公正証書について

約束を確かな形に残すために。
作成の効果・手続・費用と、弁護士に相談するポイントを解説します。

最終確認・改訂:2026年9月17日

公正証書は、公証人が作成する公文書です。貸したお金の返済、離婚時の養育費・財産分与、遺言、任意後見など、将来の紛争を予防し、権利を実現するために利用できます。

ただし、公正証書にすれば、どのような約束でも直ちに強制執行できるわけではありません。金銭の支払など法定の範囲にある請求について、債務者の強制執行を受け入れる意思を記載・記録し、執行文・送達などの要件を満たす必要があります。公正証書の作成と、実際の差押えは別の手続です。

2025年10月の公証手続のデジタル化・手数料改定、2026年4月の離婚・養育費に関する改正を踏まえて説明します。

文案の確認・相手方との交渉・支払が止まった場合のご相談
新銀座法律事務所の無料法律相談 / 0120-48-5791
弁護士による約5分の電話回答が目安です。公正証書作成の支援・代理業務等は別途お見積りします。

1.公正証書の効果と限界

(1)契約だけでなく、遺言や事実の記録にも使えます

公正証書は、当事者等の依頼を受けて、公証人が権限に基づき作成します(公証人法1条)。当事者同士で署名する通常の契約書とは異なり、公証人が本人確認、意思の確認、内容の適法性の確認などを行います。違法・無効な行為などについて公正証書を作成することはできません(同法26条)。

契約書のほか、一人の意思で行う遺言や、公証人が実際に見聞きした事実を記録する「事実実験公正証書」もあります。例えば、貸金庫の中身や一定の意思表示を証拠として残すために利用されます。

(2)証拠としての信用性と、強制執行できる力は別です

公正証書は公文書として、真正に成立したものであることについて強い証明力を持ちます。しかし、記載された契約が必ず有効であることや、記載事項のすべてが真実であることまで、確定判決のように確定させるものではありません。判断能力、代理権、錯誤・詐欺・強迫、契約の解釈などを巡って、後に裁判で争われる余地があります。

また、公正証書があるだけで相手方の財産が確保されるわけではありません。抵当権などの担保権とは異なり、公正証書を作ったこと自体によって他の債権者より優先して回収できるようになるものでもありません。養育費についての法定の先取特権は、後述の別の制度です。

(3)強制執行できる「執行証書」の要件

民事執行法22条5号は、一定額の金銭の支払、その他の代替物・有価証券の一定数量の給付を目的とする請求について、公証人が作成し、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述を記載・記録した公正証書を「執行証書」としています。日常生活では、貸金、養育費、慰謝料、和解金などの金銭支払が中心です。

この「強制執行認諾条項」があれば、支払を命じる判決を改めて取得せずに、所定の手続で預貯金・給与などの差押えを申し立てられます。土地・建物の明渡し、所有権移転登記、子の引渡しや親子交流は、公正証書を作成しただけでは、この仕組みによる強制執行はできません。

例:「毎月末日に5万円を支払う」という養育費の条項と、強制執行認諾条項を設けることには意味があります。一方、「誠実に協議する」「生活が安定したら相応の額を払う」という記載だけでは、いつ・いくらを請求できるかが定まらず、そのまま差押えに使うことはできません。

(4)認証・確定日付との違い

似ている手続の違い
手続主な役割それだけで金銭の強制執行ができるか
公正証書の作成公証人が契約・遺言・事実等を公文書として作成執行証書の要件を満たす場合に可能
私署証書の認証私文書の署名等が本人によるものであることを証明認証だけではできない
確定日付の付与その日に文書が存在したことを証明できない。内容の真実性を証明する制度でもない

