少年事件について2(最終更新平成24年1月20日)

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少年法上の手続について、事例説明したいと思います。

事例:
先日,息子が店でCDを万引きした疑いがあると警察から連絡を受けました。息子は,現在,13歳ですが,最近家にも帰ってこず,友人の家を転々としているようです。息子の携帯電話に連絡をし,問いただしたところ,万引きなどやってないの一点張りです。警察からは事情を聞きたいから,息子と一緒に警察署へ来てほしいと言われており,なんとか息子を説得して警察署へ事情説明に行くつもりなのですが,今後どのような手続きになるのでしょうか。息子は以前何度も警察のお世話になるなどしているので,少年院などに行くことになってしまうのではないかと心配です。

回答:
息子さんは,少年法上の触法少年に該当するものと思われます(少年法3条2号)。警察で事情を話して,息子さんが万引きをしたという事実があったと警察が判断した場合,息子さんは,児童相談所へ行くことになるのが一般的です(少年法6条の2,児童福祉法25条,少年法6条の6)。これに対し,証拠なども少なく,息子さんが万引きをしたということが明らかでない場合には,そこで手続きが終わるのが一般的です。もっとも,息子さんの日常生活に一定の不良行為があり,保護の必要があると判断された場合には,虞犯少年としての手続が開始される場合がありますので注意が必要です。
そして,警察からの送致先である児童相談所では,福祉的な観点から,息子さんに対して色々な質問に答えることになります。仮に児童相談所が家庭裁判所における審判を必要と判断した場合には,その後,家庭裁判所へ行くことになります(児童福祉法27条1項4号)。他方,福祉的措置(具体的には,訓戒・誓約書の提出,児童福祉司等の指導,児童福祉施設入所措置,里親委託など)で足りると判断した場合にはそのような措置を受けることになります(児童福祉法27条1項1号ないし3号)。
家庭裁判所においては,鑑別所という少年の資質や性格の鑑別及び行動観察などを行う施設に入所する手続きがとられる可能性があります(観護措置)。入所期間についてですが,一般的には4週間程度入所するケースが多いように思われます(少年法17条)。 
家庭裁判所は,鑑別所での鑑別結果や調査官などの作成した資料をもとに審判を行うか否かを決定します(少年法19条1項,同法21条)。
審判が行われた場合,裁判官が,審判の結果を踏まえ,不処分,保護観察,児童自立支援施設又は児童養護施設送致,知事又は児童相談所長送致,試験観察のいずれかを選択することになります(少年法24条,同法25条)。
少年院送致という手続きは,保護観察の一種ということになります。

用語の意味や補足説明については,解説の項をご参照ください。

ただし,本回答及び解説は一般的な事件における手続きの概略についての説明となりますので,手続きの詳細などにつきましては,当事務所又はお近くの法律事務所へご相談されることをお勧めいたします。

解説:
1 用語説明
(1)少年法における少年とは
少年法における少年とは,二十歳に満たない者をいい(少年法2条1項),男女を問いません。
(2)虞犯少年とは
虞犯少年とは,少年法3条1項3号イないしニに該当する事由があり, かつ,その性格または環境に照らして,将来,罪を犯し,または刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年をいいます(少年法3条1項3号参照)。
(3)触法少年とは
触法少年とは,十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年を いいます(少年法3条2号)。
(4)犯罪少年とは
犯罪少年とは,罪を犯した少年をいいます(少年法3条1号)。
(5)鑑別所とは
   鑑別所とは,少年の科学的な調査と診断を行うことを目的とした法務省管轄の専門施設をいいます(少年院法16条)。
(6)保護観察とは
   保護観察とは,少年を家庭や職場に置いたまま,保護観察官や保護司が指導監督と補導援護を加え,少年の改善更生を図るものです(少年法24条1項1号)。
(7)試験観察とは
   試験観察とは,裁判官が調査の結果又は審判を行った結果,少年に対していかなる処分をするか直ちに決めることが困難な場合に,おおよそ3か月から4か月間位の期間,少年を家庭裁判所調査官の観察に付する制度をいいます(少年法25条)。
   試験観察には,在宅試験観察と補導委託の2種類があります。
(8)知事又は児童相談所長送致とは
   知事又は児童相談所長送致とは,児童福祉法による措置に委ねるために,児童福祉期間に事件を送致する処分をいいます(少年法18条)
(9)児童自立支援施設とは
   児童自立支援施設とは,不良行為をなす児童などに必要な指導を行い,その自立を支援することを目的とする施設をいいます(児童福祉法44条)。
(10)児童養護施設とは
   児童養護施設とは,環境上養護を要する児童を養護し,併せてその自立を支援することを目的とする施設をいいます(児童福祉法41条)。
(11)少年院とは
少年院とは,生活指導,教科教育,職業補導,情操教育,医療措置等を施すことにより,非行性の矯正を行うことを目的とする男女別の収容施設をいいます(少年院法1条)。
2 虞犯少年の手続の概略
  「参考資料1」をご参照ください。
3 触法少年の手続の概略
  「参考資料2」をご参照ください。
4 犯罪少年の手続の概略
  「参考資料3」をご参照ください。

