フリーランス新法対策

【民事|労働|フリーランス新法|労働者性|使用従属性|カスタマーエンジニア事件、最判平成23年4月12日】

質問

法人として学習塾を経営しており、複数の教室を運営しています。講師は直接雇用の社員やアルバイトも居りますが、夏期講習や直前講習やテキストの改訂や模擬試験など、業務が立て込む時期には、社員OBや知り合いなど、臨時の講師を業務委託契約の形で依頼して繁忙期を乗り切っています。これらの臨時契約の講師陣を常時雇用する余裕は当社にはありません。最近ニュース報道を見ると業務委託や請負でも、実質的に労働契約と同じだから労働者としての保護を与えるという裁判例もあるようです。また、フリーランス新法という法律も施行されたと聞きました。トラブル無いように運営したいので対策を教えてください。

回答

1、形式的に業務委託契約書を作成したり、業務請負契約書を締結していても、運用実態が直接雇用の労働契約と同然であったならば、契約相手からの訴えにより裁判所で労働者の権利が認められてしまうことがあるのはご懸念の通りです。どのような点に注意すればよいのか、裁判例も交えて解説します。

2、令和6年11月からフリーランス新法が施行されており、個人事業主と業務委託契約や請負契約を締結する場合に守らなければならないルールが明確化されています。注意すべき要件と効果について解説致します。

解説

1、労働契約とは

 人に仕事をしてもらう場合、契約が労働契約なのかそうでない請負や業務委託契約なのかは、労働法の適用の有無で違いが生じます。契約の内容によって判断され形式的に業務委託契約書を作成したり、請負契約書を作成しただけでは、労働契約であると裁判所で認定されることがあるのはご質問の通りです。どういう場合に労働契約となり、どういう場合に、業務委託もしくは請負になるのか、それを理解するためには、まず最初に、「労働契約とは何か」を理解する必要があります。

民法623条(雇用) 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

労働契約法6条(労働契約の成立)

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

労働基準法9条(定義)

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

「雇用」、「労働契約」、「労働者」など用語は異なりますが、契約の実態はひとつの内容を示しています。共通しているのは、働く人が、相手に使用され労務を提供し、その対価として報酬または賃金を受け取るという関係です。これらの法律では、労務の種類・内容は限定されていません。

そして、労働契約であるかどうかを判断するうえで特に重要なのは、単に「働いて報酬を受け取っている」というだけではなく、その人が相手方の具体的な指示のもとに「使用されて」働いているかどうかです。

ここでいう「使用されて」とは、会社や発注者の具体的な指揮監督の下で労務を提供しているという意味です。すなわち、仕事をする人が独立した事業者として自分の裁量で業務を提供したり、仕事を完成させるのではなく、相手方の業務組織の中に組み込まれ、相手方の指示に従って労務を提供している場合には、労働契約であると判断されやすくなります。

これを一般に「使用従属性」といいます。

労働者性の判断においては、この使用従属性が最も重要な判断基準になります。具体的には、①労務の提供が使用者の指揮監督下で行われているか(事業主の指揮命令系統に服しているか)、②報酬がその指揮監督下における労働の対価として支払われているか、という点が中心になります。

たとえば、作業時間や作業場所が指定されている、業務の進め方について具体的な指示を受けている、仕事の依頼を自由に断ることができない、休む場合には許可が必要である、本人以外の者に仕事を代替させることができない、会社の服務規律や就業上のルールに従うことを求められている、報酬が時間給・日給・月給のように労働時間に対応して支払われている、というような事情がある場合には、使用従属性が認められやすくなります。

これに対して、請負契約や業務委託契約の場合には、仕事を受ける側は、原則として独立した事業者として業務を行います。契約では、提供される業務内容や仕事内容が特定されるだけで、それを誰がどのように提供するのかは、特定されていません。

民法632条(請負) 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

請負契約とは、仕事の完成を目的とする契約です。たとえば、建物を完成させる、内装工事を完成させる、成果物を納品する、システムを完成させる、というように、一定の仕事を完成させることが契約の中心になります。この場合、発注者は、完成すべき仕事の内容や納期を指定することはできますが、仕事をする者の日々の作業時間、作業場所、作業方法について細かく指揮命令する関係にはありません。

また、業務委託契約という言葉は、民法典に条文のある典型契約ではありませんが、実務上は準委任契約の一種であったり、請負の要素も含まれる混合契約であると解釈されています。契約の代理締結など法律行為の代行を依頼するのが委任契約であり、作業など事実行為の代行を依頼するのが準委任契約です。

民法643条(委任) 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

民法656条(準委任) この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

業務委託契約の目的には、法律行為の代理(契約代理締結業務)や、仕事の完成を含む場合もあり、実務上、請負、委任、準委任などを広く含む言葉として使われています。したがって、契約書に「業務委託契約」と書かれていても、その実態が請負なのか、委任なのか、準委任なのか、それとも実質的には労働契約なのかは、契約書の表題だけでは決まりません。

重要なのは、実際の運用・働き方です。

たとえば、契約書の表題が「業務委託契約書」とされていても、実際には毎日決められた時間に出勤し、会社の指定する場所で作業し、会社の担当者から作業手順について具体的な指示を受け、休む場合には事前の許可が必要で、報酬も月額固定または日給に近い形で支払われているような場合には、実質的には労働契約であると判断される可能性が高いでしょう。

反対に、発注者から依頼された仕事について、受託者が自分の裁量で作業方法を決め、作業時間や作業場所も自由に選択でき、第三者への再委託や下請けも可能で、必要な道具や材料も自分で準備し、他の顧客からも仕事を受け、仕事の完成や成果に応じて報酬を受け取っているような場合には、独立した事業者としての業務委託契約または請負契約であると判断されやすくなります。

したがって、労働契約と業務委託契約・請負契約を区別するポイントは、単に契約書の名称ではありません。中心的な違いは、働く人が相手方の指揮監督の下で労務を提供しているのか、それとも独立した事業者として仕事を引き受けているのか、という点にあります。

