運転免許取り消し回避(最終更新平成25年7月31日)

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3年以内に複数の交通違反を犯してしまい、交通違反の累積点数が免許取り消しの基準を超えてしまった場合でも、運転免許の取り消しを回避できる場合があります。

1 運転免許の点数制度,停止・取消について

運転免許の点数制度(算定方法)について
  点数制度とは,自動車等の運転者の交通違反や交通事故に一定の点数を付けて,その過去3年間の累積点数等に応じて免許の停止や取消等の処分を行う制度です。その目的は,交通違反等を繰り返す者は事故を起こす危険性が定型的に高いことから,その回数・態様が一定限度を超えた場合には,その者の運転行為を禁止することにより道路交通の安全を確保するところにあります。

点数の計算方法については,警察庁HPをご参照ください。
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/menkyo/sub_07.htm

@ 基礎点数
  基礎点数とは,交通違反の態様に応じてつけられる基礎的な点数のことをいいます。例えば,速度超過,信号無視,携帯電話使用等の交通違反の態様に応じて点数が加算されます。
  基礎点数について,同時に2以上の交通違反行為に該当する場合には,最も高い点数によって計算されます。

A 付加点数
  付加点数とは,交通違反を起こし,さらに交通事故を起こしてしまった場合に加算される点数のことをいいます。

2 運転免許取り消しの回避を申し立てる方法

交通違反の累積点数が運転免許の取消しの基準に達した場合には,公安委員会等における意見の聴取という手続が取られます(道路交通法第104条第1項参照)。免許取り消し処分の回避を求めるためには,意見の聴取手続において自己に有利な事情についての主張をして,処分の軽減を求めることが可能です。処分の軽減の基準については,警察庁の通達によって,ある程度の指針が設けられています。

ア 「運転免許の効力の停止等の処分量定基準」平成21年4月30日付け警察庁丙運発第11号

 運転免許取消処分の軽減については,次の様に規定されています。
http://www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/menkyo/menkyo20090430-01.pdf

「1 取消し等の処分の軽減
一般違反行為をしたことを理由として処分を行おうとする場合に累積点数が
令別表第3の1の表の第1欄に掲げる区分に応じ同表の第2欄から第6欄まで
に掲げる点数に達し、若しくは特定違反行為をしたことを理由として処分を行
おうとする場合の累積点数が令別表第3の2の表の第1欄に掲げる区分に応じ
同表第2欄から第9欄までに掲げる点数に達し、又は令別表第4第1号から第
3号までに掲げる行為をし、若しくは令別表第5第1号から第4号までに掲げ
る行為をしたことにより、免許の取消し、免許の拒否又は1年以上10年を超え
ない範囲内の期間の自動車等の運転の禁止の処分基準に該当することとなった
者において、その者の運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事
情があるときは、それぞれ次の区分により処分を軽減することができるものと
する。
(1) 免許の取消し(免許を与えた後における免許の取消しを除く。)の処分基
準に該当する者
一般違反行為をしたことを理由として処分を行う場合で、令第38条第6項
の規定により、免許を受けることができない期間(以下「欠格期間」という。)
が5年、4年、3年又は2年に該当するときは、当該期間から1年を減じた
期間に軽減し、当該期間が1年に該当するときは、180日の免許の効力の停止
に軽減する。また、特定違反行為をしたことを理由として処分を行う場合で、
令第38条第7項の欠格期間から1年を減じた期間に軽減する。
(2) 免許の拒否又は免許を与えた後における免許の取消し(以下「免許の拒否
等」という。)の処分基準に該当する者(他免許等既得者を除く。)
令第33条の4第1項第2号若しくは第3号又は同条第2項第1号若しくは
第2号の規定により、欠格期間が、当該処分の理由となった行為をした日(令
第33条の4第3項において準用する令第33条の2第4項各号に掲げる者につ
いては、それぞれ当該各号に定める日をいう。以下同じ。)から起算して、
10年、9年、8年、7年、6年、5年、4年、3年又は2年を経過するまで
の期間に該当するときは、それぞれ当該期間から1年を減じた欠格期間に軽
減し、1年を経過するまでの期間に該当するときは処分の理由となった行為
をした日から180日を経過するまでの期間の免許の保留又は免許を与えた後に
おける免許の効力の停止に軽減する。
なお、これらの期間計算の結果、1年を減じた後の欠格期間又は免許の保
留若しくは免許を与えた後における免許の効力の停止に係る期間が既に経過
している場合は、免許の拒否等及び欠格期間の指定又は免許の保留若しくは
免許を与えた後における免許の効力の停止をしないものとする。」

※一般違反行為とは,特定違反行為以外の違反行為を指します。特定違反行為とは,故意により自動車の運転で人を死傷または建造物破壊するもの,危険運転致死罪に該当し得るものなど,危険性が重大とされる一定の類型で,運転免許取消の欠格期間は10年となっています。

