最終更新:2026年10月15日
「掲示板に他人の悪口を書いてしまった」「実名や前科を投稿したが、自分では消せない」「削除して謝罪したいが、どう進めればよいか分からない」。このような場合には、まず追加の投稿や拡散を止め、投稿内容と対応経過を記録した上で、削除機能や運営者への申出を利用して被害の拡大を防ぐことが大切です。被害者への謝罪・示談、発信者情報開示への対応、民事・刑事上の責任も併せて検討します。本記事では、問題のある投稿をした側から削除を進める方法と、その限界を説明します。
最初に押さえておきたいこと
- 自分で削除できる投稿は、被害拡大を止めるため速やかに対応します。示談成立が削除の前提になるわけではありません。
- 削除しても、既に生じた責任が自動的になくなるわけではありません。投稿者の特定や賠償請求が続く場合があります。
- 「削除をお願いすること」と「裁判で削除を強制できる権利」は別です。被害者の人格権を、投稿者が当然に自分の権利として行使することはできません。
- 被害者の意思と連絡方法を尊重します。謝罪を理由に繰り返し接触したり、削除と引換えに示談を迫ったりしないことが重要です。
1 書き込んでしまった直後にすること
- 追加の投稿・転載・反論を止める。言い訳や謝罪のためであっても、被害者の氏名や問題の内容を再掲すると、さらに拡散させることがあります。
- 投稿と経過を非公開で記録する。URL、投稿番号、投稿日時、アカウント名、本文、前後のやり取り、利用規約、削除申請の控えを保存します。
- 削除・非公開化など、可能な対応を速やかに行う。自分で操作できない場合は、運営者の窓口に対象を特定して削除を依頼します。
- 被害者への対応を検討する。連絡を望まない旨が示されている場合や、対立・恐怖が生じている場合は、弁護士を窓口にすることを検討します。
- 照会書・請求書等の期限を確認する。プロバイダ、相手方弁護士、裁判所、警察等から連絡が来ているときは、その書類を持って早めに相談してください。
ここでいう記録の保存は、事実関係を正確に確認し、被害回復や法的手続に対応するためのものです。公開を続ける必要はありません。削除前の記録と、削除後の確認画面の両方を残し、事実を隠すために通信記録を改変したり、他人と口裏を合わせたりしないでください。
住所・連絡先の暴露、脅迫、私的な画像の掲載など、現に危険を増やしている情報は、拡散防止を急ぐ必要があります。捜査や証拠保全に関する連絡を既に受けている場合は、公開停止と証拠の保存を両立させる方法を弁護士に相談してください。
2 投稿した側には、どのような責任があるか
(1)名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害
名誉毀損は、具体的な事実を示し、その人の社会的評価を低下させることが問題になります。実名を書かなくても、勤務先、写真、役職、居住地、過去の経緯等から対象者を特定できる場合があります。具体的事実を示さない悪口でも、侮辱罪や、社会通念上許される限度を超える名誉感情の侵害等が問題となることがあります。
プライバシー侵害は、私生活上の情報をみだりに公表されない利益の侵害です。住所、病歴、家庭事情、過去の逮捕・前科などは、事実であっても、公表の目的・必要性や被害等によって違法になり得ます。「新聞に載っていた」「他の人も書いている」という事情だけで、再投稿が許されるとはいえません。
一方、正当な批評や公益に関する情報提供も保護されます。名誉毀損罪について刑法230条の2第1項が定めるのは、公共の利害に関する事実であること、目的が専ら公益を図ることにあること、真実であることの証明という要件です。公益目的だけで一律に免責されるわけではありません。
(2)民事上の責任
故意・過失による権利侵害と損害、因果関係等が認められれば、民法709条・710条に基づく損害賠償責任を負う場合があります。慰謝料だけでなく、事情によっては営業上の損害等も問題となります。被害者からは、人格権に基づく削除・差止めを求められることもあります。
賠償額は、内容の重大性、閲覧・拡散の範囲、投稿期間、反復の有無、現実の被害、削除や謝罪の経緯などによって変わります。相手から請求された金額がそのまま裁判で認められるとは限りませんが、削除できたという理由だけで請求を放置することも適切ではありません。
