法の支配と民事訴訟実務入門(平成20年9月22日改訂)
各論17、労働審判を自分でやる。


質問:勤務先を解雇されました。自分で裁判所に訴えたいのですが、どうしたらよいですか。

回答:労働審判を検討してみて下さい。他に、「民事交渉」「地位保全仮処分申立」「地位確認訴訟」もありますが、本人訴訟の場合は、労働審判がお勧めです。以下、簡単に説明したいと思います。

解説
労働契約(労働者が労働力を提供しこれに対して使用者が対価を支払う契約)に関する事件についての基本的説明をしておきます。我が国は、国家社会発展の基礎を自由主義、資本主義体制に求め、法の支配の理念に基づき法社会制度として私有財産制と私的自治の原則(契約自由の原則)を採用しています。自由な経済活動は、具体的に資本の蓄積、充実、維持と代理(委任)、労働契約によって支えられています。しかし、経済活動を支え、基本となる労働契約は性質上不平等契約になる危険性を常に有しています。労働(雇用)契約はその性質上、委任と違い使用者の指揮命令に従うという従属性を有することもありますが、実態的には資本を有する使用者側の圧倒的経済力、組織力、情報力により労働力を切り売りして日々の生活に追われる労働者は常に契約の成立、継続、解消等について不利益な立場にたたされています。そもそも法の支配の最終目的は、個人の尊厳保障、公正、公平な社会秩序の建設にありますから各制度には当然公平の原理が内在しており、労働契約においては実質的に労働者の権利を対等、公平に確保するため労働三法(労働基準、組合、調整法)労働審判法その他法律等の解釈適用が行われることになります。

1、 解雇法理
  解雇とは使用者(雇用主)が雇用契約を解約することの意思表示です。期間の定めの無い雇用契約(いわゆる正社員契約)について、民法627条では「各当事者が何度にても解約の申入れを為すことを得、この場合においては、雇用は解約申入れの後2週間を経過したときに終了する」と規定されていますが、使用者側の一方的な解雇により、労働者は生活基盤を失ってしまいますので、解約の申し入れに合理的な理由が無い場合は解雇権の濫用として解雇が無効であるという判例(「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」(日本食塩製造事件 昭和50年4月25日)など)が集積されてきました。これを解雇法理と言います。そして、平成15年の労働基準法改正で、解雇法理が条文に明記されるに至りました。合理的理由のない解雇は不当解雇と呼ばれています。
労働基準法18条の2 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
この条文の「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」という内容は法律の性格上抽象的に規定されていますから個々の事件で具体的に検討していくことになりますが、考え方の基本は労働者の働く権利と、経営者側の企業、営業の自由の対立になりその調和をどこに求めるのかという事に行き着くことになります。
2、 民事交渉(和解契約締結)
上記の解雇法理を踏まえて、客観的合理性を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権の濫用であるとして、解雇無効を主張することになります。一般的には、上司と口喧嘩した程度では、解雇は無効であると考えられます。この旨を、内容証明郵便による通知書として、相手方に送付し、民事交渉を行い、和解合意書を締結する方法があります。労働事件を受任した場合に弁護士が最初に試みる方法です。和解合意書では、復帰条件を定めたり、退職する場合は退職時の示談金を定めたりします。裁判所を経由しない方法ですので、早急に解決できる場合もありますが、会社側に顧問弁護士が居ないなど、労働法の理解が乏しい場合は、交渉が成立しない場合もあります。
   
