新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.904、2009/8/4 15:00 https://www.shinginza.com/qa-fudousan.htm

【民事・借地権者に対する建物収去・土地明け渡し請求と建物賃借人に対する建物退去・土地明け渡し請求・訴え(訴訟物)の併合・訴えの主観的併合(通常共同訴訟)】

質問:私(甲)はある人(乙)に土地を貸し,彼は,その土地上に家を建てて,その家を第三者(丙)に貸していた(この点については,私も了解していました。)ところ,借地人乙は長期間に渡り地代を全く支払ってくれなかったので,私は,借地人乙に対し,いついつまでに地代を支払わなければ借地契約を解除する旨,いついつまでに地代を支払わなかったので借地契約が解除する,ついては土地を返して欲しい旨の各通知を順次送りました。しかし,借地人乙は,この要求を完全に無視しています。そこで,もはや訴訟を提起しようと思うのですが,どうしたらよいでしょうか?

回答:
1.借地人乙に対して建物収去、土地明け渡し請求訴訟を提起することになりますが、この訴訟の構造をどうとらえるかについては争いがあります。この点については、土地所有権(又は、土地賃貸借契約の終了による現状回復としての土地明渡請求権)に基づく建物収去と土地明渡しの2つの請求訴訟を提起しているととらえ、訴え(訴訟物)が客観的に併合している(民訴136条)と考えられます。二の請求権(訴訟物)が客観的に併合しているという考え方に対して、建物収去土地明渡請求という一の請求権(訴訟物)であるという説もありますし、さらに土地明渡請求権(訴訟物)であり建物収去は民事執行法上土地明け渡しの実効性を確保するために主文に掲げられているにすぎないという立場もあります。どの説をとっても本件では結論は変わりませんが、理論的問題として論じられています(判例タイムズ社、民事実務ノート3巻参照)。
2.同時に,借家人丙に対しても「土地所有権に基づく建物退去(建物の明渡し、引渡し)と土地明渡し」の請求訴訟を提起することになりますが、これも訴え(訴訟物)の客観的併合と考えます。これも、先ほどの乙に対する訴訟と同様の考え方ができます。
3.次に、この当事者の異なる2つの請求訴訟を同じ裁判所に同一訴訟手続き内で行うことになります。これを訴え(訴訟物)の主観的な併合、通常共同訴訟といいます(民事訴訟法38条)。
4.土地の所在地(又は借地人及び建物賃借人の住所地)を管轄する地方裁判所に訴えることになります(民訴4条、5条、7条、38条前段。)。

解説:
1.まず,借地人乙に対する関係で説明します。
(1)本件では,「土地を返して欲しい」ということですから,借地人乙に対しては,当然「土地明渡し」を請求することになります。
(2)そして,「土地明渡し」の根拠となる権利として,一般的に,「土地所有権に基づく土地明渡請求権」と「借地契約の終了に基づく土地明渡請求権」が考えられます。所有権は、目的物を直接排他的に支配する権利ですから(民法200条)土地を占有すると考えられる全ての者に対して甲は、土地所有権者であることを理由に目的物の返還請求すなわち土地明け渡し請求の訴訟を提起できます。甲は訴状の請求原因というところで自分が所有者であることと乙が(丙を介して代理)占有(民法181条)していることを主張、立証すれば、明け渡しを求めることができます。乙に土地の利用権があるという主張は土地の所有権があるということと両立し矛盾しませんので理論上いわゆる乙の抗弁として準備書面で主張することになります。当事務所ホームページ、 法の支配と民事訴訟実務入門総論7(法的三段論法、訴訟物、要件事実、主要事実、証拠提出、訴訟追行上当事者の責任の範囲、裁判所はどこまで教えてくれるか。訴状の書き方。) 法の支配と民事訴訟実務入門総論8(訴え提起に対する対応、答弁書の書き方。否認、理由つき否認、抗弁、再抗弁、自白、権利自白、請求の認諾、直接証拠、間接証拠)を参照してください。

