新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1044、2010/8/30 15:41 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

【民事・18歳未成年者の不法行為と親の法的責任・未成年者に責任能力がある場合の監督義務者の責任】

質問:私には18歳になる息子がおり,今では実家を出て一人暮らしをしているのですが,先日,暴力沙汰を起こしてしまい,相手に大怪我をさせてしまいました。息子には資産もなく支払能力がない状態です。相手は,治療費や慰謝料等の支払い義務は親にもあるはずだと言って,多額の賠償金を支払うように請求してきました。未成年の子供をきちんと育てるのは親の役目だとは思うのですが,息子が相手に負わせた怪我の賠償責任まで親である私が負わされることになるのでしょうか。

回答:原則としては,息子さん本人のみが暴行事件による損害を賠償する責任を負うことになりますが(民法712条,714条参照),例外的に,未成年である息子さんに対する親の監督責任について,親自身が一般不法行為責任(民法709条)を問われる場合があります。

解説:
1.(未成年者の責任能力)
 未成年者が他人に損害を与えた場合でも,責任能力がないとされるときは,その未成年者自身は不法行為による損害賠償責任を問われないこととなります(民法712条)。責任能力とは損害を発生させた具体的行為が道徳上許されないということにとどまらず法律上批難される違法なものであることを理解できる能力を言います。未成年者の責任能力の有無は,年齢・環境・生育度・行為の種類などから判断されますが,概ね12歳(又は13歳)くらいまでは責任能力がないと考えられています。刑法上の責任能力は14歳と規定されていますので(刑法41条)、それよりは幾分程度が低いと考えることもできますが、同程度と評価できるでしょう。法的責任の根拠は、個人主義(私的自治の原則の前提)の見地から、違法な行為を認識しながらあえてこのような行為を行うという個人への非難にあるので、違法行為を認識できなければ非難すなわち法的責任を負うことはないわけです。

2.(監督義務者の責任、民法714条の監督義務者、親の法的責任の性質、根拠)
 このように未成年者自身が責任能力を欠き不法行為責任を負わない場合には,その親などが監督義務者等として損害賠償責任を負うことになります(民法714条)。これは,発生した損害の公平な分担の理念から当該未成年者に責任を追及できない被害者の救済を図るために,監督義務者である親などの責任を加重して責任を問えるようにしたものです。監督義務者・代理監督者は,監督義務を怠らなかったことを証明すれば責任を免れることができますが(同条1項但書),被害者側ではなく監督義務者の方で義務懈怠がなかったことの立証の負担を負わされる点で,被害者救済がより強く図られているのです。条文上挙証責任を転換して事実上被害者の責任追及を容易にしています。
 理論的根拠ですが、どうして、責任無能力者の監督義務者は責任が加重されるかといえば、工作物責任(民法717条)と同様、危険責任に類するものと考えることができます。人間は、工作物のように物ではありませんが、責任無能力者は、自らの不法な行為について法律上許されないという認識する能力がないのですから、能力者よりも自己抑制ができず不法な行為を行う危険性を常に有しています。このような危険性を有する無能力者の監督義務者は、この危険性を認識することが可能であり管理監督する者として、危険性を有する人物の不法な行為を防止する責任が加重されることになります。財産的損害が発生した場合、私的自治の原則に内在する公平の理念から被害者側と加害者、監督者を一体とみて被害者側を救済しています。この理屈は、2項、代理監督義務者も同様です。

3.(本件)
 もっとも,息子さんの場合は,18歳で物事の分別もつき,物事の是非善悪も判断できると考えられますので,責任能力があると判断されることになるでしょう。そうすると,親であるあなたが,監督義務者として民法714条により責任を負うことはないことになります。
未成年者本人に賠償能力が無い場合は、被害者側としては、未成年者本人に対して損害賠償請求訴訟を提起し、確定判決を取り、請求権の消滅時効期間が10年間に延長されますので、10年以内に、この確定判決を債務名義として、未成年者の財産に対して強制執行をしていくことが考えられます。通常は10年以内に成人し、就職したり、自営業を開始したりして、収入を生じるようになりますので、強制執行や任意の弁済を受けることができるものと思われます。

4.(未成年者に責任能力があっても監督義務者の一般不法行為責任を負う場合)
 上記のように,親である監督義務者が民法714条により責任を負わない場合でも,親自身が独自に一般不法行為責任(民法709条)を問われる場合があります(最判昭和49年3月22日)。未成年者に責任能力があり,親に民法714条の監督義務者責任が生じない場合でも,親の監督義務違反があり,その義務違反行為と損害の発生の間に因果関係があるとされた場合には,親の監督義務違反自体が一般不法行為責任の要件を満たすことになり,民法714条による責任を負わないことが一般不法行為責任の成立まで妨げるものではないと考えられるためです。どのような場合に親の監督義務違反が損害との間に因果関係があるといえるかについては,被害者救済の見地から広く認めるべきとする見解があり,他方,あくまでも一般不法行為責任(民法709条)が認められるかどうかの判断の中で親の監督義務違反が検討されるにすぎず,親に一般的包括的監護教育義務違反があれば足りるとは考えない見解もあります。

5.(基本的考え方)
 基本的には、一般不法行為の要件、過失の一つとして監督義務違反を考える説が妥当であると思います。このような判例が存在する理由は、未成年者が責任能力者であっても、実際は被害弁償をする財産的能力がなく、被害者の救済を図ろうとするところにあります。しかし、被害を受けて加害者に弁償する財産的なものがないことは、未成年者の不法行為に限った事ではありませんし、過失責任の大原則は、監督義務者である親にも保証されるのですから、危険責任等の正当な理論的根拠なく安易な拡大解釈は許されないと思います。唯、責任能力があっても未成年者は、精神的、肉体的に未成熟であり、その点教育監護権を有する両親等は、過失すなわち不法な行為の予見、回避義務を解釈上認定される可能性があると思われます。

6.(一般的判断基準)
 どのように具体的に検討されるのかについては、次に記載した判例を参考にして下さい。判例では、監督義務違反と結果発生について相当因果関係があることを前提に、過失の内容について@親として家庭教育が行われていたか、A違法な行為をするのではないかという結果の予見可能性があったか、Bそのような結果を予見できたとして、結果を回避するために可能なことがあったか、それらの可能なことについてどのような対応策を講じたのかまた、努力したのか、という点から検討されることになります。ご自身では判断が難しいようでしたら,法律の専門家である弁護士に一度相談してみることをお勧めいたします。

7.(最高裁判例等)
 前掲最判昭和49年3月22日は,15歳の中学3年生の子供が強盗殺人を起こしたことについて親の監督義務違反を認めたものであり,他に,下級審裁判例でも,市立中学校の男子生徒が授業態度を注意した女性教諭を刺殺した事故について生徒の両親に監視義務違反があったとした事例(宇都宮地判平成16年9月15日),帰宅途中の会社員が路上で不良少年らに襲われて暴行を受け,頭蓋骨骨折等の傷害を負って植物状態となった事件について不良少年者らの親権者に監督義務違反があったとした事例(横浜地判平成15年8月28日),中学生間のいじめによる負傷事故について加害生徒の親の監督義務違反があったとした事例(さいたま地判平成15年6月27日)など,親の責任を肯定する事案も多くありました。

