新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.823、2008/12/29 14:32 https://www.shinginza.com/jidoukaisyun.htm

【刑事事件・淫行条例違反・児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反・児童福祉法違反】

質問:私は,現在25歳で独身なのですが,先日,17歳の少女と肉体関係を持ちました。このような行為は犯罪になるのでしょうか?

回答:
1.まず,あなたの行為は,国家の財産である青少年の健全な精神的,肉体的,性的成長を阻害するものであり社会全体の利益を侵害し法的,道徳的にとても認められる行為ではありません。深い反省が必要と思われます。
@いわゆる淫行条例違反(「みだらな性交又は性交類似行為」等),
A「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(「児童買春」),及び,
B児童福祉法違反(「児童に淫行をさせる行為」)として犯罪に当たる可能性がある行為です。
2.もっとも,
@あなたと少女が結婚を前提に交際していたなど「真摯な交際関係」が認められるのであれば,「みだらな性交又は性交類似行為」には当たりません。
A対価の授受等がないのであれば,「児童買春」には当たりません。
Bあなたと少女との間に教師と生徒の関係があり,あなたがそのような関係を利用したなど「児童に対し,事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ,その結果児童をして淫行をするに至らせること」が認められない限り,「児童に淫行をさせる行為」には当たりません。
3.事例集bU86号,639号,256号,185号等を参照ください。

解説:
冒頭説明しましたように青少年,児童は将来国家を形成してゆく人的財産,宝であり,三つ子の魂百までというように多感で肉体精神的に未発達,成熟な段階で受けた性的影響は将来本人が自由に生きてゆく児童,個人の尊厳,基本的人権保障だけでなく公正な社会秩序維持という社会,国家的見地からも大きくとても見過ごすことはできません(法の支配)。そこで法は,児童(18歳未満)の健全な性的成長発達を保護するため,児童の人権が侵害されやすい種々の面から刑罰をもって対処しています。婚姻制度が16歳から結婚の自由を認めていますので(民法731条),16歳以上の児童も基本的に性的自由権を有するのですが(憲法13条),児童は未だ教育監護を受け(民法818条,820条),全人格的教育を受ける義務を有する立場であり(憲法26条),性的自由権の濫用は許されませんし,他人がその濫用を助長幇助するような行為も刑罰の対象として禁止しています。

従って,たとえ児童の同意に基づいたものであっても犯罪行為として処罰しているのです。唯,児童はあたかも自損行為ですし,判断能力が未成熟,未発達であり健全な成長を助け本人を保護する見地から社会国家の財産である児童を(例外的場合を除き,いわゆる「出会い系サイト規正法)処罰の対象にしてはしていません。児童の性的濫用を助長,幇助しやすい行為の順に重罰を科しています。淫行条例違反「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」,利を持って児童の判断を迷わせる児童買春は「3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金」,無抵抗な児童の対し職業的な地位を利用して犯行を行う児童福祉法は「10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」と規定し,もっとも重罰を科しています。唯,児童の意思を暴行脅迫により抑圧する強姦罪,強制わいせつ罪と異なり,児童の性的自由権の濫用を助長,幇助する行為ですので刑法の厳格主義,謙抑主義から「わいせつ行為」「年齢に認識」その他の要件については解釈が必要とされています。

1.淫行条例違反
まず,あなたの行為は,いわゆる淫行条例違反として犯罪に当たる可能性があります。淫行条例とは,各都道府県が定める青少年保護育成条例中,青少年との「淫行」,「みだらな性行為」,「わいせつな行為」,「みだらな性交」,及び,これらの「行為を教え・見せる行為」などを規制する条文の通称です。ここでは,東京都青少年の健全な育成に関する条例(以下「条例」といいます。)を例にして説明します。
(1)まず,条例にいう「青少年」とは,18歳未満の者をいいます(条例2条1号)。本件の場合,相手の少女は17歳ということですから,「青少年」に当たります。もっとも,本罪はあくまで故意犯ですから,あなたに少女が「18歳未満の者」であることの認識がなかったのであれば,罪に問われません(事例集参照)。
(2)次に,処罰される行為は,「みだらな性交又は性交類似行為」です(条例18条の6)。もっとも,以下の判例が示すように,「真摯な交際関係」が認められるならば,「みだらな性交又は性交類似行為」には当たりません。

