新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.690、2007/10/24 10:22

[商事]

質問:知人から「株式会社を作るので出資しないか」と誘われて100万円渡しましたが、どうも事業の見通しが悪いので、出資したお金を返して欲しいと思っています。どのような手続きが必要になりますか。

回答:一般論として、出資であれば、会社に対して返還請求は出来ません。出資した資金は、取得した株式を譲渡することにより回収する事になります。株式の譲渡時点で株式の計算上財産的価値がなければ結果的に出資金の回収はできません。他方、会社への貸金であれば、貸し金の返還請求により回収する事になります。会社が任意に支払わないのであれば返還請求訴訟を提起することが考えられます。また、いわゆる設立詐欺の場合は、詐欺になりますから詐欺をした人物に対する損害賠償請求となります。以下、順番にご説明致します。

解説:
一 「貸金」と「出資」
まず、同じお金を渡すのでも、「お金を貸した(貸金)」場合と「会社に出資した(出資)」場合とでは大きな違いがあります。
1 「貸金」であれば、あなたは、会社ないし個人の「債権者」となり、「出資」であれば「株主」になります。
2 「貸金」の場合、渡したお金の返還が約束されているので、(民法587条:金銭消費貸借)、知人ないし会社に対して、その返還を請求することができます(会社がすでに設立されていて会社の事業にお金を出したという場合は会社に対する貸金となり、会社がまだ設立していない段階であれば、あなたにお金の申し込みをした個人に対する貸金となります)。しかしながら、「出資」の場合には、返還の約束はされていません。出資したお金を回収するには、株を転売して売却代金を手にするか(後述)、あるいは、会社が廃業等により解散し、残余財産があった場合にその分配を受けることになります(会社法475条、504条、505条)。
3 「貸金」ですと、知人に貸したのであれ、会社に貸したのであれ、単なる債権者に過ぎず会社の経営に参加することはできません。「出資」であれば、株主としての権利行使、例えば、取締役を選任すること(会社法329条1項)により、会社の経営に参加することができます。
4 経済的な行為としてみると「貸金」は利息(知人に貸し付けたのであれば、利息の約束が必要です)を受け取ることを目的とする行為であり、他方、「出資」は、会社の業績が好調で利益が出ていれば、株主の権利として「配当」を受け取ることができます(会社法453条)。

二 「貸金」か「出資」か
上述のとおり、お金を貸したのか、それとも、出資したのかにより、会社に対する立場も、お金の返還についても全く異なることになりますので、ご自身の渡したお金が「貸金」だったのか、あるいは、「出資」だったのかを確認する必要があります。
@「貸金」の場合には
「貸金」であれば、知人、あるいは、設立された会社との間の「借用書」「金銭消費貸借契約書」等何らかの書面が存在すると思われます。金銭授受の際に書面のやり取りがあったのであれば、その記載内容を確認します。
A「出資」の場合には
その会社を設立する際の定款にご自身の名前が「発起人」として記載されている、あるいは、設立時募集株式の引受の申し込み証等が手元にある場合には、渡したお金は「出資」金だったことになります。
B書類がない場合には
@Aで掲げた書面がない場合には、その会社の本店所在地を管轄する法務局に行き、その会社の設立登記を申請した際の書類を閲覧するとよいでしょう。それらの書類の中に、発起人ないし株式引受人としてご自身の名前が見つけられれば、渡したお金は「出資」金だったことになります。また、それらの書面からは、出資したことにより得ることになった株式の数、種類も確認できます。

三 回収方法
@「貸金」の場合
会社あるいは知人個人に対して「貸金返還請求」を行うことになります。
「借用書」に返済期限が記載されている場合には、その期限を過ぎていれば、返還を請求することが可能です。通常は、口頭ないし内容証明郵便にて任意の支払を促します。それでも支払われない場合には、裁判による勝訴判決を経て、強制執行により、回収することになります。強制執行については、当事務所の相談データベースNo.560を、借用書がない場合については、同じくNo.533をご参照ください。

