2026年10月1日更新
会社を設立するときは、登記の書類をそろえるだけでなく、誰が出資し、誰が経営を決め、利益や責任をどのように分担するかを最初に整理することが大切です。株式会社と合同会社の選び方、定款、資本金の払込み、設立費用、税金・社会保険の届出まで、初めて起業する方にも分かりやすく説明します。共同創業や個人事業の法人化、設立後の顧問契約についても、新銀座法律事務所へご相談いただけます。
1 会社設立で最初に決めること
事業内容・出資者・経営体制・必要資金・開業予定日の5点を整理しましょう。一人で始める会社でも、法人の財産と個人の財産は別に管理します。複数人で起業するときは、出資割合だけでなく、意思決定が対立した場合や退任・退社の場合まで話し合っておきます。
株式会社は本店所在地での設立登記によって成立します(会社法49条)。合同会社などの持分会社も同様です(579条)。登記をしただけで、必要な営業許可や金融機関の口座開設まで完了するわけではありません。事業開始に必要な手続から逆算して準備してください。
現在、新たに有限会社を設立することはできません。従来の有限会社は、会社法施行に伴う経過措置により特例有限会社として存続しています。本記事では、設立時によく検討される株式会社と合同会社を中心に説明します。
2 株式会社と合同会社の違い
| 比較する点 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 出資者 | 株主。1人でも設立可能 | 社員。1人でも設立可能。「社員」は従業員ではなく出資者を意味します |
| 経営 | 株主が取締役を選任。株主と取締役を同じ人が兼ねることも可能 | 原則として社員が業務を執行。定款で担当者・代表社員を定めるなどの設計が可能 |
| 責任 | 株主は原則として出資額の範囲の有限責任 | 社員全員が有限責任 |
| 定款認証 | 公証人の認証が必要 | 認証は不要。ただし定款の作成は必要 |
| 設立登記の登録免許税 | 原則、資本金×0.7%。最低15万円 | 原則、資本金×0.7%。最低6万円 |
| 利益配分 | 株式の内容・数に応じるのが基本。種類株式等の設計も可能 | 定款により出資割合と異なる損益分配割合も設計可能 |
| 役員任期・公告 | 取締役等の任期管理・登記が必要。原則として決算公告義務もあります | 業務執行社員に株式会社の取締役と同じ法定任期はなく、株式会社と同様の決算公告義務もありません |
外部投資家からの出資や将来の株式上場を考える場合は、株式会社の仕組みが検討の中心になります。少人数で柔軟に運営したい場合は合同会社も選択肢です。ただし、合同会社では定款変更が原則として総社員の同意によるなど、複数人での合意形成に注意が必要です(会社法637条)。設立費用の安さだけで決めないようにしましょう。
有限責任でも、経営者本人が個人保証をすれば保証責任を負います。取締役等の任務違反や第三者への損害について別途責任が生じる場合もあります。「法人にすれば個人は一切責任を負わない」という制度ではありません。
3 商号・事業目的・所在地・資本金の決め方
商号と本店所在地
商号には株式会社・合同会社などの会社の種類を表示します。同一所在地に同一商号の会社を登記することはできません。似た名称の登記が可能でも、他社の商標や周知・著名な名称との関係は別問題です。登記情報だけでなく、事業分野や商標も確認してください。
自宅や賃借事務所を本店にする場合は、賃貸借契約・管理規約上の利用制限や貸主の承諾を確認します。バーチャルオフィス等は、営業許可、口座開設、事業実態の確認との関係も検討します。本店所在地は公示される情報です。
事業目的と許認可
現在行う事業と、具体的に予定している事業を整理して定款に記載します。建設業、宅建業、人材派遣・職業紹介、飲食業、古物営業などは、許可・免許・届出の要否を先に確認します。目的に業種を書くだけで営業資格が得られるわけではなく、事務所、責任者、資産等の要件がある場合には設立前から準備が必要です。
資本金と事業年度
株式会社・合同会社には、旧制度のような一律の最低資本金規制はありません。ただし、極端に少額の資本金では当面の家賃・仕入れ・人件費を賄えません。許認可、融資、信用、税務を踏まえ、必要な運転資金から決めます。資本金は登記のために国へ支払う費用ではなく、会社の事業資金となります。
