取締役を解任された場合の対応

商事|会社法|取締役、株主、取引関係者の利害関係|東京地裁平成25年5月30日判決

質問

 私は、とある中小企業の代表取締役を務めておりました。株式も30%ほど保有しておりましたが、70歳を目前にした頃、代表取締役を退任し、保有株式を可愛がっていた社員に全て譲渡いたしました。

 その後は、取締役として会社に残り、役員報酬を受け取っておりましたが、次第に当該社員の態度が悪化し、経営方針をめぐって口論となることが増えてまいりました。最終的には、約1か月前に株主総会決議によって取締役を解任されるに至っております。

 私は、役員報酬を年金代わりとして老後の生活資金に充てるつもりでおりましたので、このまま何の手当も受けられない状況ですと、生活が困窮してしまいます。今回の解任について、争う余地はないのでしょうか。

回答

1、 取締役の解任は株主総会の決議によって行われ、議決権の過半数を有する株主が出席し、その過半数で決議すれば、有効に成立します(会社法339条1項、同法309条1項)。

2、 もっとも、その決議に手続や内容上の瑕疵がある場合には、効力を争うことができます。具体的には、①招集手続や決議方法の法令・定款違反や著しい不公正、②決議内容の定款違反、③特別利害関係人の関与による著しく不当な決議がある場合には、株主総会決議取消しの訴えが認められます(同法831条1項)。ただし、違反が軽微で決議に影響しない場合には、裁判所は裁量で請求を棄却することができます(同条2項)。その他、大多数の株主に対して招集通知を欠いたなど、決議がそもそも存在しない場合には、株主総会決議不存在確認の訴え、決議内容の法令違反がある場合には、株主総会決議無効確認の訴えが認められます(同法830条)。

3、 決議の効力を争えない場合であっても、取締役には救済手段が用意されています。具体的には、同法339条2項により、「正当な理由」がない解任については、会社に損害賠償を請求することができます。判例によれば、①取締役が不正行為や法令・定款違反を行った場合、②取締役の経営失敗によって会社に損害を与えた場合、③取締役の経営能力不足によって将来的に会社に損害を与える可能性が高い場合には、「正当な理由」が認められますが、経営上の判断や経営能力を理由とする解任については、「正当な理由」が否定されやすい傾向にあります。これは、経営判断には常にリスクが伴い、著しく不合理でない限り、裁量の範囲内のものと考えられるためです。

4、 損害賠償の範囲としては、解任時から任期満了までに本来受領することができたはずの役員報酬が中心となります。任期満了後の役員報酬は、再度選任されるか否かが不確定であるため、対象外とされます。賞与や退職金については、受領の蓋然性の有無によって判断され、毎年定額で支給されていた賞与などは損害賠償の対象となり得ます。

5、関連事例集1744番参照。その他役員変更に関する関連事例集参照。

解説

1 取締役の法的な地位

  会社法において、取締役は、会社の「機関」として位置づけられ、株主から選任されて会社の業務執行や経営判断を担う立場にあります(会社法348条以下)。その法律関係は、会社から労務を提供することを目的とするものではなく、民法上の委任契約、より正確には準委任契約に類するものと理解されています(民法643条以下)。したがって、取締役は、会社の指揮命令の下に従属的に働く存在ではなく、自律的に会社の意思決定に関与する立場にあるのです。

  これに対し、労働者は、労働契約法や労働基準法に基づき、使用者の指揮命令に従って労務を提供し、その対価として賃金を受け取る者をいいます。ここでは「使用従属性」が中心的な概念であり、労働者は、使用者の指揮監督下に置かれる存在であることに特徴があり、この点が取締役との決定的な違いといえます。

  このような違いは、報酬や身分保障のあり方に端的に表れます。取締役が受け取るのは「役員報酬」であり、これは、労働契約に基づく賃金ではなく、株主総会や取締役会の決議によって定められる会社法上の報酬です(会社法361条)。また、取締役は、株主の判断により、いつでも解任することができるとされており(同法339条1項)、労働契約における解雇権濫用法理(労働契約法16条)のような保護は直接には及びません。