この区別は、実務上非常に重要です。なぜなら、実質的に労働契約であると判断されれば、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法のいわゆる「労働三法」や、最低賃金法、労働安全衛生法、労災保険法などの労働法規が適用されるからです。使用者は、契約書の名称を「業務委託」や「請負」としただけで、これらの労働法上の責任を免れることはできません。

つまり、形式的には業務委託契約や請負契約とされていても、実態として、発注者が作業者を自社の労働力として組み込み、指揮命令し、その労働に対して賃金に相当する報酬を支払っている場合には、裁判上、労働契約であると認定される可能性があります。

このように、労働契約とは、単に「仕事をしてお金をもらう契約」というだけではなく、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払う関係をいいます。その判断にあたっては、契約書の表題や文言だけでなく、実際の業務内容、指揮命令の有無、時間的・場所的拘束、報酬の性質、代替性の有無、事業者性の有無などを総合的に検討する必要があります。

2、判例検討

参考判例を3件ご紹介いたします。いずれも、労働組合法上の「労働者性」が問題となり、裁判所がこれを認めた最高裁判例です。

もっとも、労働組合法上の労働者性と、労働基準法・労働契約法上の労働者性は、完全に同じ基準で判断されるものではありません。たとえば、解雇規制、残業代、最低賃金、有給休暇などが問題となる場面では、労働基準法や労働契約法に基づき、指揮監督関係の有無、勤務時間・場所の拘束性、報酬の労務対価性、事業者性の有無などを踏まえて、個別具体的に判断されます。

しかし、契約書上は「業務委託」「請負」などとされていても、実際には相手方の事業組織に組み込まれ、一定の指揮監督や経済的従属性の下で労務を提供している場合には、労働者性が認められ得るという基本的な考え方は共通しています。ですから、以下の判例は、労働基準法や労働契約法上の労働者性を検討する際にも、重要な参考資料となるものです。

(1)カスタマーエンジニア事件、最判平成23年4月12日

https://www.courts.go.jp/hanrei/81243/detail2/index.html

『前記事実関係等によれば,被上告人の従業員のうち,被上告人の主たる事業であ

るCの住宅設備機器に係る修理補修業務を現実に行う可能性がある者はごく一部で

あって,被上告人は,主として約590名いるCEをライセンス制度やランキング制度の下で管理し,全国の担当地域に配置を割り振って日常的な修理補修等の業務に対応させていたものである上,各CEと調整しつつその業務日及び休日を指定し,日曜日及び祝日についても各CEが交替で業務を担当するよう要請していたというのであるから,CEは,被上告人の上記事業の遂行に不可欠な労働力として,その恒常的な確保のために被上告人の組織に組み入れられていたものとみるのが相当である。また,CEと被上告人との間の業務委託契約の内容は,被上告人の定めた「業務委託に関する覚書」によって規律されており,個別の修理補修等の依頼内容をCEの側で変更する余地がなかったことも明らかであるから,被上告人がCEとの間の契約内容を一方的に決定していたものというべきである。さらに,CEの報酬は,CEが被上告人による個別の業務委託に応じて修理補修等を行った場合に,被上告人が商品や修理内容に従ってあらかじめ決定した顧客等に対する請求金額に,当該CEにつき被上告人が決定した級ごとに定められた一定率を乗じ,これに時間外手当等に相当する金額を加算する方法で支払われていたのであるから,労務の提供の対価としての性質を有するものということができる。加えて,被上告人から修理補修等の依頼を受けた場合,CEは業務を直ちに遂行するものとされ,原則的な依頼方法である修理依頼データの送信を受けた場合にCEが承諾拒否通知を行う割合は1%弱であったというのであって,業務委託契約の存続期間は1年間で被上告人に異議があれば更新されないものとされていたこと,各CEの報酬額は当該CEにつき被上告人が毎年決定する級によって差が生じており,その担当地域も被上告人が決定していたこと等にも照らすと,たといCEが承諾拒否を理由に債務不履行責任を追及されることがなかったとしても,各当事者の認識や契約の実際の運用においては,CEは,基本的に被上告人による個別の修理補修等の依頼に応ずべき関係にあったものとみるのが相当である。しかも,CEは,被上告人が指定した担当地域内において,被上告人からの依頼に係る顧客先で修理補修等の業務を行うものであり,原則として業務日の午前8時半から午後7時までは被上告人から発注連絡を受けることになっていた上,顧客先に赴いて上記の業務を行う際,Cの子会社による作業であることを示すため,被上告人の制服を着用し,その名刺を携行しており,業務終了時には業務内容等に関する所定の様式のサービス報告書を被上告人に送付するものとされていたほか,Cのブランドイメージを損ねないよう,全国的な技術水準の確保のため,修理補修等の作業手順や被上告人への報告方法に加え,CEとしての心構えや役割,接客態度等までが記載された各種のマニュアルの配布を受け,これに基づく業務の遂行を求められていたというのであるから,CEは,被上告人の指定する業務遂行方法に従い,その指揮監督の下に労務の提供を行っており,かつ,その業務について場所的にも時間的にも一定の拘束を受けていたものということができる。

なお,原審は,CEは独自に営業活動を行って収益を上げることも認められていたともいうが,前記事実関係等によれば,平均的なCEにとって独自の営業活動を行う時間的余裕は乏しかったものと推認される上,記録によっても,CEが自ら営業主体となって修理補修を行っていた例はほとんど存在していなかったことがうかがわれるのであって,そのような例外的な事象を重視することは相当とはいえない。

以上の諸事情を総合考慮すれば,CEは,被上告人との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当である。』