3、 労働審判
労働審判法は平成18年4月1日から施行されました。 この制度は、あまり複雑性を有しない雇用者と労働者の私的紛争(労働事件)を適正、公平、迅速、低廉(費用がかからないように)に解決するために創設されました。労働問題に限らず、民事紛争は適正公平迅速に解決されなければならないのは当然の事ですし(民事訴訟法2条)、権利義務を確定させるため、1年前後の期間を要する通常訴訟(地位確認の仮処分)により争われるのが原則です。しかし、労働事件には、特に迅速性が要求される特殊性があります。雇用契約は継続的契約であり、労働者が生きていくための基本的権利(憲法13条、25条)にかかわりますから、紛争が長期化すれば不利益を被るのは組織力、資本力、情報力を持たず日々の生活に追われている労働者側です。従って、労働事件は、当事者の勝敗より労働者の生きるための生活権確保という目的に従い、特に迅速性、実情にあった実質的公平性、合目性が要求されるのです。そこで、労働審判制度は、複雑性を有しない事件について(労働審判法24条、大規模の整理解雇事件等は適しないでしょう)、適正、公平性を担保しながら迅速性(法15条、期日は3回以内 実務は約3ヶ月以内 )を重視して、常に調停を併用しながら(法24条)職権主義を導入し(法17条、迅速性、合目性を確保するため審判委員会が独自に事実を調査し証拠調べをしますから、その権能を当事者に任せる当事者主義は後退します)、主張立証方法を制限して(事実上1回−2回を原則とする)、非公開(法16条)で弾力的に運用しながら合目的な早期解決を目指します。ただ、当事者は、労働事件についても当事者主義に基づく適正手続による裁判を受ける権利(憲法32条)を有するので、審判結果に異議を申し立てる権利(法21条、22条)は当然留保されています。使用者側の立場から見ても労働事件の早期解決は業務、業績の向上という点からむしろ望ましい制度であり、労使双方の早期紛争解決の意思があれば実効性ある制度であると考えられます。
労働審判手続の特色を説明します。
@管轄地方裁判所において、労働審判官1名と労働審判員2名によって構成される労働審判委員会が事件の解決(審判)に当たります(法2条、7条)。
A労働審判官には裁判官がなり、労働審判員には労使関係実務家がなります。労使実務家の存在によって専門性を担保しながら、労働事件の実情にあった公平な解決が担保されています。
Bそして、労働審判は迅速性を最優先にしますので、まず地方裁判所に申立書を提出して行います。申立の日から40日以内で第一回期日が指定されます。そこから原則として3回以内の期日において調停の成立もしくは審判がなされます。施行以来、申立から終了日までの平均審理期間は約70日前後(すなわち40日を控除すると、第1回期日から最終3回期日まで1ヶ月程度となります)、約95%の事件は3回以内の期日で処理されているようです(法15条)。従って、第1回目の期日までに当事者双方主張立証を全て出し尽くす態度が要求されますし、第1回目から逐次裁判所(委員会)の当事者尋問等証拠調べが始まります。時間的には基本的に3−4時間が予定されているようです。代理人がいても本人を同行する必要があるでしょう。事件関係者であれば許可を得て傍聴も可能です(法16条)。第2回目の期日は調停、補充的主張立証となります。第3回目は、事実上最終調停、審判期日になるでしょう。
C原則として申立書、答弁書以外の書面は認められません(規則17条1項)。
D審理は、非公開ですが、許可があれば傍聴が可能です。労働者の生活権が問題となっていますから、労働者の家族等は許可されるでしょう。
E労働審判では、まず調停による解決が試みられます(法24条、規則22条)。継続的契約関係ですから、当事者の話し合いが優先します。これで解決しない場合には3回目までの期日を経て審判が、書面、又は口頭で実情に即した解決案として下されます(法20条)。 
F裁判を受ける権利がありますから、調停によらず審判がなされた場合で、その内容に不満があるときは、書面にて異議申立(審判書を受け取ってから2週間以内、告知の場合も)を行うことができ、通常裁判に事件が移行し、さらに争うことが出来ます(法21条、規則31条)。審判は裁判官、実務家による判断ですから、異議の申し立てによる通常訴訟も同様の判決の可能性があり、むやみに異議がなされるということもないと思われます。平成18年度の結果ですが、概算で70%が調停成立、8%が審判による確定、12%が審判への異議、10%がその他取り下げ(法24条終了は3%)等です。
G主張立証は第1回期日が中心になる関係上、迅速包括的な対応が要求されますから、法的な評価、整理、学説判例の説明を必要とする場合は、弁護士を代理人とすることも必要となります。

4、 地位確認訴訟、地位保全仮処分申立
  地位確認訴訟は、解雇された従業員が、「解雇が無効なので、自分には労働契約上の従業員としての地位があります。」ということの確認を求めて、民事訴訟を提起する手続です。この裁判に勝訴すると、原告の「労働契約上の地位」について既判力(権利関係を確定する効力)を生じますので、原告は職場に出勤して仕事をすることができますし、事実上、会社は労働の対価として給与を支払わざるをえなくなります。民事訴訟ですので、民事訴訟法が適用され、権利義務を確定させるための、法的な主張立証が必要で、厳密な証拠調べが行われます。被告が争った場合、第一審判決まで、通常、半年から1年程度の期間が必要です。
  
地位保全仮処分申立は、民事保全法1条・23条2項に基き、労働契約上の従業員である地位を確認するための前記訴訟に先立って、「労働契約上の権利を有することを仮に定める。○年○月○日以降本案判決確定に至るまで毎月○日限り金○円を支払え。」という仮処分命令を求めて申立を行います。前記の通り、裁判手続には時間がかかりますから、保全手続では、民事裁判のような厳密な事実認定ではなく、「疎明」という説明(民事保全法13条2項)が必要とされています。「疎明」とは、裁判で勝訴するのに必要な「証明」には至らないが、裁判所を理解させるだけの説明を行うことをいいます。「一応確からしい」といえる程度の立証でよいとされています。