  もっとも、形式上は、取締役であっても、実態としては、使用者の指揮命令に従って労務を提供しているにすぎない場合があります。いわゆる「名目的取締役」のケースであり、こうした場合には、労働基準法上の労働者性が認められる余地があります。近年の裁判例も、役員や取締役であることを理由に直ちに労働者性を否定するのではなく、労務提供の実態に即して判断すべきとしています。

2 株主総会の解任決議とその効力を争う方法

 ⑴ 株主総会による取締役の解任

   上記のとおり、取締役は、株主の判断により、いつでも解任することができるとされています。これは、取締役が株主の委託を受けて会社経営を担う立場にある以上、その任にふさわしいかどうかの最終的な判断権限が株主にあることを示すものです。

   具体的な手続としては、議決権の過半数を有する株主が出席した株主総会において、出席株主の議決権の過半数による決議があれば、取締役の解任は有効に成立します(会社法309条1項)。

 ⑵ 株主総会の解任決議の効力を争う方法

   株主総会の解任決議は、絶対的に効力を有するわけではなく、その手続や内容に瑕疵がある場合には、取締役本人や株主は、決議の効力を争うことが可能です。

   会社法は、その手段として、株主総会決議取消しの訴え、株主総会決議不存在確認の訴え、株主総会決議無効確認の訴えを認めています。

  ア 株主総会決議取消しの訴え(会社法831条)

    株主総会決議の取消しを求めることができるのは、次のような場合です(同条1項)。

• 株主総会の招集手続又は決議の方法が法令・定款に違反する場合

• 株主総会の招集手続又は決議の方法が著しく不公正である場合

• 株主総会の決議内容が定款に違反している場合

• 株主総会の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使した結果著しく不当な決議がなされた場合

    ただし、株主総会の招集手続又は決議の方法が法令・定款に違反する場合であっても、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないと認められるときは、裁判所が裁量によって株主総会決議取消しの訴えを棄却することができるとされています(同条2項)。これを「裁量棄却」といいます。典型的な例としては、一部の株主に対する招集通知が法定の期間に従っていなかったものの、実際には、株主総会当日に全株主が出席し、全員が議決権を行使することができたような場合が挙げられます。

    なお、株主総会決議取消しの訴えについては、株主総会決議の日から3か月以内に提起しなければなりません。

  イ 株主総会決議の不存在、決議無効確認の訴え(会社法830条)

    株主総会決議がそもそも存在しない場合には、その不存在の確認を求めることができます(同条1項)。例えば、大多数の株主に対して招集通知を欠いた場合などがこれに当たります。

    また、株主総会の決議内容が法令違反する場合には、その無効の確認を求めることができます(同条2項)。例えば、欠格事由に該当する取締役を選任した場合などがこれに当たります。

    なお、株主総会決議の不存在、無効確認の訴えについては、株主総会決議取消しの訴えとは異なり、出訴期間の制限はありません。

3 取締役解任に伴う損害賠償請求

 ⑴ 株主総会の解任決議の効力を争えない場合の救済

   株主総会の解任決議に取消事由も不存在事由も無効事由も存在せず、その効力を争うことができない場合であっても、取締役に全く救済手段が残されていないわけではありません。

   会社法上、株主総会決議によって解任された取締役は、その解任について「正当な理由」がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができるとされています(同法339条2項)。

   この損害賠償請求について問題となるのは、①解任に「正当な理由」が認められるか否か、認められないとして②「解任によって生じた損害」と言えるか、賠償の対象の二点です。①については、取締役に違法な行為があった場合は違法行為の程度にもよりますが一般的には正当な理由があると認められるでしょうが、経営能力やその判断に問題がある場合などは具体的に検討されることになります。また、②については一般的には任期満了までの役員報酬相当の損害というのが一般的に認められる範囲と言えるでしょう。①②の点について以下詳しく説明します。