次に、甲は、土地所有権者であることを理由にしなくとも、本件では,借地契約は既に解除されており(民法第541条),借地人乙は借地契約解除により当該契約上土地を返還する債権上の義務を有することになり(民法545条、賃貸借でも地上権でも同様です。)、甲は、土地の賃貸人としての契約上の地位に基づき当該土地を返還請求する債権的権利を有することになります。この関係は、理論的に本件土地の所有権が誰にあるかということとは無関係です。従って、甲は、訴訟(訴状)において、自分が、「土地の賃貸人であること」と「借地契約が解除されたこと」を主張、立証すれば土地を明け渡せという訴訟を求めることができます。所有者でることは主張する必要がありません。もし、乙が賃料の不払いはなく解除は無効でると準備書面で主張すると、これは解除と両立しない事実の主張であり「否認」ということになります。なお,ここで,土地や建物といった不動産の賃貸借契約おける債務不履行に基づく解除について,多少ご説明しておきます。不動産の賃貸借契約においては,賃料不払があるからといって必ずしも債務不履行に基づく解除が認められるわけではなく,これが認められるためには,契約期間,不払の理由,経過,額,当事者の立場,態度言動等を総合的に考えて,信義則上契約全体からもはや契約を継続する事ができず契約を解消せざるをえないと認められる事情が必要となります。その理由につきましては,728番をご参照ください。

(3)次に,本件で,甲が乙に対して「土地明渡し」請求訴訟を提起して、勝訴すれば乙所有の建物を収去することができるかという民事執行法上の問題があります。乙が、土地を明け渡す義務がある以上、本件乙所有の建物も収去することは当然であり乙に対する土地明け渡し訴訟の判決で十分であり建物も収去することができると考えることも可能です。しかし、結論から言うと、土地明け渡し請求の判決では、土地上の乙の所有の建物収去を求めることはできません。土地明け渡しの訴訟、判決は甲が、当該土地を明け渡す請求権があるかどうかを審理して明け渡しを求める権利があるという判断しかしていません。乙の建物を収去すなわち、取り壊すことまでは認めていないのです。甲が土地を直接排他的に支配利用する権利により目的物の返還を求めるということと、その上の他人(乙)の所有物である建物を収去、取り壊す権利があるかどうかは別個の紛争、問題として判断することになります。乙の側面から考察すると、訴訟は、乙の土地利用権の存否と乙の建物所有権の保障を個別的に判断して適正公平な紛争解決を実現する必要があります。もっと理論的に言えば、建物の収去、取り壊しは、甲の所有権による土地明け渡しとは別個の紛争、訴訟物(訴訟における審判の対象)ということになります。

唯、甲乙間の同一当事者間の訴訟なので、通常同じ訴訟手続きで土地の明け渡し、建物収去について一挙に判断、解決し訴訟法の理想である公平で、迅速、低廉な解決を果たすことが可能になります(民訴2条)。これを訴え(訴訟物)の客観的併合といいます(民訴136条)。従って、土地明け渡しの他に、土地上に家が存在するので,建物収去も請求する必要があります。民事執行法上との関係でも,判決の主文に書いてある内容しか執行力が認められませんから強制的な実現ができませんので、土地とは別個の財産権である建物の収去という執行の方法を判決に明示する必要があります。以上、土地と建物は別個、独立の不動産であり、「明け渡し」と「収去、取り壊し」は別の争い、訴訟物であることから,土地明渡しのみの判決では建物収去の強制執行はできませんので,土地明渡しのみの判決を得ても意味がないということになります。

但し、本件土地上に、独立の建物ではなく、可動可能な乙所有の動産がある場合は、当該動産の収去を別個に求める訴訟を提起する必要はありません。なぜなら、当該動産を取り除くことは動産を破棄、侵害することにはなりませんし、土地を明け渡す判断の一内容にすぎないからです。理論構成については、前述のごとく3つの考え方ができます。一つの訴訟物であるという説は、目的物の返還請求も目的物上の排除も所有権による物権的請求権の内容を構成する要素にすぎないと考えます。従って、土地明け渡し、建物収去のどちらかを認める場合は請求の一部認容という判断になります。判例もその点かならずしも明らかではありませんが、適正、公平な解決という民事訴訟の理想という視点からから訴訟物の併合が妥当であると思います。