(3)刑事上の責任―現行の法定刑
| 犯罪 | 問題となる行為 | 現行の法定刑 |
|---|---|---|
| 名誉毀損罪 刑法230条1項 | 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損する行為 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 侮辱罪 刑法231条 | 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱する行為 | 1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料 |
| 信用毀損・偽計業務妨害罪 刑法233条 | 虚偽の風説の流布や偽計により、人の信用を毀損し、又は業務を妨害する行為 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
2025年6月1日から拘禁刑が導入されています。実際の適用法令は、投稿時期と改正法の経過措置も踏まえて確認します。投稿内容によっては脅迫罪等が問題になる場合もあります。
(4)インターネットだから責任の基準が緩くなるわけではありません
最高裁第一小法廷平成22年3月15日決定(平成21年〔あ〕第360号)は、インターネットの個人利用者による表現でも、真実と誤信したことについて確実な資料・根拠に照らした相当の理由が必要であり、他の表現手段より緩やかな基準を採らないとしました。噂や他人の投稿を見たというだけで、当然に名誉毀損罪が成立しなくなるわけではありません。
3 まずは自分で削除・公開停止できるか確認する
自分のブログ、SNS、口コミなどには、投稿の削除機能や編集機能が設けられていることがあります。投稿時のアカウント、削除用パスワード、投稿管理画面を確認します。「投稿者本人でも必ず削除できない」という共通ルールがあるわけではありません。
- 投稿単位で確認する:問題の投稿が消えたか、添付画像や返信、引用部分が残っていないか確認します。
- アカウントの退会と区別する:アカウントを削除しても投稿が残るサービスがあります。退会前に投稿の扱いを確認します。
- 非公開化の限界を確認する:閲覧者を制限しても、既に保存・転載されたものまでは消えません。
- 検索結果の残存も確認する:元投稿が消えても検索の説明文等に古い内容が残る場合があります。8項の対応を検討します。
自分の投稿を消す作業に、被害者が示談に応じることを条件として付けるべきではありません。被害回復を進めた上で、謝罪や賠償等について別途協議します。削除申請を出しただけの場合と、実際に削除された場合も区別して記録してください。
4 自分で消せないときは、運営者に削除を依頼する
(1)投稿者であることと、削除に同意することを伝える
削除機能がない掲示板や、ログインできなくなったアカウントでは、運営者の問い合わせ・通報窓口を確認します。投稿者本人として申告する場合は、対象URL、投稿番号、投稿日時、利用したアカウント等を示し、本人確認に必要な範囲で資料を提出します。
投稿者が削除に明確に同意していることは、運営者が対応を検討する上で重要な事情になります。誤りや権利侵害のおそれを具体的に示し、利用規約上の禁止事項に当たると考える箇所も整理します。ただし、投稿者が同意したことだけで、すべてのサービスに法的な削除義務が生じるわけではありません。
削除依頼に記載する事項
- 投稿者本人からの申出であること、運営者への連絡先
- 対象URL・スレッド名・投稿番号・投稿日時
- 削除したい箇所と、対象者を特定できてしまう記載
- 事実の誤り、私生活上の情報、名誉を害する表現など、削除を求める具体的な理由
- 対象投稿の削除に同意し、公開停止を希望すること
- 確認資料と、被害拡大を防ぐため対応を急ぐ事情
- 受付・対応結果の連絡を希望する旨
申請内容が被害者への説明や法的手続の資料になる可能性もあるため、推測で事実を記載しないことが大切です。法律上の評価が分からない場合でも、投稿内容、時期、削除を希望する意思など、把握している事実を正確に伝えることができます。