この事件は、住宅設備機器の修理補修業務を行う者が、形式上は業務委託契約に基づく個人事業主とされていた事案です。会社側は、カスタマーエンジニアは雇用契約上の従業員ではなく、独立した事業者であると主張しましたが、最高裁は、契約の形式ではなく、実際の就労実態を重視して判断しています。具体的には、カスタマーエンジニアが会社の主たる事業に不可欠な労働力として組織に組み込まれていたこと、担当地域や業務日、休日、報酬算定方法などが会社によって決定されていたこと、業務依頼を自由に断ることが実際上困難であったこと、会社のマニュアル、制服、名刺、報告書式等に従って業務を行っていたこと、業務時間や担当区域について一定の拘束を受けていたことなどを総合考慮し、労働組合法上の労働者性を肯定しました。この判例は、「業務委託契約」や「個人事業主」という形式だけでは労働者性を否定できず、組織への組込み、契約条件の一方的決定、報酬の労務対価性、指揮監督の有無などの実態を見て判断すべきと判示しました。

(2)合唱団員事件、最判平成23年4月12日

https://www.courts.go.jp/hanrei/81241/detail2/index.html

『前記事実関係等によれば,出演基本契約は,年間を通して多数のオペラ公演を主

催する被上告財団が,試聴会の審査の結果一定水準以上の歌唱技能を有すると認めた者を,原則として年間シーズンの全ての公演に出演することが可能である契約メンバーとして確保することにより,上記各公演を円滑かつ確実に遂行することを目的として締結されていたものであるといえるから,契約メンバーは,上記各公演の実施に不可欠な歌唱労働力として被上告財団の組織に組み入れられていたものというべきである。また,契約メンバーは,出演基本契約を締結する際,被上告財団から,全ての個別公演に出演するために可能な限りの調整をすることを要望されており,出演基本契約書には,被上告財団は契約メンバーに対し被上告財団の主催するオペラ公演に出演することを依頼し,契約メンバーはこれを承諾すること,契約メンバーは個別公演に出演し,必要な稽古等に参加し,その他個別公演に伴う業務で被上告財団と合意するものを行うことが記載され,出演基本契約書の別紙「出演公演一覧」には,年間シーズンの公演名,公演時期,上演回数及び当該契約メンバーの出演の有無等が記載されていたことなどに照らせば,出演基本契約書の条項に個別公演出演契約の締結を義務付ける旨を明示する規定がなく,契約メンバーが個別公演への出演を辞退したことを理由に被上告財団から再契約において不利な取扱いを受けたり制裁を課されたりしたことがなかったとしても,そのことから直ちに,契約メンバーが何らの理由もなく全く自由に公演を辞退することができたものということはできず,むしろ,契約メンバーが個別公演への出演を辞退した例は,出産,育児や他の公演への出演等を理由とする僅少なものにとどまっていたことにも鑑みると,各当事者の認識や契約の実際の運用においては,契約メンバーは,基本的に被上告財団からの個別公演出演の申込みに応ずべき関係にあったものとみるのが相当である。しかも,契約メンバーと被上告財団との間で締結されていた出演基本契約の内容は,被上告財団により一方的に決定され,契約メンバーがいかなる態様で歌唱の労務を提供するかについても,専ら被上告財団が,年間シーズンの公演の件数,演目,各公演の日程及び上演回数,これに要する稽古の日程,その演目の合唱団の構成等を一方的に決定していたのであり,これらの事項につき,契約メンバーの側に交渉の余地があったということはできない。そして,契約メンバーは,このようにして被上告財団により決定された公演日程等に従い,各個別公演及びその稽古につき,被上告財団の指定する日時,場所において,その指定する演目に応じて歌唱の労務を提供していたのであり,歌唱技能の提供の方法や提供すべき歌唱の内容については被上告財団の選定する合唱指揮者等の指揮を受け,稽古への参加状況については被上告財団の監督を受けていたというのであるから,契約メンバーは,被上告財団の指揮監督の下において歌唱の労務を提供していたものというべきである。なお,公演や稽古の日時,場所等は,上記のとおり専ら被上告財団が一方的に決定しており,契約メンバーであるAが公演への出演や稽古への参加のため新国立劇場に行った日数は,平成14年8月から同15年7月までのシーズンにおいて約230日であったというのであるから,契約メンバーは時間的にも場所的にも一定の拘束を受けていたものということができる。さらに,契約メンバーは,被上告財団の指示に従って公演及び稽古に参加し歌唱の労務を提供した場合に,出演基本契約書の別紙「報酬等一覧」に掲げる単価及び計算方法に基づいて算定された報酬の支払を受けていたのであり,予定された時間を超えて稽古に参加した場合には超過時間により区分された超過稽古手当も支払われており,Aに支払われていた報酬(上記手当を含む。)の金額の合計は年間約300万円であったというのであるから,その報酬は,歌唱の労務の提供それ自体の対価であるとみるのが相当である。

以上の諸事情を総合考慮すれば,契約メンバーであるAは,被上告財団との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当である。』

この事件は、オペラ公演に出演する合唱団員について、形式上は出演契約であり、財団が雇用関係を否定していたにもかかわらず、最高裁が労働組合法上の労働者性を肯定した事案です。最高裁は、契約メンバーが年間を通じて多数の公演を円滑に実施するために確保され、公演に不可欠な歌唱労働力として財団の組織に組み込まれていたことを重視しました。また、公演日程、演目、稽古日程、出演内容などは財団側が一方的に決定しており、契約メンバー側に交渉の余地は乏しいとされました。さらに、出演や稽古について財団の指定する日時・場所に従い、合唱指揮者等の指揮を受けて歌唱労務を提供していたこと、稽古への参加状況も監督されていたこと、報酬が出演・稽古という労務提供自体の対価と評価されたことも判断要素とされました。この判例は、芸術・芸能・音楽など、高度の専門性や創作性を伴う業務であっても、契約形式だけで労働者性が否定されるわけではなく、組織への組込み、契約条件の一方的決定、指揮監督、時間的・場所的拘束、報酬の労務対価性などの実態を総合考慮すべきことを示したものです。