 ⑵ 「正当な理由」の判断基準

   東京地裁平成25年5月30日判決によれば、次の場合には、ここでいう「正当な理由」があると認められることとなります。

• 取締役が不正行為又は法令・定款違反を行った場合

• 取締役が経営に失敗して会社に損害を与えた場合

• 取締役の経営能力の不足によって客観的な状況から判断して将来的に会社に損害を与える可能性が高い場合

   取締役が融資を得るなどの目的で粉飾決算をしていた事案や、取締役が会社に架空請求をして、その金銭を着服していた事案では、不正行為又は法令・定款違反があったとして、「正当な理由」が肯定されています(東京地裁平成25年11月26日判決、東京地裁平成25年12月24日判決参照)。

   他方、取締役が金融機関との融資交渉を担当したものの、利率が短期プライムレートより高くなるなど、必ずしも交渉が上手くいかなかった事案では、会社の主張するような交渉方法をとっても交渉が上手くいったとは限らないとして、「正当な理由」が否定されています(東京地裁平成22年10月29日判決参照)。

   このように、経営上の判断や経営能力を理由とする解任については、「正当な理由」が否定されやすい傾向にあります。これは、経営判断が常にリスクを伴うものである以上、結果として会社に損害が生じたとしても、それが著しく不合理でない限り、経営上の裁量の範囲内のものと位置づけ、取締役に解任の責任を負わせるべきではないとする考え方に基づくものといえます。

 ⑶ 損害賠償の対象

   実務上、解任されなければ得られたであろう利益、すなわち、解任時から任期満了時までに本来受領することができたはずの役員報酬が損害賠償の対象となると解されています。これに対し、任期満了後の役員報酬については、改めて取締役に選任されるか否かが不確定であり、その受領に蓋然性が認められないため、損害賠償の対象とはなりません。

   さらに、賞与や退職金が損害賠償の対象となるかどうかについては、その受領可能性の程度により判断されることとなります。特に、賞与については、その支給の有無や金額がその時々の業績に応じて決められていたのであれば、受領の蓋然性がないものとして、損害賠償の対象とはならない一方、毎年、定額が支給されることとなっていたのであれば、受領の蓋然性があるものとして、損害賠償の対象となります。

4 まとめ

  以上のとおり、株主総会の解任決議に取消事由などがあれば、株主総会決議取消しの訴えなどによって決議の効力を争うという方法もありますが、金銭的な補填を得ることに主眼を置くのであれば、端的に解任によって生じた損害の賠償を請求するのが適切です。

  その際には、解任について「正当な理由」がないことを主張・立証する必要がありますが、過去の裁判例に照らした検討が不可欠であるため、お近く法律事務所で具体的な事案に即した判断を得ることをお勧めします。

参考条文

【民法】

第643条(委任)

 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

第656条(準委任)

 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

【会社法】

第309条(株主総会の決議)

1 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。

 ① 第百四十条第二項及び第五項の株主総会

 ② 第百五十六条第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)

 ③ 第百七十一条第一項及び第百七十五条第一項の株主総会

 ④ 第百八十条第二項の株主総会

 ⑤ 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号、第二百四条第二項及び第二百五条第二項の株主総会

 ⑥ 第二百三十八条第二項、第二百三十九条第一項、第二百四十一条第三項第四号、第二百四十三条第二項及び第二百四十四条第三項の株主総会

 ⑦ 第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役(監査等委員である取締役を除く。)を解任する場合又は監査等委員である取締役若しくは監査役を解任する場合に限る。)

 ⑧ 第四百二十五条第一項の株主総会

 ⑨ 第四百四十七条第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)

  イ 定時株主総会において第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めること。

  ロ 第四百四十七条第一項第一号の額がイの定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。

 ⑩ 第四百五十四条第四項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)

 ⑪ 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会

 ⑫ 第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会

3 前二項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く。)の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

 ① その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会

 ② 第七百八十三条第一項の株主総会(合併により消滅する株式会社又は株式交換をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(同条第三項に規定する譲渡制限株式等をいう。次号において同じ。)である場合における当該株主総会に限る。)

 ③ 第八百四条第一項の株主総会(合併又は株式移転をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該株主総会に限る。)

4 前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

5 取締役会設置会社においては、株主総会は、第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第三百十六条第一項若しくは第二項に規定する者の選任又は第三百九十八条第二項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。

第339条(解任)

1 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。

2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

第348条(業務の執行)

