新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.256、2005/5/23 16:59 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴前]
質問:以前、女性と交際が出来る広告を見てアクセスしたところ、携帯電話にて話すことになり声が若かったので、何歳ですかと聞いたところ、「18歳です。宜しく。」と言うのである駅で待ち合わせ、「随分若い子だなあー、」と思いながら暫く話した後で、ついホテルに行って現金を渡し関係を結んでしまいました。半年ほどしてから警察から連絡があり、取調べられました。警察は本当のことを言わなければ逮捕するといっています。何とその子は中学生でした。私はどうなるでしょうか。私には妻子もあり、妻子に知れたら身の破滅です。どうしたらいいでしょうか。

回答:
1、あなたにかけられている容疑は児童買春と考えられます(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)。300万円以下の罰金、5年以下の懲役となっており、児童の健全な成長を侵害する重大な犯罪であり、社会的にも道徳上も許されないいわゆる破廉恥な犯罪といえるでしょう。しかし、条文をよく読んでいただきたいのですが、この犯罪が成立するためには、児童と交際をしなければならず、交際相手が18歳未満であることと、あなた自身が、相手の女性が18歳未満であることを知っていなければなりません。厳格に言うと18歳未満であることを男女関係前に知る必要があります。すなわち、関係終了後知ったとしても行為の時点で故意がないので犯罪は成立しません。たとえば、ホテルを出た後「本当は私、中学生です。」と聞いたとしても、罪にはなりません。
2、本件では、あなたは関係を結ぶ前に18歳以上と信じていたのであれば、前述のように罪にはなりません。逮捕されることもないでしょう。この場合、あなたは、随分若い子だなあーと思っているように、注意して、年齢を聞きただすなり、問い詰めるなりして聞き出せば中学生であることを知りえたかもしれません。つまり、不注意で年齢を知りえなかったことについて、あなたに過失があったとは言えるでしょう。しかし、過失があったとしても、この犯罪は、過失犯を処罰していませんから罪刑法定主義よりやはり犯罪は成立しません。ところが、あなたは、ホテルに行く前に少女と話をしており、どのくらいの時間会話したかどうかはわかりませんが、児童の生活環境について話が出て中学、高校の生徒かもしれないと思い、18歳未満の少女でもいいと思った場合は犯罪になってしまう可能性があります。いわゆる未必の故意というものです。この場合、少女の服装、化粧の程度なども関係があるでしょう。中高生のような服装、化粧の場合、あなたは、限界線上に位置しています。年齢否認を続ければ、逮捕の可能性が残るでしょう。
3、取調べの担当捜査官が、「本当のことを言わないと逮捕する。」といったそうですが、これには2つの可能性があるような気がします。1つは、被害者である児童は、何らかの件で取り調べを受けその中で携帯電話に残っていたあなたの番号を問い詰められ、本件が明らかになったものと思われます。児童が、捜査の中で、「私は、会話の中で18歳未満であることを関係した相手に事前に伝えてあるし、相手も知っていた。」と供述していれば、逮捕状請求の証拠はそろっており、否認するなら証拠隠滅を防ぐため逮捕状をとり、逮捕します。という意味です。この場合は、逮捕状は出てしまう可能性が十分あります。通常この場合が多いと思われます。逮捕を防ぐためには正直に捜査に協力する方が賢明でしょう。この場合の対策ですが、担当弁護士と相談して、在宅捜査の中で自分に有利な点を強力に捜査官に伝えることです。弁護士と同行し何度も捜査官に事情を話し、書面にして提出する必要があります。あなたは、家族に知れることを恐れていますので、弁護士さんに捜査機関との話し合いにより被害者側の供述内容を確認してもらい、捜査に協力的態度で逮捕を避ける必要があります。もう1つは、児童の供述について不明な部分があり、被疑者の供述を引き出し、証拠を固めてから立件しようとする場合です。この場合には、あなたが事実関係をありのまま言っても、逮捕されるかどうかは不明です。逮捕状請求の証拠が十分にないからです。この場合も、慎重に供述しなければなりません。あなたの供述内容によっては、やはり逮捕状が請求されたり、刑事手続が進行してしまう恐れがあるからです。弁護士のアドヴァイスを受けることが必要です。被害者の供述内容も弁護士を介し捜査機関に確認する作業が要求されます。捜査の密行性上困難な面がありますが、弁護士と捜査機関の話し合いも不可能ではありません。
4、逮捕された場合の手続ですが、刑事訴訟法上逮捕後48時間以内に検察庁に送検され(同法203条)、24時間以内に勾留請求(同法205条)、勾留質問が裁判所で行われ(同法207条、60条、61条)、10日間の勾留が決定される(同法208条)のが通常です。はっきりと罪を認め、反省の態度が顕著であれば、勾留請求がされない場合もあります。
5、そこで、本件についてあなたのとる態度としては、以下の方法が考えられます。
@18歳未満であることを知らなかったことを最後まで主張し、最終的に刑事裁判で身の潔白を明らかにして白黒つけることです。被害者の供述証拠がない場合は、逮捕の恐れも低いでしょう。しかし、被害者の供述が詳細で信用できるものであれば、裁判で有罪の可能性がありますし、逮捕、起訴、そして公判と刑事手続きが続くことが予想されますので、公判中の保釈が可能であるとしても家族には隠し通すことは出来ません。
A次に、捜査の段階から一刻も早く弁護人を依頼し、罪を原則として認め捜査機関に被害者の連絡先の開示を求めるか捜査機関から被害者の意思を確認してもらい、被害者側と示談をする方法です。示談により、告訴、被害届け取り消しが捜査段階(逮捕前)でなされた場合は、逮捕、公判請求もなくなり、略式手続(罰金)か、起訴猶予の可能性が大きいと思われます。しかし、はっきり罪を認めることはなんとなく釈然としません。18歳未満であることを明確に知っていたわけではないからです。又、罪を認めたのに結果として示談が不成功に終わり、処罰だけされると言う危険が残ります。略式手続きも有罪判決ではありますので、示談が成立しても前科がつく可能性もあることになります。
B最後に、罪についてはっきりと認めず、一刻も早く被害者側との交渉を開始し、その経過により、示談成立と同時に捜査機関に事実上罪を認める方向に転換できるようにするという方法です。弁護人との詳細にわたる協議が必要です。この場合、警察官、検察官が、被害者側に連絡してくれないと思いますから、何らかの形で被害者側の連絡先を確認することが必要です。使用した携帯電話は、取調べ、逮捕と同時に押収され返還されませんから、被害者の連絡先、携帯番号などは、事前に控えておくことも大切です。この方法が功を奏すれば家族には判明せず、起訴猶予の可能性も残されています。ただ、逮捕前に示談交渉をする余裕があまりなく時間との戦いになるでしょう。その他の方法については、弁護人に詳しく相談してみましょう。
6、いずれにしても、必ず、これだというような方法はありませんが、起訴前の弁護活動が明暗を分けることになりますから、至急法律事務所に相談しましょう。

≪参考条文≫ 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律

第二条  この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2  この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
一  児童 
二  児童に対する性交等の周旋をした者
三  児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者
3  この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一  児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二  他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三  衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
第四条  児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

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