事業年度の末日も重要です。設立直後に決算を迎えると、青色申告等の申請期限が早く到来する場合があります。繁忙期や資金繰りとあわせて検討してください。外国人の方が日本で経営活動を行う場合は、会社の設立と在留資格の審査は別であり、現行の在留要件を事前に確認します。
4 定款と共同創業者間の合意
定款は、会社の組織・運営に関する基本規則です。株式会社では商号・目的・本店所在地・設立時の出資財産の価額または最低額・発起人の氏名または名称と住所等を記載し、公証人の認証を受けます(会社法26・27・30条)。合同会社では会社法575・576条に従い、社員・出資内容・有限責任等を定めます。
小規模な非公開株式会社では、取締役会を設けず取締役1名で運営できる設計もあります。株式の譲渡制限、取締役の任期、代表権、公告方法などを会社の実情に合わせます。取締役の任期は原則2年で、一定の非公開会社は定款で最長10年まで伸長できますが、任期を長くすれば役員交代の問題までなくなるわけではありません。
共同創業で書面にしておくこと
- 出資額・株式数・持分、担当業務、追加資金が必要になった場合の負担
- 代表者の権限、重要な契約や借入れを決める手順
- 役員報酬・利益配分、会社経費と個人支出の区別
- 知的財産や顧客情報の帰属、秘密保持、競業への対応
- 退任・退社・死亡時の株式や持分の扱い、譲渡価格の決め方
- 意見が対立して決定できない場合の協議・解決手順
例えば2人で議決権を半分ずつ持つと、意見が対立したときに決議が進まなくなる場合があります。定款と株主間契約等を組み合わせ、会社や第三者に対する効力の違いも踏まえて設計します。関連QA:定款とは何か。
5 株式会社の設立手続―発起設立の流れ
発起設立は、発起人が設立時に発行する株式の全部を引き受ける方法です。発起人以外から設立時の株式引受人を募る募集設立とは、払込み等の手続が異なります。ここでは通常の金銭出資による発起設立を説明します。
- 基本事項と設立日程を決める。商号・本店・目的・資本金・出資者・役員・決算期などを整理します。
- 定款を作成し、公証人の認証を受ける。本人確認、委任状、実質的支配者となる者の申告等を準備します。電子定款やウェブ会議による手続も検討できます。
- 出資金を払い込む。通常は発起人名義の口座等を利用し、払込みを証する書面と通帳の写し・取引明細等を準備します。銀行名・支店・口座名義・入金日・金額が確認できるようにします。
- 役員の就任・調査等を行い、申請書類を整える。定款、発起人の決定書、就任承諾書、払込証明、資本金の計上に関する証明、本人確認資料等を、機関設計に合わせて確認します。
- 本店所在地を管轄する法務局へ設立登記を申請する。窓口・郵送・オンラインの方法があります。法定の起算点から原則2週間以内の申請が必要です(会社法911条)。
- 登記完了後、口座・税務・保険・許認可を整える。登記事項証明書等を取得し、開業の準備を進めます。
発起設立では、銀行による払込金保管証明書を一律に取得する手続ではありません。設立前の会社名義口座が当然に開設できるわけでもありません。残高があるだけでは出資の払込みを示せないことがあるため、入金の時期・方法を事前に確認します。
現物出資、会社成立後に財産を取得する財産引受け、特別な設立費用等には、定款への記載や検査役の調査などの特別な規律があります(会社法28・33条)。例外もありますが、通常の金銭出資と同じ書類だけで進めないでください。法務省:発起設立の手続。
6 合同会社の設立手続
合同会社では、社員となる人が定款を作成し、登記までに出資を全額履行したうえで設立登記を申請します(会社法575~579条)。公証人の定款認証は不要です。登記申請書、定款、出資の履行を示す書面、代表社員等の決定に関する書類などを準備します。法人が業務執行社員となる場合は、職務執行者等について追加の確認が必要です。
社員全員が常に同じ権限を持つ設計にする必要はありません。誰が業務執行・代表を行うか、意思決定の方法、損益分配、持分譲渡・相続・退社を定款にどう定めるかが重要です。設立後に参加者が増える予定がある場合は、加入時の条件も考えておきます。
