児童相談所の一時保護への対応
司法審査・面会・家庭復帰と弁護士への相談
お子さんが突然一時保護されると、所在や健康状態が分からず、何をすればよいのか戸惑われると思います。一時保護は子どもの安全を守るための制度ですが、親子の生活に大きな影響を与えます。このページでは、保護の理由を確認し、必要な意見と資料を提出しながら、子どもの権利と安全に配慮して家庭復帰を目指す手順を説明します。
質問
子どものけがや家庭での養育について虐待を疑われ、児童相談所に一時保護されました。説明に納得できず、子どもにも会えません。一時保護には裁判所の判断が必要ですか。どうすれば意見を伝え、子どもと再び生活できるのでしょうか。弁護士にはどの段階で相談すればよいですか。
回答
まず、保護の開始日・理由・法的根拠、面会等の扱い、今後の手続と期限を確認してください。児童相談所との話合いを続けながら、説明が事実と異なる部分は資料を付けて具体的に伝えることができます。必要であれば、開始直後から弁護士が意見書の作成や手続の選択をお手伝いします。
2025年6月1日から、一時保護の開始段階に裁判官による司法審査が導入されました。親権者等の同意がある場合など法律の例外を除き、児童相談所長等は開始日から起算して7日以内、または開始前に、一時保護状を請求します。保護者自身の意見書を児童相談所経由で裁判官に提出してもらう方法もあります。
一時保護の期間は原則2か月以内ですが、必要があれば継続されることがあります。親権者等の意思に反して2か月を超えて継続する場合には、原則として家庭裁判所の承認が必要です。一時保護状と継続の承認は別の手続です。
一時保護の解除に向けては、疑われている事実への反論と、帰宅後の安全・養育体制を具体化する作業の両方が役立ちます。していない虐待を認めたり、事実と異なる反省文を書いたりする必要はありません。一方、実際に危険な行為や養育上の困難があるときは、その改善策を考え、支援につなげることが大切です。
根拠:児童福祉法33条、こども家庭庁の一時保護時の司法審査に関する児童相談所対応マニュアル。
解説
1.一時保護の目的と親子の権利
一時保護は、子どもの安全を速やかに確保して適切に保護し、または心身の状態や置かれている環境などを把握するために行われます。児童相談所の一時保護施設のほか、必要に応じて適切な相手に委託して保護される場合もあります。
児童福祉法33条は、虐待のおそれがある場合、一定の少年事件の送致を受けた場合、その他内閣府令で定める場合について、必要性に基づき一時保護を行う仕組みを定めています。虐待についての刑事裁判で有罪が確定していることは要件ではありません。ただし、通告があったというだけで、その後も無条件に親子分離を続けられるわけではなく、具体的な危険や養育状況、調査で明らかになった事情に即した判断が必要です。
子どもは権利の主体であり、その最善の利益を優先して考えることが出発点です。保護者の事情だけでなく、子どもの気持ち、健康、学校生活、家族との関係への影響も検討します。障害や病気、ひとり親家庭であることなど、それ自体を虐待と同一視することは適切ではありません。実際の養育状況と、利用できる支援を具体的に確認します。
親権は、子どもの利益のために監護・教育を行う権利であるとともに義務です。民法821条は、子どもの人格の尊重と年齢・発達への配慮を求め、体罰その他の心身の健全な発達に有害な言動を禁止しています。「しつけだから許される」という説明だけでは足りません。また、一時保護されたことだけで、家庭裁判所による親権停止・喪失の審判があったことにはなりません。保護中の監護と親権の関係は、別途法律に基づいて整理します。
2.最初に確認・準備すること
話合いの内容を後から確認できるよう、連絡日時、担当者名、説明された理由、提出した資料を記録してください。通知書、同意書、裁判所の書類は封筒も含めて保管し、受け取った日を控えます。事情を正確に把握するため、次の事項を整理すると役立ちます。
| 確認すること | 具体例 |
|---|---|
| 開始の理由と手続 | 開始日、どの出来事・危険が問題とされているか、処分通知・理由の説明、一時保護状請求の予定、意見書の提出期限。 |
| 子どもの健康と生活 | けが・持病・服薬・アレルギー、通院、学習や進学への対応、必要な配慮、保護者に伝えてもらえる情報。 |
| 面会・通信 | 面会、電話、手紙等の可否、制限の法的根拠・対象・理由・見直し時期、職員同席などの方法の検討。 |
| 事実の確認 | 出来事の時系列、診療記録や写真、園・学校の記録、実際に見聞きした人の説明。推測と直接確認した事実を区別する。 |
| 家庭復帰の検討 | 現時点で残る懸念、必要な調査、帰宅後の養育者・住まい・支援者、次回面談と再評価の予定。 |