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労働審判手続申立書
平成●年●月●日

○ ○地方裁判所 民事部 御中

〒000-0000
  住所                  (送達場所)
  申立人            印
TEL
FAX

〒000-0000
  住所                  
  相手方            

申立ての趣旨

1. 原告が被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2. 被告は、原告に対し、平成○年○月以降毎月20日限り各金50万円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3. 申立て費用は相手方の負担とする。
との労働審判を求める。

申立ての理由

1. 当事者
申立人は、相手方と、平成▲年▲月に相手方との間で、期限の定めのない雇用契約を締結し、同年▲月○日より、勤務する者である。
相手方は、         を経営する株式会社である。

2. 申立て人の賃金
相手方における賃金は、毎月末日締め、翌月20日払いである。
申立人の賃金は、平成●年●月は  万円(甲1号証の1給与明細書)、同年○月は 
 万円(甲1号証の2)、同年▲月は  万円(甲1号証の3)であったので、本件解雇当時の申立人の平均賃金額は  万円である。

3. 解雇に至る経緯
(1)申立て人は平成●年▲月×日、相手方総務課長より呼び出され、突然「明日からしばらく出社しなくてもいい。とりあえずまた後日連絡する。」と自宅待機を命じられた。しかし、その後10日経っても相手方からは何の指示もなかった。
(2)同月25日、▲月分の給与を確認すると、振り込みがなかった。相手方に問い合わせたところ、「●月15日付けで解雇されたことになっている。」との回答を得た。

4. 本件解雇の無効
相手方の申立人に対する解雇は無効である。
(1)就業規則の解雇事由に該当する事由がない。
(2)社会通念上の相当性を逸脱している。
(3)本件解雇は公正さを欠いており、相当性を欠く。

5. 争点
申立人に就業規則上の解雇事由に該当する事実が存在するか。また、本件解雇は客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、解雇権濫用として無効であるか。

6. 申立てに至る経緯
申立人は、相手方からの解雇に至る手続きについて承服できないため、本件解雇の撤回と復職を求めるが、相手方に応じる考えがないとのことであった。
それ以降、相手方から本件解雇についての明確な理由告知されることもなく、申立てに至った。


証拠方法
証拠説明書記載のとおり。

付属書類
1. 申立書写し 4通
2. 甲号証写し 各2通
3. 証拠説明書 2通

申立人          
相手方     株式会社

平成●年●月●日
○ ○地方裁判所 民事部 御中 御中


証拠説明書

申立人          
相手方     株式会社

平成●年●月●日

○ ○地方裁判所 民事部 御中 御中

号証、標目、(原本・写しの別)、作成年月日、作成者、立証趣旨、備考

甲1の1〜3、給与明細書、原本、H20.3〜H20.5、相手方、申立人の賃金が平成20年3月は××万円、4月は○○万円、5月は●●万円であり、平均すると、◎◎万円になること。
甲2、就業規則、写し、相手方、当事者間の労働契約関係
甲3、解雇通知書、原本、H20.5.20、相手方、相手方がH20.●月15日付で解雇したこと。
甲4、陳述書、原本、H20.6.5、申立人、本件解雇の経緯など