A「出資」の場合
本件では知人が、「株式会社を作るので出資しないか」という勧誘をしているので、貴方は株式会社への出資、すなわち、設立された株式会社の株主となっている場合が考えられます。株式会社とは、出資額を限度としてのみ取引の相手方に責任を負う株主(株主有限責任の原則会社法104条)により構成される営利を目的にした社団法人です。株式会社制度は、契約自由の原則、私有財産制を大前提とし自由主義、資本主義経済体制の中核であり、経済活動を円滑、適正に行い最終的に経済秩序を確立して経済面における個人の自由、尊厳を実現するために事業の所有者と事業を行う経営者を分離し、所有者については経済活動の多額の資金を確保すするために有限責任しか負わない株主に細分化して(株主有限責任の原則)、株式譲渡の自由を認め流通を確保し(株式譲渡自由の原則、会社法127条)広く大衆から募集し、他方経済活動の複雑化に伴いプロの経営者を所有者とは無関係に募集選出して(取締役に)委任することにより自由で公平であり、適正な経済秩序を達しようとするものです。従って貴方が出資した100万円は、株主の地位に変化しており、100万円は会社の資本金の一部として、取引先、債権者の担保、引き当てとなっており、解散及び清算(残余財産分配手続)しない限り会社に維持しなければなりませんから(資本充実原則、会社法34条など)返還できないのです。貴方の資金の回収は株式の譲渡によることになります。以上より 会社が設立され、株主となられている場合には、ご自身の保有する株式を売却して、その売却代金により、出資したお金を回収することになります(会社法127条)。なお、株式の売却ですので、当該会社の財務状況がよくない場合には、売却によって得られる金額が出資した金額を下まわる場合もあります。

(1)当該株式が、株式市場に上場されている場合
この場合は、株式市場を通じて売却することになります。

(2)当該株式が、株式市場に上場されていない場合
(ア) 当該株式が、譲渡制限株式である場合
前述のように株式会社では株式譲渡自由の原則が基本原則なのに譲渡制限はそもそも認められるか疑問に思うかもしれません。事実商法も変遷しています。商法昭和25年改正により、それまで認められていた株式譲渡制限が禁止されました。しかし昭和41年改正により定款の定めと取締役会決議を要件として再び譲渡制限が認められて、平成17年改正後も一部要件が変わりましたが譲渡制限は認められています。その理由は、本来株式会社は、大規模な事業を行う形態を予想しているのですが、その存在根拠は私有財産制(憲法29条)と、契約自由の原則にあり国民は自由に結社、会社を設立し経済活動を行うことが出来る以上(営業の自由憲法22条)小規模な閉鎖会社も事実上存在し認めなければなりません。そして株式会社設立の目的が適正、公平な経済活動にあるのですからその規模に合わせた会社の経営を保護しなければならず、小規模、閉鎖会社では経営者と無関係な一般株主の経営参加について制限を設けることが必要なのです。又、株式譲渡自由の原則の目的は投下資本の回収ですから代償処置を設けて資金回収を保障すれば譲渡制限が違法ということにはならないのです。

譲渡制限株式とは「譲渡による当該株式の取得について、当該株式株式会社の承認を要する」ことを、定款で定められている株式をいいます(会社法107条1項1号・2項1号、108条1項4号・2項4号)。この定めについては、登記事項とされていますので(会社法911条3項7号)、当該会社の登記事項証明書で確認することができます。なお、従前の商法では、譲渡制限の内容が、「全ての株式」について「取締役会」の承認を要する、と一律に定められていましたが、会社法では、一部の株式についてのみ譲渡制限を設ける(注:この場合、公開会社となります。)ことや、承認機関を株主総会や代表取締役とすることも認められました。登記事項証明書から、譲渡制限株式であることが判明した場合の譲渡の手続きは、次の通りとなります。
@ 株式譲渡人あるいは株式譲受人(以下「株式譲渡等請求者」といいます。)が、当該会社代表者に対して、内容証明郵便で、当該譲渡について、承認するか否かの決定することを請求する「株式譲渡等承認請求書」を送付します(会社法136条、137条1項)。この際、以下の事項を明らかにして、請求する必要があります(会社法138条)。
イ 譲渡予定ないし譲り受けた譲渡制限株式の数(種類株式発行会社にあっては、譲渡制限株式の種類及び種類ごとの数)
ロ 譲渡制限株式を譲り受ける者の氏名又は名称
ハ 当該会社が譲渡を承認をしない場合において、当該会社又は会社の指定する買取人に株式の買い取りを請求するときは、その旨
A 株式株式会社が当該譲渡を承認しないと決議した場合、株式会社には、当該株式を買い取る、あるいは、買い取る者を指定する義務があります(会社法140条)。この場合、株式会社は、その旨を譲渡等承認請求者に通知し、株式会社あるいは指定買い取り人は、法務省令で定める「一株当たりの純資産額」に当該株式数を乗じて得た額を本店所在地の供託所に供託し、その供託したことを証する書面を譲渡承認等請求者に交付します(会社法第141条、142条)。
B 当該会社が株券発行会社である場合には、Aの供託したことを証する書面を受け取ってから1週間以内に、株券を本店所在地の供託所に供託し、その旨を当該会社に通知する必要があります。
C 株式の売買価格は、株式株式会社と譲渡等承認請求者との協議で決定します。一方、譲渡等承認請求者は、承認しない旨の通知がきてから、20日以内であれば、裁判所に売却価格決定の申立をすることもできます。申立期間内に裁判所への申立があった場合には、裁判所が決定した額をもって、売買価格とされます。協議が整わず、申立期間内に裁判所への申立もされなかった場合には、売買価格は、「一株当たりの純資産額」に譲渡する株式の数を乗じて得た価格となります(会社法144条)。
つまり、経営状態のよくない株式会社であれば、出資した金額以下しか手元に戻ってこない可能性が非常に高いことになります。