(3)サービスエンジニアリング事件、最判平成24年2月21日

https://www.courts.go.jp/hanrei/82015/detail2/index.html

『(1)前記事実関係等によれば,C製品に係る出張修理業務のうち被上告人の従業員によって行われる部分は一部であって,被上告人は,自ら選抜し,約3か月間の被上告人が実施する研修を了した個人代行店に出張修理業務のうち多くの割合の業務を担当させている上,個人代行店が担当する各営業日ごとの出張修理業務については,被上告人が1日当たりの受注可能件数を原則8件と定め,各個人代行店とその営業日及び業務担当地域ごとの業務量を調整して割り振っているというのであるから,個人代行店は,被上告人の上記事業の遂行に必要な労働力として,基本的にその恒常的な確保のために被上告人の組織に組み入れられているものとみることができる。加えて,本件契約の内容は,被上告人の作成した統一書式に基づく業務委託に関する契約書及び覚書によって画一的に定められており,業務の内容やその条件等について個人代行店の側で個別に交渉する余地がないことは明らかであるから,被上告人が個人代行店との間の契約内容を一方的に決定しているものといえる。さらに,個人代行店に支払われる委託料は,原則として被上告人が定めた修理工料等に一定割合を乗じて算定されるなど,形式的には出来高払に類する方式が採られているものの,個人代行店は1日当たり通常5件ないし8件の出張修理業務を行い,その最終の顧客訪問時間は午後6時ないし7時頃になることが多いというのであるから,このような実際の業務遂行の状況に鑑みると,修理工料等が修理する機器や修理内容に応じて著しく異なることからこれを専ら仕事完成に対する対価とみざるを得ないといった事情が特段うかがわれない本件においては,実質的には労務の提供の対価としての性質を有するものとして支払われているとみるのがより実態に即しているものといえる。また,個人代行店は,特別な事情のない限り被上告人によって割り振られた出張修理業務を全て受注すべきものとされている上,本件契約の存続期間は1年間で被上告人から申出があれば更新されないものとされていること等にも照らすと,個人代行店があらかじめその営業日,業務時間及び受注可能件数を提示し,被上告人がこれに合わせて顧客から受注した出張修理業務を発注していることを考慮しても,各当事者の認識や本件契約の実際の運用においては,個人代行店は,なお基本的に被上告人による個別の出張修理業務の依頼に応ずべき関係にあるものとみるのが相当である。しかも,個人代行店は,原則として営業日には毎朝業務開始前に被上告人のサービスセンターに出向いて顧客訪問予定日時等の記載された出張訪問カードを受け取り,被上告人の指定した業務担当地域に所在する顧客宅に順次赴き,C作成のサービスマニュアルに従って所定の出張修理業務を行うのであり,その際には,被上告人の親会社であるCのロゴマーク入りの制服及び名札を着用した上,被上告人の社名が印刷された名刺を携行し,毎夕の業務終了後も原則としてサービスセンターに戻り,伝票処理や当日の修理進捗状況等の入力作業を行っているというのであるから,上記のような通常の業務に費やされる時間及びその態様をも考慮すれば,個人代行店は,基本的に,被上告人の指定する業務遂行方法に従い,その指揮監督の下に労務の提供を行っており,かつ,その業務について場所的にも時間的にも相応の拘束を受けているものということができる(このことは,サービスセンターとのやり取りをファックス等を通じた通信により行っている一部の個人代行店についても同様である。)。

(2)上記(1)の諸事情に鑑みると,本件における出張修理業務を行う個人代行店については,他社製品の修理業務の受注割合,修理業務における従業員の関与の態様,法人等代行店の業務やその契約内容との等質性などにおいて,なお独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情がない限り,労働組合法上の労働者としての性質を肯定すべきものと解するのが相当であり,上記個人代行店について上記特段の事情があるか否かが問題となる。しかしながら,C製品以外の製品の修理業務を行う個人代行店が2店存在する一方で,その業務の内容や割合等は明らかではなく,また,個人代行店はその従業員を修理業務に従事させることが禁止されていないものの,その従業員の有無及びその従業員が行っている業務の内容が日常的に補助的業務の範囲を超えているか否か等は明らかではなく,さらに,被上告人は法人等代行店とも業務委託契約を締結しているところ,法人等代行店の業務の実態やその契約の内容等の詳細は明らかではない。このように,前記事実関係等のみからは,個人代行店が自らの独立した経営判断に基づいてその業務内容を差配して収益管理を行う機会が実態として確保されているか否かは必ずしも明らかであるとはいえず,出張修理業務を行う個人代行店が独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情の有無を判断する上で必要な上記の諸点についての審理が十分に尽くされていないものといわざるを得ない。なお,個人代行店は,出張業務に際して自ら保有する自動車を用い,その諸費用を自ら負担しているが,一方で高価で特殊な計測機器等については被上告人から無償で貸与されているなどの事実にも鑑みれば,それだけでは上記のような機会が確保されていると認めるには足りないというべきである。また,個人代行店が被上告人から支払われる委託料から源泉徴収や社会保険料等の控除を受けておらず,自ら確定申告を行っている点についても,実態に即して客観的に決せられるべき労働組合法上の労働者としての性質がそのような事情によって直ちに左右されるものとはいえない。

5  以上によれば,前記4(1)の諸事情があるにもかかわらず,出張修理業務を行う個人代行店が独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情の有無を判断する上で必要な上記の諸点について十分に審理を尽くすことなく,上記個人代行店は被上告人との関係において労働組合法上の労働者に当たらないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。』

この事件は、家電製品の出張修理業務を行う個人代行店について、形式上は業務委託契約に基づく独立事業者とされていたものの、労働組合法上の労働者に当たるかが争われた事案です。最高裁は、個人代行店が会社の出張修理事業の多くを担い、会社の事業遂行に必要な労働力として組織に組み込まれていたこと、契約内容が会社作成の統一書式により一方的・画一的に定められていたこと、委託料が形式上は出来高払であっても実質的には労務提供の対価と評価できること、会社から割り振られた修理業務に基本的に応ずべき関係にあったことを重視しました。また、社員と異なりタイムカードは使われていなかったものの、毎朝サービスセンターで訪問カードを受け取り、指定地域の顧客宅を訪問し、マニュアル、制服、名札、名刺、伝票処理等に従って業務を行っていたことから、会社の指揮監督下で、時間的・場所的拘束を受けていたと判断しました。更に、自動車を自ら用意し、確定申告をしているなどの事情だけでは、直ちに独立事業者性を基礎付けるものではないとしました。