1 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。

2 取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。

3 前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役に委任することができない。

 ① 支配人の選任及び解任

 ② 支店の設置、移転及び廃止

 ③ 第二百九十八条第一項各号(第三百二十五条において準用する場合を含む。)に掲げる事項

 ④ 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

 ⑤ 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除

4 大会社においては、取締役は、前項第四号に掲げる事項を決定しなければならない。

第361条(取締役の報酬等)

1 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。

 ① 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額

 ② 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法

 ③ 報酬等のうち当該株式会社の募集株式(第百九十九条第一項に規定する募集株式をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項

 ④ 報酬等のうち当該株式会社の募集新株予約権(第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項

 ⑤ 報酬等のうち次のイ又はロに掲げるものと引換えにする払込みに充てるための金銭については、当該イ又はロに定める事項

  イ 当該株式会社の募集株式 取締役が引き受ける当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項

  ロ 当該株式会社の募集新株予約権 取締役が引き受ける当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項

 ⑥ 報酬等のうち金銭でないもの(当該株式会社の募集株式及び募集新株予約権を除く。)については、その具体的な内容

2 監査等委員会設置会社においては、前項各号に掲げる事項は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して定めなければならない。

3 監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、第一項の報酬等の範囲内において、監査等委員である取締役の協議によって定める。

4 第一項各号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。

5 監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。

6 監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる。

7 次に掲げる株式会社の取締役会は、取締役(監査等委員である取締役を除く。以下この項において同じ。)の報酬等の内容として定款又は株主総会の決議による第一項各号に掲げる事項についての定めがある場合には、当該定めに基づく取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定しなければならない。ただし、取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められているときは、この限りでない。

 ① 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって、金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないもの

 ② 監査等委員会設置会社

第830条(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え)

1 株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(以下この節及び第九百三十七条第一項第一号トにおいて「株主総会等」という。)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。

2 株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。

第831条(株主総会等の決議の取消しの訴え)

1 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。

 ① 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。

 ② 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。

 ③ 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。

2 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。

【労働契約法】

第16条(解雇)

 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

判例

(東京地裁平成25年5月30日判決)

第3 当裁判所の判断

 1 争点(1)(原告は被告取締役を辞任したか(請求1(主位的)))について

  (1) 認定事実

 前記前提事実に加え、掲記証拠と弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

   ア 原告は、前提事実(1)のとおり、平成15年11月16日付けで被告に転籍し、被告は当初人材派遣業を行うa社のグループ会社として、a社との取引が100パーセントの会社として始まったが(原告本人(調書11頁)、被告代表者(調書15頁))、原告が被告の代表取締役に就任している間に、a社との取引の構成比率はしだいに減少し、平成19年10月1日から平成20年9月30日(第5期)の売上げ3億0930万円余のうちa社に対するものは、12.31パーセントにまで減少していた(乙9)。ただし、Aらa社の取締役、従業員が、その取引先を被告に紹介するという方法で、被告がa社に依存していたものも含めると、約40パーセントは、なおa社に依存する状況であった(乙9、被告代表者(調書5頁))。

   イ 平成20年7月頃、Bの意向により原告が一時a社において勤務していたとき、a社の財務状態が悪化していたことが判明し、Bは、前提事実(1)のとおり、同年9月a社を倒産させることとし、同年11月には、債権者らに対する支払を停止し、同年12月9日破産手続開始決定を受けた(甲2、証人B(調書5頁))。a社は、その当時400人程度の従業員がいたため(被告代表者(調書12頁))、Bの意向により、a社の取締役であったA及びDとともに、従業員の一部を被告において受け入れることとなったが、その過程で、原告がBの意向に難色を示したという事実があった(原告本人(調書5頁、13頁)、被告代表者(調書7、8頁))。

   ウ Bは、a社の倒産に伴う被告への影響を懸念していたが、原告は被告の業績は、平成18年10月1日から平成19年9月30日までの期(第4期)の約3億1000万円に比較しても、第5期は売上げもほぼ同じで、特に悪くなったという意識もなく、それまでと同様の経営方針で継続することをBに伝えていた(証人B(調書6頁)、原告本人(調書11頁、13頁))。

