公務員が退職する必要のない罪名

行政|公務員の刑事犯罪と懲戒処分|平成12年3月31日職職-68、人事院事務総長発|最高裁判所昭和52年12月20日判決

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照資料

質問:

地方公務員の一般職の事務職をしています。恥ずかしながらこのたび刑事事件を起こしてしまい罰金刑を受けてしまいました。職場にも事件が発覚し、上司から「依願退職・自主退職した方が良いのではないか」という退職勧奨のようなことを言われてしまいました。迷惑を掛けたことは事実ですが、私は、このまま退職するしかないのでしょうか。

回答:

1、退職しない場合の懲戒処分との比較をしてから態度を決めるべきです。

地方公務員法29条第2号及び3号では、「職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合」、「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」に、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる、という規定があります。

2、最高裁判所の判例では、「懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の右行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか,を決定することができる」と判断されています。

3、このように、法律や政令や判例では、具体的な基準を見ることはできませんが、国家公務員の懲戒処分について、独立行政委員会である人事院の事務総長が発行している通知、「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職-68、人事院事務総長発)が参考になりますので、検討してください。地方公務員の場合も、おおむね、この指針の標準例を踏襲している指針が多いようです。勿論、前記の通り任命権者の広汎な裁量が認められる事項ではありますが、指針において懲戒免職が含まれていない罪名については、「標準例よりも重く処分すべき特別事情」は存在しないこと、「標準例の中でも寛大な処分を要すべき特別事情」が存在することを最大限に主張する必要があります。弁護士に相談して、弁明主張すると良いでしょう。

4、具体的対策としては、①罰金刑となったとのことですが罰金刑のある犯罪ということは、違法、有責性がさほど重くない犯罪と思われますので、略式罰金の非公開裁判が行われる前に弁護士を依頼して罰金を回避する手続きをとることがもっとも重要です。個人的法益であればほとんどの場合示談交渉により不起訴処分、すなわち罰金を回避することが可能です。たとえば、窃盗、傷害、器物損壊等です。示談交渉により、被害者の宥恕文言、その他の行政処分に対する上申書(処分を希望しない旨の記載、これが重要です。)により懲戒処分も軽減されます。懲戒処分の根拠が国民、地方住民の公的信頼を裏切ったことに求められますから、国民住民の一人でもある被害者の処罰、処分感情が重要になるわけです。その他の社会的法益、国家的法益でも場合により贖罪寄付が必要でしょう。尚、関係者及び一般住民の嘆願書も大切なことはいうまでもありません。②罰金となった場合でも、謝罪行為を行っていないようであれば、同様の手続きをとる必要があります。従って、公務員が犯罪を犯した場合は、至急弁護士との協議が不可欠です。③次に、犯罪行為の法的な分析により、違法性、有責性の軽減事由を整理して文書及び口頭で主張することです。違法行為を行ったあなた自身が懲戒処分の事情聴取で自らを弁護することはなかなか難しいでしょうから代理人が必要です。④特に、事情聴取では弁明の仕方により違法性、有責性が大きく変わる場合があり弁護士の補足、説明立会いは重要です。貴方は公務員ですからおそらく前科、前歴がないと思われますので(あるのであればなおさらです。)、犯罪行為には何らかのやむにやまれぬ事情があるはずです。⑤懲戒処分は貴方の職業上の身分が強制的に奪われるのですから刑事事件の被疑者、被告人と類似しており、黙秘権(憲法38条1項) の理解も不可欠です。黙秘権の根拠ですが、供述を強要されない自由は、精神的自由権の思想良心の自由(憲法19条)、発言しない自由から当然認められ、自ら刑事罰を受ける可能性があるような不利益な供述を強要すること自体責任追及の前提たる適法行為の期待可能性がないということに求められます。これは、懲戒処分いついても当てはまります。本当のこということを言わないと不利益になりますという追求には応じる必要がないわけです。⑥一般職地方公務員の場合、その長が懲戒処分を行いますが、その長は選挙により選ばれる関係上国家公務員の場合と異なり不安定な地位にあり一般的に被処分者側の意見を比較検討し考慮してもらえる傾向があります。従って、積極的弁明が意外と功を奏する場合もあります。被害者、住民の嘆願書はそういう意味でも重要です。以上の点を弁護士と早急かつ慎重に対策を講じる必要があります。

5、公務員の刑事事件に関する関連事例集参照。

解説:

1、 (東京都の服務規程と国家公務員法)

地方公務員の懲戒処分については、次の条文が規定しています。東京都の服務規程と国家公務員法の条文も参考のために引用します。

地方公務員法29条第2号及び3号

職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。

二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合

三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

同第33条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

東京都職員服務規程第2条2項(他の都道府県にも同様の条例が定められております)