(2)申請文が公開される場合に注意する
削除依頼を公開掲示板に投稿する方式では、依頼文に被害者の実名や前科、住所等を繰り返して書くと、さらに情報が広がるおそれがあります。投稿番号等による最小限の特定で足りるか、非公開の受付方法がないかを確認してください。被害者の本人確認書類を、本人の了解なく取得・提出してはいけません。
(3)運営者が応じない場合のサーバー事業者への申出
掲載サイトと、その情報を保存・送信するサーバーの運営者が異なる場合は、サーバー事業者の権利侵害申告・不正利用通報窓口への申出も検討します。ただし、単に通信を中継する回線事業者やドメイン登録の代行会社には、記事を削除する権限がない場合があります。対象情報の送信を止められる相手かを確認します。
投稿者とサーバー事業者の間に契約がない場合、「自分が投稿したから」という理由だけで、契約に基づく削除を強制できるとは限りません。任意対応の申出と、被害者の権利に基づく請求を整理して進めます。
警察庁:インターネット上の誹謗中傷等への対応 / 大阪府の相談実績報告書(PDF)には、投稿した側からの削除相談についても記載があります。
5 投稿者から「法的に」削除を請求できるか
(1)被害者の人格権と、投稿者自身の契約上の権利は別です
他人の名誉・プライバシーを害する投稿について、その人格権に基づく差止請求をする主体は、基本的には権利を侵害された本人です。投稿者が反省し、損害賠償を減らしたいと考えていることだけで、被害者の人格権を自分の権利として行使できるわけではありません。
投稿者側からは、利用規約に定める削除請求権、運営者との個別の合意、サービス契約の解釈等を検討します。被害者が望む場合は、被害者本人又はその代理人が請求し、投稿者が事情説明、削除への同意、費用負担等で協力する方法もあります。
(2)「削除に応じない」という規約は必ず有効か
利用規約に削除制限があっても、それだけで違法な権利侵害の継続が正当化されるわけではありません。契約内容への組込み、規約の解釈、公序良俗(民法90条)、定型約款の不当条項(548条の2第2項)などを検討します。消費者契約に当たる場合には、消費者契約法10条による無効の問題もあります。
もっとも、投稿保存の目的、利用者の予測、削除制限の範囲、例外措置、サービスの性質等に応じた判断が必要です。「削除不可」と書かれている条項が、常にすべて無効になるわけではありません。また、民法132条の「条件」は、法律行為の効力を将来の不確実な事実にかからせる法的な条件を意味し、一般に「利用条件」と呼ばれる規約すべてを指すものではありません。
(3)準委任契約を解除すれば、必ず削除できるか
投稿サービスの契約は、利用規約やサービス内容によって判断されます。すべての掲示板利用を一律に準委任契約と扱い、民法651条を適用することはできません。
仮に準委任の規定が適用されるとしても、民法656条を通じて適用される652条は、620条を準用して、解除の効力を将来に向かうものとしています。そのため、「651条で解除すれば、545条の原状回復として過去の全投稿が当然に消える」とは説明できません。契約終了後の掲載継続を認める合意の有無、その有効性、終了に伴う義務等を個別に検討します。
(4)債権者代位・事務管理を使えば強制できるか
債権者代位権(民法423条)は、自分の債権を保全するために他人の権利を行使する制度ですが、保全すべき債権、代位する権利、その行使の必要性等が必要です。一身専属的な権利は対象になりません。「被害者のためになるから」というだけで、被害者の人格権に基づく削除請求を自由に代位行使できる制度ではありません。
また、投稿者とサイト運営者の契約が無効であるという主張から、第三者であるサーバー事業者に対する削除請求権が当然に生じるわけでもありません。相手方ごとに、どの権利に基づいて何を求めるのかを検討する必要があります。
事務管理(民法697条以下)も、それだけで被害者を代理する権限や、検索事業者等に削除を強制する権利を与えるものではありません。投稿者には被害を是正すべき義務が問題となることもあり、「義務なく他人のために」事務を行うという要件自体の検討も必要です。被害者の意思を確認せず、被害者名義で申請をしたり、和解したりしないでください。