最高裁昭和60年10月23日大法廷判決
福岡県青少年保護育成条例10条1項(当時)「の規定にいう『淫行』とは,広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく,青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似制為をいうものと解するのが相当である。けだし,右の『淫行』を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは,『淫らな』性行為を指す『淫行』の用語自体の意義に添わないばかりでなく,例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等,社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものをも含むこととなつて,その解釈は広きに失することが明らかであり,また,前記『淫行』を目して単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは,犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて,前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で,前叙のように限定して解するのを相当とする。」以上より,本件の場合,肉体関係を持ったことは,あなたと少女が結婚を前提に交際していたなど「真摯な交際関係」が認められるのであれば,「みだらな性交又は性交類似行為」には当たりません。

2.児童買春・児童ポルノ法違反
次に,あなたの行為は,「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(以下「児童買春・児童ポルノ法」といいます。)違反として犯罪に当たる可能性があります。
(1)まず,少女の年齢に関しては,前記1(1)で述べたことと同様です(児童買春・児童ポルノ法2条1項)。
(2)次に,処罰される行為は,「児童買春」です(児童買春・児童ポルノ法4条)。そして,「児童買春」とは,児童,児童に対する性交等の周旋をした者,又は,児童の保護者に対し,対償を供与し,又はその供与の約束をして,当該児童に対し,性交等をすることをいいます(児童買春・児童ポルノ法2条2項)。
よって,本件の場合,肉体関係を持ったことは,これについて対価の授受等がないのであれば,「児童買春」には当たりません。「対償」とはいかなるものをいうかは本罪の制度趣旨から児童の性的自由権の濫用を誘発助長するものであると認められるものをいいますが,単に食事を御馳走したような場合は当たらないと思われます。

3.児童福祉法違反
さらに,あなたの行為は,児童福祉法違反として犯罪に当たる可能性があります。
(1)まず,少女の年齢に関しては,前記1(1)で述べたことと同様です(児童福祉法4条1項)。
(2)次に,処罰される行為は,「児童に淫行をさせる行為」です(児童福祉法34条1項6号)。そして,以下の裁判例が示すように,行為者自身が淫行の相手方となる場合は,「児童に対し,事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ,その結果児童をして淫行をするに至らせること」が認められなければ,「児童に淫行をさせる行為」には当たりません。

東京高裁平成8年10月30日
「児童福祉法34条1項6号にいう淫行を「させる行為」とは,児童に淫行を強制する行為のみならず,児童に対し,直接であると間接であると物的であると精神的であるとを問わず,事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をも包含するものと解される(・・・)。そして,・・・同号には,行為者が児童をして行為者自身と淫行をさせる行為を含むと解すべきところ,同号が,いわゆる青少年保護育成条例等にみられる淫行処罰規定(条例により,何人も青少年に対し淫行をしてはならない旨を規定し,その違反に地方自治法14条5項の範囲内で刑事罰を科するもの)とは異なり,児童に淫行を「させる」という形態の行為を処罰の対象とし,法定刑も最高で懲役10年と重く定められていること等にかんがみれば,行為者自身が淫行の相手方となる場合について同号違反の罪が成立するためには,淫行をする行為に包摂される程度を超え,児童に対し,事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ,その結果児童をして淫行をするに至らせることが必要であるものと解される。」

以上より,本件の場合,肉体関係を持ったことは,あなたと少女との間に教師と生徒の関係,会社の経営者,上司と部下の関係があり,あなたがそのような上下関係を利用したなど「児童に対し,事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ,その結果児童をして淫行をするに至らせること」が認められない限り,「児童に淫行をさせる行為」には当たりません。

≪参考条文≫

憲法
第十三条  すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。
第二十六条  すべて国民は,法律の定めるところにより,その能力に応じて,ひとしく教育を受ける権利を有する。
○2  すべて国民は,法律の定めるところにより,その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は,これを無償とする。

民法
(婚姻適齢)
第七百三十一条  男は,十八歳に,女は,十六歳にならなければ,婚姻をすることができない。
第八百十八条  成年に達しない子は,父母の親権に服する。
(監護及び教育の権利義務)
第八百二十条  親権を行う者は,子の監護及び教育をする権利を有し,義務を負う。