参考:日本公証人連合会「公正証書」/私署証書の認証/確定日付/民事執行法22条・25条・29条

2.公正証書が必要な場合・作成を選べる場合

公正証書の作成が「法律上の要件」なのか、「証拠を残し、支払を確保するための選択肢」なのかを分けて考えることが大切です。

主な利用場面と法律上の位置付け
利用場面公正証書の要否・注意点
任意後見契約公正証書が必要(任意後見契約に関する法律3条)。契約の効力発生は任意後見監督人の選任時。
事業用定期借地権等設定契約は公正証書が必要(借地借家法23条3項)。通常の私文書だけでは足りない。
一定の事業用融資の個人保証原則として契約締結前1か月以内の保証意思宣明公正証書が必要。経営者等の例外あり(民法465条の6~9)。
公正証書遺言この方式を選ぶ場合に公証人が作成。遺言すべてに公正証書が必要なわけではない(民法969条)。
貸金・債務弁済・和解金一般には任意。執行証書にすることで、不払い時の回収手続に備えられる。
離婚給付・養育費一般には任意。金額・期限等を明確にし、執行証書にすることが有用。2026年改正の新制度も検討する。
定期建物賃貸借・一般定期借地権法律の方式を満たす書面・電磁的記録による方法もあり、公正証書に限定されない。事前説明等の別の要件に注意。
夫婦財産契約・死後事務委任公正証書自体は一般に必須ではない。締結時期、登記、権限の範囲等を個別に確認する。
尊厳死宣言・医療の事前意思表示本人の意思を記録する方法の一つ。医療行為の実施・中止を当然に強制する効力はない。

3.貸金・分割払い・保証で確認すること

(1)支払条件を具体化します

お金を貸す場合や、既にある未払金の分割払いを認める場合には、債権の発生原因、元本、支払済みの額、残額、各回の支払日・金額、振込先、手数料負担を整理します。利息・遅延損害金は、利息制限法などの制限を踏まえて定めます。

特に、分割払いが滞ったときに残額の一括請求を可能とする「期限の利益喪失条項」は重要です。「何回の滞納で」「催告が必要か」「どの時点から一括請求できるか」が分かるようにします。条件の定め方によって、執行文を得るための証明方法も変わります。

貸主側では、相手の住所や支払能力、必要に応じた保証・担保を検討します。借主側では、一括請求を受ける条件や遅延損害金を確認し、実際に履行可能な返済計画にすることが大切です。公正証書作成前の文案確認により、後の紛争を防ぎやすくなります。

(2)保証意思宣明公正証書は、保証契約そのものとは別です

事業のために負担した貸金等債務を個人が保証する場合などは、原則として、保証契約の締結日の前1か月以内に、保証予定者が保証債務を履行する意思を公正証書で表示する必要があります(民法465条の6)。対象となる保証なのにこの手続を欠くと、保証契約は効力を生じません。

法人の取締役等や、個人事業主の共同事業者・現にその事業に従事する配偶者などには例外があります。単に「親族だから」「配偶者だから」というだけで例外になるわけではありません。保証意思宣明は本人が行い、代理人による作成も、ウェブ会議によるリモート作成もできません。

この証書だけで保証契約が成立したり、当然に保証人への強制執行が可能になったりするわけではありません。保証契約の締結、個人根保証の極度額、情報提供義務、保証債務についての執行認諾などを別途確認します。

根拠・参考:民法465条の2・465条の6~10/日本公証人連合会「保証意思宣明公正証書」

4.離婚・養育費の公正証書と2026年改正

(1)離婚の届出と、お金などの取り決めは分けて考えます

離婚給付等契約公正証書には、養育費、慰謝料、財産分与、親子交流、連絡方法、年金分割の合意などを整理して記載できます。ただし、公正証書を作成しただけで協議離婚が成立するわけではなく、離婚届の手続が必要です。

養育費は、子ごとの月額、開始時期、終期、毎月の支払日を特定します。「大学卒業まで」とする場合も、浪人・留年・進学しない場合の扱いなど、想定する内容を整理してください。進学費や特別な医療費について「別途協議」とだけ定めると、その条項だけでは直ちに金銭の差押えができない場合があります。

清算条項は、未確認の財産や請求権まで放棄する結果にならないように検討します。養育費は、合意後の収入・家族状況等の変化により増減額が問題となることがあり、公正証書を作れば将来一切変更できなくなるというものではありません。DV等がある場合は、住所の記載・連絡方法・交渉の安全性を先に相談してください。