   エ Bは、前提事実(3)のとおり行われた平成21年1月中旬のルノワールにおける話し合いにおいて、前提事実(2)のとおり被告の全部の発行済株式を保有する株主の代理人として、原告に対し、被告の経営を人材派遣から建築に移行させること、原告は代表取締役の地位を退き、建築の業務の経験が多いAを代表取締役とし、原告は営業社員になって営業の実務をしたらどうかとの発言を行った(証人B(調書6ないし9頁)、証人D(調書5、6頁)、原告本人(調書4頁、6頁))。原告は、Bの発言に対し、そのような状況では被告に残れないとして、会社を辞めると述べた(証人B(調書8、9頁、19、20頁)、証人D(調書6、7頁)、原告本人(調書7頁、14頁))。

   オ 原告は、ルノワールにおける話し合いの後、Bの提案について、Dに対し、「俺はなんで辞めさせられなきゃいけないのか」と不満を述べた(証人D(調書10頁、18頁))。また、Dは、当初、法務局に、原告の解任の登記をすることを相談し、その後、被告の金庫に保管してあった原告名義の印鑑を使用して原告名義の代表取締役辞任届(乙10)を作成し、前提事実(4)のとおり、平成21年3月24日、代表取締役辞任の登記を申請し、さらに、同年7月28日、取締役辞任の登記を申請した(証人D(調書8頁)、弁論の全趣旨)。

   カ 被告の平成20年10月1日から平成21年9月30日までの期(第6期)においても、被告の売上げは3億2760万円余であり、特に前年(第5期)に比較して落ちるということはなかったが、これは、Aがa社において得ていた取引先を被告に引き継がせることで、一部の売上げを得たためであった(乙12)。

  (2) 上記認定に反する証拠について

   ア 証人Dは、上記(1)オの辞任届(乙10)の原告名義の印影について、金庫の中にあった原告の印章を自分が押印し、法務局に提出する前に原告の承諾を得た旨証言するが(調書8、9頁)、反対尋問では、原告が自分で金庫から出した後、原告から受け取って押印した旨証言している(調書21、22頁)。その証言内容は一貫しているとは言い難いし、原告が辞任届作成を承諾していたのであれば、自分で押印するのが自然であるから、証人Dの上記証言は信用することができず、原告が辞任届の作成、ひいては代表取締役の辞任を承諾していたとは認め難い。そして、取締役の辞任についても同様であり、原告が取締役の辞任を承諾していたことを認めるに足る証拠はない。

   イ 証人Bは、ルノワールにおける話し合いの際、上記(1)エの発言は、原告に対するアドバイスとして、いったん取締役営業部長になって、実務をやったらどうかと述べたにすぎず、これに対し原告が自ら辞めると発言した旨証言し(調書8頁、18、19頁)、証人Dは、Bが原告に対し、営業に専念するためにいったん社長業務を退いて、例えばAにやらせるという方法もあるぞと述べたところ、原告は辞めますと述べた旨証言する(調書6頁、19頁)。

 しかし、上記(1)オのとおり、原告はBの発言により辞めさせられたと受け止めたことや、上記アのとおり、原告に辞任する意思があったとは認められないことからすると、上記の証人B、同Dの証言は、直ちに採用することができない。なお、証人Bの証言は、原告を取締役営業部長とするというもので、取締役の地位に留まるというものであるが、証人Dの証言とも一致しておらず、この点も含めて採用することができない。

  (3) 上記(1)の認定を前提とする争点(1)に対する判断

   ア 以上のとおりであるから、前記辞任届(乙10)や代表取締役及び取締役辞任の各登記は、原告の意思に基づくものと認めることはできないし、原告が、被告の取締役を辞任する旨の意思表示をした旨の証人Bの証言や証人Dの証言を採用することができず、ほかに争点(1)の原告の辞任の事実を認めるに足る証拠はない。

 上記(1)エのとおり原告が辞めますと述べたのは、後記イのとおり代表取締役及び取締役を解任された上で、営業社員として残るという提案についての回答であって、争点(1)の取締役の辞任の事実を認めることはできない。