最高裁判所昭和54年4月17日 判決(昭和52年(オ)第890号)。建物収去土地明け渡等請求事件。この裁判では、控訴審(大阪高裁昭和52年 3月30日判決)において、訴訟物の個数について控訴人(上告人、請求権は1つで執行法上の問題とする説)と被控訴人(被上告人等 訴えの併合)が異なる意見を述べています。判決は明確に判断していませんが、訴訟物の併合と考える方が分かりやすいと思います。最高裁判決は、後記参照。この事案は、建物収去土地明け渡し訴訟を起こし、判決で、土地明け渡し、「建物引き渡し」の判決を得たのですが、判決後の事情変更(借地明け渡しに伴う土地所有者と借地人所有の当該建物売買契約についての解除権が発生した)が発生したので、「建物引渡し」では目的が達することができないとして、後に再度、土地明け渡し建物収去訴訟を起こした事件です。事案が複雑ですが、結果的に認められています。

高栽判決の内容。「原判決中、控訴人の被控訴人会社に対する請求に関する部分を変更して、控訴人の本件土地明渡請求について訴を却下し、本件建物収去請求を棄却し、本件土地占有に基く不当利得返還請求を認容し、控訴人の被控訴人保証協会に対する控訴を棄却し、訴訟費用の負担につき控訴人と被控訴人会社との間で民訴法九六条、九二条、控訴人と被控訴人保証協会との間で同法九五条、八九条を各適用し、主文のとおり判決する。」土地明け渡し請求は前判決で認められているので、「訴えの利益」はない。建物収去は、前判決で判決の趣旨から棄却されているので既判力に抵触して棄却。という意味です。 
最高裁は 控訴人敗訴部分を破棄し差し戻しています。
以上、土地明け渡し請求と建物収去は民事訴訟の理念から別個の訴え(訴訟物)と考える方が簡明であると思います。最判昭33.6.6民集12−9−1384。
 
(4)以上より,結局,あなたは,借地人に対して,「土地所有権に基づく建物収去請求と土地明渡し請求の2つの請求訴訟を1つ訴えで提起することになります。

2.次に,借家人丙に対する関係で説明します。
(1)本件では,借家人は建物を占有しているのですが,借地人乙のように直接土地を借りているわけではありませんから、土地明け渡しを請求する必要があるかどうか考える必要があります。乙の建物を借りている丙も、土地を占有しているものと評価されます。占有は事実上の問題であり建物を占有しているということは、土地がなければ建物も建てることができず、建物を利用して現実的に土地を占有支配しているからです。つまりこの土地は、占有者が2人いることになります。訴訟物(紛争)の特定は当事者と紛争(訴訟物、判決主文に書かれた内容。)ごとに判断し判決の既判力、執行力もその基準に従い生じます(民訴114条、115条。既判力の主観的範囲、客観的範囲といいます。)。従って、甲は、乙だけではなく丙に対しても乙とは別個の明け渡し訴訟を提起しなければいけません。(最判昭26.4.13民集5−5−242。これは建物所有者の占有の他建物賃借人の独自の占有を認め建物所有者に対する和解調書により口頭弁論終結後の承継人として建物賃借人に対して強制執行を認めています。民訴115条。)

実体法的にみても、土地賃貸借契約を債務不履行に基づいて解除する場合(合意解除は別の判断になります),地主は,借地人に対して催告すれば足り,さらに借家人に対して支払の機会を与えなければならないものではありません(最判昭37.3.29民集16−3−662,最判平6.7.18判時1540−38等参照)。従って、丙は、建物利用権を根拠(これも抗弁です)に甲の土地明け渡し請求を拒否することはできません。甲の訴状に記載する請求原因は甲が、乙に対して請求する場合と同様です。所有権の存在と丙の占有を記載すれば最低限の請求原因事実を満たすことになります。