(2)2026年4月1日施行の制度を踏まえた対応

養育費の回収方法が広がりました。改正後は、公正証書や調停調書がなくても、法定の要件の下で先取特権に基づく差押えを申し立てられる場合があります。「公正証書がないので回収できない」と諦める必要はありません。
  • 養育費債権の先取特権:民法306条・308条の2により、一定範囲の子の監護費用について優先権が認められます。合意書等の資料と法定の範囲・申立要件を確認します。施行前の合意でも、施行後に発生する養育費について対象となり得ます。
  • 法定養育費:2026年4月1日以後の離婚について、養育費の取り決めがない場合に、離婚時から引き続き主として子を監護する親が、一定の要件で他方の親に請求できる制度です。子1人につき月額2万円ですが、適正な養育費の標準額・上限額・下限額を決めるものではなく、取り決めまでの暫定的な制度です。支払能力に関する例外等もあります(民法766条の3)。
  • 公正証書を作る意味:新制度があっても、実際の収入や教育費を踏まえた養育費の額・期間を合意し、執行証書としておく意義はあります。慰謝料・財産分与等も含め、どの債権をどの方法で回収するかを整理できます。
  • 親権・財産分与:離婚後の共同親権・単独親権に関する新しい規律や、財産分与を家庭裁判所に請求できる期間の原則5年への伸長も踏まえます。2026年3月31日以前の離婚については財産分与の従来の2年の期間が適用されるため、離婚日を確認してください。

共同親権か単独親権かだけで養育費が不要になるわけではありません。子の生活を支えるため、監護の実態と双方の経済状況を基に、必要な取り決めを行います。

参考:日本公証人連合会「離婚」/こども家庭庁「民法等改正について」/渋谷区「離婚後の子の養育に関する民法等改正」

5.公正証書遺言―作成だけでなく、実行まで考える

(1)検認不要ですが、無効の可能性がなくなるわけではありません

公正証書遺言は、証人2人以上の立会いの下で、遺言者が遺言の趣旨を公証人に伝え、法定の方式で作成します(民法969条)。代理人が本人に代わって遺言することはできません。聴覚・言語機能に障害がある場合には、同法969条の2による方法を公証人と相談できます。

原本が公的に保管され、家庭裁判所の検認が不要であることは大きな利点です(同法1004条2項)。ただし、検認不要ということは、遺言の有効性が最終確定しているという意味ではありません。遺言能力や本人の真意、証人の適格、方式違反などが争われることがあります。

証人には、推定相続人、受遺者、それらの配偶者・直系血族、未成年者などはなれません(同法974条)。家族が証人になれると思い込まず、早めに確認してください。なお、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言にも検認が不要となる仕組みがありますが、公証人が内容を確認する公正証書遺言とは別の制度です。

(2)財産の指定・遺留分・遺言執行者を整理します

遺言には、不動産の登記上の表示、預貯金その他の財産、受け取る人を明確に記載します。作成後に取得する財産や、指定した受取人が先に亡くなった場合の扱いも検討します。家族の状況によっては、遺留分侵害額請求に備えた資金の確保も必要です。

遺言執行者を指定すれば、財産の調査、預貯金の払戻し、登記に必要な手続などを進める役割を明らかにできます。不動産を売却して代金を分ける「清算型遺贈」では、売却権限、費用、報酬、分配方法を具体化することが重要です。遺言があっても、銀行・法務局等で必要な手続がすべて省略されるわけではありません。

(3)判断能力に不安があるときは、早期に相談してください

認知症の診断があるだけで一律に遺言できないわけではありませんが、作成時に遺言の内容と結果を理解できることが必要です。医療記録、診断書、本人の説明内容、財産・家族関係などが判断資料になります。成年被後見人の遺言には医師2人以上の立会い等の特則があります(民法973条)。

「本人の希望は分かっているから家族が代わりに作る」「後見人が遺言を代行する」という方法は採れません。本人の意思を直接確認できるうちに準備することをお勧めします。作成後も、本人は法律の方式に従って遺言を撤回・変更できます。