≪条文参照≫
憲法
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第二十五条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
○2  国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
第二十七条  すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
○2  賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
第二十八条  勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
第三十二条  何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
民法
(期間の定めのある雇用の解除)
第六百二十六条  雇用の期間が五年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。ただし、この期間は、商工業の見習を目的とする雇用については、十年とする。
2  前項の規定により契約の解除をしようとするときは、三箇月前にその予告をしなければならない。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六百二十七条  当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2  期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3  六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
(やむを得ない事由による雇用の解除)
第六百二十八条  当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
労働審判法
(目的)
第一条  この法律は、労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下「個別労働関係民事紛争」という。)に関し、裁判所において、裁判官及び労働関係に関する専門的な知識経験を有する者で組織する委員会が、当事者の申立てにより、事件を審理し、調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み、その解決に至らない場合には、労働審判(個別労働関係民事紛争について当事者間の権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするために必要な審判をいう。以下同じ。)を行う手続(以下「労働審判手続」という。)を設けることにより、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的とする。
(管轄)
第二条  労働審判手続に係る事件(以下「労働審判事件」という。)は、相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する地方裁判所、個別労働関係民事紛争が生じた労働者と事業主との間の労働関係に基づいて当該労働者が現に就業し若しくは最後に就業した当該事業主の事業所の所在地を管轄する地方裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所の管轄とする。
(移送)
第三条  裁判所は、労働審判事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。
2  裁判所は、労働審判事件がその管轄に属する場合においても、事件を処理するために適当と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該労働審判事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
(代理人)
第四条  労働審判手続については、法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ代理人となることができない。ただし、裁判所は、当事者の権利利益の保護及び労働審判手続の円滑な進行のために必要かつ相当と認めるときは、弁護士でない者を代理人とすることを許可することができる。
2  裁判所は、前項ただし書の規定による許可を取り消すことができる。
(労働審判手続の申立て)
第五条  当事者は、個別労働関係民事紛争の解決を図るため、裁判所に対し、労働審判手続の申立てをすることができる。
2  前項の申立ては、その趣旨及び理由を記載した書面でしなければならない。
(不適法な申立ての却下)
第六条  裁判所は、労働審判手続の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、その申立てを却下しなければならない。
(労働審判委員会)
第七条  裁判所は、労働審判官一人及び労働審判員二人で組織する労働審判委員会で労働審判手続を行う。
(労働審判官の指定)
第八条  労働審判官は、地方裁判所が当該地方裁判所の裁判官の中から指定する。
(労働審判員)
第九条  労働審判員は、この法律の定めるところにより、労働審判委員会が行う労働審判手続に関与し、中立かつ公正な立場において、労働審判事件を処理するために必要な職務を行う。
2  労働審判員は、労働関係に関する専門的な知識経験を有する者のうちから任命する。
3  労働審判員は、非常勤とし、前項に規定するもののほか、その任免に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
4  労働審判員には、別に法律で定めるところにより手当を支給し、並びに最高裁判所規則で定める額の旅費、日当及び宿泊料を支給する。
(労働審判員の指定)
第十条  労働審判委員会を組織する労働審判員は、労働審判事件ごとに、裁判所が指定する。
2  裁判所は、前項の規定により労働審判員を指定するに当たっては、労働審判員の有する知識経験その他の事情を総合的に勘案し、労働審判委員会における労働審判員の構成について適正を確保するように配慮しなければならない。
