交通事故における被害者側の過失について(最終改訂令和2年4月28日)

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例えば、内縁の夫が運転する車で、交通事故に巻き込まれた場合、運転者であった内縁の夫の過失も加害者に対する賠償請求額の算定の際に考慮されてしまうのでしょうか。保険会社が提示する和解案では「被害者側の過失」として考慮されていることがありますが、これは妥当なのか。自分が運転していないのに、相手に対する請求額が減少してしまう「被害者側の過失」とはどういうものかという問題です。

1、「被害者側の過失」とは、「被害者と身分ないしは生活関係上一体をなすとみとめられるような関係にあるものの過失」と解釈されています(最高裁判例42年6月27日)。身分ないし生活関係上一体をなすとは、直接の加害者との公平上、経済的にも被害者と一体をなす実態が必要でしょう。ですから同乗運転者が単なる友人であれば適用がありません。過失相殺にあたり、被害者自身の過失のみならず「被害者側の過失」をも認めるのが判例・通説です。

2、そもそも、過失相殺とは、被害者に過失があった場合、損害賠償額を定めるにつき、損害の公平な分担の見地から、被害者の過失を考慮して賠償額を減額する制度(民法722条2項)です。そのため、本来過失のない被害者と一定の関係を有する同乗者(内縁の夫)の過失が考慮され被害者の請求額が減額される根拠が問題になります。

3、それは、加害者に対する関係では、被害者側を一体として考え、被害者側に過失があれば過失相殺を認めるのが722条2項の公平の観念上妥当であり、また、その第三者の過失が加害者の過失と共に損害発生に寄与している場合において第三者の過失を考慮することについては、被害者との関係で全損害額を負担した加害者が第三者に対してその求償をするよりも、被害者と第三者との間でその第三者の負担部分を、いわば生活上一体の関係にあるもの同士の内部関係として処理する方が公平かつ合理的だからです。例えば、加害者が、一旦被害者に損害を全額支払いしかる後に、内縁夫に求償し、内縁の夫が妻の受け取った賠償額から支払うよりは、最初から内縁の夫の責任分を控除するということです。要するに、「被害者側の過失」とは、損害の公平な分担という見地から認められる紛争の一回的解決のための法技術です。

4、この「被害者側」の者とはどのような者をいうのかについて、一般的に、判例は「被害者と身分上ないし生活関係上一体をなすと認められるような関係にある者」としています(最判昭和42年6月27日)。家計を同一にする夫婦・親子間の関係が第一義的に想定されます。とすると、本件のような内縁関係の場合は、上記判例の示す「被害者と身分上ないし生活関係上一体をなすと認められるような関係にある者」といえるのかどうかが問題となります。

5、この点、判例は、「内縁の夫婦は、婚姻の届出はしていないが、男女が相協力して夫婦としての共同生活を営んでいるものであり、身分上、生活関係上一体を成す関係にある」として、内縁の妻が加害者に対して損害賠償を請求する場合において、その賠償額を定めるに当たって、第三者である内縁の夫の過失を「被害者側の過失」として考慮しています(最高裁判決平成19年4月24日)。

6、722条の制度趣旨から、内縁の夫の過失が「被害者側の過失」として考慮されることはやむを得ないでしょう。

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