8.(最高裁判例等)
 一方,最判平成18年2月24日は,前掲昭和49年判決をあてはめた事例の判決(つまり新たな基準を提示した判決ではない)とされてはいますが,19歳の少年が強盗傷害を起こした事件について,成年間近の少年に対して親が及ぼし得る影響力が限定的になっていること,上記事件を起こすことを予測し得る事情があったとはいえないことなどの事情の下では,親には上記事件に結びつく監督義務違反があったとはいえないと判示し,具体的な結果との関係において監督義務者の義務違反の有無を検討しています。そのため,親の責任が認められるかどうかについては,具体的な予見可能性,回避可能性があったか否かの検討が必要になるものと考えられます。息子さんが間もなく成人に達する年齢にあることなどから,親がその子どもに及ぼし得る影響力が限定的なものとなっており,親がその子どもに対して遵守事項を確実に守らせることのできる適切な手段を有していたとはいえず,その子どもが本件事件のような犯罪に及ぶことを親が予測し得なかったような状況であるなどの場合には,親に本件事件に結びつく監督義務違反があったとはいえないと考えられます。相手方からの請求に対しても,この点の具体的検討を踏まえて対応することが必要です。なお,上記平成18年判例以後も,具体的検討を踏まえた上で親権者の監督義務違反を認めている下級審裁判例も出ています(東京地判平成21年10月28日,神戸地判平成21年10月27日,千葉地判平成18年10月19日等)。

9.(その他の参考判例)上記判例も含め妥当な判断と思われます。
@最高裁第二小法廷昭和49年3月22日判決(抜粋)
未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法七〇九条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であって、民法七一四条の規定が右解釈の妨げとなるものではない。

A鳥取地裁米子支部昭和45年12月22日判決(@の第一審判決,抜粋)
二 被告甲野太郎、同花子の責任 
 親権者は、未成年者が責任能力を有するときでも、依然として親権者としての未成年者に対する監督義務があるから、その監督上の不注意と被監督者の行為による損害の発生との間に相当因果関係がある場合には、損害賠償責任を免れることができないと解するのが相当であり、したがつてこれが共同不法行為の要件をも具備するときには、加害者と連帯してその損害を賠償すべき義務があるものと言わなければならない。 
そこで本件の場合についてこれをみるに、前記甲第一号証の三ないし一三及び乙第一号証並びに被告甲野花子本人尋問の結果を総合すると、次の各事実を認めることができる。 
 被告甲野三名の家庭は、被告太郎を父、被告花子を母として、その間に長男被告一郎、次男茂樹、長女京子の三名の子供があり、本件事故発生当時太郎は大工として働いて毎月三万五〇〇〇円位の収入があり、花子は家事の傍ら内職をして若干の収入を得ていたが、太郎は家計をかえりみず月々約一万円余りを飲酒に費消するばかりでなく、酒癖が悪くて飲酒しては子供らに対し別段理由もないのに叱り飛ばしたり暴力を振つたりするので、子供らは打解けて話をすることもできず、また母花子はただ子供達に甘いだけで放任に近い状態であり、そのうえ家計に追われていたので、家族団らんするような暖かい雰囲気に欠けていた。一郎は、一歳のときに母親花子の不注意からこたつで足に大火傷を負い、両足とも指が殆ど癒着し、現在でも歩行に多少の障害を残しており、このことに多少劣等感を抱いていた。しかし小学校時代には三年生の頃家出をしたことがあつたものの、さしたる問題行動はみられなかつたが、中学二年頃から不良交友や菓子の万引、喫煙、怠学などで補導を受けるようになつた。これに対して父母たる太郎と花子は、その場限りの注意を与える程度であつて、お互い相談しあつて真剣に問題に対処しようとするところはなく、全くおざなりであつた。そのため一郎は次第に非行の度合を深め、反社会的性格を濃くするようになり、三年に進級した頃から華美な服装に対する執着が酷くなり、これに金遣いの荒いことも加わつて、新聞配達をして毎月約一三〇〇円の配達料を得て母親に渡しそのうち五〇〇円程を小遣いとして貰つていたものの、到底欲しいと思うバンドやズボンを買うことができず、また母親にも言い出しかねてひとり悩んでいるうち、昭和三八年一一月頃バンドを窃取したり、更には人を殺害してでも金を奪おうと思詰めるようになり、そして当時一郎から新聞配達を引継いでいた乙山高男が当日新聞代金の集金に廻ることを知つて、本件不法行為を犯すに至つた。右の如く一郎は犯行に出るまでにかなりの期間思い悩んでいたのであるが、この間、両親たる太郎と花子は、一郎の右欲求を真底から理解して解消してやろうとせず放任しているだけであつて、相変らず太郎は飲酒に耽つて収入の大半を使い果していた。以上の事実を認めることができる。 
 右認定事実からいつて、一郎の本件犯行は、太郎及び花子において一郎の右欲求や性格をよく理解して善導し、とくに同人の性格がいく分かは生来の素質によるとしても、暗い家庭環境と火傷による不具であることの劣等感が大きく作用して形成されたものであることに思いを深くし、太郎の飲酒による浪費をやめて監督義務を尽していたならば、これを回避することができたであろうことは、否定できないところである。されば、被告太郎、同花子の右監督義務の懈怠は、一郎をして本件犯行を犯すに至らしめた一原因をなし、その間に相当因果関係の存することもまた明白であるから、一郎のそれと共同の不法行為に当るものというべきである。従つて、被告太郎、同花子は、過失に基づく不法行為により、被告一郎と連帯して、被害者高男及び原告の蒙つた後記の損害につき、その賠償義務を負うものである。 