(2)次に、土地の明け渡し訴訟を提起し勝訴判決が出れば、当該土地上の建物に事実上居住することができませんので土地の明け渡しの訴訟、判決で民事執行上丙を乙所有の建物から退去させることができるか問題になります。結論から言うと丙に対する土地明け渡しの判決で、乙の建物から退去させることはできません。一見おかしい結論のように見えますが、甲の土地を丙が利用できるかという問題と、土地とは別個の所有物である建物を丙が利用できるかという紛争は別個のものになります。すなわち訴訟物が違うのです。丙は、本件土地について建物を介して占有しているのですが、別個の乙の所有物である建物自体を建物賃借権により独自に占有しています。建物という独立の所有物に対する占有権があるかどうかは公正、公平な解決という理想から別個の紛争として取り扱うことになるのです。従って、土地の占有権がないという判決が出ても、甲所有の土地とは別個、独立の不動産である建物の占有権がないという判決が出たことにならないのです。判決が出ていない以上、建物から強制的に退去させることは民事執行法上認められません。その結果、丙に対する土地明け渡しも法的意味を失い、乙に対する判決も丙に対しては効力が及びませんから実効性がなくなります。但し、乙が甲の土地に、単なる動産を所持していたとしても動産の収去を求める訴訟を提起する必要はありません。その動産は、土地占有の単なる一形態と考えられ独立に占有権があるかどうかの判断をする必要がないからです。この様に紛争、訴訟物の特定は、その訴訟により、適正、公平、迅速、低廉に解決できるかという観点から総合的に判断されることになります。

(判例)
最高裁判所平成6年12月20日判決、(建物収去土地明渡等請求事件)において 共有建物に居住する一部共有者に対し別個に建物退去土地明渡を求めた事案。
最高裁判所47年12月7日最高裁判決、(建物収去土地明渡請求事件)のなかで土地賃借人が所有する建物の賃借人に対し、別個に建物退去土地明渡を請求した事案。

(3)以上より,結局,あなたは,建物賃借人丙に対して「土地所有権に基づく土地地明渡し請求訴訟と建物退去請求訴訟の2つを提起しなければならず、訴訟物の客観的併合により同じ裁判所に同一訴訟手続き内で審理を求めることができます。但し、丙に対しては、土地の賃貸借関係はありませんから土地賃貸借契約の解除に基づく請求権(訴訟物)を主張することはできません。

3.最後に,借地人乙に対する「土地所有権に基づく建物収去土地明渡し」の請求と借家人丙に対する「土地所有権に基づく建物退去土地明渡し」の請求の関係について説明します。甲乙、甲丙という訴訟当事者が異なる紛争を同一の裁判所で、同じ訴訟手続きで行うことができるかという問題です。紛争の当事者が違うので原則は、同じ裁判所でも別個の訴訟を提起しなければなりません。しかし、民事訴訟の理想は、紛争の適正公平、迅速低廉な解決にあるので、この目的から同一訴訟手続きで異なる当事者間の2つの訴訟(訴え、厳密に言うと4つの訴え、訴訟物があります。)を一挙に解決することができるかどうかが問題になります。そこで民事訴訟法は、当事者が異なっても、同一訴訟手続き内で複数の訴訟物を同じ裁判官が判断する通常共同訴訟を用意しています。民事訴訟法第38条は、「訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。」と規定しますが、この条文の解釈は、先ほどの民事訴訟の理想に従い行われ、広く解釈されています。本件では、乙、丙に対する請求権は、所有権に基づく明け渡し請求権ですから「訴訟の目的である権利又は義務が同種であって」に該当します。さらに乙、丙とも建物を介しての権限なき不法占拠という「事実上及び法律上同種の原因に基づくとき」に当たるので通常共同訴訟として訴訟が可能になります。

