消させる可能性は低いと言わざるを得ず,また審理に要する期間も考慮すると,不服申し立てをする実益は低いと言えます。

また法改正前の実務運用に鑑みれば,そもそも一時保護状が却下されること自体,ほとんど無いと見込まれます。

そのため保護者としては,意見書で一時保護に対して反論しつつも,児童相談所との間で,早期の過程復帰に向けた任意での協議を進めるべきでしょう。

一時保護が認められた後の手続きの流れや具体的な協議の方向性については,弊所事例集No.1624No.2014No.1887もご参照ください。

5 まとめ

一時保護に対しては,実務上の手続き運用を見極めた上で迅速な対応を行うことが必要です。令和7年6月施行の改正法の運用も踏まえて,経験のある弁護士へ対応を依頼することをお勧めします。

以上

関連事例集

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※参照条文

≪児童福祉法≫

第三十三条 児童相談所長は、児童虐待のおそれがあるとき、少年法第六条の六第一項の規定により事件の送致を受けたときその他の内閣府令で定める場合であつて、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。

② 都道府県知事は、前項に規定する場合であつて、必要があると認めるときは、第二十七条第一項又は第二項の措置(第二十八条第四項の規定による勧告を受けて採る指導措置を除く。)を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童相談所長をして、児童の一時保護を行わせ、又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させることができる。

③ 児童相談所長又は都道府県知事は、前二項の規定による一時保護を行うときは、次に掲げる場合を除き、一時保護を開始した日から起算して七日以内に、第一項に規定する場合に該当し、かつ、一時保護の必要があると認められる資料を添えて、これらの者の所属する官公署の所在地を管轄する地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に次項に規定する一時保護状を請求しなければならない。この場合において、一時保護を開始する前にあらかじめ一時保護状を請求することを妨げない。

一 当該一時保護を行うことについて当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の同意がある場合

二 当該児童に親権を行う者又は未成年後見人がない場合

三 当該一時保護をその開始した日から起算して七日以内に解除した場合

④ 裁判官は、前項の規定による請求(以下この条において「一時保護状の請求」という。)のあつた児童について、第一項に規定する場合に該当すると認めるときは、一時保護状を発する。ただし、明らかに一時保護の必要がないと認めるときは、この限りでない。

⑤ 前項の一時保護状には、次に掲げる事項(第五号に掲げる事項にあつては、第三項後段に該当する場合に限る。)を記載し、裁判官がこれに記名押印しなければならない。

一 一時保護を行う児童の氏名

二 一時保護の理由

三 発付の年月日

四 裁判所名

五 有効期間及び有効期間経過後は一時保護を開始することができずこれを返還しなければならない旨

⑥ 一時保護状の請求についての裁判は、判事補が単独ですることができる。

⑦ 児童相談所長又は都道府県知事は、裁判官が一時保護状の請求を却下する裁判をしたときは、速やかに一時保護を解除しなければならない。ただし、一時保護を行わなければ児童の生命又は心身に重大な危害が生じると見込まれるときは、児童相談所長又は都道府県知事は、当該裁判があつた日の翌日から起算して三日以内に限り、第一項に規定する場合に該当し、かつ、一時保護の必要があると認められる資料及び一時保護を行わなければ児童の生命又は心身に重大な危害が生じると見込まれると認められる資料を添えて、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官が所属する裁判所にその裁判の取消しを請求することができる。

⑧ 前項ただし書の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。

⑨ 第七項本文の規定にかかわらず、児童相談所長又は都道府県知事は、同項ただし書の規定による請求をするときは、一時保護状の請求についての裁判が確定するまでの間、引き続き第一項又は第二項の規定による一時保護を行うことができる。

⑩ 第七項ただし書の規定による請求を受けた裁判所は、当該請求がその規定に違反したとき、又は請求が理由のないときは、決定で請求を棄却しなければならない。

⑪ 第七項ただし書の規定による請求を受けた裁判所は、当該請求が理由のあるときは、決定で原裁判を取り消し、自ら一時保護状を発しなければならない。

⑫ 第一項及び第二項の規定による一時保護の期間は、当該一時保護を開始した日から二月を超えてはならない。

⑬ 前項の規定にかかわらず、児童相談所長又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、引き続き第一項又は第二項の規定による一時保護を行うことができる。