(労働審判員の除斥)
第十一条  民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)第二十三条 、第二十五条及び第二十六条の規定は、労働審判員の除斥について準用する。
(決議等)
第十二条  労働審判委員会の決議は、過半数の意見による。
2  労働審判委員会の評議は、秘密とする。
(労働審判手続の指揮)
第十三条  労働審判手続は、労働審判官が指揮する。
(労働審判手続の期日)
第十四条  労働審判官は、労働審判手続の期日を定めて、事件の関係人を呼び出さなければならない。
(迅速な手続)
第十五条  労働審判委員会は、速やかに、当事者の陳述を聴いて争点及び証拠の整理をしなければならない。
2  労働審判手続においては、特別の事情がある場合を除き、三回以内の期日において、審理を終結しなければならない。
(手続の非公開)
第十六条  労働審判手続は、公開しない。ただし、労働審判委員会は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。
(証拠調べ等)
第十七条  労働審判委員会は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをすることができる。
2  証拠調べについては、民事訴訟の例による。
(調停が成立した場合の費用の負担)
第十八条  各当事者は、調停が成立した場合において、その支出した費用のうち調停条項中に費用の負担についての定めがないものを自ら負担するものとする。
(審理の終結)
第十九条  労働審判委員会は、審理を終結するときは、労働審判手続の期日においてその旨を宣言しなければならない。
(労働審判)
第二十条  労働審判委員会は、審理の結果認められる当事者間の権利関係及び労働審判手続の経過を踏まえて、労働審判を行う。
2  労働審判においては、当事者間の権利関係を確認し、金銭の支払、物の引渡しその他の財産上の給付を命じ、その他個別労働関係民事紛争の解決をするために相当と認める事項を定めることができる。
3  労働審判は、主文及び理由の要旨を記載した審判書を作成して行わなければならない。
4  前項の審判書は、当事者に送達しなければならない。この場合においては、労働審判の効力は、当事者に送達された時に生ずる。
5  前項の規定による審判書の送達については、民事訴訟法第一編第五章第四節 (第百四条及び第百十条から第百十三条までを除く。)の規定を準用する。
6  労働審判委員会は、相当と認めるときは、第三項の規定にかかわらず、審判書の作成に代えて、すべての当事者が出頭する労働審判手続の期日において労働審判の主文及び理由の要旨を口頭で告知する方法により、労働審判を行うことができる。この場合においては、労働審判の効力は、告知された時に生ずる。
7  裁判所は、前項前段の規定により労働審判が行われたときは、裁判所書記官に、その主文及び理由の要旨を、調書に記載させなければならない。
(異議の申立て等)
第二十一条  当事者は、労働審判に対し、前条第四項の規定による審判書の送達又は同条第六項の規定による労働審判の告知を受けた日から二週間の不変期間内に、裁判所に異議の申立てをすることができる。
2  裁判所は、異議の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、これを却下しなければならない。
3  適法な異議の申立てがあったときは、労働審判は、その効力を失う。
4  適法な異議の申立てがないときは、労働審判は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
5  前項の場合において、各当事者は、その支出した費用のうち労働審判に費用の負担についての定めがないものを自ら負担するものとする。
(訴え提起の擬制)
第二十二条  労働審判に対し適法な異議の申立てがあったときは、労働審判手続の申立てに係る請求については、当該労働審判手続の申立ての時に、当該労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。
2  前項の規定により訴えの提起があったものとみなされる事件は、同項の地方裁判所の管轄に属する。
3  第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、民事訴訟法第百三十七条 、第百三十八条及び第百五十八条の規定の適用については、第五条第二項の書面を訴状とみなす。
(労働審判の取消し)
第二十三条  第二十条第四項の規定により審判書を送達すべき場合において、次に掲げる事由があるときは、裁判所は、決定で、労働審判を取り消さなければならない。
一  当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れないこと。
二  第二十条第五項において準用する民事訴訟法第百七条第一項 の規定により送達をすることができないこと。
三  外国においてすべき送達について、第二十条第五項において準用する民事訴訟法第百八条 の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認められること。
四  第二十条第五項において準用する民事訴訟法第百八条 の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がないこと。
2  前条の規定は、前項の規定により労働審判が取り消された場合について準用する。
(労働審判によらない労働審判事件の終了)
第二十四条  労働審判委員会は、事案の性質に照らし、労働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないと認めるときは、労働審判事件を終了させることができる。
2  第二十二条の規定は、前項の規定により労働審判事件が終了した場合について準用する。この場合において、同条第一項中「当該労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた」とあるのは、「労働審判事件が終了した際に当該労働審判事件が係属していた」と読み替えるものとする。
(費用の負担)