本件でもたとえ借地人乙に対する建物収去土地明渡しの判決のみが得られたとしても,借家人が任意で建物を退去してくれない限り,上記判決に基づく強制執行はできません。そこで,あなたとしては,借地人に対する「土地所有権に基づく建物収去土地明渡し」を請求するのみならず,借家人に対する「土地所有権に基づく建物退去土地明渡し」をも請求して,訴訟を提起し一挙に解決する必要がありますので通常共同訴訟の趣旨に合致します。尚、当事者が異なる共同訴訟に、合一確定が法律上要請される共同訴訟を,いわゆる必要的共同訴訟があります(民事訴訟法第40条)。例えば、第三者が夫婦を相手に行う婚姻無効の訴えです(理論的に訴訟は夫と妻が別個の主体であり2つになります)。夫婦に一方にのみ無効ということはあり得ないので合一確定の必要性が認められます。借地人に対する「土地所有権に基づく建物収去土地明渡し」の請求と借家人に対する「土地所有権に基づく建物退去土地明渡し」の請求は,理論から考えて法律上一つの訴訟手続きで解決すること(いわゆる合一確定)が要請されるわけではありませんので(判断が乙、丙別個になって具体的不都合はあっても理論上問題はありません。)この訴訟形態にはなりません。なお,訴訟を提起する裁判所については,「不動産に関する訴訟」となりますので,地方裁判所ということになります(簡易裁判所ではできません。裁判所法24条1項1号,33条1項1号)。

≪参考条文≫

民法
(代理占有)
第百八十一条  占有権は、代理人によって取得することができる。
(占有の訴え)
第百九十七条  占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。
(占有保持の訴え)
第百九十八条  占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。
(占有保全の訴え)
第百九十九条  占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。
(占有回収の訴え)
第二百条  占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2  占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
第541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において,相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし,その期間内に履行がないときは,相手方は,契約の解除をすることができる。

民事訴訟法
(裁判所及び当事者の責務)
第2条  裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。
第二章 裁判所
    第一節 管轄
(普通裁判籍による管轄)
第4条  訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
2  人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
(財産権上の訴え等についての管轄)
第5条  次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。
一  財産権上の訴え
     義務履行地
十二  不動産に関する訴え
     不動産の所在地
(併合請求における管轄)
第7条  一の訴えで数個の請求をする場合には、第四条から前条まで(第六条第三項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る。
(共同訴訟の要件)
第38条  訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。
第39条 共同訴訟人の一人の訴訟行為,共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は,他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。
第40条 訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には,その一人の訴訟行為は,全員の利益においてのみその効力を生ずる。
2 前項に規定する場合には,共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は,全員に対してその効力を生ずる。
3 第1項に規定する場合において,共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは,その中断又は中止は,全員についてその効力を生ずる。
4 第32条第1項の規定は,第1項に規定する場合において,共同訴訟人の一人が提起した上訴について他の共同訴訟人である被保佐人若しくは被補助人又は他の共同訴訟人の後見人その他の法定代理人のすべき訴訟行為について準用する。
(既判力の範囲)
第百十四条  確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。
2  相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する。
(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
第115条  確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
一  当事者
二  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三  前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四  前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2  前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。
(請求の併合)
第136条  数個の請求は、同種の訴訟手続による場合に限り、一の訴えですることができる。

裁判所法
第24条 地方裁判所は,次の事項について裁判権を有する。
一 第33条第1項第1号の請求以外の請求に係る訴訟(第31条の3第1項第2号の人事訴訟を除く。)及び第33条第1項第1号の請求に係る訴訟のうち不動産に関する訴訟の第一審
二 第16条第4号の罪及び罰金以下の刑に当たる罪以外の罪に係る訴訟の第一審
三 第16条第1号の控訴を除いて,簡易裁判所の判決に対する控訴
四 第7条第2号及び第16条第2号の抗告を除いて,簡易裁判所の決定及び命令に対する抗告
第33条 簡易裁判所は,次の事項について第一審の裁判権を有する。
一 訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)
二 罰金以下の刑に当たる罪,選択刑として罰金が定められている罪又は刑法第186条,第252条若しくは第256条の罪に係る訴訟(第31条の3第1項第4号の訴訟を除く。)
2 簡易裁判所は,禁錮以上の刑を科することができない。ただし,刑法第130条の罪若しくはその未遂罪,同法第186条の罪,同法第235条の罪若しくはその未遂罪,同法第252条,第254条若しくは第256条の罪,古物営業法(昭和24年法律第108号)第31条から第33条までの罪若しくは質屋営業法(昭和25年法律第158号)第30条から第32条 までの罪に係る事件又はこれらの罪と他の罪とにつき刑法第54条第1項の規定によりこれらの罪の刑をもつて処断すべき事件においては,3年以下の懲役を科することができる。
3 簡易裁判所は,前項の制限を超える刑を科するのを相当と認めるときは,訴訟法の定めるところにより事件を地方裁判所に移さなければならない。