■参照条文
少年法
(少年、成人、保護者)
第2条 この法律で「少年」とは、20歳に満たない者をいい、「成人」とは、満20歳以上の者をいう。
2項 この法律で「保護者」とは、少年に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者をいう。
(審判に付すべき少年)
第3条 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。
1.罪を犯した少年
2.14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
3.次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
ロ 正当の理由がなく家屋に寄り附かないこと。
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
2項 家庭裁判所は、前項第2号に掲げる少年及び同項第3号に掲げる少年で14歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。
(警察官等の調査)
第6条の2 警察官は、客観的な事情から合理的に判断して、第3条第1項第2号に掲げる少年であると疑うに足りる相当の理由のある者を発見した場合において、必要があるときは、事件について調査をすることができる。
2項 前項の調査は、少年の情操の保護に配慮しつつ、事案の真相を明らかにし、もつて少年の健全な育成のための措置に資することを目的として行うものとする。
3項 警察官は、国家公安委員会規則の定めるところにより、少年の心理その他の特性に関する専門的知識を有する警察職員(警察官を除く。)に調査(第6条の5第1項の処分を除く。)をさせることができる。
(警察官の送致等)
第6条の6 警察官は、調査の結果、次の各号のいずれかに該当するときは、当該調査に係る書類とともに事件を児童相談所長に送致しなければならない。
1.第3条第1項第2号に掲げる少年に係る事件について、その少年の行為が第22条の2第1項各号に掲げる罪に係る刑罰法令に触れるものであると思料するとき。
2.前号に掲げるもののほか、第3条第1項第2号に掲げる少年に係る事件について、家庭裁判所の審判に付することが適当であると思料するとき。
2項 警察官は、前項の規定により児童相談所長に送致した事件について、児童福祉法第27条第1項第4号の措置がとられた場合において、証拠物があるときは、これを家庭裁判所に送付しなければならない。
3項 警察官は、第1項の規定により事件を送致した場合を除き、児童福祉法第25条の規定により調査に係る少年を児童相談所に通告するときは、国家公安委員会規則の定めるところにより、児童相談所に対し、同法による措置をとるについて参考となる当該調査の概要及び結果を通知するものとする。
(観護の措置)
第17条 家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、次に掲げる観護の措置をとることができる。
1.家庭裁判所調査官の観護に付すること。
2.少年鑑別所に送致すること。
2項 同行された少年については、観護の措置は、遅くとも、到着のときから24時間以内に、これを行わなければならない。検察官又は司法警察員から勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも、同様である。
3項 第1項第2号の措置においては、少年鑑別所に収容する期間は、2週間を超えることができない。ただし、特に継続の必要があるときは、決定をもつて、これを更新することができる。
4項 前項ただし書の規定による更新は、1回を超えて行うことができない。ただし、第3条第1項第1号に掲げる少年に係る死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件でその非行事実(犯行の動機、態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)の認定に関し証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行つたものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、その更新は、更に2回を限度として、行うことができる。
5項 第3項ただし書の規定にかかわらず、検察官から再び送致を受けた事件が先に第1項第2号の措置がとられ、又は勾留状が発せられた事件であるときは、収容の期間は、これを更新することができない。
6項 裁判官が第43条第1項の請求により、第1項第1号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第1項第1号の措置とみなす。
7項 裁判官が第43条第1項の請求により第1項第2号の措置をとつた場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを第1項第2号の措置とみなす。この場合には、第3項の期間は、家庭裁判所が事件の送致を受けた日から、これを起算する。
8項 観護の措置は、決定をもつて、これを取り消し、又は変更することができる。
9項 第1項第2号の措置については、収容の期間は、通じて8週間を超えることができない。ただし、その収容の期間が通じて4週間を超えることとなる決定を行うときは、第4項ただし書に規定する事由がなければならない。
10項 裁判長は、急速を要する場合には、第1項及び第8項の処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
(児童福祉法の措置)
第18条 家庭裁判所は、調査の結果、児童福祉法の規定による措置を相当と認めるときは、決定をもつて、事件を権限を有する都道府県知事又は児童相談所に送致しなければならない。
2項 第6条の7第2項の規定により、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けた少年については、決定をもつて、期限を付して、これに対してとるべき保護の方法その他の措置を指示して、事件を権限を有する都道府県知事又は児童相談所長に送致することができる。