第二十五条  裁判所は、労働審判事件が終了した場合(第十八条及び第二十一条第五項に規定する場合を除く。)において、必要と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該労働審判事件に関する手続の費用の負担を命ずる決定をすることができる。
(事件の記録の閲覧等)
第二十六条  当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、労働審判事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は労働審判事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
2  民事訴訟法第九十一条第四項 及び第五項 並びに第九十二条 の規定は、前項の記録について準用する。
(訴訟手続の中止)
第二十七条  労働審判手続の申立てがあった事件について訴訟が係属するときは、受訴裁判所は、労働審判事件が終了するまで訴訟手続を中止することができる。
(即時抗告)
第二十八条  第三条第一項及び第二項、第六条、第二十一条第二項、第二十三条第一項並びに第二十五条の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(非訟事件手続法 及び民事調停法 の準用)
第二十九条  労働審判事件に関しては、非訟事件手続法 (明治三十一年法律第十四号)第一編 (第三条、第六条、第七条、第十条中民事訴訟に関する法令の規定中人証及び鑑定に関する規定を準用する部分、第十一条、第十三条、第十五条、第二十一条並びに第三十二条を除く。)並びに民事調停法 (昭和二十六年法律第二百二十二号)第十一条 、第十二条、第十六条及び第三十六条の規定を準用する。この場合において、非訟事件手続法第二十六条 中「裁判前ノ手続及ビ裁判ノ告知ノ費用」とあるのは「労働審判事件ニ関スル手続ノ費用」と、民事調停法第十一条 中「調停の」とあるのは「労働審判手続の」と、「調停委員会」とあるのは「労働審判委員会」と、「調停手続」とあるのは「労働審判手続」と、同法第十二条第一項 中「調停委員会」とあるのは「労働審判委員会」と、「調停の」とあるのは「調停又は労働審判の」と、「調停前の措置」とあるのは「調停又は労働審判前の措置」と、同法第三十六条第一項 中「前二条」とあるのは「労働審判法(平成十六年法律第四十五号)第三十一条及び第三十二条」と読み替えるものとする。
(最高裁判所規則)
第三十条  この法律に定めるもののほか、労働審判手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
(不出頭に対する制裁)
第三十一条  労働審判官の呼出しを受けた事件の関係人が正当な理由がなく出頭しないときは、裁判所は、五万円以下の過料に処する。
(措置違反に対する制裁)
第三十二条  当事者が正当な理由がなく第二十九条において準用する民事調停法第十二条 の規定による措置に従わないときは、裁判所は、十万円以下の過料に処する。
(評議の秘密を漏らす罪)
第三十三条  労働審判員又は労働審判員であった者が正当な理由がなく評議の経過又は労働審判官若しくは労働審判員の意見若しくはその多少の数を漏らしたときは、三十万円以下の罰金に処する。
(人の秘密を漏らす罪)
第三十四条  労働審判員又は労働審判員であった者が正当な理由がなくその職務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
最高裁判所規則 第二号
労働審判規則を次のように定める。
平成十七年一月十一日
最高裁判所 労働審判規則
(趣旨)
第一条 労働審判法(平成十六年法律第四十五号。以下「法」という。)による労働審判手続については、法に定めるもののほか、この規則の定めるところによる。
(当事者の責務)
第二条 当事者は、早期に主張及び証拠の提出をし、労働審判手続の計画的かつ迅速な進行に努め、信義に従い誠実に労働審判手続を追行しなければならない。
(管轄の合意の方式・法第二条)
第三条 法第二条の合意は、書面でしなければならない。
(移送の申立ての方式・法第三条)
第四条 法第三条の移送の申立ては、労働審判手続の期日においてする場合を除き、書面でしなければならない。
2 前項の申立てをするときは、申立ての理由を明らかにしなければならない。
(代理人の許可の申立ての方式・法第四条)
第五条 法第四条第一項ただし書の規定による許可の申立ては、代理人となるべき者の氏名、住所、職業及び本人との関係並びに当該申立ての理由を記載した書面でしなければならない。
2 前項の書面には、本人と代理人となるべき者との関係を証する文書を添付しなければならない。
(代理権の証明等・法第四条)
第六条 民事訴訟規則(平成八年最高裁判所規則第五号)第二十三条の規定は、労働審判手続における代理人について準用する。
(裁判所等に提出すべき書面)
第七条 民事訴訟規則第二条及び第三条(第一項第四号を除く。)の規定は、当事者又は代理人が裁判所又は労働審判委員会に提出すべき書面について準用する。
(通知)
第八条 労働審判手続における通知は、相当と認める方法によることができる。
2 裁判所書記官は、前項の通知をしたときは、その旨及び通知の方法を記録上明らかにしなければならない。
3 第一項の通知は、これを受けるべき者の所在が明らかでないとき、又はその者が外国に在るときは、することを要しない。この場合においては、裁判所書記官は、その事由を記録上明らかにしなければならない。
(労働審判手続の申立書の記載事項等・法第五条)
第九条 労働審判手続の申立書には、申立ての趣旨及び理由を記載するほか、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 予想される争点及び当該争点に関連する重要な事実
二 予想される争点ごとの証拠
三 当事者間においてされた交渉(あっせんその他の手続においてされたものを含む。)その他の申立てに至る経緯の概要
四 代理人(代理人がない場合にあっては、申立人)の住所の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)
2 前項の申立書に記載する申立ての理由は、申立てを特定するのに必要な事実及び申立てを理由づける具体的な事実を含むものでなければならない。