≪判決≫

(最高裁判所昭和54年 4月17日 判決)
  主   文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
       理   由
上告代理人的場悠紀、同木村保男、同川村俊雄、同大槻守、同松森彬、同坂和章平の上告理由第一点について
 本件記録によると、上告人の主張は、(1) 上告人は、昭和四四年六月、被上告人株式会社進和塗装(以下「被上告会社」という。)を相手方として枚方簡易裁判所に本件土地の所有権に基づき本件建物を収去してその敷地である本件土地を明け渡すことを求める訴(同裁判所昭和四四年(ハ)第一三七号事件。以下「前訴」という。)を提起したところ、同裁判所は、昭和四七年五月一日、同年四月一七日に終結した口頭弁論に基づき、被上告会社が上告人に対し本件建物を引き渡して本件土地を明け渡すべきことを命ずる判決(以下「前訴判決」という。)を言い渡し、前訴判決はそのころ確定した、(2) 前訴判決は、その理由において、上告人と本件建物の前所有者である訴外竹山順道との間で、昭和三九年二月ころ、本件土地につき一時使用のためにする期間三年の賃貸借契約が締結され、その際、右賃貸借の期間満了時に上告人が本件建物を時価で買い取る旨の停止条件付売買契約がされたこと、その後、本件土地の賃借権及び本件建物の所有権が訴外竹山から被上告会社に譲渡されたことに伴って、右売買に関する権利義務も被上告会社に承継されたこと、及び、右賃貸借の期間満了時である昭和四二年二月末日における本件建物の時価は九〇万円であって、同日限り、上告人と被上告会社との間で右金額を代金とする売買契約の効力が生じ本件建物の所有権が被上告会社から上告人に移転したこと,を確定し、その結果、被上告会社には、本件建物を収去すべき義務はなくなったが、本件建物を使用して本件土地を占有している以上、上告人に対し本件建物を引渡し本件土地を明け渡すべき義務がある、と判断した、(3) しかるに、被上告会社は、右の売買契約に基づき上告人に対し本件建物の所有権を完全な状態で移転すべき債務を負っているにもかかわらず、売買契約の効力が発生したのちである昭和四二年五月二三日、本件建物につき被上告会社名義に所有権保存登記手続をしたうえ、昭和四二年七月一七日から同四三年九月三〇日までの間に、被上告人兼被上告人株式会社進和塗装補助参加人大阪府中小企業信用保証協会(以下「被上告協会」という。)外一名のために所有権移転請求権仮登記、根抵当権設定登記等の登記手続を経由した、(4) そこで、上告人は、昭和四七年一〇月七日被上告会社に到達した書面により、同書面到達の日から五日以内に、右所有権移転請求権仮登記、根抵当権設定登記等を抹消したうえ、本件建物につき所有権移転登記手続をすべき旨の催告及び右期間内に右各登記手続をしないときは本件建物の売買契約を解除する旨の停止条件付意思表示をしたが、被上告会社は右期間内に右各登記手続をしなかったので、昭和四七年一〇月一二日の経過により本件建物の売買契約は解除されてその所有権が被上告会社に復帰した、(5) そこで、上告人は、被上告会社に対し本件土地の所有権に基づき改めて本件建物を収去して本件土地を明け渡すことを求めるため、本訴に及んだ、というのである。
 右によれば、上告人の本訴は、本件建物について借地期間の満了を停止条件とする売買契約が成立したものと認めて被上告会社に対し本件建物引渡し及び本件土地明渡しを命じた前訴判決の事実審口頭弁論終結後に、本件建物の売買契約を解除する意思表示をしたことによりその所有権が被上告会社に復帰したので、被上告会社に対し新たに本件建物を収去して本件土地の明渡しを求めうる事由が生じたものであると主張して、本件土地の所有権に基づき改めて建物収去土地明渡しの判決を求めるものであって、前訴とは訴の提起を必要とする事情を異にしており、また、前訴判決があるというだけでは建物収去土地明渡しの目的を達成することは不可能であることが明らかであるから、他に特段の事情のない限り、本訴について訴の利益を肯定するのが相当である。 