(イ)譲渡制限のない株式である場合
自由に第三者に売却することができます。なお、株券が発行されている場合には、株券の交付がなければ、その譲渡は効力を生じませんし、株券発行前の譲渡は当該会社に対して効力を生じません(会社法第128条)。また、当該会社及びその他の第三者に対しては、株主名簿への記載または記録がなければ、譲渡について、対抗することができません(会社法第130条)。なお、いずれの場合においても、会社が多額の負債を抱え、債務超過に陥ったとしても、株主の責任は有限責任であるため、株主が会社の債務を負担することはありません。つまり、出資した金額の損失さえ覚悟すれば、それ以上の損失を被ることはないのです。

四 その他
株式会社が設立されておらず、知人が最初から株式会社を設立するつもりがなく、お金を集めるための口実にしたのに過ぎないのであれば、返還請求できますし、刑事的には詐欺罪の成立する余地もあります(刑法第246条1項)

≪参考条文≫

民法
第587条(消費貸借)消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって変換をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

会社法
第27条  株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一  目的
二  商号
三  本店の所在地
四  設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五  発起人の氏名又は名称及び住所
(出資の履行)
第34条  発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。
2  前項の規定による払込みは、発起人が定めた銀行等(銀行(銀行法 (昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項 に規定する銀行をいう。第七百三条第一号において同じ。)、信託会社(信託業法 (平成十六年法律第百五十四号)第二条第二項 に規定する信託会社をいう。以下同じ。)その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の払込みの取扱いの場所においてしなければならない。
(設立時発行株式の株主となる権利の喪失)
第36条  発起人のうち出資の履行をしていないものがある場合には、発起人は、当該出資の履行をしていない発起人に対して、期日を定め、その期日までに当該出資の履行をしなければならない旨を通知しなければならない。
2  前項の規定による通知は、同項に規定する期日の二週間前までにしなければならない。
3  第一項の規定による通知を受けた発起人は、同項に規定する期日までに出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより設立時発行株式の株主となる権利を失う。
(発行可能株式総数の定め等)
第37条  発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という。)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。
2  発起人は、発行可能株式総数を定款で定めている場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができる。
3  設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の四分の一を下ることができない。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。
(設立時募集株式の払込金額の払込み)
第63条  設立時募集株式の引受人は、第五十八条第一項第三号の期日又は同号の期間内に、発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの設立時募集株式の払込金額の全額の払込みを行わなければならない。
2  前項の規定による払込みをすることにより設立時発行株式の株主となる権利の譲渡は、成立後の株式会社に対抗することができない。
3  設立時募集株式の引受人は、第一項の規定による払込みをしないときは、当該払込みをすることにより設立時募集株式の株主となる権利を失う。
(資本金の額の減少)
第107条(株式の内容についての特別の定め)
株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。
一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
二〜三(略)
2 株式会社は、全部の株式の内容として次の各号に掲げる事項を定めるときは、当該各号に定める事項を定款で定めなければならない。
一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 次に掲げる事項
イ 当該株式を譲渡により取得することについて当該株式会社の承認を要する旨
ロ 一定の場合においては株式会社が第136条又は第137条第1項の承認をしたものとみなすときは、その旨及び当該一定の場合
二・三(略)
第108条(異なる種類の株式)
 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
一〜三(略)
四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
五〜九(略)
2 株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
一〜三(略)
四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 当該種類の株式についての前条第二項第一号に定める事項
五〜九(略)
3(略)
第127条(株式の譲渡)
株主は、その有する株式を譲渡することができる。
第128条(株券発行会社の株式の譲渡)
株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。
2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。
第130条(株式の譲渡の対抗要件)
株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
2 株券発行会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社その他の第三者」とあるのは、「株式会社」とする。