B最高裁第二小法廷平成18年2月24日判決(抜粋)
第1 事案の概要 
 1 本件は,少年院を仮退院して保護観察に付されていたA(以下「A」という。),B(以下「B」という。)及びC(以下「C」といい,A及びBと併せて「Aら」という。)が集団で上告人に暴行を加えた傷害事件に関して,上告人が,被上告人らには,当時未成年であったAらの親権者として,@ 被上告人らの下で生活すること,A 友達を選ぶこと,B 定職に就いて辛抱強く働くことなどの保護観察の遵守事項をAらに守らせ,また,これらが守られない場合には,Aらを少年院に再入院させるための手続等を執るべき監督義務があったにもかかわらず,これらを怠ってAらを放任したために,上記傷害事件が発生したものであると主張して,被上告人らに対し,不法行為に基づく損害賠償を請求する事案である。 
 2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 
  (1) Aの生い立ち 
 ア Aは,被上告人Y1(以下「被上告人Y1」という。)及び同Y2(以下「被上告人Y2」といい,被上告人Y1と併せて「被上告人Y1ら」という。)の長男として昭和56年12月に出生したが,平成8年には深夜はいかいで補導されるようになった。 
 イ その後,Aは,@ 中学校卒業後,塗装工の職に就いたが,3か月ほどで退職し,A 平成9年には暴行やシンナー吸引等の非行事実により保護観察に付され,保護司の紹介でとび職に就いたが,1か月ほどで退職し,B 平成10年2月(16歳2月)には恐喝の非行事実により医療少年院送致の処分を受けて関東医療少年院に収容され,次いで北海少年院に収容され,C 平成11年10月(17歳10月)には被上告人Y1に対する傷害等の非行事実により特別少年院送致の処分を受けて帯広少年院に収容された。 
 ウ Aは,平成13年4月(19歳4月),帯広少年院を仮退院して保護観察に付され,犯罪者予防更生法34条2項所定の一般遵守事項に加え,特別遵守事項として,「友達を選び,悪い誘いに乗らないこと。」,「定職に就いて辛抱強く働くこと。」,「進んで保護司を訪ね,指導,助言を受けること。」等が定められた。Aは,被上告人Y1宅に戻って,とび職,次いで飲食店勤務の職に就いたが,とび職の仕事振りは,無遅刻,無欠勤でまじめなものであり,家族との関係も良好であった。 
 エ しかし,Aは,同年6月,被上告人Y1らの了解を得ることなく,上京して新宿のクラブに就職した。被上告人Y1らは,電話で再三にわたり,札幌市の被上告人Y1宅に戻るよう説得したが,Aは応じなかった。やがて,帯広少年院等でAと顔見知りとなっていたBも,Aの誘いを受け,上京して同人と同じクラブに就職した。 
 オ Aは,同年8月16日,新宿のクラブを退職して,札幌市の被上告人Y1宅に戻ったが,被上告人Y1らは出勤しており,鍵を持っていなかったので,被上告人Y1宅に入ることができなかった。そこで,Aは,北海道中川郡a町の被上告人Y2の実家に宿泊した後,同月19日以降は,Bが戻っていた釧路市の被上告人Y3(以下「被上告人Y3」という。)宅に寝泊まりして,Bと遊び歩くようになったが,犯罪に結びつくような特段の問題行動は見られなかった。 
  (2) Bの生い立ち 
 ア Bは,被上告人Y3及び同Y4(以下,被上告人Y3と併せて「被上告人Y3ら」という。)の三男として昭和57年4月に出生したが,平成4年には深夜はいかいで補導されるようになった。 
 イ その後,Bは,@ 平成8年には中学校の教師に対する傷害等の非行事実により教護院送致の処分を受け,A 平成10年1月(15歳9月)には窃盗,ぐ犯の非行事実により初等少年院送致の処分を受け,B 中学校卒業後,鉄筋工等の職に就いたが,C 平成11年6月(17歳2月)には道路交通法違反の非行事実により中等少年院送致の処分を受け,D 平成12年2月(17歳10月)にも窃盗,道路交通法違反等の非行事実により中等少年院送致の処分を受けて帯広少年院に収容された。 
 ウ Bは,平成13年5月(19歳1月),帯広少年院を仮退院して保護観察に付され,一般遵守事項に加え,Aと同様の特別遵守事項が定められた。Bは,被上告人Y3宅に戻り,被上告人Y3らの勧めで,同年7月ころ,普通,大型特殊及びけん引の各自動車運転免許を取得した。 
 エ しかし,Bは,上記の各免許を活用できる職には就かず,同年8月1日,帯広少年院等で知り合ったAの誘いを受け,被上告人Y3らに相談することなく,上京して新宿のクラブに就職した。Bから上京や就職の報告を受けた被上告人Y3は,まじめに働くなら仕方がないと思い,戻って来るよう説得をしなかったが,保護司に連絡するよう指示したところ,同人はこれに応じた。なお,Bは,上京するまでは,決められた日に保護司の下に出頭していた。 
 オ Bは,2週間ほどで新宿のクラブを退職し,長野県に住んでいる兄が,同人を迎えに行き,同月19日,釧路市の被上告人Y3宅に戻らせた。そこに前記のとおりAが遊びに来て,同日以降,被上告人Y3宅に寝泊まりするようになった。 
  (3) Cの生い立ち 
 ア Cは,Dと被上告人Y5(以下「被上告人Y5」という。)の長男として昭和57年1月に出生したが,同被上告人がDと離婚してE(以下「E」という。)と再婚したことから,同人の養子となった。しかし,CとEの関係は円満ではなく,Eが勉強を強制したり,体罰を加えたり,友人宅へ遊びに行くことも許さなかったことから,Cは,窓から外出して深夜はいかいするようになった。 
 イ その後,Cは,@ 平成6年には深夜はいかいで補導されるようになり,A 平成7年には占有離脱物横領,窃盗の非行事実により児童相談所に通告され,B 中学校卒業後,塗装工,サイディング工の職に就いたが,C 平成9年には窃盗,同未遂の非行事実により家庭裁判所に送致されて審判を受け,保護処分に付さない旨の決定を受け,D 平成12年には詐欺未遂の非行事実により保護観察に付され,E 同年11月(18歳10月)には強盗致傷の非行事実により中等少年院送致の処分を受けて月形少年院に収容された。 
 ウ Cは,平成13年4月(19歳3月),月形少年院から仮退院して保護観察に付され,一般遵守事項に加え,Aと同様の特別遵守事項が定められた。Cは,いったん被上告人Y5宅に戻ったが,Eが正座をさせて長時間説教したりすることを嫌い,同年5月ころ,保護司の紹介で,ホテルの住み込みの配ぜん係の職に就いた。Cは,同年6月にはホテルを退職したが,Eとの同居を嫌って,被上告人Y5宅には戻らず,交際していたF(以下「F」という。)とその父親の家で同居し,Fの父親の漁業を手伝うようになった。そして,同年5月ころには,構成員ではないものの,暴力団事務所に出入りするようになっていたが,被上告人Y5は,このことを知らなかった。 
  (4) Aらの不法行為 
 CとFは,平成13年8月22日,テレホンクラブを利用して呼び出した男性から金品を強取することを企て,中学校の1年後輩であるBに共同して実行することを持ちかけたところ,同人は,これを承諾し,Aも誘った。そして,Aらは,共謀の上,同日午後11時ころ,金品を強取する目的で,Fに,上告人を釧路市の海岸付近に誘い出させ,上告人に対し,こん棒のようなもので殴打する暴行を加え(以下「本件事件」という。),約12万7000円を強取した。上告人は,本件事件によって,脳ざ傷,急性硬膜外血しゅ等の傷害を受け,入通院を余儀なくされ,右手指機能障害の後遺障害を負った。 
 3 原審は,上記の事実関係の下において,被上告人らが親権者としての監督義務を怠ったということはできないなどと判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。 
第2 上告代理人○○の上告受理申立て理由第2点について 
 1 未成年者が責任能力を有する場合であっても,その監督義務者に監督義務違反があり,これと未成年者の不法行為によって生じた損害との間に相当因果関係を認め得るときには,監督義務者は,民法709条に基づき損害賠償責任を負うものと解するのが相当である(最高裁昭和47年(オ)第1067号同49年3月22日第二小法廷判決・民集28巻2号347頁参照)。 
 2 前記事実関係によれば,Aらは,暴行,恐喝,傷害,窃盗,強盗致傷等の非行歴を有し,保護観察や少年院送致の処分を繰り返し受けていたところ,本件事件当時,少年院を仮退院して保護観察に付され,一般遵守事項に加え,特別遵守事項が定められていたにもかかわらず,これらを守らないで,遊び歩いていたり,暴力団事務所に出入りするなどしていたというのである。 
 しかし,前記事実関係によれば,本件事件当時,Aらは,いずれも,間もなく成人に達する年齢にあり,既に幾つかの職歴を有し,被上告人らの下を離れて生活したこともあったというのであり,平成13年4月又は5月に少年院を仮退院した後のAらの行動から判断しても,被上告人らが親権者としてAらに対して及ぼし得る影響力は限定的なものとなっていたといわざるを得ないから,被上告人らが,Aらに保護観察の遵守事項を確実に守らせることができる適切な手段を有していたとはいい難い。 
 上告人は,Aらを少年院に再入院させるための手続(以下「再入院手続」という。)等を執るべきであったと主張する。 
 そこで,この点について検討すると,前記事実関係によれば,Aらは,いずれも19歳を超えてから少年院を仮退院し,以後本件事件に至るまで特段の非行事実は見られず,AとBは,本件事件の約1週間前まで新宿のクラブで働き,本件事件当時は被上告人Y3宅に居住していたというのであり,Cは,本件事件当時,Fの父親の家に居住し,漁業の手伝いをしていたというのであるから,被上告人らにおいて,本件事件当時,Aらが本件事件のような犯罪を犯すことを予測し得る事情があったということはできない(Cが暴力団事務所に出入りするようになっていたことを被上告人Y5が知らなかったことは前記のとおりである。)し,Aらの生活状態自体が直ちに再入院手続等を執るべき状態にあったということもできない。 
 3 以上によれば,本件事件当時,被上告人らに本件事件に結びつく監督義務違反があったとはいえず,本件事件によって上告人が被った損害について,被上告人らに民法709条に基づく損害賠償責任を認めることはできない。 