以上は、現行法の各制度を踏まえた法的検討の整理です。特定の投稿サービスについて、投稿者本人に一律の削除請求権を認める最高裁判断を示すものではありません。参照:民法、消費者契約法。
6 情報流通プラットフォーム対処法との関係
(1)投稿者の削除同意と、事業者の責任制限
2025年4月1日から、旧プロバイダ責任制限法は「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(情報流通プラットフォーム対処法)に改められ、大規模事業者の対応に関する規律等が加わっています。
同法3条2項は、一定の場合に、情報を削除した事業者の発信者に対する損害賠償責任を制限する規定です。その一つとして、被害者からの申出を受け、事業者が発信者に削除への同意を照会し、発信者が照会を受けてから7日を経過しても不同意を申し出なかった場合が定められています。
これは事業者の責任制限の要件であり、「投稿者から依頼すれば7日後に必ず消える」という規定ではありません。自分の投稿を消したい場合には、沈黙に任せず、対象と削除への同意を明確に伝えることが考えられます。
(2)大規模事業者の「原則7日以内の通知」は別の制度です
指定された大規模事業者には、被害者からの申出方法の公表(22条)、必要な調査(23条)、措置の判断結果の通知(25条)、削除基準の公表(26条)等が求められます。所定の申出への判断結果は、原則として省令で定める7日以内に通知します。発信者への意見聴取等が必要な場合には、期間内の事情の通知を経て、判断後に遅滞なく結果を通知する例外もあります。
この通知義務は、権利を侵害されたとする者による、所定の方法に従った申出を対象とするものです。他人を中傷した投稿者が「自分の投稿を消したい」と申し出る場合に、そのまま同じ法定の通知義務が生じると考えることはできません。また、7日以内の削除完了を保証する制度でもありません。
同法27条には、削除措置をした際の発信者への理由等の通知に関する規定もあります。削除の同意、削除結果の通知、発信者情報の開示はそれぞれ異なる手続として確認してください。
7 被害者への謝罪・示談・費用負担
(1)削除を進めながら、被害者の意向を尊重する
謝罪では、問題となった投稿を正確に特定し、どのような点を反省しているか、削除の実施状況と再発防止策を具体的に伝えることが大切です。ただし、被害者に返答、面会、許し、示談を求め続けることは、さらに負担を与えるおそれがあります。連絡を拒まれている場合や相手方に代理人がいる場合は、弁護士を通じた対応を検討してください。
公開の謝罪文は、それ自体が被害者の氏名や過去の出来事を再び広める場合があります。掲載の要否、掲載先、文面、期間、実名の扱いは、被害者の意向も確認して決めます。「削除してほしければ示談してほしい」という条件を付けて交渉するのではなく、可能な削除・拡散防止は先に進めます。
(2)示談書では、実行できる内容を具体的に決める
| 項目 | 確認する内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 対象となる投稿 | URL、投稿番号、日時、本文、画像、アカウント | 対象が曖昧にならないよう、一覧や別紙を用います。 |
| 削除・訂正・謝罪 | 実施する人、方法、期限、文面、報告方法 | 自分で削除できる投稿と、第三者への申請が必要な転載を区別します。 |
| 金銭の支払 | 解決金等の額、支払期限、振込先、分割の条件 | 実際に支払える計画を確認し、費用の範囲を明確にします。 |
| 追加の削除費用 | 対象サイト、必要な手続、費用の確認・精算方法 | 際限のない「今後の一切の費用」ではなく、必要性・相当性、事前協議、上限等を検討します。 |
| 再投稿の防止 | 自らの再投稿・拡散をしないこと、再発見時の協力 | 他人の独立した行為まで完全に止められると約束しないようにします。 |
| 清算の範囲 | どの投稿・当事者・請求について解決するか | 未発見の投稿や新たな行為、後で判明する被害をどう扱うかも検討します。 |
| 連絡・秘密保持 | 今後の窓口、必要な報告、情報の取扱い | 弁護士への相談、裁判所・捜査機関への適法な申告等を不当に妨げない内容にします。 |