第136条(株主からの承認の請求)
譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。
第137条(株式取得者からの承認の請求)
譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。
第138条(譲渡等承認請求の方法)
次の各号に掲げる請求(以下この款において「譲渡等承認請求」という。)は、当該各号に定める事項を明らかにしてしなければならない。
一 第136条の規定による請求 次に掲げる事項
イ 当該請求をする株主が譲り渡そうとする譲渡制限株式の数(種類株式発行会社にあっては、譲渡制限株式の種類及び種類ごとの数)
ロ イの譲渡制限株式を譲り受ける者の氏名又は名称
ハ 株式会社が第136条の承認をしない旨の決定をする場合において、当該株式会社又は第140条第4項に規定する指定買取人がイの譲渡制限株式を買い取ることを請求するときは、その旨
二 前条第1項の規定による請求 次に掲げる事項
イ 当該請求をする株式取得者の取得した譲渡制限株式の数(種類株式発行会社にあっては、譲渡制限株式の種類及び種類ごとの数)
ロ イの株式取得者の氏名又は名称
ハ 株式会社が前条第1項の承認をしない旨の決定をする場合において、当該株式会社又は第140条第4項に規定する指定買取人がイの譲渡制限株式を買い取ることを請求するときは、その旨
第139条(譲渡等の承認の決定等)
株式会社が第136条又は第137条第1項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 株式会社は、前項の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。
第140条(株式会社又は指定買取人による買取り)
株式会社は、第138条第1号ハ又は第2号ハの請求を受けた場合において、第136条又は第137条第1項の承認をしない旨の決定をしたときは、当該譲渡等承認請求に係る譲渡制限株式(以下この款において「対象株式」という。)を買い取らなければならない。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 対象株式を買い取る旨
二 株式会社が買い取る対象株式の数(種類株式発行会社にあっては、対象株式の種類及び種類ごとの数)
2 前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3 譲渡等承認請求者は、前項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、当該譲渡等承認請求者以外の株主の全部が同項の株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。
4 第1項の規定にかかわらず、同項に規定する場合には、株式会社は、対象株式の全部又は一部を買い取る者(以下この款において「指定買取人」という。)を指定することができる。
5 前項の規定による指定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
第141条(株式会社による買取りの通知)
株式会社は、前条第1項各号に掲げる事項を決定したときは、譲渡等承認請求者に対し、これらの事項を通知しなければならない。
2 株式会社は、前項の規定による通知をしようとするときは、一株当たり純資産額(一株当たりの純資産額として法務省令で定める方法により算定される額をいう。以下同じ。)に前条第1項第2号の対象株式の数を乗じて得た額をその本店の所在地の供託所に供託し、かつ、当該供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければならない。
3 対象株式が株券発行会社の株式である場合には、前項の書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、当該交付を受けた日から一週間以内に、前条第1項第2号の対象株式に係る株券を当該株券発行会社の本店の所在地の供託所に供託しなければならない。この場合においては、当該譲渡等承認請求者は、当該株券発行会社に対し、遅滞なく、当該供託をした旨を通知しなければならない。
4 前項の譲渡等承認請求者が同項の期間内に同項の規定による供託をしなかったときは、株券発行会社は、前条第一項第二号の対象株式の売買契約を解除することができる。
第142条(指定買取人による買取りの通知)
指定買取人は、第140条第4項の規定による指定を受けたときは、譲渡等承認請求者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 指定買取人として指定を受けた旨
二 指定買取人が買い取る対象株式の数(種類株式発行会社にあっては、対象株式の種類及び種類ごとの数)
2 指定買取人は、前項の規定による通知をしようとするときは、一株当たり純資産額に同項第2号の対象株式の数を乗じて得た額を株式会社の本店の所在地の供託所に供託し、かつ、当該供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければならない。
3 対象株式が株券発行会社の株式である場合には、前項の書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、当該交付を受けた日から一週間以内に、第1項第2号の対象株式に係る株券を当該株券発行会社の本店の所在地の供託所に供託しなければならない。この場合においては、当該譲渡等承認請求者は、指定買取人に対し、遅滞なく、当該供託をした旨を通知しなければならない。
4 前項の譲渡等承認請求者が同項の期間内に同項の規定による供託をしなかったときは、指定買取人は、第1項第2号の対象株式の売買契約を解除することができる。
第141条(売買価格の決定)
第141条第1項の規定による通知があった場合には、第140条第1項第2号の対象株式の売買価格は、株式会社と譲渡等承認請求者との協議によって定める。
2 株式会社又は譲渡等承認請求者は、第百四十一条第一項の規定による通知があった日から二十日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができる。
3 裁判所は、前項の決定をするには、譲渡等承認請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない。
4 第1項の規定にかかわらず、第2項の期間内に同項の申立てがあったときは、当該申立てにより裁判所が定めた額をもって第140条第1項第2号の対象株式の売買価格とする。