 しかるに、原審は、上告人の本訴中本件土地の明渡しを求める部分については、すでに前訴の確定判決によって認容されているのと同一事項につき重ねて訴を提起したものであって、特段の事情の認められない本件では、訴の利益を欠き不適法として却下を免れないものと判断しているのであって、この判断には訴の利益に関する民訴法の解釈を誤った違法があるものというべく、この違法が原判決中本件土地の明渡しを求める部分に影響を及ぼすことは明らかであり、原判決はこの部分につき破棄を免れない。
 同第三点について
 原審は、本件建物の売主である被上告会社は、上告人に対しその所有権を完全な状態で移転すべき債務を負っているにかかわらず、停止条件の成就によって売買契約の効力を生じたのちに本件建物につき被上告協会外一名のために所有権移転請求権仮登記、根抵当権設定登記等の登記手続を経由したので、上告人は被上告会社に対しその抹消登記及び上告人に対する所有権移転登記の各登記手続をするよう催告するとともにその不履行を停止条件とする売買契約解除の意思表示をしたとの上告人の主張について、右主張は負担のない建物につき売買契約を締結した売主が右売買契約成立後に買主の了承なく自己の債務の担保として第三者に根抵当権設定登記等をしたことをいうものにほかならず、これはまさに買主に対する売主の著しい背信行為以外の何ものでもなく、いわば契約成立後の事情変更として、買主は即時無催告の解除権を行使しうる場合にあたり、したがって、上告人は前訴判決の事実審口頭弁論終結前に解除権を行使することが法律上可能な状態にあったものと判断している。
 しかしながら、抵当権等の負担のない建物の売主が売買契約成立後に買主の了承なく右建物を自己の債務の担保に供し第三者のために所有権移転請求権仮登記、根抵当権設定登記等の登記手続を経由した場合には、買主に売主の債務不履行を理由とする売買契約の解除が許されることがありうることは格別、特段の事情のない限り、買主に対する売主の著しい背信行為又は契約成立後の事情変更にあたるものとして、たやすく買主に即時無催告の解除権を認めることは許されないものといわなければならない。したがって、原審が、上告人の主張する債務不履行がいかなる態様のものであるか、それに基づく解除権の発生を認めることができるか、また、債務不履行を理由とする以外に即時無催告の解除権の発生を認めうる特段の事情があるか、等について何ら審理することなく、上告人の前記主張のみに基づいて、買主に対する売主の著しい背信行為以外の何ものでもなく、いわば契約成立後の事情変更として、買主である上告人は即時無催告の解除権を行使しうるものとしたことは、契約の解除に関する民法の解釈を誤り、ひいて審理不尽、理由不備の違法があるものというべきであって、この違法が前訴判決の既判力との関連において原判決中上告人の本件建物の収去請求及び被上告協会の転付金たる本件建物の売買代金請求に関する部分に影響を及ぼすことが明らかであり、原判決はこの部分につき破棄を免れない。
 そうすると、論旨はその余の点について判断するまでもなく理由があるから、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、更に審理を尽くさせるために右部分につき本件を原審に差し戻すのが相当である。
 よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 江里口清雄 裁判官 高辻正己 服部高顕 環昌一 横井大三)
上告代理人的場悠紀、同木村保男、同川村俊雄、同大槻守、同松森彬、同坂和章平の上告理由