第三者のサイトが削除に応じるかは、投稿者が単独で決められません。「全ての転載を必ず消す」という結果の保証と、対象を調査して申請・報告に協力する義務とは違います。被害回復に必要な対応を、実現可能性を踏まえて具体化することが重要です。
(3)削除費用・弁護士費用が当然に全額負担となるわけではありません
被害者が支出した費用について、裁判上の賠償が認められるか、どの範囲まで認められるかは、権利侵害との因果関係や必要性・相当性等によります。示談では当事者が別途合意することもできますが、請求書の内訳を確認し、慰謝料、調査費用、削除費用等を区別して検討します。削除できたことだけで、既に生じた損害がなくなるわけでもありません。
(4)示談と刑事手続は区別する
名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪です(刑法232条)。告訴がなければ公訴を提起できませんが、捜査が一切行われないという意味ではありません。告訴期間は、原則として犯人を知った日から6か月です(刑事訴訟法235条)。
告訴の取消しは、公訴の提起前に限られ、一度取り消すと同じ事件について再び告訴できません(同法237条)。示談書に「告訴を取り消す」と記載することと、捜査機関に実際に取消しの意思表示をすることは区別して確認します。被害者の意思に基づく手続であり、投稿者が一方的に行えるものではありません。
信用毀損・業務妨害等の親告罪ではない犯罪では、示談しても当然に捜査や処罰がなくなるわけではありません。被害回復・謝罪・示談等の経緯は処分判断の事情になり得ますが、不起訴や特定の刑を保証するものではありません。
8 転載や検索結果に残った場合
(1)元投稿・転載先・検索結果を分けて確認する
元の投稿を消しても、まとめサイト、引用投稿、スクリーンショット、検索結果の説明文などに情報が残る場合があります。残ったURLを一覧にし、自分が管理する投稿は削除し、第三者が管理するものには個別に申出を行います。元投稿の削除確認画面や削除を認める通知は、申請の参考資料になります。
元ページが削除・変更済みなのに古い表示が残る場合には、検索事業者の情報更新の窓口を利用できることがあります。例えばGoogleの「古いコンテンツの更新ツール」は、元の内容が削除又は変更された場合の検索表示の更新を求めるものです。元ページ自体の削除を行う機能ではありません。
Google:古いコンテンツの更新ツール / 利用方法の公式案内
(2)被害者の削除請求権を、投稿者が当然に行使できるわけではありません
検索結果や第三者の投稿に対する人格権に基づく削除請求は、原則として、その権利を侵害された本人の請求です。元の投稿者が後悔していることや賠償負担を避けたいことだけで、被害者と同じ権利が生じるわけではありません。被害者が削除を望む場合には、その意向を確認し、被害者本人又はその代理人による申請と協力する方法を検討します。
| 判例 | 判断の枠組み | 本件への注意点 |
|---|---|---|
| 平成29年1月31日決定(PDF) | 検索結果の提供について、プライバシーに属する事実を公表されない法的利益と、検索結果を提供する理由に関する諸事情を比較衡量し、前者が明らかに優越する場合に削除を求め得るとしました。 | 情報の性質、伝達範囲、具体的被害、本人の社会的地位、記事の目的・意義、現在の社会的状況等を検討します。この事件では削除を認めませんでした。 |
| 令和4年6月24日判決(PDF) | Twitter上の逮捕事実を伝える投稿について、上記の法的利益が投稿を一般の閲覧に供し続ける理由に優越する場合に削除を求め得るとしました。 | 同事件では「明らかに優越」という基準を採らず、削除を認めました。約8年の経過、本人の立場、元の報道記事の削除等の具体的事情を検討しています。 |
いずれも、投稿の対象となった本人のプライバシーについての判断です。元投稿者に無条件の削除請求権を与えた判例ではありません。検索サービスとSNS投稿の性質の違いにも注意が必要です。
9 発信者情報開示の意見照会が届いた場合
サイト運営者や接続プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いた場合は、対象投稿、開示を求められている情報、回答期限、添付資料、手続の段階を確認します。削除の照会と、氏名・住所等の開示についての照会は別です。