5 第1項の規定にかかわらず、第2項の期間内に同項の申立てがないとき(当該期間内に第1項の協議が調った場合を除く。)は、一株当たり純資産額に第140条第1項第2号の対象株式の数を乗じて得た額をもって当該対象株式の売買価格とする。
6 第141条第2項の規定による供託をした場合において、第140条第1項第2号の対象株式の売買価格が確定したときは、株式会社は、供託した金銭に相当する額を限度として、売買代金の全部又は一部を支払ったものとみなす。
7 前各項の規定は、第142条第1項の規定による通知があった場合について準用する。この場合において、第1項中「第140条第1項第2号」とあるのは「第142条第1項第2号」と、「株式会社」とあるのは「指定買取人」と、第2項中「株式会社」とあるのは「指定買取人」と、第4項及び第5項中「第140条第1項第2号」とあるのは「第142条第1項第2号」と、前項中「第141条第2項」とあるのは「第142条第2項」と、「第140条第1項第2号」とあるのは「同条第1項第2号」と、「株式会社」とあるのは「指定買取人」と読み替えるものとする。
(選任)
第329条 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第371条第4項及び第394条第3項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
第447条  株式会社は、資本金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一  減少する資本金の額
二  減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額
三  資本金の額の減少がその効力を生ずる日
(債権者の異議)
第449条  株式会社が資本金又は準備金(以下この条において「資本金等」という。)の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く。)には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金等の額の減少について異議を述べることができる。ただし、準備金の額のみを減少する場合であって、次のいずれにも該当するときは、この限りでない。
一  定時株主総会において前条第一項各号に掲げる事項を定めること。
二  前条第一項第一号の額が前号の定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
(株主に対する剰余金の配当)
第453条 株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる。
(清算の開始原因)
第475条 株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
 一 解散した場合(第471条第4号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
 二 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
 三 株式移転の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
(残余財産の分配に関する事項の決定)
第504条  清算株式会社は、残余財産の分配をしようとするときは、清算人の決定(清算人会設置会社にあっては、清算人会の決議)によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 残余財産の種類
二 株主に対する残余財産の割当てに関する事項
2 前項に規定する場合において、残余財産の分配について内容の異なる二以上の種類の株式を発行しているときは、清算株式会社は、当該種類の株式の内容に応じ、同項第二号に掲げる事項として、次に掲げる事項を定めることができる。
 一 ある種類の株式の株主に対して残余財産の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類
 二 前号に掲げる事項のほか、残余財産の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨及び当該異なる取扱いの内容
3 第1項第二号に掲げる事項についての定めは、株主(当該清算株式会社及び前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて残余財産を割り当てることを内容とするものでなければならない。
(残余財産が金銭以外の財産である場合)
第505条  株主は、残余財産が金銭以外の財産であるときは、金銭分配請求権(当該残余財産に代えて金銭を交付することを清算株式会社に対して請求する権利をいう。以下この条において同じ。)を有する。この場合において、清算株式会社は、清算人の決定(清算人会設置会社にあっては、清算人会の決議)によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 金銭分配請求権を行使することができる期間
二 一定の数未満の数の株式を有する株主に対して残余財産の割当てをしないこととするときは、その旨及びその数
2 前項に規定する場合には、清算株式会社は、同項第一号の期間の末日の二十日前までに、株主に対し、同号に掲げる事項を通知しなければならない。
3 清算株式会社は、金銭分配請求権を行使した株主に対し、当該株主が割当てを受けた残余財産に代えて、当該残余財産の価額に相当する金銭を支払わなければならない。この場合においては、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額をもって当該残余財産の価額とする。
一 当該残余財産が市場価格のある財産である場合 当該残余財産の市場価格として法務省令で定める方法により算定される額
二 前号に掲げる場合以外の場合 清算株式会社の申立てにより裁判所が定める額
第911条(株式会社の設立の登記)
1・2(略)
3  第一項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一〜六(略)
七 発行する株式の内容(種類株式発行会社にあっては、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容)
八〜三十(略)

刑法
第246条1項(詐欺)
人を欺いて財物を交付させた者は,十年以下の懲役に処する。

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