根拠・参考:民法963条・969条・969条の2・973条・974条・1004条・1012条・1022条/日本公証人連合会「遺言」/当事務所QA No.2011「清算型遺贈及び遺言執行」

6.任意後見・死後事務・医療の希望を残す場合

(1)任意後見は、監督人が選任されてから始まります

将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、財産管理や生活・療養看護に関する法律行為を任せる人と権限を決めるのが任意後見契約です。法律上、公正証書による契約が必要です。

ただし、作成と同時に任意後見人の仕事が始まるわけではありません。本人の判断能力が不十分となり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます(任意後見契約に関する法律2条1号・4条)。監督人の報酬等の継続的な負担も考慮します。

判断能力はあるものの身体が不自由で手続が難しい場合や、監督人選任前の支払に備える場合には、財産管理等委任契約や、定期的に状態を確認するみまもり契約を併用することがあります。代理権の範囲、支払限度、報告方法、任意後見への移行条件を定めておくことが大切です。

(2)遺言と死後事務委任は、役割が異なります

財産を誰に承継させるかは遺言で、葬儀、関係者への連絡、住居の片付け、行政上の手続等は死後事務委任契約で備えるなど、目的に応じて組み合わせます。死後事務委任だけで相続人の権利や遺留分を自由に変更できるわけではありません。本人の死亡後も委任の効力を存続させる合意、必要経費、預り金、受任者の報告義務も検討します。

(3)尊厳死宣言・医療の事前指示には限界があります

延命治療等についての希望は、事前指示書や、公証人が本人の意思表示を記録する事実実験公正証書に残すことができます。ただし、公正証書を作れば、医療者が必ずそのとおりの処置をしなければならないという制度ではありません。医療者の法的責任が一律に免除されるものでもありません。

任意後見人に医療契約や費用支払の代理権を与えることと、手術等への包括的な医療同意権を与えることは別です。本人の意思が変わることもあるため、家族・信頼する人・医療者と繰り返し話し合い、最新の希望と書類の所在を共有しておくことが大切です。

参考:日本公証人連合会「任意後見契約」/事実実験公正証書/当事務所QA No.868/厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援」

7.借地・借家と夫婦財産契約の注意点

(1)事業用定期借地と定期建物賃貸借は違います

事業用定期借地権等は、専ら事業用の建物(居住用を除きます)の所有を目的とする借地です。10年以上30年未満の場合と、30年以上50年未満の場合では仕組みが異なりますが、いずれも設定契約は公正証書によらなければなりません(借地借家法23条)。

これに対し、定期建物賃貸借は、更新のない建物賃貸借契約です。公正証書に限らず、法律の方式を満たす書面又は電磁的記録で契約できます。契約とは別に、更新がなく期間満了で終了することについての事前の書面交付・説明が必要であり、承諾を得た電磁的方法による提供にも所定の要件があります(同法38条1~5項)。

公正証書にすること自体が、事前説明や終了通知などの要件をすべて代替するものではありません。期間1年以上の契約には終了通知の問題もあります。また、公正証書があっても、建物明渡しそのものを執行証書として強制執行することはできません。

一般定期借地権(原則50年以上)の特約も、事業用定期借地権と混同しないでください。こちらには書面又は電磁的記録による方法があります(同法22条)。

(2)夫婦財産契約は、婚姻届の前に検討します

民法755条の夫婦財産契約は、婚姻届出前に、法定財産制と異なる財産関係を定める制度です。夫婦の承継人や第三者に対抗するには、婚姻届出までの登記が必要です(同法756条)。婚姻届出後の財産関係の変更には同法758条による制限があります。

公正証書にしても、婚姻前の締結や登記の要件が不要になるわけではありません。一方、この制度上の制限から直ちに「結婚後は夫婦間で一切契約できない」と結論付けるのも正確ではありません。生活費の分担、贈与、離婚時の合意等は、それぞれの性質と法令に即して判断します。なお、夫婦間の契約の一方的取消しを定めた旧民法754条は、2026年4月施行の改正で削除されています。