3、学習塾の講師との契約における注意点

以上の判例を踏まえると、学習塾が講師との間で形式上「業務委託契約」を締結していても、実態によっては労働契約と判断される可能性も高いことが分かります。

学習塾の講師業務は、授業、質問対応、宿題指示、採点、報告書作成、保護者対応等を内容とし、形式的には準委任契約として構成されることがあります。しかし、講師が塾の指定する曜日・時間に出勤し、指定された教室で、塾が割り振った生徒に対し、塾の教材やカリキュラムに従って授業を行っている場合には、時間的・場所的拘束が認められやすくなります。

また、授業内容、進度、報告方法、保護者対応等について塾から具体的な指示を受け、担当授業を自由に断れず、欠勤や代替講師の手配にも塾の承認を要する場合には、業務依頼に応ずべき関係や指揮監督関係があると評価される可能性があります。研修、ミーティング、授業後の報告、成績管理等を求められている場合も、塾の組織に組み込まれている事情となります。

報酬についても、授業1コマごとの支払であっても、実質的に決められた時間に授業を担当したことへの対価であれば、労務提供の対価と評価されやすくなります。

他方で、講師が担当授業を自由に引き受けたり断ったりできる場合には、塾からの業務依頼に当然に応ずべき関係があるとはいえず、独立事業者性を示す事情となります。また、授業内容、教材、講義方法、講座構成等について講師に相当程度の裁量があり、他の塾、予備校、家庭教師、オンライン講座等でも自由に活動できる場合には、特定の塾に従属しているというより、自己の専門性と営業判断に基づいて業務を受託していると評価されやすくなります。当該講座の担当者を第三者に再委託できるなど、業務代替性がある場合も、塾が特定個人を労働力として使用しているのではなく、講師側が独立した事業者として講座提供業務を引き受けていることを示す事情となります。

また、「〇〇先生の英語」のように講師名を前面に出し、その講師個人の知名度、専門性、教授方法を講座の特色として標榜している場合には、労働者性を否定する方向の事情となり得ます。講座の魅力が塾の統一的なカリキュラムではなく、講師個人の能力、経験、教授方法、ブランド力に由来している場合には、独立した専門家としての性格が強まるからです。ただし、講師名を出しているという一事だけで労働者性が否定されるわけではありません。最終的には、契約の名称ではなく、講師が塾の指揮監督下で労務を提供しているのか、独立した事業者として講座を提供しているのかを、実態に即して総合的に判断する必要があります。

4、フリーランス新法対策

上記の論点をクリアして、臨時講師との契約が、個人事業主との業務委託契約あるいは請負契約であると主張できる場合でも、令和5年4月に成立して令和6年11月から施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の規制には注意が必要です。

この法律は、個人で業務を受託するフリーランスが、発注事業者との取引において不利な立場に置かれやすいことを踏まえ、取引の適正化と就業環境の整備を目的として制定された法律です。

フリーランス新法 第1条(目的) この法律は、我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、特定受託事業者に業務委託をする事業者について、特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講ずることにより、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

学習塾が臨時講師を労働者ではなく、個人事業主として業務委託契約又は請負契約により起用する場合、その講師が従業員を使用しない個人事業主であれば、フリーランス新法上の「特定受託事業者」に該当する可能性があります。その場合、塾側は、発注事業者として同法上の義務を負うことになります。

まず、塾がフリーランスの講師に業務を委託する場合、フリーランス新法3条1項及び同法施行規則1条1項に基づき、業務内容、報酬額、支払期日、業務を行う日時・場所、成果物がある場合の納期、検査の有無及び検査完了期日など、取引条件を明確に示す必要があります。口頭で「授業をお願いします」と伝えるだけでは、同条が求める「書面又は電磁的方法による明示」とはいえませんので、契約書、発注書、メール等により、後から確認できる形で明示しておくべきです。

フリーランス新法3条(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)

1項 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。

2項 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。

また、報酬については、フリーランス新法4条1項により、原則として、給付を受領した日又は役務の提供を受けた日から起算して60日の期間内で、かつ、できる限り短い期間内に支払期日を定める必要があります。また、同条5項により、特定業務委託事業者は、その支払期日までに報酬を支払わなければなりません。学習塾の場合、講師による授業は通常、役務の提供に当たりますので、授業実施日を基準として支払時期を定めるのが分かりやすいでしょう。月末締め翌月末払いなどは、契約書、発注書、メール等により、月単位の締切期間、報酬額又はその算定方法、支払期日が明確にされていれば、通常問題になりにくいと考えられます。ただし、支払期日が不明確であったり、給付受領日又は役務提供日から60日を超える支払サイクルになっている場合には、同法4条1項・5項との関係で注意が必要です。

フリーランス新法4条(報酬の支払期日等)

1項 特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた日。次項において同じ。)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

2項 前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

3項 前二項の規定にかかわらず、他の事業者(以下この項及び第六項において「元委託者」という。)から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務(以下この項及び第六項において「元委託業務」という。)の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合(前条第一項の規定により再委託である旨、元委託者の氏名又は名称、元委託業務の対価の支払期日(以下この項及び次項において「元委託支払期日」という。)その他の公正取引委員会規則で定める事項を特定受託事業者に対し明示した場合に限る。)には、当該再委託に係る報酬の支払期日は、元委託支払期日から起算して三十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

4項 前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは元委託支払期日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは元委託支払期日から起算して三十日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

5項 特定業務委託事業者は、第一項若しくは第三項の規定により定められた支払期日又は第二項若しくは前項の支払期日までに報酬を支払わなければならない。ただし、特定受託事業者の責めに帰すべき事由により支払うことができなかったときは、当該事由が消滅した日から起算して六十日(第三項の場合にあっては、三十日)以内に報酬を支払わなければならない。