子どもの安全や第三者の個人情報を守るため、所在、通告者、調査資料などの全部が開示されるとは限りません。その場合にも、何が説明可能で、どの資料をどの手続で求められるのかを確認します。自治体の保有個人情報の開示等が検討できることもありますが、不開示となる情報があり、回答にも時間がかかるため、短い手続期限への対応を先に進めます。
同意書などは、対象となる行為、期間、記載内容を確認してから意思を示してください。一時保護への同意、医療への同意、情報提供への同意、施設入所への同意は同じものではありません。同意・不同意・撤回の意思は、日時と相手が分かる形で記録しておくと、その後の手続を確認しやすくなります。
3.2025年6月施行の一時保護状と意見書
裁判官への請求が必要になる場合
児童相談所長等は、原則として開始日から起算して7日以内、または事前に、管轄する地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所の裁判官に一時保護状を請求します。児童福祉法33条3項が挙げる例外は、①親権を行う者または未成年後見人の同意がある場合、②そのような者がいない場合、③開始日から起算して7日以内に解除する場合です。
この7日は、保護者の不服申立期間でも、必ず家庭に戻るまでの期間でもありません。また、緊急時には一時保護を始めてから請求できる仕組みです。裁判官は法律の要件を審査し、明らかに一時保護の必要がない場合には発付しません。
同意がある場合の例外は、単に保護者が面談に応じたという意味ではありません。親権者が複数いる場合や同意を撤回した場合は、誰のどの意思表示が手続に影響するかを確認する必要があります。こども家庭庁のマニュアルは、一時保護への同意を面会・家庭復帰の条件として求めることや、不同意そのものを理由に不利に扱うことを認めていません。
保護者の説明を裁判官に届ける方法
一時保護状の審査は、通常の訴訟のように保護者と児童相談所が法廷で主張を交わす手続ではなく、児童相談所長等が提供する資料に基づく迅速な書面審査です。裁判官に直接説明する機会が当然に設けられるわけではないため、早い段階で意見を整理することが大切です。
保護者自身が任意の様式で作成した意見書を、児童相談所から裁判官へ提供してもらう方法があります。請求予定日と提出期限をすぐに確認し、期限までに提出してください。意見書には、争う事実と理由、添付資料、現在の安全確保の方法、希望する調査・対応を簡潔に記載します。提出資料の写しと提出記録も残しておきます。
一時保護状の請求が却下された場合は、原則として速やかに解除しなければなりません。ただし、児童の生命・心身に重大な危害が生じると見込まれる場合の、児童相談所側の取消請求に伴う例外があります。他方、親権者等が発付の裁判そのものに取消請求をする制度ではありません。一時保護自体を争う行政不服審査・行政訴訟は別途検討できます。
参照:児童福祉法33条3~9項、司法審査マニュアル。詳しい関連解説はQA No.999。
4.2か月を超える継続と施設入所は別の手続
一時保護は原則2か月以内ですが、必要があれば継続されます。親権者等の意思に反して継続するときは、原則として家庭裁判所の承認が必要で、その後も2か月ごとに同様の審査を受ける仕組みです。開始時の一時保護状が出ているからといって、無期限に継続できるものではありません。
ただし、児童福祉法28条による施設入所等の承認申立て、親権喪失・停止の審判請求などが既に係属している場合には例外があります。また、継続承認の申立て後、やむを得ない事情があるときは、審判が確定するまで継続できる場合があります。「2か月たったら必ず帰宅できる」とは限らないため、現在どの事件がどの裁判所で進んでいるかを確認してください。
家庭での監護が著しく子どもの福祉を害する場合などに、保護者の意思に反して児童養護施設等への入所措置をとるときは、児童福祉法28条に基づく家庭裁判所の承認が問題になります。これは一時保護の継続承認とは異なります。施設入所への対応では、過去の出来事だけでなく、現在の養育状況、利用できる支援、家庭で安全に暮らせる見通しを具体的に説明することが重要です。
家庭裁判所から届いた書類には早く目を通し、意見書提出や調査の予定を確認してください。承認審判に対する不服申立ても、行政処分に対する審査請求とは別の手続です。裁判所の案内に記された期限を確認し、受領した書類を持って早めにご相談ください。
5.面会・通信の制限と子どもの生活
2025年10月20日施行の改正を踏まえた確認
一時保護中の面会・通信は、子どもの安全、意向、心理状態などを踏まえて検討します。児童虐待防止法12条は、虐待を受けた子どもの保護のための面会・通信制限に加え、2025年10月20日から、一時保護中の子どもについて保護者の虐待が疑われ、面会・通信を認めると心身に有害な影響を及ぼすおそれが大きい場合にも、全部または一部の制限を認めています。一定の場合には、居所を明らかにしない措置も定められています。