3 予想される争点についての証拠書類があるときは、その写しを第一項の申立書に添付しなければならない。
4 第一項の申立書を提出するには、これと同時に、相手方の数に三を加えた数の当該申立書の写し及び相手方の数と同数の前項の証拠書類の写しを提出しなければならない。
(労働審判手続の申立書の写し等の送付・法第五条)
第十条 裁判所は、法第六条の規定により労働審判手続の申立てを却下する場合を除き、前条第四項の規定により提出された申立書の写し及び証拠書類の写し(これとともに提出された証拠説明書を含む。)を相手方に送付しなければならない。ただし、労働審判手続の期日を経ないで法第二十四条第一項の規定により労働審判事件を終了させる場合は、この限りでない。
(申立ての取下げの方式等)
第十一条 労働審判手続の申立ての取下げは、労働審判手続の期日においてする場合を除き、書面でしなければならない。
2 労働審判手続の申立てが取り下げられた場合(相手方が出頭した労働審判手続の期日においてされた場合を除く。)は、裁判所書記官は、第九条第四項の申立書の写しの送付を受けた相手方に対し、その旨を通知しなければならない。
(労働審判員の除斥・法第十一条)
第十二条 民事訴訟規則第十条及び第十一条の規定は、労働審判員の除斥について準用する。
(労働審判手続の第一回の期日の指定・法第十四条)
第十三条 労働審判官は、特別の事由がある場合を除き、労働審判手続の申立てがされた日から四十日以内の日に労働審判手続の第一回の期日を指定しなければならない。
(答弁書の提出期限)
第十四条 労働審判官は、答弁書の提出をすべき期限を定めなければならない。
2 前項の期限は、答弁書に記載された事項について申立人が前条の期日(以下「第一回期日」という。)までに準備をするのに必要な期間をおいたものでなければならない。
(呼出状の記載事項)
第十五条 当事者に対する第一回期日の呼出状には、第一回期日の前にあらかじめ主張、証拠の申出及び証拠調べに必要な準備をすべき旨を記載しなければならない。
2 相手方に対する前項の呼出状には、同項に規定する事項のほか、前条第一項の期限までに答弁書を提出すべき旨を記載しなければならない。
(答弁書の提出等)
第十六条 相手方は、第十四条第一項の期限までに、次に掲げる事項を記載した答弁書を提出しなければならない。
一 申立ての趣旨に対する答弁
二 第九条第一項の申立書に記載された事実に対する認否
三 答弁を理由づける具体的な事実
四 予想される争点及び当該争点に関連する重要な事実
五 予想される争点ごとの証拠
六 当事者間においてされた交渉(あっせんその他の手続においてされたものを含む。)その他の申立てに至る経緯の概要
七 代理人(代理人がない場合にあっては、相手方)の住所の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)
2 予想される争点についての証拠書類があるときは、その写しを答弁書に添付しなければならない。
3 答弁書を提出するには、これと同時に、その写し三通を提出しなければならない。
(答弁に対する反論)
第十七条 相手方の答弁に対する反論(これに対する再反論等を含む。以下この項において同じ。)を要する場合には、労働審判手続の期日において口頭でするものとする。この場合において、反論をする者は、口頭での主張を補充する書面(以下「補充書面」という。)を提出することができる。
2 補充書面を提出するには、これと同時に、その写し三通を提出しなければならない。
(労働審判手続の申立書等の記載の方法)
第十八条 第九条第一項の申立書、答弁書又は補充書面は、できる限り、申立て又は答弁を理由づける事実についての主張とそれ以外の事実についての主張とを区別して、簡潔に記載しなければならない。
(補充書面の提出等の期限)
第十九条 労働審判官は、補充書面の提出又は証拠の申出をすべき期限を定めることができる。
(書類の送付)
第二十条 直送(当事者の相手方に対する直接の送付をいう。以下同じ。)その他の送付は、送付すべき書類の写しの交付又はその書類のファクシミリを利用しての送信によってする。
2 裁判所が当事者その他の関係人に対し送付すべき書類の送付に関する事務は、裁判所書記官が取り扱う。
3 当事者が次に掲げる書面を提出するときは、これについて直送をしなければならない。
一 答弁書
二 補充書面
三 申立ての趣旨又は理由の変更を記載した書面
四 証拠書類の写し(第九条第四項の規定により提出されたものを除く。)
五 証拠説明書(第九条第四項の証拠書類の写しとともに提出されたものを除く。)
六 第三十四条第一項の書面
七 第三十四条第二項の費用計算書
4 当事者が直送をしなければならない書類について、直送を困難とする事由その他相当とする事由があるときは、当該当事者は、裁判所に対し、当該書類の相手方への送付を裁判所書記官に行わせるよう申し出ることができる。
(労働審判手続の期日における手続等・法第十五条)
第二十一条 労働審判委員会は、第一回期日において、当事者の陳述を聴いて争点及び証拠の整理をし、第一回期日において行うことが可能な証拠調べを実施する。
2 労働審判官は、第一回期日において審理を終結できる場合又は第一回期日において法第二十四条第一項の規定により労働審判事件を終了させる場合を除き、次回期日を指定し、当該期日に行う手続及び当該期日までに準備すべきことを当事者との間で確認するものとする。
(調停)
第二十二条 労働審判委員会は、審理の終結に至るまで、労働審判手続の期日において調停を行うことができる。
2 裁判所書記官は、前項の調停において当事者間に合意が成立したときは、当該合意の内容並びに当事者の氏名又は名称及び住所並びに代理人の氏名を、調書に記載しなければならない。
(手続の分離又は併合)
第二十三条 労働審判委員会は、手続の分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。
2 労働審判委員会は、手続の併合を命ずるときは、あらかじめ当事者の意見を聴かなければならない。
(利害関係人の参加についての意見聴取)
第二十四条 労働審判委員会は、労働審判手続の結果について利害関係を有する者が労働審判手続に参加することを許可し、又は当該者を労働審判手続に参加させる場合には、あらかじめ当事者の意見を聴かなければならない。
(調書の作成等)