C宇都宮地裁平成16年9月15日判決(抜粋)
3 被告らの不法行為の成否(争点(2))について 
 上記2のとおり、Fは本件事件当時責任能力を有していたと認められるので、被告らに対して民法714条に基づく責任無能力者の監督者の責任を問うことはできないというべきである。しかし、未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認め得るときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立すると解するのが相当である。 
 被告らは、Fに対して指導監督する義務を懈怠したことはないし、仮に監督義務違反があったとしても、FによるE教諭の殺害という結果との間に相当因果関係はなく、結果の予見可能性もないのであって、過失は認められない旨主張する。 
 しかし、Fは、本件事件当時、義務教育課程を終えていない13歳になったばかりの中学1年生の少年であり、上記のとおり、是非弁別能力等の責任能力は一応認められるにせよ、その程度は相当に低いものであるから、日常生活その他のあらゆる局面において親権者等の監督義務者の広い監督、支配に服すべきであるが、その反射的効果として、このような低い責任能力しか持たない年少少年の監督義務者の監督義務としては、広範かつ重大な責任が課せられて然るべきである。 
 そこで検討するに、Fは、正当な理由のない刃物等の所持が法律に違反することも知らず、学校にナイフを持って行ってはいけないとの指導を受けたことは一度もないなどと述べており、同供述から親権者らの日常の監護・教育の中で常識的に身につけるべき認識を欠いた状態にあったことがうかがわれる。このことからは、ナイフ所持の禁止あるいは人の生命の尊厳やかけがえのなさといった基本的な事柄について、被告らのFに対するしつけや指導には重大な過誤があったことが推認されるところ、被告らがこれらの点につきFに対して十分な指導教育を行っていた等上記事実に反する資料はない。また、Fは、本件事件に至るまで特に非行歴はなく、小学校時代には成績も優秀であったものの、中学校入学後は、膝の病気で思うように運動ができないことなどから苛立ちが高じて、周囲の人に対する暴力的言動や物に当たる等の行動が出始め、成績が悪化して、欠席も増加し、登校しても保健室に度々出入りするような状況にあったのであり、思春期特有の反抗行動といえる範囲を超えた明確な変化を示していた。しかし、精神的疾患の発露とも取れるこれらのFの変調の兆しに対し、被告らはある程度これに気付いていながら、特段の対処を講じていなかった。さらに、本件事件そのものは被告らの直接監督下にない黒磯北中内で発生したものであるが、前記1の(1)、(2)のとおり、Fによるナイフ類の購入は本件事件の約半年前に初めてなされ、ナイフ等を常時携帯する習癖もそのころから発現していたことに加え、本件ナイフの購入も被告Hの同伴時になされており、その後本件事件まで約1週間にわたってFが本件ナイフを常時携帯していた等の事実があるにもかかわらず、被告らはこれらに全く気付かず、Fによる家庭から学校への本件ナイフの持ち込みは継続していた。これらの諸事情を勘案すれば、被告らの外にFに対してナイフの持ち込み等について指導を行うべき主体が存在し得たことは置くとしても、被告らにおいて、Fに対する監督義務の懈怠があったことは否定できず、その懈怠が殺傷能力十分な本件ナイフの校内への常時持ち込みを許すことになった以上、被告らの監督義務違反とE教諭の殺害との間の相当因果関係もまた優に首肯し得る。 
 また、上記検討した被告らの監督義務違反の内容に照らせば、被告らにおいてFによる殺害行為自体を具体的に予見していなかったとしても、Fが本件事件当時一般的な他害行為に及ぶ可能性は十分に予見できたのであるから、予見可能性はあったというべきである。 
 したがって、被告らは、本件事件、すなわち、FによるE教諭の殺害について、Fに対する監督義務違反により共同不法行為責任を負うものというべきである。 

D横浜地裁平成15年8月28日判決(抜粋)
イ 被告E田一夫の父母である被告E田二夫、被告E田二子の責任 
  (ア) 前記認定のように、被告E田一夫は、平成九年四月高等学校進学直後に二〇歳に達するまでの保護観察処分に処せられたが、行かなければならない保護司宅には半年しか行かず、遵守事項も守らなかった。 
  (イ) この状態を被告E田一夫の父母である被告E田二夫及び被告E田二子が真摯に改善しようとした事実は何も窺えない。 
  (ウ) この点だけとってみても、被告E田二夫及び被告E田二子は、被告E田一夫の監督義務を尽くしていたとはいえない。そして、被告E田二夫及び被告E田二子は、前記保護観察が効果を上げるべく、この監督義務を尽くしていたら、本件不法行為が発生しなかった蓋然性が高いと認められるから、被告E田二夫及び被告E田二子は、本件不法行為の発生に関し、不法行為責任を負うべきである。