したがって、虐待がまだ確定していないという理由だけで、面会制限が必ず違法になるわけではありません。一方、単に一時保護中であるというだけで、法律上の要件や個別事情の検討が不要になるわけでもありません。制限を受けたときは、法に基づく処分なのか、任意の協力を求める行政指導なのか、根拠・理由・範囲・見直しの予定を確認してください。
子どもの負担や危険を減らす方法として、職員同席、短時間の面会、手紙、電話などが検討できることもあります。ただし、その方法が適切かは、子どもの意向と具体的な危険によって異なります。制限を回避するために無断で会いに行くのではなく、理由を確認し、変更の申入れや必要な法的手続を検討します。
意見を聴いてもらう権利、学習・医療への配慮
児童福祉法33条の3の3は、一時保護の開始・解除や面会・通信制限などに際して、子どもの年齢・発達等に応じた意見聴取等を求めています。緊急で事前に実施できない場合には、事後速やかに行う仕組みです。子どもが自分の気持ちを話しやすくするため、意見表明等支援の利用方法や、児童相談所・施設以外への相談方法も確認するとよいでしょう。
子どもに「帰りたいと言うように」などと働きかけたり、繰り返し事情を問いただしたりすると、負担を増やし、事実確認にも影響します。保護者の意見と子どもの意見を分け、子ども自身の言葉が適切に聴き取られる環境を求めることが大切です。
服薬、食物アレルギー、障害に応じた配慮、学習教材、受験・進路、学校との連絡などは、保護中も必要です。自治体によって具体的な運用が異なります。例えば、兵庫県は一時保護施設における生活・学習・健康管理を公表しています。お子さんについてどのような対応が行われるかを、担当者に具体的に確認してください。
6.事実の確認と家庭復帰の準備を進める
説明に誤りがあるとき
「虐待はしていない」という結論だけでなく、いつ、どこで、誰が何をしたのか、児童相談所の説明のどの部分が違うのかを整理します。けがの原因や病気が問題となる場合は、診療記録・検査結果・受診時の説明などを確認し、必要に応じて適切な専門分野の医師の評価を検討します。写真やインターネットの記事だけで、事故か虐待かを断定することはできません。
子ども、医療機関、学校などの情報が食い違う場合は、その理由を調べるよう求めます。訂正や追加調査を求めた日、その資料への回答、保護開始後に変わった事情を記録しておくと、継続の必要性を検討する際にも役立ちます。
安全な養育の見通しを示す
家庭復帰に向けては、帰宅後に誰が、いつ、どこで養育を担うかを具体化します。危険の原因となった人と距離を置く、親族や訪問支援を利用する、保育・医療・心理的支援につなげる、保護者が休息できる時間をつくるなど、実行可能な方法を検討してください。
実際に体罰や不適切な言動があった場合には、その事実と子どもへの影響を受け止め、繰り返さないための具体策を考えることが必要です。ただし、反省文の提出だけで安全が確保されるものではありません。逆に、事実を争っていることだけを理由に、家庭復帰の可能性が当然になくなるわけでもありません。
児童相談所には、現在の懸念、必要な支援、状況を再評価する時期をできるだけ具体的に説明してもらいます。面会や外出等の段階的な交流が適切かどうかも、子どもの意向と安全に応じて検討します。解除後も、利用する支援、連絡担当者、困ったときの相談先を確認しておくと、生活を安定させやすくなります。
参照:こども家庭庁の一時保護ガイドライン・子ども虐待対応の手引き。家庭復帰の準備と法的な不服申立ては、事案に応じて並行して進められます。
7.不服申立て・取消訴訟と期限
一時保護の理由や必要性、継続、面会・通信制限等に問題があると考えるときは、まず何を争うのかを特定します。児童相談所への再検討の申入れ、行政不服審査、取消訴訟、家庭裁判所の手続は、相手方も効果も異なります。
| 手続 | 確認する期限・注意点 |
|---|---|
| 一時保護状審査の意見書 | 児童相談所の請求予定を踏まえた提出期限を確認。開始直後から準備する。保護者が発付に対して直接不服を申し立てる手続とは異なる。 |
| 行政不服審査法による審査請求 | 原則、処分を知った日の翌日から3か月以内。原則として処分の日の翌日から1年という制限もある。正当な理由がある場合の例外あり。 |
| 行政事件訴訟法による取消訴訟 | 原則、処分を知った日から6か月以内。原則として処分の日から1年という制限もある。審査請求後の起算の特則や正当な理由の例外あり。 |