情報流通プラットフォーム対処法6条1項は、原則として発信者の意見を聴くことを定めています。開示に同意しない場合の理由も含みます。ただし、連絡できない場合等の例外があります。開示の可否は同法5条等の要件によって判断されるため、「不同意」と回答するだけで開示を止められるわけではありません。
- 投稿との関係を正確に確認する:自分の投稿か、引用やなりすましではないか、示された本文に欠落がないかを確認します。
- 事実と法的評価を分けて整理する:対象者を特定できるか、何を述べた投稿か、真実性や公益性を裏付ける資料があるか等を検討します。
- 削除・謝罪の経緯を整理する:既に削除したことは説明できますが、それだけで過去の権利侵害や開示の必要性がなくなるとは限りません。
- 期限内の対応を相談する:書式の案内に従い、必要なら期限について窓口に確認します。全事件共通の回答期限があると決め付けないでください。
通信契約の名義人と実際に投稿した人が異なる場合もあります。誰がどの端末・アカウントを利用したかを確認し、事実に反する説明は避けてください。被害者への連絡を急いで行う前に、相手の意向、代理人の有無、交渉の方法を弁護士に相談することが適切な場合があります。
開示命令手続や訴訟が進んでいる場合は、書類一式を確認する必要があります。開示後の賠償交渉、刑事上の対応も見据えて検討します。
10 弁護士への依頼と裁判手続
運営者が削除に応じない場合でも、直ちに裁判で強制できるとは限りません。投稿者自身の契約上の権利等を根拠とするのか、被害者本人が人格権に基づいて請求するのかを区別し、請求する人、相手方、対象となる投稿、権利の根拠を確認します。自分が投稿したという事実だけでは、被害者の人格権を根拠に自分名義で削除を命じる仮処分を得られるわけではありません。
削除を求める仮処分では、保全すべき権利と保全の必要性の疎明が必要です(民事保全法13条)。仮の地位を定める仮処分では、著しい損害又は急迫の危険を避ける必要などが問題となり(23条2項)、原則として相手方が立ち会える審尋等も必要です(同条4項)。担保を求められることもあり、申立ての可否、期間、費用を事前に確認します。
海外事業者の場合は、実際の運営主体、日本の裁判所の国際裁判管轄、送達先、適用法、履行可能性等も検討します。海外サーバーという理由だけで結論は決まりません。
弁護士には、①投稿の記録、②利用規約、③削除申請と回答、④被害者との連絡、⑤意見照会書や請求書、⑥希望する解決をまとめて相談すると、対応を具体化しやすくなります。被害者と投稿者では利益が対立するため、同じ弁護士が双方を代理できるとは限りません。相談受付時にも相手方を確認します。
11 よくある質問
Q1 削除すれば、もう損害賠償や刑事責任は問われませんか。
削除は被害の拡大を防ぐために重要ですが、既に生じた権利侵害の責任を自動的に消すものではありません。被害者の請求、発信者情報開示、刑事手続が続く場合があります。削除の実施状況は記録し、謝罪・被害回復の対応と併せて相談してください。
Q2 被害者が連絡に応じないと、削除を進められませんか。
自分の投稿の削除や投稿者本人としての任意の削除依頼は、被害者が示談に応じるまで待つ必要はありません。一方、被害者本人にしか行えない権利行使や、本人確認が必要な申請を無断で代行することは避けます。返答を求めて繰り返し接触せず、必要なら弁護士を通じた対応を検討します。
Q3 前科が消えた人について書くと、必ず違法になりますか。
刑の言渡しの効力が失われることと、過去の出来事について一切の公表が禁止されることは同じではありません。刑法27条の執行猶予期間経過等の効果や34条の2の刑の消滅は、各条の要件を満たす場合の刑の法的効果に関する制度です。インターネット上の公表の適法性は、時間の経過、本人の立場、社会的意義、被害等を踏まえて判断します。逆に、刑の効力が残っていることだけで、自由な拡散が許されるわけでもありません。
Q4 他の人の投稿をコピーしただけでも責任がありますか。