第二十五条 裁判所書記官は、労働審判手続の期日について、その経過の要領を記録上明らかにしなければならない。
2 裁判所書記官は、労働審判官が命じた場合には、労働審判手続の調書を作成しなければならない。
3 労働審判手続の調書には、次に掲げる事項を記載し、裁判所書記官が記名押印し、労働審判官が認印しなければならない。
一 事件の表示
二 労働審判官、労働審判員及び裁判所書記官の氏名
三 出頭した当事者及び代理人の氏名
四 期日の日時及び場所
五 申立ての取下げがあったときは、その旨
六 証拠調べが実施されたときは、その概要
七 審理の終結の宣言があったときは、その旨
八 労働審判官が記載を命じた事項
(申立ての趣旨又は理由の変更)
第二十六条 申立人は、申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨又は理由を変更することができる。
2 申立ての趣旨又は理由の変更は、書面でしなければならない。
3 前項の書面を提出するには、これと同時に、その写し三通を提出しなければならない。
4 労働審判委員会は、申立ての趣旨又は理由を変更することにより三回以内の期日において審理を終結することが困難になると認めるときは、その変更を許さないことができる。
(主張及び証拠の提出の時期)
第二十七条 当事者は、やむを得ない事由がある場合を除き、労働審判手続の第二回の期日が終了するまでに、主張及び証拠書類の提出を終えなければならない。
(審判書・法第二十条)
第二十八条 法第二十条第三項の審判書には、主文及び理由の要旨を記載するほか、次に掲げる事項を記載し、労働審判委員会を構成する労働審判官及び労働審判員が記名押印しなければならない。
一 事件の表示
二 当事者の氏名又は名称及び住所並びに代理人の氏名
三 審判の年月日
四 裁判所の表示
2 前項の労働審判員が審判書に記名押印することに支障があるときは、労働審判官が審判書にその事由を付記して記名押印しなければならない。
(審判書の送達・法第二十条)
第二十九条 法第二十条第四項の規定による審判書の送達は、審判書の正本によってする。
2 民事訴訟規則第三十九条、第四十三条及び第四十四条の規定は、法第二十条第四項の規定による送達について準用する。
(審判書に代わる調書の記載事項・法第二十条)
第三十条 法第二十条第七項の調書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 主文及び理由の要旨
二 当事者の氏名又は名称及び住所並びに代理人の氏名
三 第二十五条第三項各号に掲げる事項
(異議の申立ての方式等・法第二十一条)
第三十一条 法第二十一条第一項の異議の申立ては、書面でしなければならない。
2 法第二十一条第三項の規定により労働審判が効力を失ったときは、裁判所書記官は、異議の申立てをしていない当事者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。
(訴状とみなす書面・法第二十二条)
第三十二条 法第二十二条第一項(法第二十三条第二項及び第二十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、民事訴訟規則第五十六条から第五十八条までの規定の適用については、第九条第一項の申立書及び第二十六条第二項の書面を訴状とみなす。
(労働審判事件の終了の場合の処置・法第二十四条)
第三十三条 法第二十四条第一項の規定により労働審判事件が終了したときは、裁判所書記官は、その旨及び終了の年月日を記録上明らかにしなければならない。
2 前項に規定する場合においては、裁判所書記官は、当事者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。ただし、労働審判手続の期日において労働審判事件を終了した場合に、その期日に出頭していた当事者については、この限りでない。
(費用の負担の申立ての方式等・法第二十五条)
第三十四条 法第二十五条の申立ては、書面でしなければならない。
2 裁判所は、費用の裁判をするについて必要があると認めるときは、当事者に費用計算書の提出を命ずることができる。
(閲覧等の制限の申立ての方式等・法第二十六条)
第三十五条 民事訴訟規則第三十四条の規定は、法第二十六条第二項において準用する民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第九十二条の規定による秘密記載部分の閲覧等について準用する。
人事訴訟法
(職権探知)
第二十条  人事訴訟においては、裁判所は、当事者が主張しない事実をしん酌し、かつ、職権で証拠調べをすることができる。この場合においては、裁判所は、その事実及び証拠調べの結果について当事者の意見を聴かなければならない。
民事保全法
(趣旨)
第一条  民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え及び係争物に関する仮処分並びに民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分(以下「民事保全」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
(仮処分命令の必要性等)
第二十三条  係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2  仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
3  第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。
4  第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
労働基準法
(適用除外)
第百十六条  第一条から第十一条まで、次項、第百十七条から第百十九条まで及び第百二十一条の規定を除き、この法律は、船員法 (昭和二十二年法律第百号)第一条第一項 に規定する船員については、適用しない。
○2  この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。


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