(審判を開始しない旨の決定)
第19条 家庭裁判所は、調査の結果、審判に付することができず、又は審判に付するのが相当でないと認めるときは、審判を開始しない旨の決定をしなければならない。
2項 家庭裁判所は、調査の結果、本人が20歳以上であることが判明したときは、前項の規定にかかわらず、決定をもつて、事件を管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
(審判開始の決定)
第21条 家庭裁判所は、調査の結果、審判を開始するのが相当であると認めるときは、その旨の決定をしなければならない。
(保護処分の決定)
第24条 家庭裁判所は、前条の場合を除いて、審判を開始した事件につき、決定をもつて、次に掲げる保護処分をしなければならない。ただし、決定の時に14歳に満たない少年に係る事件については、特に必要と認める場合に限り、第3号の保護処分をすることができる。
1.保護観察所の保護観察に付すること。
2.児童自立支援施設又は児童養護施設に送致すること。
3.少年院に送致すること。
2項 前項第1号及び第3号の保護処分においては、保護観察所の長をして、家庭その他の環境調整に関する措置を行わせることができる。
(家庭裁判所調査官の観察)
第25条 家庭裁判所は、第24条第1項の保護処分を決定するため必要があると認めるときは、決定をもつて、相当の期間、家庭裁判所調査官の観察に付することができる。
2項 家庭裁判所は、前項の観察とあわせて、次に掲げる措置をとることができる。
1.遵守事項を定めてその履行を命ずること。
2.条件を附けて保護者に引き渡すこと。
3.適当な施設、団体又は個人に補導を委託すること。
少年院法
第1条  少年院は、家庭裁判所から保護処分として送致された者及び少年法 (昭和二十三年法律第百六十八号)第五十六条第三項 の規定により少年院において刑の執行を受ける者(以下「少年院収容受刑者」という。)を収容し、これに矯正教育を授ける施設とする。
第16条  少年鑑別所は、少年法第十七条第一項第二号 の規定により送致された者を収容するとともに、家庭裁判所の行う少年に対する調査及び審判並びに保護処分及び懲役又は禁錮の言渡しを受けた十六歳未満の少年に対する刑の執行に資するため、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識に基づいて、少年の資質の鑑別を行う施設とする。
児童福祉法
第25条  要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。ただし、罪を犯した満十四歳以上の児童については、この限りでない。この場合においては、これを家庭裁判所に通告しなければならない。
第27条  都道府県は、前条第一項第一号の規定による報告又は少年法第十八条第二項 の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。
一  児童又はその保護者に訓戒を加え、又は誓約書を提出させること。
二  児童又はその保護者を児童福祉司、知的障害者福祉司、社会福祉主事、児童委員若しくは当該都道府県の設置する児童家庭支援センター若しくは当該都道府県が行う相談支援事業に係る職員に指導させ、又は当該都道府県以外の者の設置する児童家庭支援センター、当該都道府県以外の相談支援事業を行う者若しくは前条第一項第二号に規定する厚生労働省令で定める者に指導を委託すること。
三  児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、知的障害児施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。
四  家庭裁判所の審判に付することが適当であると認める児童は、これを家庭裁判所に送致すること。
2項 都道府県は、第四十三条の三又は第四十三条の四に規定する児童については、前項第三号の措置に代えて、指定医療機関に対し、これらの児童を入院させて肢体不自由児施設又は重症心身障害児施設におけると同様な治療等を行うことを委託することができる。
3項 都道府県知事は、少年法第十八条第二項 の規定による送致のあつた児童につき、第一項の措置を採るにあたつては、家庭裁判所の決定による指示に従わなければならない。
4項 第一項第三号又は第二項の措置は、児童に親権を行う者(第四十七条第一項の規定により親権を行う児童福祉施設の長を除く。以下同じ。)又は未成年後見人があるときは、前項の場合を除いては、その親権を行う者又は未成年後見人の意に反して、これを採ることができない。
5項 都道府県知事は、第一項第二号若しくは第三号若しくは第二項の措置を解除し、停止し、又は他の措置に変更する場合には、児童相談所長の意見を聴かなければならない。
6項 都道府県知事は、政令の定めるところにより、第一項第一号から第三号までの措置(第三項の規定により採るもの及び第二十八条第一項第一号又は第二号ただし書の規定により採るものを除く。)若しくは第二項の措置を採る場合又は第一項第二号若しくは第三号若しくは第二項の措置を解除し、停止し、若しくは他の措置に変更する場合には、都道府県児童福祉審議会の意見を聴かなければならない。
第41条  児童養護施設は、保護者のない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、乳児を含む。以下この条において同じ。)、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設とする。
第44条  児童自立支援施設は、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。

■参考文献
『少年事件ビギナーズ(季刊刑事弁護増刊)』 桑山亜也・中村聡編(現代人文社 2011.8.30)
『少年事件マニュアル』 子どもの人権と少年法に関する特別委員会(東京弁護士会 2010.4.1)
『少年審判手続きについて』 司法研修所 2009.9


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