東京都青少年の健全な育成に関する条例
(目的)
第1条 この条例は,青少年の環境の整備を助長するとともに,青少年の福祉を阻害するおそれのある行為を防止し,もつて青少年の健全な育成を図ることを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 青少年 18歳未満の者をいう。
二 図書類 販売若しくは頒布又は閲覧若しくは観覧に供する目的をもつて作成された書籍,雑誌,文書,図画,写真,ビデオテープ及びビデオディスク並びにコンピュータ用のプログラム又はデータを記録したシー・ディー・ロムその他の電磁的方法による記録媒体並びに映写用の映画フィルム及びスライドフィルムをいう。
三 自動販売機等 物品の販売又は貸付けに従事する者と客とが直接に対面(電気通信設備を用いて送信された画像によりモニター画面を通して行うものを除く。)をすることなく,販売又は貸付けをすることができる自動販売機又は自動貸出機をいう。
四 広告物 屋内又は屋外で公衆に表示されるものであつて,看板,立看板,はり紙及びはり札並びに広告塔,広告板,建物その他の工作物に掲出され,又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいう。
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第18条の6 何人も,青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
(罰則)
第24条の3 第18条の6の規定に違反した者は,2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
(目的)
第1条  この法律は,児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ,あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ,児童買春,児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに,これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより,児童の権利を擁護することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において「児童」とは,18歳に満たない者をいう。
2 この法律において「児童買春」とは,次の各号に掲げる者に対し,対償を供与し,又はその供与の約束をして,当該児童に対し,性交等(性交若しくは性交類似行為をし,又は自己の性的好奇心を満たす目的で,児童の性器等(性器,肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り,若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
一  児童
二  児童に対する性交等の周旋をした者
三  児童の保護者(親権を行う者,未成年後見人その他の者で,児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者
3 この法律において「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって,次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
(児童買春)
第4条 児童買春をした者は,5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。

児童福祉法
第1条 すべて国民は,児童が心身ともに健やかに生まれ,且つ,育成されるよう努めなければならない。
2 すべて児童は,ひとしくその生活を保障され,愛護されなければならない。
第2条 国及び地方公共団体は,児童の保護者とともに,児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。
第3条 前2条に規定するところは,児童の福祉を保障するための原理であり,この原理は,すべて児童に関する法令の施行にあたつて,常に尊重されなければならない。
第4条 この法律で,児童とは,満18歳に満たない者をいい,児童を左のように分ける。
一 乳児 満1歳に満たない者
二 幼児 満1歳から,小学校就学の始期に達するまでの者
三 少年 小学校就学の始期から,満18歳に達するまでの者
2 この法律で,障害児とは,身体に障害のある児童又は知的障害のある児童をいう。
第34条 何人も,次に掲げる行為をしてはならない。
一 身体に障害又は形態上の異常がある児童を公衆の観覧に供する行為
二 児童にこじきをさせ,又は児童を利用してこじきをする行為
三 公衆の娯楽を目的として,満15歳に満たない児童にかるわざ又は曲馬をさせる行為
四  満15歳に満たない児童に戸々について,又は道路その他これに準ずる場所で歌謡,遊芸その他の演技を業務としてさせる行為
四の二 児童に午後10時から午前3時までの間,戸々について,又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売,配布,展示若しくは拾集又は役務の提供を業務としてさせる行為
四の三 戸々について,又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売,配布,展示若しくは拾集又は役務の提供を業務として行う満15歳に満たない児童を,当該業務を行うために,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第4項の接待飲食等営業,同条第6項の店舗型性風俗特殊営業及び同条第9項の店舗型電話異性紹介営業に該当する営業を営む場所に立ち入らせる行為
五 満15歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為
六 児童に淫行をさせる行為
七 前各号に掲げる行為をするおそれのある者その他児童に対し,刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に,情を知つて,児童を引き渡す行為及び当該引渡し行為のなされるおそれがあるの情を知つて,他人に児童を引き渡す行為
八 成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が,営利を目的として,児童の養育をあつせんする行為
九 児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて,これを自己の支配下に置く行為
2 児童養護施設,知的障害児施設,知的障害児通園施設,盲ろうあ児施設,肢体不自由児施設又は児童自立支援施設においては,それぞれ第41条から第43条の3まで及び第44条に規定する目的に反して,入所した児童を酷使してはならない。
第60条 第34条第1項第6号の規定に違反した者は,10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
2 第34条第1項第1号から第5号まで又は第7号から第9号までの規定に違反した者は,3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
3 第34条第2項の規定に違反した者は,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
4 児童を使用する者は,児童の年齢を知らないことを理由として,前3項の規定による処罰を免れることができない。ただし,過失のないときは,この限りでない。
5 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関して,第1項から第3項までの違反行為をしたときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても,当該各項の罰金刑を科する。
6 第2項(第34条第1項第7号及び第9号の規定に違反した者に係る部分に限る。)の罪は,刑法第4条の2の例に従う。

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