根拠・参考:借地借家法22条・23条・38条/民法755条・756条・758条/こども家庭庁「その他の改正」

8.公正証書を作る手順・必要書類

  1. 目的と条件を整理する

    何を実現したいか、誰にどのような権利・義務があるか、いつまでに作成が必要かを整理します。契約では当事者の合意が必要です。公証人が相手に合意を強制したり、争いのある金額を判決のように決めたりするわけではありません。

  2. 弁護士・公証役場に事前相談する

    弁護士は依頼者の立場から条件や紛争リスクを検討し、必要に応じて相手方と交渉します。公証人は中立の立場で作成手続を進めます。両者は役割が異なります。

  3. 資料を集め、文案・費用を確認する

    合意の内容を公証人に伝え、原案を確認します。数字、日付、財産の表示、氏名、支払条件を一つずつ照合し、作成前に費用の見積りを確認してください。

  4. 本人確認・意思確認を経て作成する

    対面、出張、利用可能な場合のリモート方式について公証役場と調整します。証人や代理人が必要な場合は、資格・委任状も事前に確認します。

  5. 交付後の保管・登記・送達等を行う

    正本等を保管し、任意後見の登記、執行証書の送達など、目的に応じた手続を確認します。住所変更や支払実績も記録しておきましょう。

準備する資料の例(案件と作成方式により異なります)
場面主な資料
共通本人確認書類、住所・氏名等の資料、合意内容のメモ、既存の契約書。実印・印鑑登録証明書の要否は公証役場に確認。
法人・代理人代表者の資格を証する資料、代表者印の印鑑証明書、具体的な権限を記載した委任状、代理人の本人確認資料等。
貸金・和解借用書、振込記録、債務残高、返済計画、保証・担保関係の資料等。
離婚・養育費戸籍、子の氏名・生年月日、収入・資産資料、養育費等の合意内容、対象不動産や住宅ローンの資料等。
遺言家族関係が分かる戸籍、受取人の資料、不動産登記事項証明書・評価資料、預貯金等の一覧、証人の情報等。
任意後見本人・受任者の本人確認資料、本人の戸籍、住民票、代理権目録、必要に応じた診断書等。

印鑑登録証明書や法人の資格証明書等は、原則として発行後3か月以内のものが求められます。取り寄せる前に、利用する本人確認方法と書類の有効期間を確認すると、無駄な取得を避けられます。遺言は代理できず、任意後見でも本人の意思確認が重要です。白紙の委任状を渡すことは避けてください。

2025年10月1日からのデジタル化・ウェブ会議

法務大臣の指定を受けた公証人が作成する公正証書は、原則として電磁的記録で作成する仕組みとなりました。要件を満たす場合には、来所せずウェブ会議を利用する「リモート方式」も可能です。

ただし、すべての案件で自由に選べるわけではありません。嘱託人の申出、他の嘱託人に異議がないこと、公証人が相当と認めること等が必要で、機器や本人確認方法についても事前調整を要します。保証意思宣明公正証書はリモート方式の対象外です。パソコン等の利用が難しい方は、対面・出張の方法をご相談ください。

電子化された証書でも、内容を証明する書面の交付を受けられます。以前に適法に作られた紙の公正証書が、電子化を理由に無効になるわけではありません。

参考:日本公証人連合会「必要書類」/公正証書の作成手続のデジタル化/Web会議を利用した作成の流れ

9.公証役場の手数料と、自治体の費用補助

(1)2025年10月1日以後の基本手数料

公証人の手数料は公証人手数料令により定められています。以下は法律行為の目的価額に応じた基本表です。この金額だけが最終的な支払総額とは限りません。作成する行為の数、証書の枚数、正本等の交付、送達、登記、出張等による費用が加わります。

公証人手数料令9条別表による基本手数料
法律行為の目的の価額基本手数料
50万円以下3,000円
50万円超~100万円以下5,000円
100万円超~200万円以下7,000円
200万円超~500万円以下13,000円
500万円超~1,000万円以下20,000円
1,000万円超~3,000万円以下26,000円
3,000万円超~5,000万円以下33,000円
5,000万円超~1億円以下49,000円
1億円超~3億円以下49,000円+1億円を超える部分5,000万円までごとに15,000円
3億円超~10億円以下109,000円+3億円を超える部分5,000万円までごとに13,000円
10億円超291,000円+10億円を超える部分5,000万円までごとに9,000円