職員は、自らの行動が公務の信用に影響を与えることを認識するとともに、日常の行動について常に公私の別を明らかにし、職務や地位を私的な利益のために用いてはならない。

国家公務員法第82条2号及び3号

職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。

二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合

三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

同第99条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

このように、法律では、公務員の非違行為について、刑罰法規違反であるかどうか、また、有罪確定しているかどうか、どのような行為であるかについて、明確な基準を設けず、懲戒処分として、「懲戒免職」をもなし得る、という規定になっています。

2、(判例の立場 最高裁判所昭和52年12月20日判決)

このため、個別具体的な懲戒処分の適法性(法的な有効性)について、裁判所で争われる事例がありますが、最高裁判所は次のような基本的な考え方を示しています。

最高裁判所昭和52年12月20日判決

「懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか、を決定することができるものと考えられる」

「公務員に対する懲戒処分は,当該公務員に職務上の義務違反,その他,単なる労使関係の見地においてではなく,国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することをその本質的な内容とする勤務関係の見地において,公務員としてふさわしくない非行がある場合に,その責任を確認し,公務員関係の秩序を維持するため,科される制裁である。ところで,国公法は,同法所定の懲戒事由がある場合に,懲戒権者が,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をするときにいかなる処分を選択すべきかを決するについては,公正であるべきこと(七四条一項)を定め,平等取扱いの原則(二七条)及び不利益取扱いの禁止(九八条三項)に違反してはならないことを定めている以外に,具体的な基準を設けていない。したがつて,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の右行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか,を決定することができるものと考えられるのであるが,その判断は,右のような広範な事情を総合的に考慮してされるものである以上,平素から庁内の事情に通暁し,部下職員の指揮監督の衝にあたる者の裁量に任せるのでなければ,とうてい適切な結果を期待することができないものといわなければならない。それ故,公務員につき,国公法に定められた懲戒事由がある場合に,懲戒処分を行うかどうか,懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは,懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。」

「裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。」

つまり、裁判所は、公務員の懲戒免職処分について、任命権者の広範な裁量を認め、社会通念上著しく妥当性を欠いた事例についてのみ、裁量権を濫用したものとして、例外的に、司法審査によって無効となりうると判断しています。

懲戒処分の際に考慮される事項は、次の項目です。

1)懲戒事由に該当すると認められる行為の原因

2)懲戒事由に該当すると認められる行為の動機

3)懲戒事由に該当すると認められる行為の性質

4)懲戒事由に該当すると認められる行為の態様

5)懲戒事由に該当すると認められる行為の結果

6)懲戒事由に該当すると認められる行為の影響

7)当該公務員の右行為の前後における態度

8)当該公務員の懲戒処分等の処分歴

9)選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響

など,諸般の事情を考慮して判断されることになります。

3、(平成12年3月31日職職-68、人事院事務総長発)

このように、法律や政令や判例では、具体的な基準を見ることはできませんが、国家公務員の懲戒処分について、独立行政委員会である人事院の事務総長が発行している通知、「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職-68、人事院事務総長発)が参考になりますので、検討してください。本稿の最後に引用していますので参考にしてください。

<参考URL=人事院の参考ページ、pdf形式の指針>

https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html

https://www.shinginza.com/koumuin-choukai1.pdf

https://www.shinginza.com/koumuin-choukai2.pdf

地方公務員の場合も、おおむね、この指針の標準例を踏襲している指針が多いようです。勿論、前記の通り任命権者の広汎な裁量が認められる事項ではありますが、指針において懲戒免職が含まれていない罪名については、「標準例よりも重く処分すべき特別事情」は存在しないこと、「標準例の中でも寛大な処分を要すべき特別事情」が存在することを最大限に主張する必要があります。弁護士に相談して、弁明主張すると良いでしょう。

典型的な罪名・非行で、前記指針の標準例において「懲戒免職」以外が含まれているものを列挙しますので、参考にして下さい。弁明内容によっては、懲戒免職を回避できる可能性が高まる事案です。