Eさいたま地裁平成15年6月27日判決(抜粋)
三 争点三(被告らの監督義務違反の有無)について 
   (1) 被告らの民法七一四条に基づく責任について 
 原告は、被告らに対し、民法七一四条に基づく不法行為責任を主張しているが、同条は、責任無能力者のなした行為についての監督義務者の責任を定めるものであるところ、少年ら五名は、本件暴行事件及び本件いじめ行為の発覚時、いずれも満一五歳前後の中学三年生であって、同人らが責任無能力者であると認めるに足りる証拠はない。よって、被告らの責任に関し、民法七一四条に基づく原告の主張は、採用できない。 
   (2) 被告らの民法七〇九条及び七一九条に基づく責任について 
 ア 当事者間に争いのない事実、《証拠省略》を総合すると、以下の事実が認められる。 
  (ア) A田少年は、原告に万引を強要する以前にも、中学一年生のころから、自分で万引を五回程度しており、また、学校などでたばこを吸い、校則違反のピアスを耳や鼻に付けていた。さらに、同人は、日頃から粗暴な行為をすることがある少年であった。 
 被告A田父母は、学校から呼び出されて、A田少年の喫煙行為など校則違反の事実を告げられ、A田少年に対し、一応は注意をするものの、基本的には放任状態であり、A田少年の不合理な言い訳でも、子の言うことだからといって、それをそのまま信じてしまうなど極めて監督不十分な状態であった。また、被告A田三江は、A田少年に粗暴な面があることを認識していた。 
 実際、A田少年は、被告A田父母からの注意を受けた後も、喫煙をやめることはせず、ピアスも親に隠れて付けているなど生活態度の改善は見られなかった。また、同少年は、万引に関しても、本件の証人尋問において、原告代理人から被害者である商店に被害弁償をしていないことについて質問された際、「お金がもったいないから。」と証言して被害弁償をする意思が皆無であることを公言するなど、精神的に未熟なままであり、規範意識の鈍磨が著しい。 
  (イ) E田少年は、本件暴行事件以前から、喫煙していたほか、原告に強要した以外にも、自分でも万引をしていた。 
 被告E田父母は、E田少年がたばこを吸っていたことさえ全く把握しておらず、当然、注意をすることもなかった。また、そのほかの生活全般に対する躾も甘く、原告に対する万引の強要が発覚した後も、原告が自らの判断で万引をしていたとするE田少年の不合理な弁解をそのまま信じるなど、E田少年に対する監督は不十分なものであった。 
  (ウ) B山少年は、本件暴行事件以前に非行歴二回がある素行不良の少年である。中学校内では、特に目立った行動はなく普通に登校はしているものの、平成一一年の夏ころに、C川少年及びD原少年らと不良グループを結成し、そのグループの中でリーダーの立場にあった。また、日頃から粗暴な行動が目立っており、本件暴行事件以前にも、暴力事件を起こしていた。 
 これに対し、被告B山は、その都度、B山少年に対し注意をするものの、その注意の仕方は必ずしも適切とはいえず、同人の非行傾向は改まることはなく、結局、被告B山の監督は不十分で放任状態に等しいものであった。 
  (エ) C川少年は、B山少年と不良グループを結成し、週一回程度しか登校しない素行不良の少年である。 
 被告C川父母は、C川少年がB山少年らと、自宅を溜まり場にしているにもかかわらず、特段の注意もせずにこれを放置するなど、子に対する監督は極めて不十分であった。   (オ) D原少年は、B山少年らと不良グループを結成し、C川少年方を溜まり場にしていた素行不良の少年である。 
 被告D原父母は、D原少年がたばこを吸っているかもしれないと認識していながら、その確認もせず、B山少年をリーダーとする不良グループとの交友関係についても特段注意を払わず、放任状態にあった。 
 イ 被告らは、それぞれ少年ら五名の親権者であり、それぞれの子を監督し、教育すべき義務を負っているものというべきである。そして、上記アで認定した各事実によれば、少年ら五名には、いずれも本件暴行事件より以前から(A田少年ら二名については、本件いじめ行為の前か、少なくともこれと並行して)、喫煙、ピアスの着用、粗暴な行為、不良グループの結成等の問題行動が生じていたところ、被告らはこれを認識し、又は認識すべきであったから、少年ら五名が、早晩弱者に対するいじめや暴力行為等に及ぶことをも十分に予見し得たものといえる。それにもかかわらず、被告らは、いずれもその子に対する監督教育等に特段の努力をせずこれを放置し、少年ら五名の上記問題行動を解消させようとはしなかった。そのため、少年ら五名の非行傾向は深刻化し、原告に対する本件いじめ行為及び本件暴行事件を惹起させるに至ったものというべきである。 
 したがって、被告らには、各少年らに対する監督義務を怠った過失があり、これと少年ら五名によって惹起された本件暴行事件(被告A田父母及び被告E田父母については、加えて、A田少年ら二名による本件いじめ行為)により原告に生じた権利侵害の結果との間には因果関係があるというべきであるから、被告らは、民法七〇九条、七一九条に基づく不法行為責任を負うものというべきである。