   イ もっとも、被告は、原告の平成21年7月から平成22年11月分までの報酬額の支払請求(請求1(主位的))に対し、予備的に解任の事実を主張しているので、この点について判断する。

 原告としては、上記(1)オのとおり、Dに対し、辞めさせられたとの前提で不満を述べていること、Dは、法務局に当初解任の登記をすることを相談の上、上記(2)アのとおり、原告が辞任は承諾していないにもかかわらず、代表取締役及び取締役辞任の登記手続を進めたことからすると、Bが、ルノワールにおける話し合いの際、原告に対し、原告を取締役から解任して、一営業社員とする旨の決定を伝えた旨の原告本人の供述(調書4頁、12、13頁)は信用することができる。すなわち、上記(1)エのとおり、Bは、原告に対し、原告は代表取締役の地位を退き、建築の業務の経験が多いAを代表取締役とし、原告は営業社員になって営業の実務をしたらどうかとの発言を行ったものであり、一見提案のようにも見られるが、それは被告の発行済株式の全部を保有する株主の代理人としての発言であり、客観的に見れば、原告を被告の取締役をから解任し、一営業社員とする旨伝えたものであったと認められる(Bは、その陳述書(乙6)において、黙っている原告に対し「黙認したということで物事を前に進めます」と断言した旨記載しており、Bの発言が提案といえるようなものではなかったことは、この点からも認められる。)。

   ウ したがって、原告は、平成21年1月中旬、被告の代表取締役及び取締役を解任されたものと認められ、同年7月以降の取締役の報酬請求は認められないから、原告の請求1(主位的)は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

 2 争点(2)(原告の解任に正当な理由があるか(請求1(予備的)))について

  (1) 取締役解任の正当な理由

 取締役は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができるが(会社法339条1項)、解任について正当な理由がない場合、会社は、解任された者に対し、解任によって生じた損害を賠償しなければならない(同条2項)。ここにいう「正当な理由」が存在する場合とは、当該取締役の職務の執行にあたり、①不正の行為や定款又は法令に違反する行為があった場合、②取締役が経営に失敗して会社に損害を与えた場合、③当該取締役の経営能力の不足により客観的な状況から判断して将来的に会社に損害を与える可能性が高い場合には認められるが、単に株主と取締役との間で経営方針が異なるというだけでは、所有と経営の分離という株式会社の大原則からすると、会社の所有者である株主が経営の主体である取締役の職務に不当に干渉することを認めることとなり、認められない。

  (2) 本件の解任における正当な理由について

   ア 以上を前提として、原告の解任に正当な理由があるか検討するに、平成21年1月中旬の原告解任の時点で上記①、②の事情のあったことの主張、立証はないから、③について検討する。

 原告は、前記1(1)ウ及びエのとおり、a社の倒産による被告への影響と、被告の営業方針変更の要否について、発行済株式の全部を保有する株主の代理人であるBとは考えを異にしていることが認められる。そして、前記1(1)アのとおり、被告の平成19年10月1日から平成20年9月30日まで(第5期)の売上高のうちa社を直接の相手方とするものは12.31パーセントであり、a社の取締役等の紹介による売上げを含めると、被告はa社への依存度が高い会社であったということができるから、a社の倒産に直面して、一定の対策を打ち出すことが必要であったということができる。にもかかわらず、原告は、前記1(1)ウのとおり、従前の経営方針を継続する旨Bに伝えていた。これに対し、危機感を持ったBの方針により、Aを被告の代表取締役とし、建築の事業を行うことで、前記1(1)カのとおり、平成20年10月1日から平成21年9月30日まで(第6期)の被告の売上げを維持したということができる。