6項 第三項の場合において、特定業務委託事業者は、元委託者から前払金の支払を受けたときは、元委託業務の全部又は一部について再委託をした特定受託事業者に対して、資材の調達その他の業務委託に係る業務の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない。

さらに、1か月以上継続する業務委託については、フリーランス新法5条により、発注者による一方的な報酬減額、買いたたき、不当なやり直しの要求、受領拒否、不当な利益提供要請などが問題となります。たとえば、授業後に「生徒の成績が上がらなかったから報酬を減額する」「授業報告書や補習対応を無償で追加してほしい」といった対応は、契約内容や責任の所在によっては、フリーランス新法上問題となり得ます。

フリーランス新法5条(特定業務委託事業者の遵守事項)

1項 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条において同じ。)をした場合は、次に掲げる行為(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、第一号及び第三号に掲げる行為を除く。)をしてはならない。

一号 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の受領を拒むこと。

二号 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること。

三号 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付を受領した後、特定受託事業者にその給付に係る物を引き取らせること。

四号 特定受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること。

五号 特定受託事業者の給付の内容を均質にし、又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。

2項 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、次に掲げる行為をすることによって、特定受託事業者の利益を不当に害してはならない。

一号 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

二号 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の内容を変更させ、又は特定受託事業者の給付を受領した後(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた後)に給付をやり直させること。

講師募集の段階でも注意が必要です。特定受託事業者法12条1項は、特定業務委託事業者が、広告等により特定受託事業者の募集情報を提供する場合、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めています。また、同条2項は、募集情報を正確かつ最新の内容に保つべきことを定めています。募集広告や求人サイトに、報酬額、授業時間、業務内容、勤務地、オンライン授業の有無などを掲載する場合には、これらの情報について虚偽又は誤解を招く表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保つ必要があります。たとえば、「完全自由シフト」「高収入可能」と表示しながら、実際には固定シフトであったり、報酬条件が表示内容と異なる場合には、同法12条1項・2項との関係で問題となり得ます。

フリーランス新法12条(募集情報の的確な表示)

1項 特定業務委託事業者は、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(次項において「広告等」という。)により、その行う業務委託に係る特定受託事業者の募集に関する情報(業務の内容その他の就業に関する事項として政令で定める事項に係るものに限る。)を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。

2項 特定業務委託事業者は、広告等により前項の情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。

また、塾側は、ハラスメント対策にも配慮する必要があります。特定受託事業者法14条1項は、業務委託におけるセクハラ、妊娠・出産等に関するハラスメント、取引上の優越的関係を背景とするパワハラ等により、特定受託業務従事者の就業環境が害されないよう、相談体制の整備その他必要な措置を講ずることを求めています。したがって、講師が業務委託であっても、塾の担当者、教室長、保護者、生徒等との関係でハラスメントが発生しないよう、相談窓口や対応方針を整備しておく必要があります。また、相談したこと等を理由に契約解除、担当授業の削減、報酬減額等の不利益取扱いをすることは、同条2項との関係で問題となります。

フリーランス新法14条(業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等)

1項 特定業務委託事業者は、その行う業務委託に係る特定受託業務従事者に対し当該業務委託に関して行われる次の各号に規定する言動により、当該各号に掲げる状況に至ることのないよう、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。

一号 性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応によりその者(その者が第二条第一項第二号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に係る業務委託の条件について不利益を与え、又は性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境を害すること。

二号 特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること。

三号 取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより特定受託業務従事者の就業環境を害すること。

2項 特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者が前項の相談を行ったこと又は特定業務委託事業者による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、その者(その者が第二条第一項第二号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に対し、業務委託に係る契約の解除その他の不利益な取扱いをしてはならない。

さらに、特定受託事業者法16条1項により、6か月以上継続する業務委託について契約を解除し、又は更新しない場合には、原則として、少なくとも30日前までに予告する必要があります。同条の対象となる「継続的業務委託」は、同法13条1項及び同法施行令3条により、6か月以上の期間行う業務委託をいうものとされています。したがって、継続的に授業を担当している講師に対し、突然「来週から授業は不要です」と打ち切るような運用は、同法16条1項との関係で問題となる可能性があります。また、講師から解除又は不更新の理由の開示を求められた場合には、同条2項により、遅滞なく理由を開示する必要があります。

フリーランス新法16条(解除等の予告)

1項 特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。次項において同じ。)をしようとする場合には、当該契約の相手方である特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない。ただし、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。

2項 特定受託事業者が、前項の予告がされた日から同項の契約が満了する日までの間において、契約の解除の理由の開示を特定業務委託事業者に請求した場合には、当該特定業務委託事業者は、当該特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なくこれを開示しなければならない。ただし、第三者の利益を害するおそれがある場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。

したがって、臨時講師との契約を業務委託契約として整理する場合には、労働者性の問題を回避するだけでなく、フリーランス新法に対応した契約書と運用を整備する必要があります。具体的には、業務内容、報酬、支払期日、授業実施方法、キャンセル時の取扱い、追加業務の有償・無償の区別、契約終了時の予告、ハラスメント相談窓口等を明確にしておくことが重要です。

フリーランス新法に違反した場合の主な手続としては、公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣による指導・助言、報告徴収・立入検査、勧告、命令、公表等があります。対象となる行為としては、取引条件の明示義務違反(3条)、報酬支払期日の設定・期日支払義務違反(4条)、受領拒否、報酬減額、返品、買いたたき、不当なやり直し等の禁止行為(5条)、募集情報の虚偽表示・誤認表示(12条)、ハラスメント対策義務違反(14条)、6か月以上の継続的業務委託における中途解除・不更新の30日前予告義務違反(16条)などがあります。

もっとも、これらの違反があったからといって、直ちに罰金が科されるわけではありません。行政機関による勧告や命令等を経たうえで、命令に違反した場合や、報告徴収・立入検査に応じない場合、虚偽報告をした場合などに、50万円以下の罰金が問題となります(24条)。また、法人については両罰規定があり、行為者だけでなく法人も処罰対象となり得ます(25条)。