イ 「運転免許の効力の停止等の処分量定の特例及び軽減の基準について」(警察庁丁運発第44号)

 また,具体的に,運転者としての危険性がより低い特段の事情があるとして,処分の軽減ができるかについては,運転免許の停止等についての警視庁の処分に関する指針が参考になるものと考えられます(「運転免許の効力の停止等の処分量定の特例及び軽減の基準について」http://www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/menkyo/menkyo20090430-11.pdfの2頁以下参照)。

 この基準は,運転免許の停止処分に関するものですが,アと同様に「運転者としての危険性がより低いと評価すべき事情」を考慮するものであり,運転免許取消回避の判断においても参考になる基準と考えられます。

 「処分基準に該当することとなった者において次の各号に掲げる事情があり,かつ,処分を軽減することがその者の運転者としての危険性の改善に効果があると認められるときは,30日間の処分を軽減することができるものとする。

@ 交通事故の被害の程度又は不注意の程度のいずれか一方が軽微であり,かつ,その他にも危険性がより低いと評価すべき事情がある場合,
A 違反行為等の動機が,災害,急患往診,傷病人搬送その他やむを得ない事情によるものであり,かつ,危険性がより低いと認める場合,
B 違反行為等が他からの強制によるものであるなどやむを得ない事情によるものであり,危険性がより低いと認める場合,
C 被害者の年齢,健康状態等に特別な事情があるとき等同一原因の他の事故に比べて被害結果を重大ならしめる他の事由が介在した場合であって,その他にも危険性がより低いと評価すべき事情がある場合,
D 被害者が被処分者の家族又は親族であって,その他にも危険性がより低いと評価すべき事情がある場合,
E 前各号に掲げる場合のほか,危険性がより低いと評価すべき特段の事情があり,明らかに改善の可能性が期待できる場合には停止等の処分が軽減できる」
とされています。

ウ「点数制度による行政処分事務に関する事務処理要領について」 警察庁丙運発第57号(平成11年11月1日)
http://www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/menkyo/menkyo20020531-2.pdf

「処分量定上の留意事項
処分基準点数に達することとなった違反行為が、交通事故事案であるとき
は、次の点に留意して処分量定を行うものとする。
(1) 当該事故登録ののちにおいて点数評価に関する事項に変更を要すべき
新たな事情が生じていないかを調べ、その事情があるときは、処分量定
をする者において点数計算をやり直し、その結果に基づいて処分量定を
すること。
(2) 当該交通事故が別表第1の交通事故の不注意の程度の認定基準の「軽
い」に該当するものであるときは、同表の交通事故の不注意の程度「軽
い」の細目区分についてその程度を認定し、「小」に該当すると認めた
事案については、その内容が処分軽減を相当とするものであるかどうか
を審査すること。」

別表第1「軽い」細目区分「大」
「当該交通事故が当該違反行為をした者の不注意及び
その他の事由の競合によって発生したものである場合
であって、交通事故の主たる原因が、当該違反行為を
した者の不注意によるものであるとき、又は当該違反
行為をした者の不注意とその他の事由が交通事故の原
因として等しいものであるとき」
「軽い」細目区分「小」
「大以外の場合」


3、意見の聴取手続における主張

 公安委員会における意見の聴取手続については,上記の運転免許停止期間の短縮についての基準(@からEの各要素)を踏まえた上で,必要な証拠資料を収集・提出し,「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情がある」事を主張する必要があります。

 意見の聴取手続については,必要に応じて,補佐人や弁護士を代理人として立てることが可能です(道路交通法第104条第2項参照)。

 意見の聴取手続における,具体的な主張等について検討します。

ア まず,自己に有利な証拠を収集することが必要です。

  例えば,被害者が軽傷(また,生活に事実上の支障がないことなど)であることを示す証拠を収集したり,被害者と示談し,示談合意書(和解合意書)を交わすことが考えられます。

  処分を受ける者が,運転者として危険性がより低いと評価すべき事情があること,明らかに改善の可能性があることを示す資料,自己が危険運転を常習的に繰り返してきた者ではないことや,今回の行為についての反省の情や,今後の再犯防止策を具体的に示す資料(上申書等)を作成することが考えられます。

 また,処分を受ける者の処分の軽減を求めたり,今後危険運転行為をしないように指導監督する旨の上申書や嘆願書等の収集も考えられます。

イ 次に,意見聴取手続において必要な主張を行う必要があります。

 ここでは,上記の証拠等を踏まえ,上記2ア・イの基準に該当する旨の法律上又は事実上の主張を,口頭もしくは意見書等の提出等によって行う必要があります。
 例えば,被害者の被害の程度が軽微なものであったこと,本件事故についての自己の過失はほとんどなかったことなどの法律的な主張(上記2のイの@参照)をすることが考えられます。また,運転者としての危険性がより低い事情や明らかに改善の可能性が認められる事情として,今後危険運転を二度と繰り返さないことを示す事実(再発防止策の実施,指導監督者の存在)などを,証拠を踏まえて説得的に主張する必要があるでしょう。自己の自動車運転の社会的必要性(運転免許取消による個人的な不都合だけでなく会社や顧客など第三者にも重大な不利益を及ぼしてしまうことなど),運転免許取消の欠格期間が長期にわたることによる不利益等も主張することが可能です。