| 家庭裁判所の承認手続への対応 | 意見提出、調査、審判に対する不服申立ての期限を、裁判所からの書類で確認。上記の3か月・6か月とは別の手続。 |
審査請求や訴訟を起こしただけで、一時保護が自動的に停止・解除されるわけではありません。緊急性があるときは、執行停止などの暫定的な救済を検討しますが、法律上の要件を満たす必要があり、必ず認められるものではありません。
国家賠償請求は、違法な公権力の行使による損害の賠償を求める手続であり、直ちに子どもを家庭へ戻すための手続そのものではありません。解除後には取消訴訟の訴えの利益が問題となることもあります。現在の保護状態、求める結果、必要な証拠、手続にかかる時間と費用を踏まえて選びます。
児童相談所と話合いをしている間にも期限は進みます。処分通知の不服申立てに関する案内と、裁判所の書類を持参してご相談ください。通知の記載だけでは対象処分や期限が分からない場合も、早めに確認することが大切です。
8.裁判例から分かること
裁判では、開始時に分かっていた事情と、その後の調査結果・状況の変化が区別されます。以下は裁判所が公開する判決本文で確認した事例です。いずれも個別の事情に基づく第一審の判断で、すべての一時保護に同じ結論が当てはまるものではありません。
大阪地裁2022年3月24日判決――継続の必要性と追加調査
乳児のけがについて虐待が疑われた事案で、裁判所は、当初の一時保護と、その後の継続を分けて検討しました。家庭裁判所から医学的評価の信用性に疑問を指摘されながら、他の医師への照会などによる再検討をしなかった事情等を踏まえ、2019年4月19日から同年8月9日までの継続を国家賠償法上違法と判断しています。
また、行政指導として行われた面会制限について、保護者が弁護士を通じて面会を求める意思を明確に示した後も、事実上の強制による制限が続いた一定期間を違法としました。開始の必要性が認められた場合でも、後の事情に応じた再評価が必要であることが読み取れます。
判決本文:大阪地裁令和4年3月24日・平成31年(行ウ)第47号(PDF)。面会に関する判断は2025年10月の法改正前の事案であり、現在は前記の改正後12条の要件も検討する必要があります。
東京地裁2025年11月6日判決――子どもの意向と家庭・学校での状況
一時保護とその継続、面会への対応などが争われた事案で、裁判所は、子どもの帰宅への拒否感、家庭での監護の状況、学校や関係機関への調査結果等を具体的に検討し、一時保護の決定・継続について職務上の注意義務違反を認めず、国家賠償請求を退けました。
身体的なけがの有無だけでなく、年齢に合わない行動の制約や言動、子どもの受け止め方、養育環境の改善の見通しも判断に関わります。保護者の希望を伝えるとともに、子どもが何に困っているのかを丁寧に把握する必要があることを示す事例です。
判決本文:東京地裁令和7年11月6日・令和6年(行ウ)第124号(PDF)。判決日は制度改正後ですが、対象は2023~2024年の対応です。一時保護状制度や改正後の面会制限の適法性を直接判断した判決ではありません。
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現行法・公的資料・判例PDF
旧稿に掲載していた古い虐待対応資料へのリンクを、こども家庭庁が公表する改訂版等に更新しました。PDFのURLが変更された場合に備え、資料一覧へのリンクも併記しています。
- 児童福祉法(e-Gov)/児童虐待の防止等に関する法律(e-Gov)
- 民法(e-Gov)/行政不服審査法(e-Gov)/行政事件訴訟法(e-Gov)
- こども家庭庁・一時保護ガイドライン(2025年12月25日改正・PDF)
- こども家庭庁・子ども虐待対応の手引き(2025年12月24日全部改正・PDF)
- こども家庭庁・一時保護時の司法審査に関する児童相談所対応マニュアル(2024年12月26日・PDF)/掲載ページ
- こども家庭庁・児童虐待防止対策の法令・通知一覧
- こども家庭庁・令和7年児童福祉法等改正について
- 兵庫県・一時保護施設について
- 大阪地裁2022年3月24日判決(PDF)/東京地裁2025年11月6日判決(PDF)
未施行の改正:一時保護委託者の登録制度に関する改正は、2026年10月1日施行予定です。本ページの確認日である2026年9月25日時点では未施行のため、施行済みの制度と区別しています。委託先に関する新制度の詳細は、上記の令和7年改正の案内をご確認ください。
最終更新・資料確認日:2026年9月25日。本文は原則として同日現在施行中の法令を基にした一般的な説明です。個別の結論は、処分時の法令、保護開始後の状況、子どもの意向、提出資料などにより異なります。掲載判決の上訴後の経過・確定の有無については、ここでは断定していません。