なお、前記の通り、フリーランス新法の適用対象には個人事業主ですので会社は含まれないようにも読めますが、従業員のいない一人会社は法人であっても対象となります。業務量が増加するタイミングで、委託先に法人成りを打診することも考えられますが、法人成りしただけで当然に同法の適用がなくなるわけではありません。同法の「特定受託事業者」には、法人であっても、代表者1名以外に役員がおらず、従業員も使用していない、いわゆる一人法人も含まれ得ます。したがって、単に法人を設立しただけでは、なおフリーランス新法の適用対象となる可能性があります。

法人成りを検討する場合には、複数の役員・従業員の配置、独自の営業、経理、契約管理、講師手配等を行うなど、独立した事業体としての実態が重要です。また、発注者側が同法の適用を免れる目的で法人成りを強く求めることは、不当な対応と評価されるおそれがあります。法人成りは、委託先の事業拡大や信用力向上等の観点から、受託者側において任意に検討されるべきものだからです。

業務委託契約書の締結や、フリーランス新法対策など、お困りの場合は、この分野に経験のある法律事務所にご相談なさったり顧問契約を締結するなどして、業務委託契約書の作成を依頼したり、継続的に運用チェックをなさり、労働者性について誤解を受けないようにアドバイスを受けると良いでしょう。

以上

参考条文

フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、特定受託事業者に業務委託をする事業者について、特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講ずることにより、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一 個人であって、従業員を使用しないもの

二 法人であって、一の代表者以外に他の役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。第六項第二号において同じ。)がなく、かつ、従業員を使用しないもの

2 この法律において「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である前項第一号に掲げる個人及び特定受託事業者である同項第二号に掲げる法人の代表者をいう。

3 この法律において「業務委託」とは、次に掲げる行為をいう。

一 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること。

二 事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)。

4 前項第一号の「情報成果物」とは、次に掲げるものをいう。

一 プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)

二 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの

三 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの

四 前三号に掲げるもののほか、これらに類するもので政令で定めるもの

5 この法律において「業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者をいう。

6 この法律において「特定業務委託事業者」とは、業務委託事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一 個人であって、従業員を使用するもの

二 法人であって、二以上の役員があり、又は従業員を使用するもの

7 この法律において「報酬」とは、業務委託事業者が業務委託をした場合に特定受託事業者の給付(第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、当該役務の提供をすること。第五条第一項第一号及び第三号並びに第八条第三項及び第四項を除き、以下同じ。)に対し支払うべき代金をいう。

第二章 特定受託事業者に係る取引の適正化

(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)

第三条 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。

2 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。

(報酬の支払期日等)

第四条 特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた日。次項において同じ。)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

2 前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

3 前二項の規定にかかわらず、他の事業者(以下この項及び第六項において「元委託者」という。)から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務(以下この項及び第六項において「元委託業務」という。)の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合(前条第一項の規定により再委託である旨、元委託者の氏名又は名称、元委託業務の対価の支払期日(以下この項及び次項において「元委託支払期日」という。)その他の公正取引委員会規則で定める事項を特定受託事業者に対し明示した場合に限る。)には、当該再委託に係る報酬の支払期日は、元委託支払期日から起算して三十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

4 前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは元委託支払期日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは元委託支払期日から起算して三十日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

5 特定業務委託事業者は、第一項若しくは第三項の規定により定められた支払期日又は第二項若しくは前項の支払期日までに報酬を支払わなければならない。ただし、特定受託事業者の責めに帰すべき事由により支払うことができなかったときは、当該事由が消滅した日から起算して六十日(第三項の場合にあっては、三十日)以内に報酬を支払わなければならない。

6 第三項の場合において、特定業務委託事業者は、元委託者から前払金の支払を受けたときは、元委託業務の全部又は一部について再委託をした特定受託事業者に対して、資材の調達その他の業務委託に係る業務の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない。

(特定業務委託事業者の遵守事項)

第五条 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条において同じ。)をした場合は、次に掲げる行為(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、第一号及び第三号に掲げる行為を除く。)をしてはならない。

一 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の受領を拒むこと。

二 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること。

三 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付を受領した後、特定受託事業者にその給付に係る物を引き取らせること。

四 特定受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること。

五 特定受託事業者の給付の内容を均質にし、又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。

2 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、次に掲げる行為をすることによって、特定受託事業者の利益を不当に害してはならない。

一 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

二 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の内容を変更させ、又は特定受託事業者の給付を受領した後(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた後)に給付をやり直させること。

(申出等)

第六条 業務委託事業者から業務委託を受ける特定受託事業者は、この章の規定に違反する事実がある場合には、公正取引委員会又は中小企業庁長官に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。

2 公正取引委員会又は中小企業庁長官は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。

3 業務委託事業者は、特定受託事業者が第一項の規定による申出をしたことを理由として、当該特定受託事業者に対し、取引の数量の削減、取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならない。

(中小企業庁長官の請求)

第七条 中小企業庁長官は、業務委託事業者について、第三条の規定に違反したかどうか又は前条第三項の規定に違反しているかどうかを調査し、その事実があると認めるときは、公正取引委員会に対し、この法律の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。

2 中小企業庁長官は、特定業務委託事業者について、第四条第五項若しくは第五条第一項(第一号に係る部分を除く。)若しくは第二項の規定に違反したかどうか又は同条第一項(同号に係る部分に限る。)の規定に違反しているかどうかを調査し、その事実があると認めるときは、公正取引委員会に対し、この法律の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。

(勧告)

第八条 公正取引委員会は、業務委託事業者が第三条の規定に違反したと認めるときは、当該業務委託事業者に対し、速やかに同条第一項の規定による明示又は同条第二項の規定による書面の交付をすべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

2 公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第四条第五項の規定に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかに報酬を支払うべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

3 公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第五条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定に違反していると認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかに特定受託事業者の給付を受領すべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