7 会社設立の費用の目安
以下は、登録免許税の軽減を適用しない通常の場合です。専門家報酬、証明書・謄本等の手数料、印章代、郵送費、許認可の申請費用や出資金は別に見積もります。
| 費用 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 資本金×0.7%、最低15万円 | 資本金×0.7%、最低6万円 |
| 定款認証手数料 | 通常3万・4万・5万円。一定の小規模な設立は1万5,000円 | 不要 |
| 紙の定款原本の印紙税 | 原則4万円 | 原則4万円 |
| 電子定款の印紙税 | 不要 | 不要 |
株式会社の定款認証手数料
定款に記載する資本金の額等に応じ、100万円未満は原則3万円、100万円以上300万円未満は4万円、それ以外は原則5万円です。2024年12月1日からは、100万円未満で、発起人が全員自然人で3人以下、発起人が設立時発行株式の全部を引き受け、取締役会を設置しないという条件を満たす場合、1万5,000円に軽減されています。資本金額等の定款での定め方を含め、公証役場で適用を確認します。
例:資本金50万円・発起人1人・取締役会なしの株式会社を電子定款で発起設立する場合
上記の認証手数料軽減に該当すれば、登録免許税15万円+定款認証1万5,000円=16万5,000円が主な税・認証費用です。電子定款の合同会社で登録免許税が最低額となる場合は、主な税は6万円です。いずれも総額の見積りではなく、証明書等の実費や依頼報酬等が加わります。
創業支援制度により登録免許税が軽減される場合もあります。証明書の取得など申請前の準備が必要になるため、本店所在地の自治体に確認してください。当事務所への依頼費用は、設立形態、定款・共同創業契約の設計、許認可等の業務範囲を確認してご案内します。
8 オンライン申請と設立日の決め方
電子定款は、単に紙をPDF化したものとは異なり、必要な電子署名等を備えた電磁的記録として作成します。本人申請か代理申請かによって、準備する電子証明書等も変わります。オンライン申請でも、添付書類や本人確認を省略できるわけではありません。
設立に要する期間は、定款の検討、公証役場との調整、払込み、書類の補正、法務局の処理状況で異なります。公的な迅速処理の取組もありますが、すべての案件が数日で完成するという保証ではありません。口座開設や営業許可に必要な期間は、登記とは別に見込んでください。
2026年2月開始―休日を設立日とする特例
2026年2月2日から、一定の要件の下で行政機関の休日を会社等の設立日として指定できるようになりました。申請書に特例を求める旨と指定日を記載し、指定日の直前の開庁日の開庁時間内に申請が到達し、その日付で受け付けられる必要があります。オンライン・郵送でも同様です。任意の日へさかのぼれる制度ではありません。希望日がある場合は、必要な設立手続を終えたうえで、法務局の案内に従い日程を確認してください。
9 設立後の税務・社会保険・労働保険
登記が完了しても、各機関への届出がすべて自動で完了するわけではありません。誰が何を提出するかを決め、控えと受付結果を保管してください。
| 手続 | 主な期限・注意点 |
|---|---|
| 税務署への法人設立届出書 | 設立の日以後2か月以内。定款等の写しを添付 |
| 第1期からの青色申告承認申請 | 設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了日のうち、早い日の前日まで |
| 給与支払事務所等の開設届出 | 開設の日から1か月以内。役員報酬・給与の支払を始める場合に確認 |
| 都道府県・市町村への届出 | 自治体により異なる。東京都は事業開始・設置の日から15日以内が基本。所在地の市町村分も確認 |
| 健康保険・厚生年金の新規適用 | 加入要件を満たした事実発生から5日以内。被保険者資格取得届等も確認 |
| 労働保険の成立・概算保険料 | 通常の継続事業では、成立届は成立日の翌日から10日以内、概算保険料の申告・納付は同50日以内 |
| 雇用保険 | 対象労働者を雇う場合は、事業所設置届・資格取得届等を所管ハローワークへ提出 |