ウ 意見の聴取手続の結果,公安委員会が処分軽減を認めるべきと判断した場合には,免許取り消し処分が回避され、免許停止処分に軽減される判断がなされることとなります。一般論ですが、速度違反の事例で違反した速度が数キロ以内であった事例や、交通事故に関する事案で過失相殺がなされる場合には処分軽減なされる場合があるようです。処分軽減の可能性がある場合は、代理人弁護士を依頼するなどして、最大限、処分軽減すべき旨の法的主張を行うと良いでしょう。


4、その他の軽減を求める手続

 意見の聴取手続を経て公安委員会が下した停止処分や取消処分に関する決定について不服がある場合には,公安委員会に対する異議申立て(行政不服審査法第1条第2項),処分の取消しの訴え(行政事件訴訟法第8条等参照)等の手段が考えられます。


<道路交通法>
(免許の取消し,停止等)
第百三条  免許(仮免許を除く。以下第百六条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは,その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は,政令で定める基準に従い,その者の免許を取り消し,又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。ただし,第五号に該当する者が前条の規定の適用を受ける者であるときは,当該処分は,その者が同条に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後でなければ,することができない。
一  次に掲げる病気にかかつている者であることが判明したとき。
イ 幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの
ロ 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの
ハ イ及びロに掲げるもののほか,自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
一の二  認知症であることが判明したとき。
二  目が見えないことその他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害として政令で定めるものが生じている者であることが判明したとき。
三  アルコール,麻薬,大麻,あへん又は覚せい剤の中毒者であることが判明したとき。
四  第六項の規定による命令に違反したとき。
五  自動車等の運転に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反したとき(次項第一号から第四号までのいずれかに該当する場合を除く。)。
六  重大違反唆し等をしたとき。
七  道路外致死傷をしたとき(次項第五号に該当する場合を除く。)。
八  前各号に掲げるもののほか,免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき。
2  免許を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは,その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は,その者の免許を取り消すことができる。
一  自動車等の運転により人を死傷させ,又は建造物を損壊させる行為で故意によるものをしたとき。
二  自動車等の運転に関し刑法第二百八条の二 の罪に当たる行為をしたとき。
三  自動車等の運転に関し第百十七条の二第一号又は第三号の違反行為をしたとき(前二号のいずれかに該当する場合を除く。)。
四  自動車等の運転に関し第百十七条の違反行為をしたとき。
五  道路外致死傷で故意によるもの又は刑法第二百八条の二 の罪に当たるものをしたとき。
(意見の聴取)
第百四条  公安委員会は,第百三条第一項第五号の規定により免許を取り消し,若しくは免許の効力を九十日(公安委員会が九十日を超えない範囲内においてこれと異なる期間を定めたときは,その期間。次条第一項において同じ。)以上停止しようとするとき,第百三条第二項第一号から第四号までのいずれかの規定により免許を取り消そうとするとき,又は同条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)の処分移送通知書(同条第一項第五号又は第二項第一号から第四号までのいずれかに係るものに限る。)の送付を受けたときは,公開による意見の聴取を行わなければならない。この場合において,公安委員会は,意見の聴取の期日の一週間前までに,当該処分に係る者に対し,処分をしようとする理由並びに意見の聴取の期日及び場所を通知し,かつ,意見の聴取の期日及び場所を公示しなければならない。
2  意見の聴取に際しては,当該処分に係る者又はその代理人は,当該事案について意見を述べ,かつ,有利な証拠を提出することができる。
3  意見の聴取を行う場合において,必要があると認めるときは,公安委員会は,道路交通に関する事項に関し専門的知識を有する参考人又は当該事案の関係人の出頭を求め,これらの者からその意見又は事情を聴くことができる。
第百十七条の二  次の各号のいずれかに該当する者は,五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一  第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等を運転した者で,その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあつたもの

<道路交通法の規定に基づく意見の聴取及び弁明の機会の付与に関する規則>
(代理人)
第五条  行政庁は,当事者が意見の聴取の期日に代理人を出頭させようとするときは,意見の聴取の期日までに,代理人の氏名及び住所並びに当事者が代理人に対して当事者のために意見の聴取に関する一切の行為をすることを委任する旨を記載した書面を提出させるものとする。
2  行政庁は,代理人がその資格を失ったときは,当該代理人を選任した当事者に,書面でその旨を届け出させるものとする。


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