4 公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第五条第一項(第一号に係る部分を除く。)の規定に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかにその報酬の額から減じた額を支払い、特定受託事業者の給付に係る物を再び引き取り、その報酬の額を引き上げ、又はその購入させた物を引き取るべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

5 公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第五条第二項の規定に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかに当該特定受託事業者の利益を保護するため必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

6 公正取引委員会は、業務委託事業者が第六条第三項の規定に違反していると認めるときは、当該業務委託事業者に対し、速やかに不利益な取扱いをやめるべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

(命令)

第九条 公正取引委員会は、前条の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該勧告を受けた者に対し、当該勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

2 公正取引委員会は、前項の規定による命令をした場合には、その旨を公表することができる。

(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の準用)

第十条 前条第一項の規定による命令をする場合については、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第六十一条、第六十五条第一項及び第二項、第六十六条、第七十条の三第三項及び第四項、第七十条の六から第七十条の九まで、第七十条の十二、第七十六条、第七十七条、第八十五条(第一号に係る部分に限る。)、第八十六条、第八十七条並びに第八十八条の規定を準用する。

(報告及び検査)

第十一条 中小企業庁長官は、第七条の規定の施行に必要な限度において、業務委託事業者、特定業務委託事業者、特定受託事業者その他の関係者に対し、業務委託に関し報告をさせ、又はその職員に、これらの者の事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 公正取引委員会は、第八条及び第九条第一項の規定の施行に必要な限度において、業務委託事業者、特定業務委託事業者、特定受託事業者その他の関係者に対し、業務委託に関し報告をさせ、又はその職員に、これらの者の事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

3 前二項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

4 第一項及び第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

第三章 特定受託業務従事者の就業環境の整備

(募集情報の的確な表示)

第十二条 特定業務委託事業者は、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(次項において「広告等」という。)により、その行う業務委託に係る特定受託事業者の募集に関する情報(業務の内容その他の就業に関する事項として政令で定める事項に係るものに限る。)を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。

2 特定業務委託事業者は、広告等により前項の情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。

(妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮)

第十三条 特定業務委託事業者は、その行う業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条及び第十六条第一項において「継続的業務委託」という。)の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、当該特定受託事業者(当該特定受託事業者が第二条第一項第二号に掲げる法人である場合にあっては、その代表者)が妊娠、出産若しくは育児又は介護(以下この条において「育児介護等」という。)と両立しつつ当該継続的業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況に応じた必要な配慮をしなければならない。

2 特定業務委託事業者は、その行う継続的業務委託以外の業務委託の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、当該特定受託事業者(当該特定受託事業者が第二条第一項第二号に掲げる法人である場合にあっては、その代表者)が育児介護等と両立しつつ当該業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況に応じた必要な配慮をするよう努めなければならない。

(業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等)

第十四条 特定業務委託事業者は、その行う業務委託に係る特定受託業務従事者に対し当該業務委託に関して行われる次の各号に規定する言動により、当該各号に掲げる状況に至ることのないよう、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。

一 性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応によりその者(その者が第二条第一項第二号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に係る業務委託の条件について不利益を与え、又は性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境を害すること。

二 特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること。

三 取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより特定受託業務従事者の就業環境を害すること。

2 特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者が前項の相談を行ったこと又は特定業務委託事業者による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、その者(その者が第二条第一項第二号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に対し、業務委託に係る契約の解除その他の不利益な取扱いをしてはならない。

(指針)

第十五条 厚生労働大臣は、前三条に定める事項に関し、特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な指針を公表するものとする。

(解除等の予告)

第十六条 特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。次項において同じ。)をしようとする場合には、当該契約の相手方である特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない。ただし、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。

2 特定受託事業者が、前項の予告がされた日から同項の契約が満了する日までの間において、契約の解除の理由の開示を特定業務委託事業者に請求した場合には、当該特定業務委託事業者は、当該特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なくこれを開示しなければならない。ただし、第三者の利益を害するおそれがある場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。

(申出等)

第十七条 特定業務委託事業者から業務委託を受け、又は受けようとする特定受託事業者は、この章の規定に違反する事実がある場合には、厚生労働大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。

2 厚生労働大臣は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。

3 第六条第三項の規定は、第一項の場合について準用する。

(勧告)

第十八条 厚生労働大臣は、特定業務委託事業者が第十二条、第十四条、第十六条又は前条第三項において準用する第六条第三項の規定に違反していると認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、その違反を是正し、又は防止するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

(命令等)

第十九条 厚生労働大臣は、前条の規定による勧告(第十四条に係るものを除く。)を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該勧告を受けた者に対し、当該勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

2 厚生労働大臣は、前項の規定による命令をした場合には、その旨を公表することができる。

3 厚生労働大臣は、前条の規定による勧告(第十四条に係るものに限る。)を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、その旨を公表することができる。

(報告及び検査)

第二十条 厚生労働大臣は、第十八条(第十四条に係る部分を除く。)及び前条第一項の規定の施行に必要な限度において、特定業務委託事業者、特定受託事業者その他の関係者に対し、業務委託に関し報告をさせ、又はその職員に、これらの者の事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 厚生労働大臣は、第十八条(第十四条に係る部分に限る。)及び前条第三項の規定の施行に必要な限度において、特定業務委託事業者に対し、業務委託に関し報告を求めることができる。

3 第十一条第三項及び第四項の規定は、第一項の規定による立入検査について準用する。

第四章 雑則

(特定受託事業者からの相談対応に係る体制の整備)

第二十一条 国は、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備に資するよう、特定受託事業者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

(指導及び助言)

第二十二条 公正取引委員会及び中小企業庁長官並びに厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、業務委託事業者に対し、指導及び助言をすることができる。

(厚生労働大臣の権限の委任)

第二十三条 この法律に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。

第五章 罰則

第二十四条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。

一 第九条第一項又は第十九条第一項の規定による命令に違反したとき。

二 第十一条第一項若しくは第二項又は第二十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。

第二十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の刑を科する。

第二十六条 第二十条第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。

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