(2)目的価額や加算の計算に注意してください

  • 貸金:通常、貸付元本を基に計算します。例えば貸金300万円の基本手数料は13,000円ですが、交付等の費用は別途です。
  • 養育費:定期給付の支払総額を基にしますが、手数料算定上は原則5年分が上限です。月5万円を10年間支払う合意なら、算定の基礎は原則300万円です。慰謝料・財産分与等の計算は別途行います。
  • 遺言:財産を受け取る人ごとに計算し合算します。目的価額の合計が1億円以下なら、遺言加算13,000円が加わります。単純に遺産総額を一度だけ表に当てはめるとは限りません。
  • 任意後見:基本手数料は1契約13,000円。登記嘱託手数料1,600円、登記の収入印紙代2,600円のほか、枚数加算・正本等の交付費用・郵送料等が必要です。財産管理等委任契約なども一緒に作る場合は別途確認します。
  • 出張等:日当・交通費のほか、病床執務加算が必要となる場合があります。正本等を紙で受け取るか電磁的記録で受け取るかでも交付費用が異なります。

実際の費用は、現在の料金表と具体的な原案に基づき、公証役場に見積依頼が必要です。弁護士の相談料・交渉や作成支援の費用は、公証役場の手数料とは別になります。

根拠・参考:公証人手数料令/日本公証人連合会「手数料」/公証人手数料一覧(PDF)

(3)養育費の公正証書作成には、自治体の補助を使える場合があります

自治体によっては、養育費を取り決める公正証書の作成費用等を補助しています。例えば、渋谷区は、区内に住民登録があるひとり親家庭等で所定の要件を満たす人について、強制執行認諾約款付き公正証書の公証人手数料を上限43,000円で補助する制度を案内しています。申請期限は原則として公正証書等の作成日から6か月以内です。

居住地、子の年齢、過去の補助利用、対象経費等に条件があります。弁護士費用や離婚関係の費用すべてが当然に補助されるわけではありません。お住まいの市区町村の窓口で、作成前に対象と申請期限を確認し、領収書を保管してください。

自治体の例:渋谷区「養育費に関する公正証書作成手数料等補助金」(2026年4月1日更新の案内を確認)

10.支払が止まったとき・内容を争いたいとき

(1)受け取る側―差押えには別途申立てが必要です

公証人が自動的に取立てをするわけではありません。まず、証書の支払条項・執行認諾条項、未払額、支払期限、相手方の住所・財産を確認します。分割払いでは、全額を請求できる条件が満たされているかも確認してください。

  1. 契約上の支払期限・条件と、実際の入金を照合する。
  2. 作成した公証役場で、執行文の付与や送達に関する必要な手続を確認する。
  3. 執行文の付された公正証書正本等と送達証明書など、必要な資料を準備する。
  4. 対象となる給与・預貯金等を特定し、管轄裁判所へ差押えを申し立てる。

条件付きの請求や相続・債権譲渡がある場合は、条件成就・承継を証明する資料が必要となることがあります。財産が分からない場合は、要件を満たせば財産開示や第三者からの情報取得の手続を検討できます。差押え禁止財産や他の債権者との競合があるため、回収を保証するものではありません。

養育費等の定期金は、一部不払いがあるとき、将来分についても給与等の継続的給付を差し押さえる特例があります(民事執行法151条の2)。将来の養育費をすべて直ちに預金から回収できるという意味ではありません。

(2)請求される側―公正証書があっても、争える場合があります

「既に支払った」「記載額が違う」「代理権を与えていない」「契約時に意思能力がなかった」などの事情がある場合には、請求異議の訴え等が問題となります(民事執行法35条)。執行文の付与に関する異議など、理由によって採るべき手続が異なります。