   イ しかし、Bも、Dも、原告が辞任の意思を表明したことを述べようとして、原告に対して慰留したとの証言をしており(証人B(調書9頁)、証人D(調書7頁))、被告代表者(A)も、被告において建築を中心にするに当たって、原告には残ってほしかったという趣旨の供述をしている(被告代表者(調書8頁))。これらの証言、供述のほか、第5期に至るまで被告の業績が悪化していたことを示す客観的な資料もないことを考慮すると、原告は、必ずしも経営能力が不足していたということはできないし、A代表取締役の下に原告が取締役に留まったからといって、被告に将来的に損害が発生する可能性が高かったということは困難である。他方、原告としても、Aを代表取締役とし建築を中心にするという場合であっても、Aとの間に上下の意識はなく、Aの下で働くことが嫌だったものではない旨供述しているところ(原告本人(調書7頁、12頁))、この供述を排斥するに足る証拠はない。そして、原告がBの上記経営方針に明確に反対していたことをうかがわせる証拠もないから、この点からも、原告が被告の取締役の地位にあったからといって、被告に損害が発生する可能性が高かったなどということはできない。

 そうすると、被告の取締役解任には正当な理由があったということはできない。

   ウ なお、上記アの事情は、原告について、代表取締役を解任し取締役とする上では正当な理由となるというべきで、原告には、その点に関する損害賠償請求は認められない。

  (3) 原告の損害額

 前記(1)のとおり、会社法上認められているのは取締役の解任に基づく損害の賠償であるところ、前提事実(4)のとおり、被告においては、原告について登記上代表取締役を辞任したとされた平成21年2月20日の前月である同年1月までは月額70万円が、その後、同年2月から原告が登記上取締役を辞任したものとされた同年6月までは、月額50万円が支払われたのであるから、被告における取締役としての報酬は月額50万円であったことが認められる(前記第2の1のとおり、原告も、当初取締役としての報酬が50万円であることを前提に1150万円の損害賠償請求をしていた。)。そうすると、原告が正当な理由なく取締役を解任されたことによる損害は、平成21年7月から平成22年11月までの月額50万円の報酬相当額で、その合計は850万円であると認められる(なお、前記1(3)アのとおり、原告は営業社員となる提案に応じず被告を辞めると回答したが、上記月額50万円に一般従業員の労働対価の部分が含まれていたことを認めるに足る証拠はなく、月額50万円全額が取締役解任による損害と認められる。また、この金額合計850万円は原告の訴状による損害賠償請求金額の範囲内にあり、遅延損害金については訴状送達の日の翌日から請求することができる。)。

  (4) 原告の請求1(予備的)についての結論

 したがって、原告の請求1(予備的)は、850万円とこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年12月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求は理由がない。

 4 争点(3)(原被告間に退職金の支払合意があったか(請求2))について

 原告は、前提事実(1)のとおり、a社を退職した後、被告取締役の地位についたのであるから、被告の定款の定め又は株主総会決議がない限り、被告取締役を解任されるにあたり退職慰労金を請求することができない(会社法361条1項)。

 しかし、本件では、退職慰労金に関する定款の定め又は株主総会決議があったと認めるに足る証拠はないし、被告の全発行済株式の株主たるC又はその代理人であるBが、原告に対する退職慰労金の支払を承認したことを認めるに足る証拠もない。

 確かに、前提事実(5)のとおり、「転籍同意書」(甲9)には、退職金に関する記載が見られるが、同書には原告以外の者の署名又は押印はない。そして、前提事実(1)のとおり、原告が当時a社の経理担当部長であったことからすると、原告において、上記書面を作成することは容易であったと考えられるし、他方、証人Bは、上記書面を当時見たことがない旨証言しており(証人B(調書10頁))、同証言を覆して、Bが上記書面の内容を承諾していたことを認めるに足る証拠はない。

 また、前提事実(5)のとおり、Dは、平成21年7月1日頃、原告から退職金を計算することを求められ、通常の退職金規定に準ずるとして試算した結果として889万2900円という数字を原告に示した(甲7)が、同時に、Dは、その時点で、上記退職金の支払について「会長を納得させられる材料を持ちません」と記載しているから(甲7)、上記金額をBにおいて承認したと認めることはできない。

 したがって、原告の被告に対する退職慰労金の請求(請求2)は理由がない。

 5 結論

 以上の検討によれば、原告の被告に対する請求は、請求1(予備的)のうち、取締役解任に基づく損害賠償として、平成21年7月から平成22年11月までの月額50万円の報酬相当額850万円とこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年12月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

以上