第一点 原判決が上告人の本件土地明渡請求を「訴の利益を欠き不適法」として却下したのは、民事訴訟法の解釈を誤ったものであり、この誤りは判決に影響を及ぼすこと明らかである。
一、原判決は、前訴の確定判決が、上告人の本件土地所有権に基づく本件土地明渡の請求を認容している事実をもって、「控訴人(上告人)の本訴における本件土地明渡の請求部分は、既に前訴の確定判決によって認容されているにも拘らず、重ねて同一事項につき訴を提起しているものというべく、従って右再訴を必要とする特段の事情も認められない本件に在っては、控訴人(上告人)の本件土地明渡の請求部分は訴の利益を欠き、不適法として却下を免れ得ないものと解する」と判断した。
 しかしながら、原審各証拠及び本件訴訟記録から明らかな如く、前訴は一時使用目的による本件土地賃貸借契約の終了の有無、本件土地賃借権の無断譲渡の有無、上告人と被上告人進和塗装株式会社(以下単に被上告人会社という)間の本件建物の停止期限付売買契約成立の有無、等が争点となったものであったのに対し、本件は前訴判決で本件建物の売買契約の成立が認定されたためこれに従い上告人が履行を催告したにもかかわらず被上告人会社が履行をなさなかったためにいったん成立した売買契約を解除し、本訴に及んだものなのである。
 従って、(本来的な)訴訟物は同じく本件土地所有権に基づく本件土地明渡請求権であるとしても、前訴と本訴とはその争いの態様を全く異にしており、本訴で争う利益がないなどとは到底いい得ないのである。
二、およそ、訴の利益(客観的訴権利益)の有無は既判力の効果とは、その本質を異にし、訴訟制度を自己の紛争解決のために利用する権利を有するか否かの観点から決せられるものである。従って、例えば原告が同一請求について既に勝訴の確定判決を得ている場合等は勝訴判決を二度得ても通常は何等プラスにならないからとの理由で、訴の利益を欠くと判断されるのである(兼子一、民事訴訟法体系一五四頁)。
 ところで上告人が、原審昭和四九年九月一九日付準備書面(以下原審第一準備書面という)で詳細に検討したとおり(後記第二点一、1、参照)、建物を所有して土地を占有している場合の土地所有権にもとづく妨害排除請求についてはその訴訟物をどのように考えるか、三説の対立があるが、土地明渡請求権のみを訴訟物と考え、建物収去は単に執行方法を明示するだけとする通説(第一説)においても、主文から建物収去を切り離し、土地明渡請求のみを求めることは、ありえないことを当然の前提としているのである。
 さすれば、当然建物収去についての請求原因が問題となり、(本来の)訴訟物たる土地明渡請求権に付随する建物収去請求の請求原因の同一性の有無により紛争は全く別個の紛争となることにもなるのである。
 訴の利益なしとされる場合の典型である再訴の禁止(民事訴訟法二三七条)の解釈においても「当事者及び訴訟物が同一であっても、前訴と後訴とで訴の提起を必要とする事情(権利保護の利益)が異なるときは、再訴の禁止に触れない」(斎藤秀夫編著注解民事訴訟法(4)二二五頁)とされている如く、訴の利益の有無はより実質的な観点から検討されなければならないのである。
三、仮に原判決の解釈どおりであれば、建物収去について既判力牴触がなければ、土地明渡請求は訴の利益なしとして却下となるため、建物収去請求のみを求めて提訴せよという不可能な訴訟形態を一般私人に要求する結果となるのである。
 この誤りは原判決が紛争の実体を把握せず、形式論理のみをふり回したために発生したものであり、原判決の判決に影響を及ぼすこと明らかな民事訴訟法の解釈の誤りであること明白であろう。
第二点〜第五点《略》

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