F東京地裁平成21年10月28日判決(抜粋)
2 未成年者の監督義務者たる被告Y2の責任如何について 
  (1) 前記認定の本件事件当時の被告Y1の年齢,行為態様等に照らせば,同被告は本件事件当時責任能力を有していたと認められる。 
 ところで,民法714条1項は「前2条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において,その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は,その責任無能力が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」としているが,未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは,監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する(最判昭和49年3月22日民集28巻2号347頁参照)。 
  (2) そこで,本件において,監督義務者である被告Y2の義務違反と本件事件の結果との間に相当因果関係が認めうるかについてみるに,後掲各証拠等によれば,本件においては以下の事実が認められる。 
   (ア) 被告Y1は,生後てんかん発作を繰り返すなどしていたが,平成6年8月手術を受け,その症状は少しずつ快復した。病名は結節性硬化症,皮質形成異常であった。(乙3,被告Y2) 
   (イ) 被告Y1は,小学校3年生の時,鉛筆を万引した。被告Y2は被告Y1に対し,万引が犯罪であることや,人の物を取ってはいけないということなどを話した。被告Y1の言い分が,「気付いたら取っていた」というものであったため,被告Y2は,被告Y1を病院に連れて行った。病院での入院検査で,被告Y1の行動は,精神的な問題だと診断された。また,被告Y1が小学校3年から4年に上がる春休みに,被告Y2は,被告Y1を児童精神科のある病院につれて行った。その後,月に1度から半年に1度程度,母子で児童精神科のある病院に通院し,カウンセリングを受け続けた。カウンセリングは1人30分枠で,子ども15分,母10分という内容であった。被告Y1の父は,平成17年2月,死亡した。(乙3) 
   (ウ) 被告Y1は,中学1年生の時,いじめにあうなどしていたが,その頃,コンビニエンスストアでアイスクリームとジュースを万引した。これに対し,被告Y2は被害店舗に弁償と謝罪をする一方,被告Y1に二度とこのような事をしない旨の反省文を書かせた。また,被告Y1が所属する野球部の先生や,被告Y1が小学校3年生の時から週2回通い続けてきた,葛西警察署の柔道部の担当官に注意してもらった。被告Y1が野球部でいじめの対象となってしまったため,被告Y2は,中学1年から2年に上がる時に,被告Y1に転部させることとした。(乙3) 
 (エ) 被告Y1は,中学2年生の平成18年6月,コンビニエンスストアでアイスクリームとジュースを万引した。これに対し,被告Y2は,被告Y1とともに被害店舗に行き,店長に謝罪した。その後,被告Y1は,部員達からいじめを受けるようになった。そのような中,被告Y1は,同じ部活の友人とコカコーラのペットボトルを万引した。これに対し,被告Y2は,再度被害店舗に謝罪に行った。そして,被告Y2は,転居したこともあり,平成19年1月から被告Y1を転校させることとした。(乙3) 
   (オ) なお,本件事件後の事情ではあるが,被告Y1は,本件事件後に,11歳の女子児童に対する強制わいせつ事件,9歳の女子児童に対する強制わいせつ未遂事件を惹起し,そのため,観護措置を取られた上,平成19年3月27日,初等少年院送致決定(一般長期処遇)の処分を受けた。なお,このとき,被告Y1は本件事件については申告していなかった。(甲1,2,7) 
 上記処分時の家庭裁判所調査官の調査によれば,被告Y1は,いじめの被害体験から,いらだちを弱者支配に向けること,興味ある物事が目につくと,ほかを考えずに飛びついてしまうADHDの疑い,共感性の未発達などが指摘された。被告Y1の医師も,本件事件後ではあるが,同被告は軽度ではあるが衝動性が強いと指摘した。(被告Y2本人)  被告Y1は,平成20年に少年院退院後,再び同様の問題行動を起こした。(甲1,弁論の全趣旨) 
  (3) 以上の事実によれば,被告Y1は小学3年生,中学1年生,中学2年生と,注意やカウンセリングを受けたにも関わらず万引を繰り返し,その頻度も徐々に上がってきていたのであるから,被告Y1の規範意識や自己抑制力が著しく低下していたことは,被告Y2にとって明らかであり,してみれば,同被告にとって,被告Y1が本件事件を起こすことは十分に予見可能であったはずである。また,被告Y1は,本件事件後のことではあるが,11歳の女子児童に対する強制わいせつ事件,9歳の女子児童に対する強制わいせつ未遂事件を繰り返し惹起しているのであり,してみれば,本件事件以前にも,本来,被告Y1の言動に本件事件につながる兆候が何らかの形で窺えたはずである。そして,被告Y1の本件当時の年齢やその生活状況等に照らせば,被告Y2の同Y1に対して及ぼし得る影響力は大きなもので,本件事件の結果回避可能性もまた存するところといわざるを得ない。 
  (4) この点に関し,被告Y2は,万引を繰り返していた事実から,被告Y1が本件事件を起こすことを予測することはできないと主張する。 
 しかし,一般に,少年の非行は,家庭での生育過程における人格形成,健全な規範意識や自己抑制力などの形成過程に何らかの問題性が生じ,それが万引等の問題性として当初は発現するのであるが,上記形成された問題性は,その根底にある家庭での監護状況が変わり,改善を目的とした指導が十分なされない限り存続し続け,交友関係など他の要因の影響も受けつつ,非行性が進行し,暴行,恐喝,いじめなどのより進んだ非行に発展したり,場合によっては,強姦,強制わいせつ,傷害致死,殺人などの重大犯罪に至る可能性も否定できないのである。そして,少年の非行歴や問題行動などの悪性癖は,それ自体,当該少年の規範意識や自己抑制力の低下を示しているといえ,このこと自体は当該非行形態に限られるわけではなく,他の非行形態にも通ずるのであり,これが他の非行に発展,進行する可能性は十分認められるといえるから,少年の親が少年の一定の悪性癖を認識している以上,特段の事情のない限り,少年の親は当該悪性癖と異なった他の具体的な非行を予見することも可能であるといえるし,本件においても,前示のとおり,被告Y1は,小学3年生,中学1年生,中学2年生と,注意やカウンセリングを受けたにも関わらず万引を繰り返し,その頻度も徐々に上がっている一方,被告Y2は,被告Y1の万引の悪性癖を認識していたのであるから,被告Y1の規範意識や自己抑制力が著しく低下していたことは,被告Y2にとっても明らかであり,性的欲求の高まりがちな被告Y1の年齢をも併せ斟酌すれば,被告Y2にとって,被告Y1が本件事件を起こすことは予見すべきであったし,また,十分予見可能であったといえる。 
 したがって,この点に関する被告Y2の主張は採用できない。 
  (5) 被告Y2は,被告Y1の非行を止めるために可能な限りのことを行ったと主張する。 
 本件において,被告Y2は,被告Y1が万引を起こす原因が判明しなかったため,被告Y1に医師のカウンセリングを受けさせたり,部活の先生に被告Y1を注意してもらったり,被告Y1のスケジュールの把握に努めるなど,被告Y1が万引を起こさないように一定の努力をしているといえる。しかしながら,少年の人格,規範意識や自己抑制力を矯正するために,まずもって親がしなくてはならないことは,少年と真に向き合って対話をし,非行の原因を探って,その原因に対応した施策を練ることであって,非行の原因が分からないから他人に任せるというのでは,未だ十分な監護とは言えない。少年の人格,規範意識や自己抑制力の形成は,その家庭環境に影響を受けやすいため,少年の問題性の一端が親と少年との関係に起因していることも多くあり,その点からしても,被告Y2はもっと多くの時間をかけて,色々な方法で少年と対話し,被告Y1を観察すべきであったし,その観察結果を基に,もっと徹底して監護に尽力すべきであった。現に,本件事件後のことではあるが,家庭裁判所の調査官の調査等により,被告Y1が抱える問題が明らかにされるに至っているのであり,被告Y2としては,本来は,本件事件前に,被告Y1を非行の専門家に診せるなどして同様のことができたはずであり,そうすべきであったといえる。してみれば,被告Y2は,本件事件との関係で,結果回避義務を十分に尽くしたとは評することはできない。 
  (6) 以上のとおりであるから,被告Y2の監護義務違反と本件事件の結果との間には,相当因果関係を認めることができるから,同被告は原告X1に対し,民法709条に基づきその責任を負う。 