一般服務関係

職場内の暴行→停職または減給

官物損壊→減給または戒告

諸給与の違法支払・不適正受給→減給または戒告

公金管理物処理不適正→減給または戒告

コンピュータの不適正使用→減給または戒告

公務外非行

傷害罪→停職または減給

暴行罪→減給または戒告

器物損壊罪→減給または戒告

横領罪→免職または停職

窃盗罪→免職または停職

詐欺罪→免職または停職

恐喝罪→免職または停職

賭博罪→減給または戒告

常習賭博罪→停職

淫行(青少年保護育成条例違反など)→免職または停職

痴漢行為(迷惑防止条例違反など)→停職または減給

酒酔い運転(人身事故なし)→免職または停職

酒気帯び運転(人身事故なし)→免職または停職または減給

酒気帯び運転(人身事故あり、措置義務違反なし)→免職または停職

飲酒運転以外の人身事故(死亡または重篤傷害、措置義務違反なし)→免職または停職または減給

飲酒運転以外の人身事故(重篤を除く傷害、措置義務違反なし)→減給または戒告

飲酒運転以外の人身事故(重篤を除く傷害、措置義務違反あり)→停職または減給

著しい速度超過等悪質な交通法規違反→停職または減給または戒告

これらの標準例は、あくまでも一般職の職員に適用されるべき処分例ですので、公立学校教職員や、警察職員など、業務内容に、生徒生活指導や、刑罰法規取締りが含まれているような場合には、標準例が適用されない可能性が高まりますので注意を要します。一般職員であっても、新聞報道などがあり、市役所に毎日多数の抗議の電話が来ているなど、社会的非難が強まっているような特殊事情がある場合は、前記の通り個別事情によって標準例よりも重い処分となってしまう場合がありますので、注意を要します。

地方公務員法29条4項で、「職員の懲戒の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。」と規定されております。東京都の場合の懲戒手続の規定を参考の為に引用します。

(東京都)職員の懲戒に関する条例

昭和26年09月20日条例第84号

第2条(懲戒手続)戒告、減給、停職又は免職の処分は、その旨を記載した書面を当該職員に交付して行わなければならない。

4、(懲戒処分に対する具体的対策)

実際の懲戒手続きでは、勤務先の人事課から弁明聴取の日時が指定され、非違行為についての弁明を述べる機会が与えられることが多いです。この場合、代理人弁護士に同席してもらい、法的な立場から弁明意見を述べてもらうと良いでしょう。職場や、親戚、知人、友人などの処分軽減を求める嘆願書を作成して、これを提出することもできます。被害者のある犯罪など非違行為であれば、被害者との民事示談の状況説明報告書や、被害者からの処分軽減を求める上申書などが提出できると有効です。上司から事実上の退職勧奨を受けてしまったといっても、自ら辞表を作成して提出し受理されてしまった場合には、後になって取り消すことが困難となってしまいます。自分では勤務継続は難しいと思ってしまった場合でも、事前に弁護士に相談することをお勧め致します。お困りの場合はお近くの法律事務所にご相談なさってください。

以上です。

関連事例集

Yahoo! JAPAN

参照資料

<参考指針:懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職-68、人事院事務総長発)>

最終改正: 令和2年4月1日職審―131

人事院では、この度、懲戒処分がより一層厳正に行われるよう、任命権者が懲戒処分に付すべきと判断した事案について、処分量定を決定するに当たっての参考に供することを目的として、別紙のとおり懲戒処分の指針を作成しました。

職員の不祥事に対しては、かねて厳正な対応を求めてきたところですが、各省庁におかれては、本指針を踏まえて、更に服務義務違反に対する厳正な対処をお願いいたします。

特に、組織的に行われていると見られる不祥事に対しては、管理監督者の責任を厳正に問う必要があること、また、職務を怠った場合(国家公務員法第82条第1項第2号)も懲戒処分の対象となることについて、留意されるようお願いします。

以 上

別紙

懲戒処分の指針

第1 基本事項

本指針は、代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類を掲げたものである。

具体的な処分量定の決定に当たっては、

① 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか

② 故意又は過失の度合いはどの程度であったか

③ 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか

④ 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか

⑤ 過去に非違行為を行っているか

等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする。

個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分の種類以外とすることもあり得るところである。例えば、標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合として、

① 非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき

② 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき

③ 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき

④ 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき

⑤ 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき

がある。また、例えば、標準例に掲げる処分の種類より軽いものとすることが考えられる場合として、

① 職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たとき

② 非違行為を行うに至った経緯その他の情状に特に酌量すべきものがあると認められるとき

がある。

なお、標準例に掲げられていない非違行為についても、懲戒処分の対象となり得るものであり、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考としつつ判断する。

第2 標準例

1 一般服務関係

(1) 欠勤

ア 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする。

イ 正当な理由なく11日以上20日以内の間勤務を欠いた職員は、停職又は減給とする。

ウ 正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。

(2) 遅刻・早退

勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。

(3) 休暇の虚偽申請

病気休暇又は特別休暇について虚偽の申請をした職員は、減給又は戒告とする。

(4) 勤務態度不良

勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。

(5) 職場内秩序を乱す行為

ア 他の職員に対する暴行により職場の秩序を乱した職員は、停職又は減給とする。

イ 他の職員に対する暴言により職場の秩序を乱した職員は、減給又は戒告とする。

(6) 虚偽報告

事実をねつ造して虚偽の報告を行った職員は、減給又は戒告とする。

(7) 違法な職員団体活動

ア 国家公務員法第98条第2項前段の規定に違反して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をした職員は、減給又は戒告とする。