⑭ 前項の規定により引き続き一時保護を行うことが当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合においては、児童相談所長又は都道府県知事が引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行つた後二月を超えて引き続き一時保護を行おうとするときごとに、児童相談所長又は都道府県知事は、家庭裁判所の承認を得なければならない。ただし、当該児童に係る第二十八条第一項第一号若しくは第二号ただし書の承認の申立て又は当該児童の親権者に係る第三十三条の七の規定による親権喪失若しくは親権停止の審判の請求若しくは当該児童の未成年後見人に係る第三十三条の九の規定による未成年後見人の解任の請求がされている場合は、この限りでない。

⑮ 児童相談所長又は都道府県知事は、前項本文の規定による引き続いての一時保護に係る承認の申立てをした場合において、やむを得ない事情があるときは、一時保護を開始した日から二月を経過した後又は同項の規定により引き続き一時保護を行つた後二月を経過した後も、当該申立てに対する審判が確定するまでの間、引き続き一時保護を行うことができる。ただし、当該申立てを却下する審判があつた場合は、当該審判の結果を考慮してもなお引き続き一時保護を行う必要があると認めるときに限る。

⑯ 前項本文の規定により引き続き一時保護を行つた場合において、第十四項本文の規定による引き続いての一時保護に係る承認の申立てに対する審判が確定した場合における同項の規定の適用については、同項中「引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行つた」とあるのは、「引き続いての一時保護に係る承認の申立てに対する審判が確定した」とする。

⑰ 児童相談所長は、特に必要があると認めるときは、第一項の規定により一時保護が行われた児童については満二十歳に達するまでの間、次に掲げる措置を採るに至るまで、引き続き一時保護を行い、又は一時保護を行わせることができる。

一 第三十一条第四項の規定による措置を要すると認める者は、これを都道府県知事に報告すること。

二 児童自立生活援助の実施又は社会的養護自立支援拠点事業の実施が適当であると認める満二十歳未満義務教育終了児童等は、これをその実施に係る都道府県知事に報告すること。

⑱ 都道府県知事は、特に必要があると認めるときは、第二項の規定により一時保護が行われた児童については満二十歳に達するまでの間、第三十一条第四項の規定による措置(第二十八条第四項の規定による勧告を受けて採る指導措置を除く。第二十項において同じ。)を採るに至るまで、児童相談所長をして、引き続き一時保護を行わせ、又は一時保護を行うことを委託させることができる。

⑲ 児童相談所長は、特に必要があると認めるときは、第十七項各号に掲げる措置を採るに至るまで、保護延長者(児童以外の満二十歳に満たない者のうち、第三十一条第二項から第四項までの規定による措置が採られているものをいう。以下この項及び次項において同じ。)の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は保護延長者の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、保護延長者の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。

⑳ 都道府県知事は、特に必要があると認めるときは、第三十一条第四項の規定による措置を採るに至るまで、保護延長者の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は保護延長者の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童相談所長をして、保護延長者の一時保護を行わせ、又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させることができる。

㉑ 第十七項から前項までの規定による一時保護は、この法律の適用については、第一項又は第二項の規定による一時保護とみなす。

≪児童福祉法施行規則≫

第三十五条の三 法第三十三条第一項に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる場合とする。この場合において、児童相談所長は、必要があると認めるときは、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図ること、又はアセスメント(児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握することをいい、短期入所指導(児童の状況把握を目的として、法第十二条の四に規定する児童を一時保護する施設等に児童を短期間入所させ、心理療法、生活指導その他の援助を行うことをいう。)を含む。)を行うことを目的として児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができるものとする。

一 児童虐待防止法第二条に規定する児童虐待を受けた場合若しくはそのおそれがある場合又は児童虐待を受けるおそれがある場合(児童虐待防止法第十二条の二第一項に定めるときを含む。)

二 少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第六条の六第一項の規定による送致を受けた場合又は警察官から法第二十五条第一項若しくは児童虐待防止法第六条第一項の規定による通告を受けた場合

三 児童の行動が自己若しくは他人の生命、心身若しくは財産に危害を生じさせた場合若しくはそのおそれがある場合又は危害を生じさせるおそれがある場合

四 児童が自らの保護を求め、又はこれに相当する意見若しくは意向を表明した場合

五 児童の保護者が死亡、行方不明、拘禁、疾病による病院への入院等の状態となつたこと、児童が家出人であることその他の事由により、次のいずれかに該当する場合

イ 児童に保護者若しくは住居がない又はそのおそれがある場合

ロ 児童の住居が不明である又は不明となるおそれがある場合

六 児童の保護者がその監護する児童の保護を求め、又はこれに相当する意見を表明した場合

七 前各号に掲げるもののほか、一時保護を行わなければ児童の生命又は心身に重大な危害が生じるおそれがある場合