G神戸地裁平成21年10月27日判決(抜粋)
 三 争点(2)(被告甲山らの監督義務違反の有無)について 
  (1) 原告は、Cに責任能力が認められるとしても、Cが粗暴事件を繰り返しているにもかかわらず、親権者たる被告甲山らがCに対して、粗暴な行動を起こさないように指導、監督する義務を怠ったものであるから、民法七〇九条に基づいて損害賠償責任を負う旨主張する。 
  (2) 前記二に判示したとおり、本件事故当時、Cは責任能力を有していたものと認められるが、未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認め得るときは、監督義務者につき民法七〇九条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当である(最高裁昭和四七年(オ)第一〇六七号同四九年三月二二日第二小法廷判決・民集二八巻二号三四七頁参照)。 
  (3) そこで検討するに、a中学入学後のCの素行等についての前記一の各事実に加え、証拠によれば、以下の事実を認めることができる。 
   ア a中学入学後、本件に至るまでの間、Cの担任であるK教諭から被告甲山Y2に対して、勉強についての注意とともに、じゃれ合うことが多いから注意するようにという連絡が何度かなされたことがあった。 
   イ I傷害事件の後、K教諭から被告甲山Y2に対し、家でも厳重に注意してほしい旨の連絡がなされた。 
   ウ Cが神戸市内のゲームセンターにおいて、Jに暴行したために、警察に通報されたことがあった後、C及びa中学の教諭からこれを聞いた被告甲山Y2は、Cとともに、Jの自宅に謝罪をしに行った。 
   エ 被告甲山Y1は、Cの教育について熱心ではなく、被告甲山Y2に任せており、主に同被告がCに対し、体が大きいのだからけんかになっても手を出さないようにと注意をしていた。 
  (4) 以上によれば、被告甲山らにおいては、Cがa中学において、けんかに発展しかねない遊びをしており、注意をするようにK教諭から要請されていた上、I傷害事件において、Cが同級生のIに骨折の傷害を負わせる事件を起こしたために、K教諭から厳重に注意するよう要請されており、また、本件事故直前に神戸市内のゲームセンターにおいて、CがJに暴行を振るって、警察が出動する事件を起こしていたことを認識していたのであるから、従前どおりの指導を続けるのみでは、未だ一三歳の未成年者であり、自己抑制力の発達が十分でないCが同級生とけんかをし、また、暴力を振るうなどして、同級生を負傷させる危険性があることを具体的に予見し得たものというべきであって、従前の指導教育に加えて、Cの日頃の動静を注意深く見守り、また、Cと普段の生活状況について十分に話をし、同級生に対して手を出すことがないように厳重に注意するなど適切に指導監督を行うべき義務を負っていたものと認めるのが相当である。 
 しかるに、被告甲山Y2は、I傷害事件の後も、従前同様に、けんかになっても手を出さないよう漫然と注意するにとどまり、また、被告甲山Y1においては、特段の注意指導を行ったことが認められないのであって、いずれについても、Cが再び同級生を負傷させることがないようにI傷害事件以前の指導教育に加えて、Cの動静や生活状況に気を配ったり、暴力を振るうことは決して許されないことであることを厳しく指導するなどしていないのであるから、親権者としてCに対して適切な指導監督を行うべき義務を懈怠したものといわざるを得ない。 
  (5)ア これに対し、被告甲山らは、I傷害事件を起こすまで、Cが同級生を負傷させる事件を起こしたことはなく、a中学の教諭からCが同級生に対して粗暴行為をしないように注意をするよう求められたことなどなかったのであるから、本件事故の発生を予見することはできず、本件事故発生の防止について過失があったということはできない旨主張し、被告甲山Y2本人も、a中学の教諭から、Cの素行が悪いとか同級生をいじめたり暴力を振るうなどの連絡を受けたことはない旨供述する。 
   イ しかしながら、被告甲山Y2は、普段からCに対して、けんかをしても手を出さないよう注意していた旨供述するものであるところ、Cが同級生とけんかをする可能性があることを認識しているからこそ、かかる注意を行っていたものであると考えられる。 そして、a中学の教諭から、Cが粗暴であるとか同級生をいじめているという趣旨の連絡がなされたものではないとしても、少なくとも、前記(3)アのとおり、K教諭から、同級生を負傷させかねない振る舞いをしている旨の連絡を受け、さらに、Iに大怪我をさせた後、短期間でJに暴力を振るったというのであるから、Cが同級生とけんかをするなどして、同級生を負傷させる事故を起こすことは十分予見し得たものというべきである。    ウ よって、被告甲山らの主張を採用することはできない。 
  (6) そして、被告甲山らが、上記指導監督義務を尽くしておれば、本件事故の発生を防ぐことができたと認められる。 
  (7) 以上によれば、被告甲山らは、親権者としての指導監督義務を怠った結果、Cが本件事故によって、原告に本件傷害を負わせたものと認められるから、民法七〇九条に基づいて、原告に生じた損害を賠償すべき義務を負う。 