イ 国家公務員法第98条第2項後段の規定に違反して同項前段に規定する違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおった職員は、免職又は停職とする。

(8) 秘密漏えい

ア 職務上知ることのできた秘密を故意に漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。この場合において、自己の不正な利益を図る目的で秘密を漏らした職員は、免職とする。

イ 具体的に命令され、又は注意喚起された情報セキュリティ対策を怠ったことにより、職務上の秘密が漏えいし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。

(9) 政治的目的を有する文書の配布

政治的目的を有する文書を配布した職員は、戒告とする。

(10) 兼業の承認等を得る手続のけ怠

営利企業の役員等の職を兼ね、若しくは自ら営利企業を営むことの承認を得る手続又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、その他事業若しくは事務に従事することの許可を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする。

(11) 入札談合等に関与する行為

国が入札等により行う契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その他の者に談合を唆すこと、事業者その他の者に予定価格等の入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行った職員は、免職又は停職とする。

(12) 個人の秘密情報の目的外収集

その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集した職員は、減給又は戒告とする。

(13) 公文書の不適正な取扱い

ア 公文書を偽造し、若しくは変造し、若しくは虚偽の公文書を作成し、又は公文書を毀棄した職員は、免職又は停職とする。

イ 決裁文書を改ざんした職員は、免職又は停職とする。

ウ 公文書を改ざんし、紛失し、又は誤って廃棄し、その他不適正に取り扱ったことにより、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。

(14) セクシュアル・ハラスメント(他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動)

ア 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職とする。

イ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とする。

ウ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。

(15) パワー・ハラスメント

ア パワー・ハラスメント(人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)第2条に規定するパワー・ハラスメントをいう。以下同じ。)を行ったことにより、相手に著しい精神的又は身体的な苦痛を与えた職員は、停職、減給又は戒告とする。

イ パワー・ハラスメントを行ったことについて指導、注意等を受けたにもかかわらず、パワー・ハラスメントを繰り返した職員は、停職又は減給とする。

ウ パワー・ハラスメントを行ったことにより、相手を強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹(り)患させた職員は、免職、停職又は減給とする。

(注)(14)及び(15)に関する事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断するものとする。

2 公金官物取扱い関係

(1) 横領

公金又は官物を横領した職員は、免職とする。

(2) 窃取

公金又は官物を窃取した職員は、免職とする。

(3) 詐取

人を欺いて公金又は官物を交付させた職員は、免職とする。

(4) 紛失

公金又は官物を紛失した職員は、戒告とする。

(5) 盗難

重大な過失により公金又は官物の盗難に遭った職員は、戒告とする。

(6) 官物損壊

故意に職場において官物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。

(7) 失火

過失により職場において官物の出火を引き起こした職員は、戒告とする。

(8) 諸給与の違法支払・不適正受給

故意に法令に違反して諸給与を不正に支給した職員及び故意に届出を怠り、又は虚偽の届出をするなどして諸給与を不正に受給した職員は、減給又は戒告とする。

(9) 公金官物処理不適正

自己保管中の公金の流用等公金又は官物の不適正な処理をした職員は、減給又は戒告とする。

(10) コンピュータの不適正使用

職場のコンピュータをその職務に関連しない不適正な目的で使用し、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。

3 公務外非行関係

(1) 放火

放火をした職員は、免職とする。

(2) 殺人

人を殺した職員は、免職とする。

(3) 傷害

人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。

(4) 暴行・けんか

暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったときは、減給又は戒告とする。

(5) 器物損壊

故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。

(6) 横領

ア 自己の占有する他人の物を横領した職員は、免職又は停職とする。

イ 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した職員は、減給又は戒告とする。

(7) 窃盗・強盗

ア 他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。

イ 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。

(8) 詐欺・恐喝

人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。

(9) 賭博

ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。

イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。

(10) 麻薬等の所持等

麻薬、大麻、あへん、覚醒剤、危険ドラッグ等の所持、使用、譲渡等をした職員は、免職とする。

(11) 酩酊による粗野な言動等

酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。

(12) 淫行

18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職又は停職とする。

(13) 痴漢行為

公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。

(14) 盗撮行為

公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給とする。

4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係

(1) 飲酒運転

ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。

イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。

ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。

(2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)

ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。

イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。

(3) 飲酒運転以外の交通法規違反

著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。

(注) 処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとする。

5 監督責任関係

(1) 指導監督不適正

部下職員が懲戒処分を受ける等した場合で、管理監督者としての指導監督に適正を欠いていた職員は、減給又は戒告とする。

(2) 非行の隠ぺい、黙認

部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず、その事実を隠ぺいし、又は黙認した職員は、停職又は減給とする。