訴えを起こしただけで、差押えが自動的に止まるわけではありません。必要に応じて強制執行停止の申立てを行い、担保が必要となる場合もあります(同法36条)。公正証書、作成時の委任状、送達関係書類、支払記録、当時のメール等を持って、早めに相談してください。

参考:日本公証人連合会「執行文付与申立て」/裁判所「民事執行」/民事執行法

11.判例から学ぶ、公正証書作成前の注意点

公正証書の形式だけに目を向けず、その前提となる契約の理解や本人の意思を確認することが重要です。以下の代表的判例について、現在の法令との関係も含めて説明します。

(1)財産分与と税負担の誤解―最高裁平成元年9月14日判決

不動産の財産分与に伴う課税についての誤解が問題となった判例です。日本公証人連合会も、離婚給付の解説でこの判決を取り上げています。分与を受ける側だけでなく、分与する側に譲渡所得課税が生じ得るため、税負担を理解しないまま金額や対象財産を決めると、合意の効力が問題になります。

判決当時は旧民法95条の錯誤無効が問題となりましたが、現在の民法95条は、所定の要件を満たす錯誤について取消しを認める制度です。古い判例の「無効」という表現を現在の契約にそのまま当てはめず、契約時期・経過措置・具体的要件を確認します。実務では、公正証書を作る前に税負担や住宅ローンの処理まで確認することが紛争予防になります。

判例の紹介資料:日本公証人連合会「離婚」Q19/現行法:民法95条

(2)医療について自ら決める権利―最高裁平成12年2月29日判決

宗教上の信念から輸血を拒否していた患者について、必要時には輸血するという病院の方針を説明しないまま手術したことが問題となり、患者が手術を受けるかを決定する利益の侵害が認められた判例です(民集54巻2号582頁)。本人の意思を尊重し、必要な説明を尽くす重要性を示します。

この判例は、尊厳死宣言公正証書があればどのような治療中止も適法になる、と判断したものではありません。事前の意思表示は重要な資料となりますが、具体的な医療判断では、本人の最新の意思、病状、医療・ケアチームとの話合い等を踏まえる必要があります。

判例の解説:当事務所QA No.868「入院手続の代理と手術への同意」/厚生労働省の関連ガイドライン

12.新銀座法律事務所への無料法律相談

「この文案で支払を確保できるか」「相手から示された公正証書に応じてよいか」「遺言と任意後見をまとめて準備したい」「公正証書があるのに支払われない」など、公正証書の作成前・作成後の疑問についてご相談ください。

新銀座法律事務所では、電話・LINE・メールフォームによる無料法律相談の受付を行っています。受付後、弁護士が電話で約5分を目安に一般的な見解を回答する方式です。

0120-48-5791

受付:平日9:00~21:00/土日祝日9:00~18:00

具体的な文案・資料を検討する有料法律相談は、1時間以内11,000円(税込)です。相手方との交渉、条項の作成・修正、公証役場との調整、強制執行、請求異議、遺言執行等の受任業務は、内容に応じて費用をご説明します。

相談時に整理しておくとよいこと:作成の目的、当事者の関係、支払額・支払期限、現在の合意状況、作成希望日、既存の文案、公正証書の有無、未払金や差押えの状況。資料が揃っていなくても、まずは状況をお知らせください。

15.主な根拠法令・公的資料

e-Gov法令検索

  • 公証人法―公証人の職務、公正証書の作成・交付等。
  • 民事執行法―22条5号(執行証書)、25条(執行文)、29条(送達)、35・36条(請求異議・停止)、151条の2(扶養義務等の特例)。
  • 民法―意思能力、錯誤、保証、夫婦財産契約、養育費、財産分与、公正証書遺言、遺言執行等。
  • 任意後見契約に関する法律―契約の方式・発効・監督等。
  • 借地借家法―22条・23条・38条。
  • 公証人手数料令―目的価額、養育費の算定、遺言加算、基本手数料表等。

裁判所・政府・自治体

日本公証人連合会

公正証書 / 遺言 / 任意後見契約 / 保証意思宣明 / 離婚 / 必要書類 / 手数料 / 執行文

このページの先頭へ / 暮らしに役立つ法律知識 / 無料法律相談