H千葉地裁平成18年10月19日判決(抜粋)
5 争点C(被告A1及び被告A2の不法行為責任の有無)について 
  (1) 一般に,未成年者が責任能力を有する場合には,監督義務者は責任を負わないのが原則であるが(民法712条,714条参照),未成年者が責任能力を有する場合であっても,監督義務者の義務違反と当該未成年の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときは,監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当である(最高裁昭和47年(オ)第1067号同49年3月22日第二小法廷判決・民集28巻2号347頁)。 
 そして,上記義務違反が認められるためには,日常生活における一般的な監督義務(民法714条)の懈怠や監護教育義務(同法820条)の違反があるだけでは足りず,未成年者の具体的な加害行為についての予見可能性を前提とした具体的な過失があることが必要であり,上記相当因果関係が認められるためには,監督義務者が相当かつ適切な監督を行っていれば,経験則上,当該加害行為による当該結果が発生しなかったといえることが必要であると解する。 
  (2) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告Aの生活状況等並びに被告A1及び被告A2の監督状況等に関し,以下の事実を認めることができる。 
   ア 被告Aの生活状況等 
    (ア) 中学校時代 
 被告Aは,中学校では柔道部に所属し,千葉県J市の中学校新人柔道大会において,団体戦及び個人戦ともにG勝するなどの成果を上げ,熱心に部活動に取り組んでいた。 
 しかし,中学2年生の終わりころ,練習に疲れた,遊びたいなどの理由により柔道部を退部し,それ以降,生活が乱れるようになり,このころから,1日20本くらいたばこを吸ったり,頻繁にバイクを無免許運転するようになった。 
 被告Aは,中学3年生のころには,ほとんど学校に行かなくなり,被告B,被告C,被告D,被告E及び選定者Fら不良仲間と交遊するようになった。また,このころから,多いときで週2,3回飲酒するようになり,中学3年生の9月ころには,朝コンビニエンスストアでウイスキーの小瓶を購入し,それをストレート飲んでから登校することもあった。 
 〔乙イ第1号証,被告A本人〕 
    (イ) 中学卒業後 
 被告Aは,高校受験をしたものの,入学試験当日に高校近くバスの停留所でたばこを吸っていたことが発覚して不合格となったため,高校には進学できなかった。平成13年3月に中学校を卒業した後,被告A1の家業を手伝うなどしていたが,就労状況は安定せず,遊び中心の生活を送っており,毎日のように夜遊びをし,多いときは週に5回くらい無断外泊をしていた。 
 被告Aは,平成13年10月ころ,地元の暴走族である「Oに加入した。そして,暴走族の集会に参加し,その都度,バイクの無免許運転,蛇行運転,信号無視,爆音走行等をして暴走行為を繰り返した。このような暴走行為は,被告Aが本件集団暴行で逮捕されるまでの半年間で,約50回にも及んだ。また,被告Aは,頻繁に自宅の庭先に暴走族仲間と集まって,バイクの修理や違法改造を行っていた。バイクの修理や改造のための工具を万引きしたり,被告B及び被告Cとともに原付自転車を盗んだり,自転車を盗んだこともあった。 
 被告Aは,M中学校の後輩などに対し,カツアゲと呼ばれる恐喝行為を10回から20回程度したことがあった。また,被告Aは,平成14年2月ころから,先輩に対する態度が悪いなどといった理由で,気に入らないM中学校の後輩を呼び出しては,集団で又は一人で暴行を加えていた。このような暴行は,前記1(1)イ(イ)の集団暴行を含めると,10回から20回程度に及んだ。 
 〔甲第23号証,第28号証の3,乙イ第1号証,被告A本人,被告A2本人〕 
   イ 被告A1及び被告A2の監督状況等 
    (ア) 家族の状況 
 本件集団暴行当時,被告Aは,被告A1,被告A2,兄,妹及び祖父母との7人家族であった。被告A1は,平均して週6日,朝6時に仕事に出て,夕方6時から7時ころ帰宅する生活をしていた。被告A2は,専業主婦をしており,1日中家にいることが多かった。 
 〔甲第2号証の1,甲第28号証の1,被告A2本人〕 
    (イ) 中学校時代 
 被告A1及び被告A2は,被告Aが,柔道部を退部して以降,生活が乱れるようになり,被告B,被告E,被告C,被告D及び選定者Fら不良仲間と交遊するようになったことを認識してたが,友達がいなくてはかわいそうだと思い,不良交遊をやめるよう強く注意することはなかった。 
 被告A2は,被告Aが中学3年生のころ,被告Aがたばこを吸っていることに気がつき,たばこを吸うなと言って注意をしたが,被告Aは,聞く耳を持たなかった。被告A2は,その後も,被告Aが自宅の自室で日常的にたばこを吸っていることを認識しつつも,火事を起こさないように火をきちんと消すようにと注意したり,灰皿を何回か取り上げたりした程度であり,それ以上積極的にたばこをやめさせるための働きかけはしなかった。また,被告A2は,被告Aがたばこを吸っていることに気がついても,父と子のけんかになることをおそれ,すぐに被告A1に報告して対応を協議するようなこともしなかった。  被告A2は,被告Aが中学3年生のとき,担任の教師に呼び出され,被告Aが飲酒して登校したことが複数回あることを指摘された。被告A2は,被告Aに対し,飲酒していることを口頭で注意したが,被告Aが飲酒して登校することをやめたかどうか中学校に問い合わせるようなことはしなかったし,登校途中に飲酒していないか確認するようなこともしなかった。また,被告A2は,担任の教師に呼び出されたことについて被告A1に報告したが,被告A1が被告Aに飲酒のことを注意したかについては覚えていない。 
 被告A2は,被告Aが中学3年生のころにはほとんど学校に行かなくなったことを認識していたにもかかわらず,何回か被告Aの友人宅に電話で連絡を取ったことがあったものの,それ以上に,被告Aの友人の親と常に連絡を取り合うようなことはせず,被告Aの居場所を探し出して家に連れ戻すための具体的な対応策は何ら採らなかった。 
 〔甲第28号証の3,第31号証,被告A本人,被告A2本人〕 
    (ウ) 中学卒業後 
 被告A1及び被告A2は,被告Aが毎日のように夜遊びをしたり,無断外泊していたことを認識していたが,口頭で注意したことが何回かある程度で,それ以上の積極的な働きかけは行わず,被告Aの生活を改善することを半ばあきらめていた。 
 被告A2は,自宅の庭先に改造されたバイクが2台以上置いてあることや,被告Aがパンチパーマをかけていたことなどから,被告Aが暴走族に加入して無免許でバイクの暴走行為を繰り返していたことを認識していたが,人様に迷惑をかけるようなことはしないでほしいなどと口頭で注意しただけで,それ以上暴走族を脱退させたりバイクの暴走行為をやめさせるための具体的な対応策は何ら採らなかった。また,被告A2は,父と子のけんかになることをおそれ,被告A1と相談することもしなかった。 
 被告A1及び被告A2は,被告Aが恐喝をしたり,集団又は一人で後輩に対して暴行を加えていたことを全く把握していなかった。
 〔甲第31号証,被告A2本人〕 
  (3) 前記(2)の事実関係に基づき,被告A1及び被告A2の不法行為責任を検討する。 
   ア 監督義務違反 
    (ア) 被告Aには,中学生のころから,不良交遊,喫煙,飲酒,怠学,バイクの無免許運転などの非行行為がみられるところ,これらの非行行為は,幼少期からの成育過程や家庭環境等から生じた悪性癖が,少年期特有の内的欲求の不満や自己顕示欲等をきっかけとして発現したものであることが多く,これを放置しておけば,更に悪性癖が進行することは容易に予測することができる。 
 にもかかわらず,前記(2)イからすれば,被告A1及び被告A2は,上記の非行行為の原因や問題性を十分に把握し,改善に向けた真摯な努力をしなかったというべきである。 
 その結果,被告Aの非行性は,中学校を卒業した後,改善されることなく進行の一途をたどり,夜遊び,無断外泊のみならず,暴走族への加入やバイクの暴走行為,ひいては恐喝,集団暴行等の粗暴行為に発展するに至った。 
 そして,本件集団暴行は,被告Aが不良仲間と以前から行ってきた多数者による少数者又は弱者に対する暴行の発露であり,不良交遊を背景とする上記粗暴行為の延長線上に位置づけられる。確かに,本件集団暴行では,それ以前に被告Aが関与した集団暴行とは異なり,被害者の死亡という極めて重大な結果が生じたものであるが,集団暴行においては,各加害者が競うように暴力行為をエスカレートさせる蓋然性が相当程度あることに鑑みれば,本件集団暴行は突発的に発生したものというべきではない。 
 したがって,被告Aの上記非行行為について相当な監督をせずに放任していれば,いずれ本件集団暴行のような集団暴行による被害者の死亡という結果が生じることも予見できたというべきである。 
    (イ) 被告Aは,本件集団暴行当時,16歳という中学校を卒業したばかりの年齢であり,被告A1及び被告A2と同居していたのであるから,被告A1及び被告A2が親権者として被告Aに及ぼし得る影響力は大きかったというべきである。 
 とすれば,被告A1及び被告A2としては,被告Aの悪性癖の発現が見られた場合には,早期にその原因や問題性を把握し,改善に向けた真摯な努力をすることが期待されていた。特に,恐喝や暴行などの粗暴行為については,阻止・改善するためにあらゆる手段を尽くして然るべきである。にもかかわらず,前記(2)イからすれば,被告A1及び被告A2は,上記のような真摯な努力を尽くしたということはできない。また,被告A1及び被告A2は,被告Aが恐喝をしたり,集団又は一人で後輩に対して暴行を加えていたことを全く把握していなかったというが,被告A1及び被告A2が認識していた被告Aの非行行為を前提とすれば,被告Aの日ごろの動静をきめ細かく継続的に観察すべきであり,これをしていれば,被告Aの恐喝行為や暴行行為を容易に把握することができたのであり,少年と同居する監督義務者としては,これを把握すること自体が義務というべきである。 したがって,被告A1及び被告A2には,いずれも被告Aに対する監督義務違反があったと認めるのが相当である。 
   イ 相当因果関係 
 上記のとおり,被告Aの非行性は徐々に形成され,進行していったこと,少年の可塑性からすれば,その進行過程において,改善可能性は幾らでもあったこと,本件集団暴行は,それ以前からみられた被告Aの粗暴行為の延長線上に位置づけられるものであり,突発的な犯行ではないこと,被告A1及び被告A2は,親権者として被告Aに及ぼし得る大きな影響力を有していたことに照らせば,被告A1及び被告A2が,前記ア(イ)で指摘した努力を尽くしていれば,経験則上,少なくとも被告Aが本件集団暴行に関与することを防止し得たというべきである。 
 したがって,被告A1及び被告A2の上記監督義務違反とYの死亡との間には相当因果関係があると認めるのが相当である。 
   ウ まとめ 
 よって,被告A1及び被告A2は,民法709条に基づく不法行為責任を負う。 

[参照条文]

民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条  他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
(責任能力)
第七百十二条  未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
(責任無能力者の監督義務者等の責任)
第七百十四条  前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2  監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

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