転載・引用でも、内容、方法、対象者の特定可能性、読者への伝わり方等によって責任を負う場合があります。元の投稿があることや多数の人が同じ内容を書いていることは、当然の免責理由ではありません。自分の投稿部分について削除・被害回復を検討します。
Q5 自分が書いた文章なら、著作権を理由に必ず消せますか。
著作物に当たるか、利用規約でどのような利用を許諾したか、第三者の利用が許諾・引用等の範囲にあるかを検討する必要があります。著作権があることから、公開した文章の利用をいつでも無条件に撤回できるわけではありません。削除を急ぐ場合は、まずサービスの削除機能や規約に基づく窓口を確認します。著作権法も併せて確認してください。
Q6 自分の氏名や住所もさらされている場合はどうしますか。
自分に関する別の権利侵害が生じている場合は、その内容について自分自身の権利に基づく削除請求を検討できます。自分が先に問題の投稿をしたことと、新たな晒し行為の適法性は別に判断します。報復の投稿をせず、記録を残して相談してください。
12 新銀座法律事務所の無料法律相談
書き込んだ記事の削除、謝罪・示談、発信者情報開示への対応でお困りの方へ
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受付時間:平日9時~21時/土日祝日9時~18時
相談時には、投稿のURLと本文、削除申請の経過、相手方からの請求、意見照会書、回答期限を整理してください。「自分で消せるか」「運営者が拒否しているか」「相手方に代理人がいるか」もお伝えいただくと、対応方針を検討しやすくなります。
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13 関連QA事例集・QA検索・ChatGPT検索
(1)関連する法律相談QA事例集
各事例は公表・更新時点の解説です。旧法の名称・条番号、古い手続や法定刑、個別事例で示された対応方針を、そのまま現在の事件に当てはめないようにしてください。特にNo.1270の投稿契約等の説明は本記事5項の整理と、No.1573の意見照会への対応は本記事9項と併せてご確認ください。
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(2)QA事例集をキーワードで検索
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入力内容はリンクを開くとChatGPTへ渡されます。AIの回答には誤りが含まれる場合があり、弁護士の法律相談に代わるものではありません。引用元と更新日を確認してください。
参照法令・判例・公的資料
2026年10月15日を基準に確認した主な参照先です。過去の行為については、行為時の法令、施行日・経過措置も確認する必要があります。
- 民法(e-Gov):90条、132条、423条、548条の2、620条、651条・652条・656条、697条、709条・710条。
- 消費者契約法(e-Gov):10条。
- 刑法(e-Gov):27条、34条の2、230条・230条の2、231条・232条・233条。
- 刑事訴訟法(e-Gov):235条、237条、241条、248条。
- 情報流通プラットフォーム対処法(e-Gov):3条、5条・6条、22条~27条等。
- 民事保全法(e-Gov):13条・23条。
- 最高裁第一小法廷平成22年3月15日決定(裁判所PDF):平成21年(あ)第360号。
- 最高裁第三小法廷平成29年1月31日決定(裁判所PDF):平成28年(許)第45号。
- 最高裁第二小法廷令和4年6月24日判決(裁判所PDF):令和2年(受)第1442号。
- 総務省・情報流通プラットフォーム対処法26条ガイドライン(2026年8月改定PDF) / 改定の公表ページ。
- 奈良県:情報流通プラットフォーム対処法について。
- 大阪府:発信する前に / 大阪府の相談事業報告資料(PDF):投稿者からの削除相談等の紹介。
- 警察庁:インターネット上の誹謗中傷等への対応。
- 東京地方裁判所:発信者情報開示命令の案内・書式。
本記事は一般的な制度の解説です。削除の可否、責任の有無、示談内容、適切な手続は、投稿の内容や被害、相手方、経過によって異なります。具体的な資料を用意して弁護士にご相談ください。