法人事業所は、代表者1人の場合でも、報酬を受けて常時使用される関係等の要件を満たせば社会保険の加入対象となります。無報酬の場合などは実態に即して確認します。労働者を雇う場合は、労働条件の明示、勤怠管理、賃金台帳、最低賃金、労災・雇用保険も整えます。
赤字でも法人住民税の均等割等が生じる場合があります。また、「設立後2年間は必ず消費税が免税」というわけではありません。資本金、特定期間、他社との支配関係、インボイス登録等により課税される場合があるため、登録の必要性と資金繰りを税理士等に相談します。役員報酬も、会社法上の決定手続と税務上の損金算入要件をそれぞれ確認してください。
10 設立時から備える紛争と裁判例
役員報酬を「社長の判断だけ」で引き出さない
最高裁平成15年2月21日判決は、定款・株主総会決議で報酬額が定められず、それに代わる全株主の同意もない事案で、取締役の具体的な報酬請求権を否定しました。報酬額が社会通念上相当かどうかだけでは足りないとした判断です。旧商法下の判例ですが、現在の会社法361条に基づく報酬決定を考える上でも重要です。
設立直後や一人会社でも、報酬の決定内容・時期と議事録等を整え、会社口座からの私的な引出しを避けます。後になって「承諾した、していない」と争われないよう、記録を残してください。事例1550:役員報酬と責任追及・判例解説。
出資は貸付けと違います
事業がうまくいかない、経営に参加できないというだけで、株式会社への出資金を貸付金と同じように返還請求できるとは限りません。株式の譲渡や会社による取得には別の手続・制約があります。合同会社でも退社・持分払戻しの条件を確認します。送金前に、出資なのか貸付けなのか、取得する権利と退出時の条件を書面にします。事例1748:出資金の回収方法。
設立前の契約・名義・払込み
設立前に借りる事務所や発注する設備は、契約当事者と、設立後の会社への承継条件を確認します。未成立の会社名を記載すればすべて会社に責任が移るわけではありません。また、名義だけを貸したり、入金記録だけを作る仮装の払込みをしたりせず、実際の出資者・資金の流れ・意思決定を一致させます。
登記後も、株主名簿、議事録、契約書、会計資料を保管し、役員変更・任期満了や本店移転などの変更登記を管理します。創業時の書類を残すことは、将来の融資・投資・事業承継の準備にもなります。
11 新銀座法律事務所への無料相談
「株式会社と合同会社のどちらがよいか」「共同創業者との取り決めを作りたい」「定款や出資条件を確認したい」「設立後も顧問として相談したい」といった段階からご相談ください。事業内容、設立希望時期、出資者と出資額、本店候補、許認可の有無が分かると相談が進めやすくなります。
平日9:00~21:00、土日祝日9:00~18:00に電話・LINE・メール等で受け付け、弁護士から電話で5分程度を目安に一般的な見解を回答しています。最新の受付条件はリンク先をご確認ください。
定款・創業者間契約の作成、設立手続、許認可、設立後の顧問等は、ご希望と案件に応じて業務範囲・担当・費用をご説明します。税務・登記・労務等について他士業と連携する場合も、その役割と費用を確認します。無料相談の申込みだけで、有料の委任契約が成立するものではありません。
13 法令・公的資料・申請書式
- e-Gov:会社法
- e-Gov:公証人手数料令
- 法務省:株式会社の設立手続(発起設立)
- 法務局:株式会社のオンライン設立登記
- 登記・供託オンライン申請システム:株式会社・合同会社の操作手引書(PDF等)
- 法務省:定款認証の見直し
- 法務省:休日を会社等の設立日とする特例
- 国税庁:登録免許税の税額表
- 国税庁:新設法人の届出書類
- 国税庁:新設法人等の消費税
- 東京都主税局:事業開始の届出・最新様式(PDF等)
- 日本年金機構:社会保険の新規適用・届出様式
- 厚生労働省:労働保険の成立手続
情報確認日:2026年10月1日。PDFや申請様式は改訂されるため、上記の公式案内ページから使用時点の最新版を取得してください。本文の裁判例は設立・経営時に参考となる主要判例の紹介です。具体的な設立方法・税務・許認可の要件は、会社の事情により異なります。